Googleアメリカ本社では優れた人材の採用のために、さまざまな検証を行い、自社の採用をブラッシュアップしました。
それらのプロセスや成果は、ラズロ・ボック著(2015)『WORK RULES!』に記されています。
内容は、昨今日本の採用市場でトレンドとなってきている「構造化面接」をはじめとした、応募者の能力を客観的にとらえようとする手法についてです。
どのような根拠に基づいてこれらの手法を取り入れたのか、どのように取り入れたのかをご紹介します。

面接の結果は、最初の10秒で決まる

まずは既存の面接手法を疑うことから始まりました。
面接とは時間を十分に使って、応募者の能力を引き出し、自社の求める水準に達しているか判断するべきもののはずです。
しかし、実は研究によって※1、「面接の結果は応募者が部屋に入ってから数えて最初の10秒で決まっている 」、ということが明らかになりました。
面接における11の評価項目のうち9項目において、「最初の10秒時点での評価結果」と、「最終的な評価の結果」に有意な相関関係が見られました。この現象は「確証バイアス」と呼ばれ、最初の自分の考えに確証を持つために情報収集を行ってしまう認知バイアスであると説明されています。
我々は面接において、最初の10秒の印象を確実なものとするために、残りの時間で情報収集を行っている可能性があるのです。 では、採用場面においてどのような選抜手法が効果的なのか?Googleはさらに外部の研究を探しました。

パフォーマンスの予測力の高い選抜手法はどれ?

Googleでは、活躍できる人を見抜くことができる手法を「効果的」な選抜手法であると定義しています。
では、どのような選抜手法が、入社後のパフォーマンスをよりよく見極められるのでしょうか?
ここで、次の研究※2を引用します。
応募者の選抜における19の異なる評価手法が、パフォーマンスをどこまで予測できるか、という85年にわたるメタ分析を行った研究です。
結果は以下の通りです。なお、「決定係数」とは、特定の説明変数から従属変数をどの程度予測できるかを測る指標のことで、ここでは「パフォーマンスの何%を説明できるか」を指しています。


この結果から、応募者の職務能力を予測するための最善の方法はワークサンプルテストであるということがわかります。
続いて、一般認識能力テスト、構造化面接の予測力が高くなっています。

ワークサンプルテスト・一般認識能力テスト・構造化面接とは?

「ワークサンプルテスト」とは、採用された場合に担当する職務に似た仕事のサンプルを応募者に与え、そのパフォーマンスを評価する手法です。
例えばGoogleでは、応募者に実際にコーディングをしてもらいます。
また、ある指示を実行するためのアルゴリズムを説明させるなどして、実際にプログラマーに求められる能力を確認しています。

次に予測力の高い「一般認識能力テスト」とは、採用場面でよく用いられる適性検査における知的能力検査です。

そして、それに並んで予測力が高いのが「構造化面接」です。
「客観面接」「コンピテンシー面接」などとも呼ばれる手法で、ある特定の能力の有無を、あらかじめ用意した質問群によって掘り下げてヒアリングする手法です。
例えばGoogleでは、チームワークに関する能力を測りたいときには「あなたの行動がチームに前向きな影響を与えたときのことを聞かせてください。」と質問します。
その後は応募者の回答に合わせて、その人のミッション、行動した理由、チームメンバーの反応などをヒアリングします。
リーダーシップについてヒアリングしたい場合には、「目標達成のためにチームを効果的に運営したときのことを聞かせてください」と質問し、続けて応募者のおかれた状況、タスク、アクション、結果を確認していくのです。

さらに手法を組み合わせることで、予測力は向上します。
Googleではこれらの結果をもとに、応募者の選抜において、ワークサンプルテスト・一般認識能力テスト・構造化面接を行い、加えて自社へのカルチャーマッチを確認するという方法を用いています。

最後に

Googleで取り入れている選抜手法について簡単に解説しました。
また、こうした採用活動の合理化は、日本企業においてもすぐに実践できます。
一つずつ、自社に取り入れられそうな手法から、ぜひ取り組んでみてください。

参考文献:ラズロ・ボック著(2015)『WORK RULES!』(鬼澤忍/矢羽野薫訳)東洋経済新報社
※1 2000年、トレド大学でのトリシア・プリケット、ネハ・ガダ=ジェイン、フランク・ベルニエリ教授による共同研究
※2 1998年、フランク・シュミットとジョン・ハンターの研究

本コラムでは「面接官の目線がブレている?」と感じたときのチェックポイントに関して簡潔に解説します。
コロナ禍をきっかけとして、新卒採用における広報、選考、内定者フォローまでオンライン化が進みました。面接形式が対面からオンラインに変わったことで、「面接官の目線がブレていると感じる」「面接評価が統一されていない」「人によって合格基準が異なっている」という課題感を抱く企業も増えてきたようです。
「目線がブレる」原因はどこにあるのでしょうか?ポイントごとに簡潔に解説します。

評価基準がない、または曖昧である

そもそも評価基準がない場合や評価基準が曖昧な場合は、評価基準を定義することが重要です。準拠すべき基準がはっきりしていない場合、面接官は各々の主観に従って人を評価します。面接官の目線がブレる原因の一つです。

一般的には、以下の方法で評価基準を作成します。

(1)インタビュー:採用すべき人材、必要な能力、スキル、マインド等について社内の関係者にインタビューします。インタビューの対象者は、経営層、現場のマネージャー、現場のハイパフォーマー、人事担当者などです。
(2)アンケート:必要な能力、スキル、マインド等について、社内の関係者にアンケートをとります。対象者数が多い場合は、自由記述欄は少ない方が集計しやすいでしょう。対象者は、現場のマネージャー、現場のハイパフォーマー、現場の一般社員、人事担当者などです。
(3)データ分析:入社時に得られる様々なデータ(大学の成績、適性検査の結果、面接の評価、出身学部 等)を用いて、その後の職務パフォーマンスを予測する分析をします。分析対象者は、現場のハイパフォーマー、現場の一般社員です。

詳細な手法の説明は紙面の都合上省略しますので、詳しく知りたい方はお手数ですがこちらの資料をご覧ください。

評価基準が決まったら、次に下記のポイントを順に確認し、問題がありそうなポイントを改善しましょう。

評価基準を理解していない

面接官が決められた評価基準を理解していないケースがあります。この問題は、「面接評価シート」の改善によって解決できます。
下記の観点から、面接評価シートを改善してみましょう。

(1)評価基準を名称だけでなく、定義まで明確に示しているか。誰が読んでも同じ解釈ができる記述かどうか。
(2)各基準を評価するために応募者からどのような情報がとればよいかが示されているか。チェックボックスなどを使って判断の指標を示しているか。
(3)各基準を見極めるためにどのような質問をすればよいか、例示しているか。

事前情報(エントリーシート・履歴書など)をうまく活用できていない

面接では限られた時間(新卒採用の面接時間は通常20分~長くても40分程度)で、初めて会う応募者に質問し、情報を引き出し、評価をする必要があります。事前情報をうまく活用して面接に臨むことも大切なポイントです。
面接官が事前情報を活用できているか、以下の点をチェックしてください。

(1)エントリーシート、履歴書を事前に読み込む時間を確保しているか。
(2)人物像についてイメージを持った上で面接に臨んでいるか。
(3)事前情報を踏まえ、最初はどんな質問をすべきか、どんなポイントを深掘りすべきか、を想定できているか。
(4)質問の仕方や掘り下げるポイントは、評価基準と紐づいているか。
(5)(適性検査結果を面接官に渡している場合)適性検査の読み方を熟知しているか(面接における適性検査の読み方がわからない方は、ぜひこちらの資料を参照してください)。

質問の仕方に問題がある

面接はあくまで人と人とのコミュニケーションです。面接冒頭の「投げかけの質問」や「掘り下げの質問」の例を準備していたとしても、面接官が面接スキルを身につけていないと、応募者から必要な情報を引き出すことはできません。また、面接に慣れている面接官であっても、「悪いクセ」に気づかず放置しているケースもあります。
貴社の面接官には(もしくはご自身にも)以下のようなクセはありませんか。

(1)話題をコロコロ変える・・・話題を掘り下げられず、充分な情報収集ができません。
(2)「なぜ」という質問だけを繰り返す・・・価値観や動機の情報収集に偏ってしまい、状況・タスク・行動・結果の情報が得られません。
(3)二者択一の質問が多い・・・応募者の回答が限定されます。
(4)質問の意図や理由を説明したがる・・・面接官の話が長くなり、応募者の話す時間が減ります。

評価の仕方に問題がある

面接官が以下のような評価を行っている場合、面接評価がブレる原因となります。

(1)「面接後に評価の時間をとらず、面接中に合否・総合評価の判断をしている」
(2)「面接中は記録をとらない」
(3)「総合評価だけを採点している」
(4)「レベルの評価は面接官に任されている」

面接中に評価を記入したり、十分な面接の記録がとれていない場合、どうしても主観の要素が強くなり、適切な評価を行えません。面接後にしっかり評価の時間を確保し、面接中に記録をとれるような工夫(対話が途切れないように二名体制で臨むなど)をしましょう。
また総合評価しか採点を行わない場合、評価の根拠があいまいになってしまうケースが多いです。①面接中に記録をとる、②学生の言動を該当する能力に分類する、③それぞれのレベル評価を行う、④合否・総合評価を判断する、という順で構造的な評価を行うことが重要です。
一方、レベルの定義を面接官任せにしているケースについては、事前の面接官トレーニングによってレベルの定義についての共通認識を持ってもらい、評価の甘辛が出ないようにしておくことを推奨します。例えば、10~15分の面接映像を面接官全員で評価し、「評価項目と照らすとどのような情報収集ができたか」「何を評価したか」「評価は何点としたか」を面接官同士で共有する方法があります。その際、採用担当者から「このレベルなら合格にしてほしい」「このレベルなら不合格」とお伝えすることも重要です。

最後に

皆さんが思い当たる問題点はありましたか?「当てはまる」というものがあれば、ぜひテコ入れを行ってください。
今回は簡潔な解説にとどめましたが、「もっと詳しい内容が知りたい」「そもそも何が問題点かわからない」という場合には、ぜひ当社の担当コンサルタントへ、またはフォームからお問い合わせください。また、当社の面接官トレーニングに興味をお持ちの方は、こちらから資料をダウンロードしてください。