こうした流れを受け、コロナの影響で中止、あるいはオンラインで代替していた「グループ討議」を「対面」で復活させる動きが徐々に現れ始めています。
グループ討議を「対面」で実施する場合と、「オンライン」で実施する場合、それぞれにメリット・デメリットがあります。「オンライン」と「対面」ではどのような違いがあるのか、注意すべきポイントは何なのか、改めて整理してみましょう。
グループ討議はオンラインと対面でどのように変わるか?
ここでは「参加の手軽さ」「環境の違い」「評価の内容・質」の3つに焦点を当ててみます。1.参加の手軽さ
1-1.学生の離脱防止グループ討議にかかわらず、オンライン選考の最大のメリットは場所・時間を自由に決められるため、参加しやすいことです。選考に参加できる時間や場所がないという理由での離脱を防ぎ、不要な選考辞退を防止します。
一方で、対面のグループ討議をあえて課すことで入社意欲の高い学生を集める効果を期待する企業もあります。
1-2.現場社員の協力を仰ぎやすい
スケジュール調整の問題は、評価者にとってもハードルとなる場合があります。
現場社員に評価への参加を依頼しても、業務が多忙で協力を得られない方が多くいるのであれば、オンライン選考を推奨できます。単発的な参加要請であれば、「その時間だけなら…」と協力を得やすくなります。
2.参加者の環境
2-1.地理的な制約対面で実施する場合は、開催場所が決まっているため、参加者が地理的な制約を受けることがあります。
一方、オンラインで実施する場合、インターネット環境と必要な機器があれば、参加者はどこにいても議論に参加できます。
2-2.物理的な環境の影響
対面で実施する場合は、参加者全員を同じ環境下に置くことが前提ですが、それができない場合(人数が多く複数の会場で実施する場合など)物理的な環境の違いが議論に影響を与える場合があります。たとえば、会場の広さや温度、音響環境などです。
オンラインで実施する場合は、参加者が自分で環境(場所、機器など)を選択できますが、使用するデバイス(PC、スマートフォンなど)、ディスプレイの大きさ、音声出力の方法などによって、得られる情報に差が生じる可能性があります。やり方によってはデバイスの差が有利・不利を生むケースも考えられます。

3.評価の内容・質
3-1.コミュニケーションの質オンラインと対面では、相手の表情、身振り、手振りなどの非言語コミュニケーションから得られる情報量が大きく異なります。対面形式のほうが圧倒的に非言語情報を多く得られます。さらにオンラインの場合、回線状況による遅延から、スムーズなコミュニケーションが阻害される可能性があることは言わずもがなです。
3-2.評価項目の違い
オンラインと対面では、同じ題材を用いた同じ演習でも評価できる項目が変わります。
参考までに、日本エス・エイチ・エルのグループ討議題材では、以下のように評価項目を設定しています。
【対面形式の評価項目】
・影響力:説得力のある提案をし、自分の立場を堅持する。提案に対して他者の理解や協力を得ることができる。聞き手に合わせてアプローチを変え、意見の対立を解決する。
・チームワーク:チーム全体の目標に向かって、協力・協調ができる。情報を独占することなく、支援を惜しまない。
・分析力:問題を構造的に捉え、本質的なものとどうでもいいものに分ける。情報を整理し、合理的な手順で、適切な推論を行う。
【オンライン形式の評価項目】
・参加姿勢:討議に積極的に参加し、議論を先に進める。
・発言内容:他者に分かりやすく考えを伝え、発言で議論の活性化に貢献する。
・他者への配慮:他者が議論に参加しやすいように配慮を示す。

終わりに
日本の新卒採用を取り巻く環境は日々変化し続けており、選考フローもあわせて変えていく必要があります。求める人材を見極めるためのグループ討議として対面とオンラインのどちらが適切か、そもそも本当にグループ討議が必要なのか?この機会に、是非皆さんの所属するグループで討議してみてください。 新卒採用であっても中途採用であっても採用活動を行う際には採用基準として「求める人物像」を定義しておくことが重要です。選考時の評価だけでなく、母集団形成の方法にも影響を与える採用の指針といえます。一方、企業の採用担当者からは、このような声がよく寄せられています。
・「求める人物像」が、いつどうやって作られたものなのか分からない。
・古すぎて今の会社とはマッチしない。
・定義があいまいで、評価者間、また選考プロセス間で、評価がぶれてしまう。
ビジネス環境の急激な変化から、こうした課題は年々増加しており、採用基準見直しのニーズは高まっています。
とはいえ、採用基準の設計は「優先度は高いが、具体的なやり方がわからず、手を付けられない」「現状でも運用できているから、今は直近の業務に手を回したい」といった感覚をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、パーソナリティ検査OPQを活用し、手軽に行える採用基準の見直し方法についてご紹介します。

1.入社時データの分析
採用選考でOPQを利用しているのであれば、そのデータを用いた分析が可能です。パフォーマンスを示すデータ(人事評価や営業成績など)とOPQデータを突き合せることで、職種や階層ごとにパフォーマンスに影響を与えるコンピテンシーを特定できます。高業績者に共通する特徴を明らかにする他、自社内で全体的に高い水準を示すコンピテンシーを確認することで、各職種や階層の職務適性だけでなく、組織風土に対する適性を判断する参考情報としても活用できます。
分析はExcelなどの表計算ソフトを用いる他、当社が提供している無料の分析ツールを使って簡単にOPQデータと評価の関係性を特定することもできます。分析の方法にご不明点がある場合は、ぜひ当社のコンサルタントにお尋ねください。
2.カードソート・ディスカッション
当社が実施する人材要件定義のためのインタビュー手法の一つです。現職者や管理者、人事部などを対象に、4~6名1グループでディスカッションをしていただきます。人材要件定義の対象となる部門の役職者が参加することが望ましいです。9枚のコンピテンシーカードを用いてディスカッションを行います。手順は以下の通りです。
1.9枚のカードにそれぞれ書かれた各コンピテンシーの定義を参照し、業務においてそれぞれどの程度必要かを検討します。
2.9つのうち、「必要ない」と思われるコンピテンシーを3枚捨て、6枚に絞ります。
3.残りの6枚を、「必要不可欠なもの」3枚、「あると望ましいもの」3枚に分けていきます。
このカードソートの過程でディスカッションを行い、判断の根拠を明確にしてゆきます。全員で同じツールを用いてディスカッションを行うことで、人材についての共通認識・共通言語を得やすくなり、堂々巡りや認識のずれを防ぐことができます。当社の専門家がファシリテーターを務めます。
3.アンケート
ボードメンバーや管理職者、現場のハイパフォーマーなどにアンケートを実施することによって、採用要件を定義することも可能です。 コンピテンシーの定義が書かれたアンケートを配布し、業務内容に照らして必要だと思われる順にコンピテンシーの重みづけを行っていただきます。重みづけやその理由を集計し、部署ごとに必要な適性を特定します。
「1.入社時データの分析」は定量手法と呼ばれ、データに基づいてこれまではどんな人材が活躍していたかを特定できます。「2.カードソート・ディスカッション」「3.アンケート」は定性手法と呼ばれ、これからどんな人材が必要になるかを検討できます。定量手法と定性手法を組み合わせることで、客観性と主観性、これまでとこれからの両方の要素を取り入れた採用基準を作ることができます。
現職者だけでなく管理職者の特徴の分析を行ったり、経営層に今後の経営方針も含めたインタビュー(ビジョナリー・インタビュー)を行ったりすることで、より長期的な視点で適切な採用基準を設計することもできます。
採用基準作成ファーストステップとして、本コラムがお役立ていただければ幸いです。 SHLのキーテクノロジーであるOPQをはじめとした適性テストは、今やあらゆる企業で選抜・育成などを目的に利用されています。
実は、このようなテストの歴史は旧約聖書の物語まで遡ることが可能です。登場人物の一人であるギデオンは、自分の軍の志願者が多すぎるという問題に直面していました。そこで彼はまず、戦争の危険性を説くことで志願者の選抜を行いました。次に「川の水を飲ませる」という試験を課し、周囲を警戒しながら水を飲むという行動を取った者を評価しました。
企業で最初にテストが用いられたのは、第一次世界大戦勃発後です。大戦の中で多くの人々を選別することにおいて、テストは重要な役割を果たし、それが後の「企業のニーズにより適したテストの開発」につながりました。
今回は、OPQがどんな目的で、どのような調査・研究を経て開発されたのか、ご紹介できればと思います。
OPQ開発の目的
OPQは1981年から1984年にかけ、イギリスで開発されました。それまでイギリスには、「企業の職業場面に使うことを目的としたパーソナリティ検査」というものは存在していませんでした。現存する多くのテストは、学生グループをトライアルの対象としていたこと、また臨床心理学の観点から開発されていたため、職業場面での利便性はやや欠けていました。そこで、できるだけ心理学の専門用語を使わず、人事担当者が広く扱えるような職業場面用のテストとして、OPQの開発がスタートしました。
開発のプロセス
質問紙形式の心理測定検査を開発する際の、科学的アプローチに即したプロセスが設計されました。官民を問わない複数組織に協力を依頼し、「優秀者に共通する行動は何か」という調査・検証を経て、尺度を形成していきました。その後、各尺度を測定するための質問項目を作成し、尺度との相関を算出する、というサイクルを繰り返しました。

① パーソナリティモデル案作成
開発協力企業の助力を経て、人事評価データの収集や管理職層へのインタビューを行いました。
【収集したデータ】
・職業場面に関連する全ての検査とパーソナリティモデル
・パーソナリティ尺度と職務業績間の関係に関する妥当性データの検証
・人事評価データ(アセスメントセンターの実施や面接の判断基準・人事考課項目など)
【インタビュー調査】
管理職に対してレパートリー・グリッド調査(優秀社員と非優秀社員を比較しながら、成功に必要な要素を明らかにしていく手法)を行いました。この調査から約800の構成概念が抽出され、検査項目のプールが作成されました。
上記のプロセスに約2年が費やされ、45尺度のパーソナリティモデル案が作成されました。
② 形容詞リストの作成
各尺度を測定する項目を作るため、形容詞リストを作成します。第一次モデル案の各尺度について6個ずつ、さらに重要であると考えられた70個を追加し、合計で340個の形容詞リストを作成しました。
③ 形容詞リストトライアル
開発協力企業の社員約500人を対象にトライアルを実施。データ分析結果や専門心理学者の意見を踏まえ、32尺度が選定されました。
④ 質問項目作成
尺度の検証のため、2000個以上の項目が執筆されました。さらにその中から、【曖昧でないこと】【一般的な職業に関連すること】などの基準に基づいて、項目トライアル用に1500項目が選択されました。
⑤ 項目トライアル
1500項目を4種類の形式に分け、開発協力会社の社員700名以上に対してトライアルを行いました。
⑥ 項目分析
項目分析によって、各項目とすべての尺度との相関を計算しました。項目選択においては【自尺度との相関が高く、かつ、他尺度との相関が低いこと】を、尺度選択においては【各項目が、全体として同じ概念を測定しているか(内的整合性の高さ)、値が異なる版でも一貫しているか】を基準としました。基準に満たない項目を排除し、最終モデル(尺度)が完成しました。
⑦ 標準化トライアル
1983 年 11 月から1984 年2月にかけて、さらに幅広い職業層からデータを取るため、サンプル1000人を対象に第二次トライアルを実施しました。再度項目分析を実施し、項目を精選。最終的な信頼性の検証を行い、標準化された最終版が完成しました。現在も妥当性を担保できるよう、日々研究を積み重ねております。
日本語版のOPQは1988 年にデビューしました。英語版の翻訳からスタートし、日本独自のトライアルと項目分析を繰り返すことによって英語版と同等もしくはそれ以上の信頼性と妥当性を確保した検査が完成しました。
おわりに
このように、OPQは国や文化の影響を受けない普遍的な職務行動をとらえるアセスメントツールとして設計され、多くの言語に翻訳・翻案されてきました。より詳しい解釈や、学術的なバックグラウンドにご関心がある方は、是非OPQ解釈コースやパーソナリティ&アビリティアセスメントコースの受講をお勧めします(申し込み受付中のトレーニングはこちら)。
少々マニアックなテーマではありましたが、当社の強みでもある「グローバル展開」と「妥当性」についてより知識を深める機会となれば幸いです。