近年、アメリカを始めとして「大量自主退職時代(Great Resignation)」と呼ばれる大規模な離職が発生しています。この背景として推測されているのが、まずコロナ禍後の景気の急回復による転職市場の活性化、もう一つが従業員による働き方の見直し、キャリア観の変化です。日本でも、規模は違えど同様のトレンドが発生する可能性があると予測する声があります。SHLグループのe-book「How to Retain Your Workforce: Tackling the Talent Crisis at Its Core(従業員を維持する方法:人材難を根本から解決するために)」では、この大量自主退職時代について触れ、この人材不足の根本的な解決策は、報酬の引き上げや働き方の改善よりも、キャリア開発の機会であるとしています。本コラムでは、この問題に適性検査がどのように貢献できるのかを考えます。

キャリア開発とエンゲージメント

先述のe-book「How to Retain Your Workforce: Tackling the Talent Crisis at Its Core」では、退職の原因の1位はキャリア開発と昇進の欠如であることを指摘し(※1)、社内公募制の存在を対象者のおよそ半数しか知らないことや(※2)、自分の能力が生かされていないと感じる社員は転職活動をする可能性が10倍以上高いこと(※2)、社内流動性に優れた組織は約2倍の期間従業員を維持できることを挙げ(※3)、一部の社員だけに注目したタレントマネジメントの裏でキャリア開発のサポートが追いつかない社員が退職している可能性を主張しました。この全社員を対象にしたタレントマネジメントという発想は、どちらかというといわゆるメンバーシップ型雇用を特徴とする日本企業においてよく聞かれるものですが、ジョブ型雇用の海外企業においてもこのような議論が生じるところに人材流出の深刻さがうかがえます。

社員のキャリア開発のために企業は何ができるか

さて、キャリア自律の機運が高まる日本企業においても、キャリアの行き詰まりによる人材流出は今後増加する可能性があります。終身雇用が崩壊する一方で必要勤労年数はますます長くなる中、常に自身の市場価値を意識し、より育成に投資する企業やより新しい経験を積める企業へと転職する人材は増える可能性があります。人材流出をせき止め、従業員が健全なキャリア展望を持って働けるようになるために、適性検査はどのような貢献ができるでしょうか。
e-bookでは、94%の従業員は学習支援に投資する企業であれば長く勤めると回答している(※3)ことを挙げ、自社が能力開発のために最適な場所であることを従業員に示す必要があるとまとめています。そのためには、従業員の適性や関心、専門性を考慮したキャリアプランを提示し、そのためにどのような能力開発が必要かという示唆(及びそれを実行する機会やリソース)を従業員に提供する必要があるのです。

具体的には、以下の3ステップが必要です。

(1)人材の可視化により、あらゆる人材の特徴、スキルなどを把握する タレントマネジメントシステムなどを活用し、企業内のあらゆる人材の特徴、経歴、コンピテンシー、スキルなどを人材データとして管理・分析します。そして、各職種に必要なコンピテンシーやスキル、優秀者の持つ特徴などを把握しておきます。

(2)社員一人一人のキャリアの可能性と、そのために必要な能力開発についてすり合わせる
従業員一人一人のキャリア志向性と組織としての能力開発方針をすり合わせるために、上記のような職種ごとの人材の統計情報をキャリア面談や1on1ミーティングなどに取り入れます。本人のキャリア志向性を確認するとともに、適性検査のフィードバックなどを通じて、経験と適性にマッチした社内での今後のキャリアとそのための能力開発について、長期的な展望を話し合います。
この際のキャリアプランは、必ずしも定型のものである必要はありません。たとえば同じように優秀な営業社員でも、マネジメントに関わるコンピテンシーやマネジメント志向性が高ければ営業のマネジャーを目指すのもよいですし、企画や分析に関わるコンピテンシーや専門領域を広げたいという志向性が強ければ、現場経験を生かしてマーケティング業務に異動するのも良いでしょう。そして、それぞれの場合で今後必要な能力開発についてすり合わせる必要があります。

(3)能力開発およびキャリアチェンジの機会を提供する
もっとも重要なのがこのステップとなります。能力開発に関してはe-learningや各種研修をはじめ、社内勉強会や部署横断プロジェクト、各種の越境学習などを柔軟に取り入れ、企業のサポートのもと学習やスキル習得を進められる体制を整える必要があります。同時に、希望の職種にチャレンジするための制度(たとえば社内公募制度や社内FA制度、一定期間他部署で働く社内インターン制度、他部署での副業を認める社内副業制度など)も必要でしょう(そうでなければ、成長した社員は社外に居場所を求める可能性があります)。


最後に

すべての職種でDXが進む昨今、企業側の要請するリスキリングと従業員のニーズによるキャリア開発をマッチさせることも大きな相互作用を生むでしょう。以前は「能力開発をしてもつけるポストがない」という問題意識もよく聞かれましたが、デジタル化による新規ビジネス創出のチャンスは加速度的に高まっています。キャリアに行き詰まりを感じる社員と、人手不足に悩む企業のニーズをマッチさせる一連の仕組みこそがタレントマネジメントといえます。ぜひ社員の適性情報も、重要なキャリア選択の資料としてご活用ください。

※1 McKinsey, 2022, 2022 Great Attrition, Great Attraction 2.0 Global Survey
※2 Gartner, 2022, Gartner Recommends Organizations Confront Three Internal Labor Market Inequities to Retain Talent
※3 LinkedIn, 2022, 2022 Workplace Learning Report 「心理的安全性(psychological safety)」は、1960年代から組織研究者の間で提唱され始め、1999年に組織行動学の研究者エイミー・エドモンドソンが発表したチーム学習に関する研究や、2012年から行われたGoogle社のチーム生産性に関する研究「プロジェクト・アリストテレス」により注目を集めた概念です。本コラムでは、心理的安全性の概要と、心理的安全性を確保するためにできることをご紹介します。

心理的安全性とは

心理的安全性(psychological safety)の概念は、ワークチームの学習行動とパフォーマンスの促進要因を探索したハーバード大学のエイミー・エドモンドソンの研究で取り上げられました。ここで言及された心理的安全性とはチームレベルの概念であり、「このチームは対人関係においてリスクをとっても安全であるという信念の共有」を指します(Edmondson, 1999)。つまり、自分の言動によってチームから嫌われたり罰されたりすることはないだろう、とメンバーそれぞれが自信を持っている状態のことです。信頼と似ていますが、それ以上に、それぞれが「安心してあるがままの自分でいられる(comfortable being themselves)」ような関係性のことを指します。
この研究では、チームの心理的安全性はチームの学習行動を促進し、さらにこれを媒介してチームのパフォーマンスを高めることが実証されました。

この「心理的安全性」が近年脚光を浴びたのは、Google社が行ったチームの効果性に関する研究「プロジェクト・アリストテレス」によってでした。180のチームを対象とし、ヒアリングや継続的な調査データ、メンバーの特徴やデモグラフィック変数を考慮した分析の結果、チームのパフォーマンスに最も影響を与えたのは、まさにこの心理的安全性だったのです(Googleによる調査の概要はこちら)。

心理的安全性は、なぜ必要か

さて、「心理的安全性」という概念が普及した一方、そもそもなぜ心理的安全性が必要なのか疑問に感じている方も多いでしょう。これを理解しない限り、やみくもに職場の親睦を深めようとするなど誤った施策がとられる可能性があります。心理的安全性のある職場とは、「仲の良い職場」のことではありません。「メンバーがいかなる率直な意見を述べても、排斥されたり黙殺されたりしない職場」を指します。

心理的安全性は、特にチームの学習、つまりメンバーが知識を共有し、改善案を発案し、ミスや失敗から学び、新製品やサービスを開発するなど、チームが学習を繰り返して変化に適応し成長するために有効な概念です(Edmondson & Lei, 2014を参照)。したがって、もっとも心理的安全性が求められるのは、新規事業の立ち上げや新しいプロジェクトに関するチーム、最先端技術の現場で働くチームなど、VUCAの中で絶えず学習し変化する必要のあるチームといえるでしょう。これがまさに今、イノベーションを求める日本企業において心理的安全性が重要視されている理由なのです。

心理的安全性のために、多様性を認め、発揮する

さて、心理的安全性を高めるために、エドモンドソンはその著書「恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす」の中で様々な方法を挙げています。リーダーの仕事としては、謙虚さを示してメンバーに意見を求めることや意見に感謝すること、挑戦や失敗を受容すること、最終目的を明確にして率直な発言を促進するよう職務を再定義することなどが挙げられています。メンバーとしては他者の意見に熱心に耳を傾け質問をすること、「自分の弱さをさらけだす」ことなどが推奨されています。

これらはすべて、「多様性が存在することと、その価値を認める」ことであると言い換えられるのではないでしょうか。心理的安全性の主な障壁には、「無能と思われたり、非協力的であると思われたりすることへの不安」、いわゆる評価懸念があります。しかしVUCAの時代において、イノベーティブな課題に取り組むチームであればなおさら、誰の意見が正しく誰の意見が優れているか、どうして即座に判断できるでしょうか。多様なメンバーを抱えるチームにおいて、反対意見や慎重すぎる懸念、従来の慣例からすればリスキーな提案など、「協調的でない」意見が出ることは当然のことです。それはメンバーが心理的安全性を獲得し、自身の個性を発揮している証拠なのです。

チームや組織がいかに多様性に富んでいるか(もしくは富んでいないか)を確認したい場合、ぜひ人材可視化を行ってください。きわめて独創的なメンバー、心配性なメンバー、上昇志向の強いメンバーなど多様な個性が存在することが確認できたら、「意見は特にありません」で終わる会議に疑問を覚えるかもしれません。

引用文献・参考文献
・Edmondson, A. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative science quarterly, 44, 350-383.
・Edmondson, A. C., & Lei, Z. (2014). Psychological safety: The history, renaissance, and future of an interpersonal construct. Annual review of organizational psychology and organizational behavior, 1, 23-43.
・恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす エイミー・C・エドモンドソン 著 野津智子 訳/村瀬俊朗 解説 英治出版 2021年発行
新年度から半年が過ぎようとしており、評価面談(フィードバック面談)の時期を迎える企業も多いのではないでしょうか。しかし、評価面談がただの評価結果通達の場となってしまっては効果的とはいえません。評価面談は、職務成果に対する評価者・被評価者間の認識をすり合わせ、社員の強みをさらに伸ばし弱みをカバーするための建設的な行動計画(アクションプラン)を立てるための場として活用すべきです。
そこで今回は、効果的な評価面談のポイントと、評価面談において適性検査を活用するメリットについてお伝えします。

評価面談の準備

まず、評価者は評価面談に臨む前に、以下のような資料を用意します。
・被評価者の所定期間における業務の評価結果と、その根拠に関する資料・・・自身以外の評価者からの評価についても説明ができるよう、事前に情報収集を行ってください。
・面談内容を記録するための媒体・・・記録は被評価者の了承のもと行ってください。
・面談の大まかな計画と、触れるべき事項や被評価者への質問等のリストアップ・・・時間を効率的に活用するために、事前に話す内容をある程度まとめておくことが重要です。面談内容の一般的な流れについては次項で後述します。
・(可能であれば)適性検査や360度評価など、アセスメントの結果帳票・・・アセスメントは、パフォーマンスの原因や根拠として客観的な情報をもたらし、課題の特定や強みの進展に役立ちます。

評価面談の基本的な流れ

評価面談における一般的な流れをご紹介します。
① 面談の概要説明とアイスブレイク
最初は雑談等のアイスブレイクから始め、リラックスした環境を作ります。面談の目的、内容、おおよその実施時間等について、最初に説明します。
② 被評価者の自己評価のヒアリング
評価結果を通達する前に、業務成果に対する自己評価と、その根拠についてヒアリングを行います。もし、課題感や相談があれば、ここで対応します。
③ 評価結果の説明
評価結果と、その根拠について説明します。もし被評価者から質問があれば対応します。最初にポジティブな結果から伝えるよう心掛けてください。
④ 評価に対する感想のヒアリング
評価に対してどのように感じたか、被評価者の所見を求めます。自己評価と照らし合わせ、疑問や納得のいかない点があれば共有するよう促してください。
⑤ (可能であれば)適性検査の活用
適性検査の結果がある場合、今回の評価の背景となる行動傾向について、被評価者と一緒に読み解きましょう。詳しくは、次頁で解説します。
⑥ まとめと行動計画(アクションプラン)の立案
今回の評価結果を受けて今後どのような活動をするか、アクションプランや目標を作成しましょう。なるべく具体的、測定可能、達成可能、現実的、期限付き(SMART)な目標を策定しましょう。

評価面談で適性検査を活用するメリット

ここまで基本的な評価面談の進め方についてお伝えしてきましたが、評価面談において適性検査の結果を参照(もしくは被評価者にフィードバック)することは非常に有効です。なぜなら、職務成果の裏にある行動傾向について、適性検査が新たな情報をもたらす可能性があるためです。

たとえば、「改善・創意工夫」といった点で低い評価のついた被評価者の例を挙げてみましょう。まず、そもそも当人は「改善・創意工夫」といったことが得意なパーソナリティなのか、適性検査の結果を参照します。
もし、「独自の意見を持っている」「変化志向が高い」「オーソドックスなものを嫌う」「創造的である」など、明らかに革新型の人材であれば、本来得意であるはずの改善や創意工夫を妨げている障壁があるはずです。たとえば、心理的安全性を確保できていないためアイデアを表出できない、目の前の雑務に追われて+αの活動ができない、職場に保守的な風土があり意見が通ると思えない・・・などです。この場合、得意なはずの行動を妨げているボトルネックを解消することが、具体的なアクションプランとなるでしょう(このアクションプランは、当人のみならず、上司や職場全体の行動改善につながる可能性もあります)。

反対に、パーソナリティ上、新しいことを発想したり改善点を見つけることが不得意であるというケースもあります。その場合、やみくもに「〇月までに〇点の業務改善案を出す」等の目標を掲げても効果は薄いでしょう。むしろ、「定期的な業務改善会議をオーガナイズする」、「他者のアイデアの実現をサポートする」など、本人が革新性を発揮しなくても職場の改善につながるような行動をすることが、建設的なアクションプランといえるでしょう。
いずれの場合も、適性検査の結果だけを鵜呑みにせず、当人はどう感じているのか、何を解決することが成果につながりそうかを、よく話し合うことが重要です。

評価面談で適性検査を活用する際の注意点

最後に、評価面談で適性検査を活用する際の注意点について申し上げます。
評価は会社に貢献した事実に基づいて客観的に行うべきものです。適性検査結果は本人の申告に基づく本人の特徴を表すものですが、その結果は会社に貢献した事実そのものではありません。
評価自体が適性検査結果の影響を受けることは決してあってはなりません。また、被評価者に適性検査が評価結果に影響したとの疑念を持たせることも決してあってはなりません。
評価は職務成果に基づき正しく客観的に行い、その職務成果を生み出した行動のもとになる特徴を紐解くために適性検査を活用するということを念頭においてください。

まとめ

以上、一般的な評価面談(フィードバック面談)の流れと、評価面談における適性検査の活用についてご紹介しました。
当社のパーソナリティ検査OPQを被評価者本人にフィードバックする方法については、こちらの無料ダウンロード資料をご覧ください。また、OPQの解釈についてより詳しく知りたい方は、こちらの無料講座(オンデマンド)をご受講ください。

新卒採用の早期化が進み、リクルーターを用いた学生との早期接触も採用における重要な戦略となりました。さて、このリクルーターについて、どのような役割を期待し、どのような事前トレーニングを行えばよいのでしょうか。
「現場の社員が業務の合間に稼働しているので、人事から口を出しづらい」「実際の活動内容が見えず、指針の統一が図れているのか不安だ」そんなことをお考えの人事担当者もいらっしゃると思います。本コラムでは、日本エス・エイチ・エルが考えるリクルーターの役割と、そのトレーニング方法について解説します。

リクルーターの役割

まず、新卒採用において学生と接触する社員には、リクルーターであれ面接官であれ、以下の2つの役割があります。

① 広告塔としての役割
自社の魅力を学生に伝え、疑問に答え、学生を入社へと動機づける役割です。学生と接する社員は、全員が自社のブランディングを担っていることの自覚を持つ必要があります。リクルーターは、面接官と比べ、この役割を多く期待されているといえるでしょう。したがって、自社についての理解、学生の関心についての理解、学生を動機づける方法、社会人として適切なふるまいなどの知識が求められることは言うまでもありません。

② 審査員としての役割
もう一つは、自社に入社する人材として、学生の価値観、能力、キャリアの志向性などがマッチしているかを見極める、審査員としての役割です。この役割は主に面接官が担っていますが、リクルーターも学生の本音や姿勢に触れ、自社へのマッチ度合いを判断する役割を担っていることがあります。この場合、面接官のみならず、リクルーターについても、自社の採用要件への理解や、学生の話を引き出す技術、学生のコンピテンシー(業務成果につながる行動傾向)を見極める力が必要になるといえます。

リクルータートレーニングのために必要なこと

それでは、リクルータートレーニングにはどのような要素が必要でしょうか。以下に、日本エス・エイチ・エルがご提供しているリクルータートレーニングの流れをご紹介します。

① 学生と接する上での必要知識に関する講義
先述の通り、リクルーターは人事部員と異なり、採用活動を本業としていないケースが多いです。したがって、リクルーターに求められる望ましい行動やマナー、対話の仕方、意欲形成のポイント、面談時の注意点などをまず知識として習得していただきます。また、自社の採用方針や、求める人物像などについてもここで周知し、認識を統一する必要があります。これにより、リクルーターの活動の質を一定に担保し、リクルーター自身の不安も低減することができます。

② 自社の魅力を伝えるためのプレゼン演習
次に、自身の経験を棚卸しし、自社の魅力を学生に伝える練習をしていただきます。この演習はペアやグループで行い、学生役の方からどのように感じたかフィードバックを受けることが有効です。この演習によって、学生と対話する内容の整理や工夫など、事前準備を進めることができます。

③ 学生との面談を模したロールプレイ演習
最後にロールプレイ演習を行います。学生役の社員の方と模擬面談を行っていただき、相手を動機づけたり、質問に答えたりする練習をしていただきます。この対話内容については、学生役の方だけでなく、日本エス・エイチ・エル認定アセッサー(評価者)もフィードバックを行います。もし、間違った情報を伝えていたり、主観的に語りすぎていたり、誤解を招く表現をしていれば、ここで修正することができます。また、自社の他の参加者から「このような質問もよく出るよ」「自分はこのように答えているよ」といった情報を収集することもでき、リクルーター活動の質をより高めることができます。

最後に

リクルーターは面接官よりも学生に近い立場で接するからこそ、より高度な自社理解や対話技術が求められるといえます。日本エス・エイチ・エルでは、面接官トレーニングと同様にリクルータートレーニングを行っておりますので、もしご検討の場合はこちらからお問い合わせください。貴社がリクルーターに求める役割などをヒアリングの上、適切な内容を盛り込んだトレーニングをご提供させていただきます。 人生100年時代と呼ばれ、終身雇用が事実上崩壊したとされる現代において、社員が自律的に専門性やスキル、キャリアを育んでゆく「キャリア自律」の重要性が叫ばれています。これまで組織依存のキャリア形成に従事してきた従業員にとっては、「これからは自己責任」と突然ハシゴを外されたように感じるかもしれません。また、自由なキャリア形成を従業員が組織外で行うことで、人材の流出が起きることを危惧する組織もあるかもしれません。しかし、キャリア開発の方向性を組織と個人がすり合わせ、相互にメリットを提示することで、一人一人が主体性を持って働けるようになるだけでなく、組織が多様な専門性やスキルのある人材を確保し、ビジネスの発展に繋げることも可能なのです。

社会情勢の急激な変化やテクノロジーの急発展により、数年先の予測も困難である現代においては、個人が現時点での戦略にもとづき単一のキャリアを選択するようなキャリア形成自体が困難になっています。そこで再注目され始めたのが、1976年にアメリカの心理学者ダグラス・ホールが提唱した「プロティアン・キャリア」です。本コラムでは、プロティアン・キャリアの概要と、個人が多様なキャリア形成をするために組織ができることに触れます。

プロティアン・キャリアとは

プロティアン・キャリアとは、個人が社会環境の変化や個人の価値観に合わせて柔軟に適応する「変幻自在なキャリア」のことであり、ギリシア神話に出てくる思いのままに姿を変える神プロテウスに語源があります。プロティアン・キャリアは、組織よりもむしろ個人が主体となって形成するものであり、重要な二つの軸があります。

① アイデンティティ:自分の価値や興味に基づいており、それが人生を通じて統合されている程度、つまり「自分らしさ」のこと。社会や組織のニーズに迎合するばかりで一貫した自分らしさを感じられないキャリア形成では、やりがいを感じにくいことは想像に難くありません。

② アダプタビリティ:変化への適応力のこと。自身の興味・関心に沿ってはいるが、社会的ニーズの乏しい職業に就こうとすると、生計を立てることが難しくなります。ホールによれば、アダプタビリティとは、適応コンピタンス(アイデンティティの探索、変化への反応学習、行動とアイデンティティの統合力)と適応モチベーションのかけ合わせであるとされます。

キャリアは急速に発達するものではありません。次のキャリアを見定め、長い年月をかけて転身のために準備をする方法だと、準備が整った時点での社会的ニーズがどのようになっているかわからないというリスクがあります。副業や兼業を解禁する企業が増加してきた現在、二足・三足の草鞋をはくといった多角的なキャリア形成はずいぶん身近になりました。自身の専門性を幅広にとらえ、なるべく広範囲にキャリアの芽を用意しておくことは、VUCAの時代におけるキャリア形成に不可欠な戦略といえるでしょう。

従業員のキャリア開発のために組織ができること

こうした従業員の自発的なキャリア形成に対し、組織が無関心であったり、人材の流出をおそれてネガティブな態度を示すことは、「これからの人生を共にすることのできない会社である」と従業員にみなされる可能性を高めるといえます。反対に、個人のニーズと組織のニーズをすり合わせる機会を積極的に設けたり、キャリア発達を様々な側面で支援したりすることは、今後従業員のエンゲージメントにより大きな役割を果たすのみならず、組織の発展の可能性を高めるといえるでしょう。

組織ができるキャリア開発支援は、いわゆるキャリア開発研修といったアダプタビリティを高めるための教育プログラムの提供、社内公募制度や社内FA制度など自身のキャリアを組織内で探索するための制度の導入、副業・兼業の推進、自己研鑽コスト(セミナー参加や教材の費用など)の負担など、多岐にわたります。また、現在多くの企業で実施されている1on1ミーティングも、自律的なキャリア支援策の一つです。ホールによれば、プロティアン・キャリアの形成にはアイデンティティの軸が不可欠となります。ただひたすら多くのスキルや資格を獲得することが柔軟なキャリアに繋がるのではなく、現在従事している職務を超えて、一貫した自身の興味・関心、強みの範囲を把握することが、キャリアの幅を広げるための第一歩となります。したがって、1on1ミーティングでは「何を行っている時が楽しいか」「どのような知見を今後深めたいと思っているか」「興味のある分野はあるか」「どのような働き方が理想的か」など、現在の職務を離れて個人が自身のアイデンティティに気づく手助けを行うことをお勧めします。

なお、個人のアイデンティティの確立には、内省だけではなく他者からのフィードバックも重要な役割を果たします。キャリア支援のための情報提供の一環として、適性検査のフィードバックもお試しください。本人の自認する特徴や適性、上司や監督者の見解、適性検査などのツールから読み取れる特徴や適性などを組み合わせ、多角的に自己理解を行うことで、本人や周囲の気づいていなかったキャリアの道筋が現れることもあります。ご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードしてください。

SHLのパーソナリティ検査OPQは30個のパーソナリティ因子から成り、その多彩な因子をもってあらゆる職業の適性を予測することに成功してきました。しかし、人事課題によっては、因子が多いためにわかりづらさが生じることもあります。
たとえば、社内のどこにどんな人材がどれくらいいるのかを定量的に把握する、「人材ポートフォリオ」を作成したい場合などです。人材ポートフォリオがあれば、「今は少ないが今後必要なタイプの人材を採用する」「〇〇さんに近いタイプの◎◎さんを後任とする」「〇〇部署の業務バランスをとるために△△タイプの人材を新たに配置する」などの人事戦略がとりやすくなります。
本日は、この人材ポートフォリオづくりに最適な統計分析手法である主成分分析と、それを用いたSHLの人材マッピングサービスについてご紹介します。

主成分分析とは

まず主成分分析とは、データの情報量を保ちながら、数多くの変数を縮約し、なるべく少ない変数(これを主成分といいます)で表そうとする分析手法です。
主成分分析では、データのばらつきが大きくなる情報量の高い変数、つまり「個人の違いをもっとも説明できる変数」を主成分として少数抽出します。たとえば、A社にはクリエイティブな人材からクリエイティブでない人材まで幅ひろく含まれるが、全員がストレスに強い、という特徴があったとしましょう。その時、「クリエイティブかどうか」という変数には情報量が多いですが、「ストレスに強いかどうか」という変数には情報量が少ないことがわかります(なぜなら、全員が一様に高いので、個人の違いが説明できないからです)。このような集団では、まず個人を説明するための主成分として「クリエイティブかどうか」という変数が採用され、次にその変数で説明できない個人の違いを説明できる主成分(たとえば、「エネルギッシュかどうか」など)が抽出されます。
また、ここで抽出された「クリエイティブかどうか」という主成分には、様々なパーソナリティが含まれます(たとえば、ゼロから何かを生み出すのが好きか、変化が好きか、オーソドックスなものが嫌いか・・・など)。まとめると、主成分分析とは、「データの情報量を保ちながら、多数の変数をまるめ、データの分散をもっとも説明できる少数の変数に縮約する分析」であるといえます。
この主成分分析を使って、30個のパーソナリティを2変数まで縮約すれば、2次元平面上に人材をならべて可視化することが可能になるわけです。

主成分分析を使った4象限へのマッピング

SHLでは、この主成分分析で2軸を抽出し、4象限上に人材をマッピングすることで、個々人の人材特性を可視化する分析サービスを行っています。このマッピングを人材ポートフォリオとして活用することで、どの部署にどのような人材が多いか、誰と誰が似たような性質を持ち、誰と誰が正反対の性質を持つ傾向にあるか、また今自社に欠けているタイプはどのような人材かといったことを、視覚的に理解しやすくなります。



このマッピングでは、端にプロットされた人物ほど、特定の行動傾向が強い(またその対極にあたる行動傾向が弱い)「トンガリタイプ」であるといえます。逆にマップの真ん中に位置する人物ほど、(その2軸においては)強い傾向を示さない「バランスタイプ」であると言えるでしょう。
※注意:このプロットでは、その組織においてもっとも個人を識別しやすい2軸のみを用いています。その他の軸で強い特徴を示す個人もいますので、真ん中に位置する人材が「すべてにおいて平均的な」人材ではありません。ご注意ください。
この人材ポートフォリオは、特性を生かした異動・配置、登用、バランスの良いチームビルディング、採用計画立案など様々な人事施策に活かすことが可能です。
参考事例:森永乳業の適材採用・適材配置を加速させた日本エス・エイチ・エルのアセスメント

おわりに

本日は多数のパーソナリティを少数にまとめる主成分分析と、ここで抽出された2軸を用いたマッピングによる人材ポートフォリオづくりについてご紹介しました。
人材データ分析にはこの他にもたくさんの手法がございます。当社の分析サービスにご興味をお持ちの方は、ぜひ人材データ分析をご覧ください。 近年、新規事業創造人材など従来と異なるクリエイティブな発想を持つ人材に注目が集まっています。しかし、クリエイティブな人材とはどのような考え方を持つ人材なのでしょうか?今回は、今求められる能力として脚光を浴びる「クリエイティビティ」に関して、興味深い研究知見をご紹介します。

クリエイティブな人材は不正行為を働きがち

Gino & Ariely (2012)は「クリエイティビティのダークサイド(The dark side of creativity)」というタイトルの論文において、クリエイティビティの高い人材は、成果の誇張や嘘による報酬の割り増しなどの不正行為を行いやすいことを実証しました。さらに、職場をフィールドとした別の研究(Vincent & Kouchaki, 2016)では、本人が自身のクリエイティビティを稀有な才能であると強く自覚しているほど、成果の虚偽報告や会社サービスの私的利用などの不正をする傾向が強まりました。クリエイティビティのポジティブなイメージに逆行する研究結果ですが、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

クリエイティビティとは、ルールに縛られないこと

Gino & Wiltermuth (2014)は、クリエイティビティと不誠実な行動をつなぐのは「ルールに縛られないこと」であることを示しました。「自分はルールに縛られない」という認知が高まると、人はクリエイティブになり、かつ不誠実な行動も増えるのです。そのため、あえてズルをするような不正行為を行うと、その後の創造性課題の成績が高まるという効果も示されました。
つまり、クリエイティブな人材は程度の差はあれルールを破ることへの抵抗が少なく、常識を破ればイノベーションを、規則を破れば不正を起こすという構造が見えてきたのです。このような行動傾向によってクリエイティブな人材が組織の支持を得づらいことが、組織におけるイノベーションの阻害要因にもなっているのではないか、という指摘もあります(古川, 2018)。

感情知能がクリエイティビティの暴走を止める?

一方で、こうした「悪意あるクリエイティビティ」を抑止する要因について、興味深い知見がありました。Harris, et al. (2013) によれば、感情知能の低い人ほど、「悪意あるクリエイティビティ」によって課題を解決しようとする傾向があるそうです。感情知能がどのプロセスで「悪意あるクリエイティビティ」を抑止するのかは不明ですが(思いつかないのか、表現しないだけか)、周囲の人の感情を認識しづらい、もしくは軽視する傾向のある人ほど、クリエイティビティの悪用に注意が必要かもしれません。

最後に

古川(2016)の調査によれば、クリエイティブな人材は周囲との間に「壁や溝の認知(自分の考えは周囲に理解されないという思い)」を抱きやすいことが示されています。また、この壁や溝の認知を緩和するのは、「ともに見るもの(共有している大きな目標など)」の存在であるということです。クリエイティブな人材の活躍には、周囲の感情を理解し尊重しようとする姿勢とスキル、また様々な考えを持つ人材を包括する大きな目標が不可欠であるといえそうです。
なお、日本エス・エイチ・エルの万華鏡30には、新規事業創造などに適性のある「アントレプレナー適性」のポテンシャルとともに、感情知能の予測値も示されます。イノベーション人材の育成が急務となる中、このような視点で能力開発を考えてみるのもいかがでしょうか。

引用文献
古川久敬 (2016). 創造的アイディアの履行における抑制および促進要因の分析 ー創造革新性パラドックスの克服に向けてー. 日本経済大学大学院紀要, 4, 31.
古川久敬 (2018). 組織行動研究の展望: パラドックスを抱えた組織と個人を意識して. 組織科学, 52, 47.
Gino, F., & Ariely, D. (2012). The dark side of creativity: original thinkers can be more dishonest. Journal of personality and social psychology, 102, 445.
Gino, F., & Wiltermuth, S. S. (2014). Evil genius? How dishonesty can lead to greater creativity. Psychological science, 25, 973.
Harris, D. J., Reiter-Palmon, R., & Kaufman, J. C. (2013). The effect of emotional intelligence and task type on malevolent creativity. Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 7, 237.
Vincent, L. C., & Kouchaki, M. (2016). Creative, rare, entitled, and dishonest: How commonality of creativity in one’s group decreases an individual’s entitlement and dishonesty. Academy of Management Journal, 59, 1451.

コロナ禍をきっかけに活発になったオンライン選考ですが、このメリットを重視し、今後の状況如何にかかわらず引き続き積極的に活用する予定の企業は多いようです。また、学生も移動の時間やコストを削減できるオンライン就活を歓迎している傾向があります。しかし一方で、Web説明会やWeb面接といったオンライン上でのコミュニケーションでは、「会社の雰囲気がわかりづらい」「自分の熱意を伝えづらい」といった、互いの情報伝達不足を認識する学生も多いようです。
多くのフェーズをオンライン選考で通過した場合、合格した実感を抱きづらい内定者も多いです。内定者の特徴を正しく認識し、会社で活躍できる可能性を認めていることを示すために、内定者へのフィードバックを実施してはいかがでしょうか。その際、選考時の評価と合わせ、ぜひ網羅的な情報を持つ適性検査のリポートを活用してください。

内定者に適性検査のフィードバックをするメリット

適性検査のフィードバックを行うことは、入社を控えた内定者と内定者の動機づけを高めたい企業の双方にとってメリットがあります。

1. 内定者の自己理解が深まる
自身の内省(主観的)ではなく他者から言われたこと(客観的)でもない、半客観的なアセスメントというツールを用いることで、内定者にとって程よく納得感と気づきが得られる自己理解の機会となります。また、適性検査は職業人としての特徴を記述するようデザインされています。自身の振る舞いはビジネスにおいてどのように評価されるのかという観点から自己理解をすることは、内定者にとって社会人生活の第一歩といえるでしょう。

2. 内定者の仕事理解が深まる
もちろん職務の内容は事前に説明されていますが、就労経験のない内定者にとっては自分事としてイメージしづらい部分が多いでしょう。「Aさんの批判的な部分は、このデータの解析のプロセスで非常に重要です」「Bさんの楽観的な部分は、営業現場のこのような状況においてとても有利ですよ」このようなフィードバックを受けると、自分がその職種において活躍している様子をイメージしやすくなります。

3. 内定者の入社へのモチベーションが高まる
先述の通り、オンライン選考のメリットは学生も十分に認識しつつ、「企業のことがわかりづらいし、自分のことも伝わっているかわからない」という少々の不安も抱いていることが伺えます。企業は内定者のことを十分に理解し、強みも弱みも認識したうえで受け入れる準備ができていることを伝えることは、内定者にとって大いに入社へのモチベーションとつながるでしょう。

最大のコツ:良い特徴、悪い特徴ととらえない

個性重視の潮流が強まってきたとはいえ、依然として私たちの意識には「社会的望ましさ」が根付いています。「計画が立てられない」「社交的ではない」「論理的ではない」・・・このような特徴を目にした際、どうしても「この特徴はよくない」という考えが頭をよぎりがちです。つまり、状況を一切無視して、特徴そのものを「弱み」であると一義的に判断しがちです。
しかし、状況や課題によってその特徴は強みになるのではないでしょうか。どうしても弱みになる可能性があれば、他のメンバーがフォローする、その処理を自動化・仕組化する、役割を再定義・分担するなど、困難に直面しないで済む方法はないでしょうか。一方で、先に挙げた特徴がポジティブに作用する場面をぜひ考えてみてください。慣れればすぐにスラスラと長所として表現できるようになりますし、「個を生かした活躍」の可能性に気づかされます。
フィードバックの導入や流れは、こちらのダウンロード資料を参考にしてください。また、パーソナリティ検査OPQの解釈についてもう少し詳しく知りたいという方は、無料のWeb講座「OPQ解釈コース」にぜひご参加ください。

当初の想定よりも大幅に長引くコロナ禍で、「学生のガクチカが出てこない!」という人事担当者の叫びが多く寄せられています。ガクチカとは、「学生時代に力を入れたこと」の略称で、新卒採用面接では必ず耳にする定番の話題です。採用担当者はこのエピソードをもとに、学生のコンピテンシーを推し量ろうとします。
しかし、コロナ禍の影響で、従来の「ガクチカ」の定番であったアルバイト、ゼミ、部活動、留学などの活動が制限され、「面接で掘り下げられる話題がない」、「個人の差別化ができない」といった悩みが採用担当者から多く寄せられるようになりました。この影響は、大学生活が完全にコロナ禍と重複する23卒採用において、もっとも顕著になると考えられます。
さて、応募者の「ガクチカ」を評価できないのであれば、それ以外の手法でコンピテンシーを推し量る必要があります。本日は、そんな時に使えるシミュレーション型アセスメントを3種類ご紹介します。

シミュレーション型アセスメントとは

シミュレーション型アセスメントとは、特定のビジネス場面を想定した課題を設定し、そこでの意思決定や行動の適切さを観察することで、応募者のコンピテンシーをアセスメントする手法です。たとえば、面接では「私は●●部で部長を務めました」といったエピソードをもとにリーダーシップを評価するところを、シミュレーション型アセスメントでは実際にグループで討議する場を与え、その中での影響力の発揮度合いを観察するといった具合です。
長所は、実際の行動や成績をもとに人物を評価するので、面接におけるエピソードの有無・真偽などを気にする必要がないことです。また、シミュレーション型アセスメントの多くは採点が標準化されており、面接よりも評価にブレが生じにくい利点もあります。一方で、特定のコンピテンシーをアセスメントするのに特化していることが多く、人材要件に合致する課題を用いないと見当違いの評価をしてしまう危険性があります。まず、採用で求めるコンピテンシーを定義し、その次に、それを評価できるシミュレーション型アセスメントを検討するようにしてください。
ちなみに、日本エス・エイチ・エルでは「プレゼンテーション演習」を新卒採用で実施することがあります。応募者は資料をもとに導き出した結論についてプレゼンテーションを行い、質疑応答を行います。これもまた、社内・社外での提案能力を測定するシミュレーション型アセスメントの一つです。

新卒採用で使えるシミュレーション型アセスメント3選

ここからは実際に、新卒採用で使えるシミュレーション型アセスメントを3つご紹介します。

■グループディスカッション(グループ討議)
新卒採用ではすでに定番となっているグループディスカッションも、シミュレーション型アセスメントの一つです。長所は、特にコロナ禍でエピソードが見られづらくなった対人的コンピテンシー(リーダーシップや協調性など)を評価しやすいことです。
日本エス・エイチ・エルでは、より仕事場面でのふるまいを予測しやすい、様々なビジネス上の意思決定を模擬的に行う題材を用意しています。オンラインで実施できる題材も続々リリースされていますので、ぜひご検討ください。

■創造力テスト(クリエイティビティテスト)
通常の知的能力テストは、唯一の正解をすばやく導く「収束的思考力」を測定するのに対し、創造力テストは、考えられるアイデアを数多く提案する「発散的思考力」を測定しています。ある課題に対し、応募者が①数多くアイデアを出せるか(流暢さ)、②いろんな側面からアイデアを出せるか(柔軟さ)、③人と違ったアイデアを出せるか(オリジナリティ)の3側面で創造性を評価します。
ビジネス環境の変化により、いわゆる「イノベーション人材」「新規事業創造人材」を求める企業は爆発的に増加しました。応募者の創造力を評価したい場合は、ぜひご利用ください。

■イントレイ演習(インバスケット演習)
イントレイ演習とは、未決裁の大量の書類や未解決の問題を、迅速かつ的確に判断・処理していく、実際の管理職業務を模倣したシミュレーション型アセスメントです。短時間で資料を読み、優先順位をつけて「誰に」「何を」「どのように」やらせるかを判断する必要があるため、仕事場面で求められる情報整理能力・問題分析能力を測定することができます。管理職の昇格試験などに使われることが多いテストですが、初級者向けの題材であれば新卒採用に用いることも可能です。SHLのイントレイ演習「決裁箱」はマークシート採点が可能で、新卒採用場面でも利用しやすいものになっています。
コロナ禍で、新しい企画をリードしたり、プロジェクトを指揮したりというエピソードも耳にしづらくなりました。将来のリーダー候補を採用したい企業は、ぜひイントレイ演習をご利用ください。

最後に

シミュレーション型アセスメントは、評価したいコンピテンシーが合致すれば非常に有効なアセスメントツールです。シミュレーション型アセスメントにご興味をお持ちの方は、こちらから資料をダウンロードしてください。

現在、変化するビジネス環境への対応やイノベーション創出を目的とし、女性活躍をはじめとしたダイバーシティ経営が社会的に推進されています。今回は、女性のリーダーが男性よりも強みを持つ可能性のあるコンテクスト(状況)について、SHLグローバルの大規模な実証研究結果をご紹介します。

近年のリーダーシップについての4つの課題

ビジネス環境の変化と複雑化により、近年リーダーへの要求が高まっています。しかし多くの企業がリーダーのパフォーマンス不足やリーダーシップパイプラインの人材不足に悩んでいます。SHLは、多くの組織でリーダーシップマネジメントが失敗する根本的な原因を4つ 挙げています。
① ビジネスにおける変動性と不確実性がかつてないほど大きくなり、典型的なリーダーモデルが機能しない
② 成功するリーダーの特定・育成には、画一的なコンピテンシーでは不十分である
③ ハイポテンシャルプログラムにおいて十分に多様な人材を確保することができていない(Gartnerの2016年の調査によると、74%の組織で、ハイポテンシャル層に占める女性の割合が一般層に比べて低い。)
④ データではなく人間の判断に頼ると、暗黙のバイアスを永続させることで多様性が脅かされ、後継者育成に失敗する。

コンテクストを考慮したリーダーシップ実証研究 (2014-2016)

コンテクストとは、職場環境のあらゆる側面のことです。異なるリーダーの特性は、異なるコンテクストでのパフォーマンスに関連しており、コンテクストを考慮することで、リーダーのパフォーマンスの予測精度が上がる可能性があります。
SHLとGartnerは、世界25以上の業界を代表する85社の約8,700人のリーダー、5,900人の上司、そして33,000人以上の部下に大規模調査を実施しました。第一線の管理職から最高経営責任者まで、組織のあらゆるレベルのリーダーから、彼らのパーソナリティ、仕事の経験などに関するデータが収集され、リーダーのパフォーマンスは、各リーダーの上司と直属の部下が記入した360度評価ツールで測定されました。
また、リーダーの仕事の状況(コンテクスト)を定義するための調査も行われました。このコンテクストのほとんどは、リーダーが直面する課題を表していると考えることができます。このコンテクストを考慮に入れることで、リーダーの個人特性によるパフォーマンスの予測精度が平均して3倍高まることがわかりました。

コンテクストにおけるリーダーのジェンダーの差異

抽出されたリーダーの27つの課題について、課題解決において正の影響を持つ傾向のある10のパーソナリティ尺度の男女差を示します(下図)。これらの尺度のスコアが高いほど、幅広い課題の中でのパフォーマンスが向上するといえます。男性は「説得性」の平均点が女性より有意に高かったのに対し、女性は「素直」「友好性」「協議性」「几帳面」「人間への関心」「面倒み」の各項目で男性よりも高い点数を獲得しました。
SHLは、各課題におけるリーダーのパフォーマンスをパーソナリティから予測し、各リーダーのフィットスコアを算出しました。すると、27の課題のうち21の課題で、女性は男性よりも平均スコアが高くなりました。下のグラフには5つの例が示されています。男性が有利だったのは、「地理的に分散したチームを率いる」という課題で、その他4つの課題では、女性のほうが有利であることが示されました。
本研究のデータセットでは、ハイポテンシャル層やシニアリーダーシップのポジションに占める女性の割合は、一般従業員層よりも低いことがわかりました。しかし実際には、多くのリーダーの課題において、女性は男性よりも高いポテンシャルを示すことがわかりました。ハイポテンシャルプログラムがさまざまなコンテクストを想定する場合、結果としてより多くの女性がリーダーシップを発揮できるようになるはずです。

まとめ

コンテクストに応じて様々なタイプの個人が活躍できると理解することで、リーダーの選定や育成の際により多様な候補者が得られます。課題に合わせてポテンシャルの高い人材を見極め、より強固で多様性のあるリーダーパイプラインを構築することで、最適な配置が可能になるでしょう。