コラム

人事コンサルタントの視点

ケーススタディ:ソニー・ヨーロッパ

公開日:2009/01/27

このコーナーは、イギリスのSHLグループが季刊で配信している「SHL Global Newsletter」などの中から記事をピックアップ、日本語に翻訳してご紹介するものです。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
今回も360度フィードバックツールの活用事例を取り上げます。

ソニー・ヨーロッパは社員の能力開発とパフォーマンス・マネジメントに注力しており、360度フィードバックを活用している。

当初はヨーロッパ全体で「紙と鉛筆」方式のツールを使っていた。その結果、さまざまな言語バージョンを用意しなければならない、コンピテンシーが総称的になりすぎて各国の文化や言語にうまく適合しない、など多くの問題を抱えていた。何よりも、ヨーロッパの国境をまたぐ国際郵便の不安定さが、円滑な運用にとっての大きな障害であった。

これら運用上の問題はインターネットによって解決される。SHLオンラインシステムが導入された。ソニーのコンピテンシー仕様に適合するようシステム調整がなされ、円滑な運用のための改良が加えられた。

導入に当たって人事部門でトライアルが実施された。トライアルでは参加者が自分の評定者を選んだが、このことが2つのメリットをもたらした。1点目は人事部以外のメンバーに、将来自分も対象となるであろうプロセスについて洞察を与えたこと、2点目は人事部門とそれ以外の部門をつなぐ橋を築いたことである。調査実施にあたっての案内や実施そのものは全てコンピューターによる自動で行われた。

ソニーBPEシニアHRマネジャーのキャロル・アン・スペンサーは次のように述べている。
「システムは非常にうまく機能し、対象者全員が簡単に実施できました。調査項目はユニバーサルなもので、まもなく英語から各国語に翻訳されます。報告書が非常に具体的で焦点が絞られているため、同僚からのパワフルなフィードバックによって気づかされるところが多かった、というのが大方の意見でした。今後は、Eメールのメッセージを変える、説明やトレーニングにもう少し時間をかける、コンピテンシーの柔軟さを制限するなどが必要です。その他の点は満足しています。」

ソニーのブランドイメージは「技術力の高さ」であり、それを支える人材を大切にしていることはよく知られています。つい先日も慶応大学と提携して技術系人材育成の協働プロジェクトを実施するとのニュースが流れました(昨年11月4日)。リーダーとなる基幹社員の育成については1994年に「ソニー塾」として取り組まれ、2000年にはそれを拡大発展させて「ソニーユニバーシティ」が設置されました。

能力開発は直接的には知識やスキルの向上が対象でしょうが、そのベースは「自己への気づき」です。自分の行動が周囲にどう見られているのか、どういう影響を与えているのか、何が足りないのか、を自分の肌で実感してこそ、能力開発への真のモチベーションが生まれます。

360度フィードバックシステムの運用は、インターネットによって格段に飛躍しました。今後ますます多くの企業がさまざまな場面で活用していくだろうと思われます。

堀 博美

このコラムの担当者

堀 博美

日本エス・エイチ・エル株式会社

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