幹部候補者トレーニングに不信
公開日:2013/12/09
このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
今回は、イギリスの人事専門団体CIPDのオンラインページに掲載された記事『HR losing faith in high potential training, finds study』をご紹介します。
人事担当者の半数が、幹部候補者(=ポテンシャルの高い人)を対象とした研修プログラムに自信がなく、将来のリーダーをうまく能力開発できていないと考えています。これはアドバイザリー会社CEBグローバル調査からのデータで、それによると幹部候補者トレーニングの効果は11倍改善できるはずです。
660万人のサンプルに基づいたこの調査研究は、幹部候補者プログラムに参加した社員の6人に1人しか昇進後の職務で成功しておらず、また、現職で業績が高い社員のうち昇進後も業績を上げられるのはわずか15%であることを示しています。結果として、企業は幹部候補者の能力開発に年間120万ポンド(約2億円)を無駄にしていることになります。
CEBによれば、重要な問題のひとつは、回答者の半数しか幹部候補者の識別にシステマチックなアプローチをもっておらず、選抜を裏付ける妥当なアセスメント手法を用いているのが3分の1しかいないということです。
更なるリスクは、企業がライバル会社にポテンシャルの高いスタッフを奪われることです。幹部候補者プログラムの参加者の50%が転職しています。
ユージーン・バーク(CEB科学分析チーフオフィサー)は次のように述べています。「幹部候補者、すなわちポテンシャルの高い社員をどのように定義するか、彼らのためのプログラムの成功にとっての重要リスクに企業がどう対応するか、についてもっと明確化することが必要です。一つ上の段階に昇進して成果を上げるための志望や能力、エンゲージメントのない社員に、リソースやトレーニング、キャリア機会が向けられているプログラムが多すぎます。」
問題の一部は、現在業績を挙げている社員は将来のリーダー職のポテンシャルがあると上司が仮定してしまうことです。必ずしもそうではありません。
バークは続けます。「間違った人に職責を与えすぎます。それが彼らに退職を促したり、また彼らが昇進後の職責や期待に苦労して業績が低迷したりするのです。」
幹部候補者プログラムへの投資効果を高めるために、企業が取るべきアクションはたくさんあります。
たとえば:
- ポテンシャルが高いとはどういうことか、それは業績が高いこととどう違うのか、を明確にする
- 高ポテンシャル者が上級職への昇進希望を持っているかどうかを明らかにする
- 退職リスクを緩和するため、高ポテンシャル者のエンゲージメントレベルに注意する
- スタッフの能力開発に、少し背伸びの必要な役割や任務を与える
11月のCEB LINKカンファレンスで発表された「Improving the odds of success for high-potential programmes」リポートに基づいた記事です。
野球でよく言われる「名選手、必ずしも名監督ならず」。これはグローバルで当てはまるフレーズでしょう。「ポテンシャルの高さ」をどう「見える化」できるか、弊社のテーマです。

このコラムの担当者
堀 博美
日本エス・エイチ・エル株式会社