コラム

人事コンサルタントの視点

企業戦略・プロジェクト切り上げの難しさ

公開日:2014/01/22

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
今回もCEBブログの記事からThe Hard Business of Killing Projectsをご紹介します。

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米国大手インターネットサービス会社AOLは、数年間の損失の後、Patch関連商品を終了させるかもしれません(し、させないかもしれません)。ニューヨーク・タイムズによれば、ティム・アームストロングCEOがPatchを段階的に縮小していく意向を示唆しました。しかし、その後、AOLは、オンライン地域密着型ニュース・ネットワークを縮小していくつもりはなく、代わりとなる有望なパートナーを探していると発表しました。

アームストロング氏はニューヨーク・タイムズに次のように語りました。「最終的に、Patchの経営はよくすることができたのだろうか? 我々にはわからない。我々は残りの会社組織を好転させようと舵取りをしながらやってきた。Patchは我々が取り組んだ大きな賭けの1つであり、とりわけ、私はやはり、それがPatchであれ他のものであれ、『地域』が大きなチャンスになるだろうと信じている。」

ビジネス・インサイダー(ビジネス・ブログメディアのサイト)の記事の中で、ニコラス・カールソン氏が、Patchをはっきり終わらせることがAOLにとってなぜそんなに難しいのかを述べています。アームストロング氏はグーグル在職時、Patchの立ち上げに深く関与しました。オンライン広告において地域密着が次に急成長するマーケットになると信じていました。Patchに入れ込んだ気持ちが、彼が望んでいた通りにプロジェクトが成功していないという事実と折り合いをつけることを大変難しくしているというのがカールソン氏の見方です。

戦略ブレーンとプロジェクト切り上げ

我々は、AOLと同じような状況にある戦略ブレーンとよく話します。幹部リーダーが感情的に入れ込んでいるために、苦戦中のプロジェクトや商品を止めない、というものです。たとえ不利な状況に直面していても革新には粘り強さが必要であるというのは確かです。しかし、低迷しているプロジェクトを必要以上に長く継続させるならば、他のより有望な施策にあてるリソースが足りなくなり成長機会が失われます。

2つの会社の戦略ブレーンがこの問題に対処する方策を設けました。最も重要であると考えるプロジェクトについて幹部リーダーに違う考え方を強要するものです。

『中道を置かない』
あるビジネスサービス会社は、そのプロジェクトを評価する際に『中道を置かない』やり方を生み出しました。その戦略ブレーンは、リーダーに、全てのプロジェクトを『加速』と『評価』の2つのうちのどちらかにランク付けさせます。会社は『加速』とランクされたプロジェクトにより多くのリソースを配分します。そして、『評価』とされたプロジェクトを継続すべきかどうか再考します。

この二分アプローチは、古くからの序列付け法よりも、沈滞しているプロジェクトをうまく取り除くことができます。リーダーたちに自分たちの決定の影響を強く考えさせることになるからです。苦戦中のお気に入りプロジェクトに本当により多くのリソースをつぎ込みたいのかどうか自問させます。そして、もしそうでないのなら、彼らはそれを止めるかどうか真剣に考えなければなりません。

『失敗する許可』
我々のネットワークのある運輸会社は、そもそもの始まりでこの問題を根絶しようとしました。コア事業以外で新規事業を立ち上げる際、担当マネジャーに失敗する許可を与えます。素早く、多くのリソースを使いすぎる前ならばかまわないという許可です。この『小さく早く失敗する』というメンタリティによって、会社は、プロジェクトがうまくいかなくても引きずることはないとわかり、リスクの高いプロジェクトに取り組むことができます。

Patchは地域密着型ニュースのプラットフォームで、全米40以上の地域で運営されています。AOLとPatchについての情報は、この記事の原文(http://www.executiveboard.com/blogs/the-hard-business-of-killing-projects/?business_line=innovation-strategy)の該当リンクからニューヨーク・タイムズやビジネス・インサイダーの記事にとぶことができますので、興味のある方はぜひご一読ください。
また、本記事の後半にある2つの対策について事例もありますが、こちらはCEB Strategyの会員のみの閲覧となっています。

「やる」という決断よりも「やめる」という決断のほうが数倍難しいというのは私も実感です。

堀 博美

このコラムの担当者

堀 博美

日本エス・エイチ・エル株式会社

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