コラム

人事コンサルタントの視点

社員調査を再考する‐エンゲージメントを超えて(2/3)

公開日:2014/03/05

このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
前回に引き続き、CEB SHL Talent Measurement Solutions が提供しているエンゲージメント・サーベイについての情報をご紹介します。

CEBクリア・アドバンテージ・アプローチ

社員調査は企業業績を推進する鍵になるものについて重要な知見を与えます。うまく設計された調査は高いレベルのエンゲージメントやアラインメント(整合度)、アジリティ(機敏さ)を推進するために有効なツールです。社員のエンゲージメントを企業の戦略的優先事項に向けて動かし、環境の変化に合わせて調整することができます。

企業がこの2つの目的を達成することを支援するために、CEBはクリア・アドバンテージ・アプローチを開発しました。これは、社員エンゲージメントと事業業績についての詳細な研究に基づいたものです。クリア・アドバンテージ・アプローチはエンゲージメント以上のものを見ており、次の2つのタイプの社員能力を評価します。

  • 普遍的:競争戦略や事業の優先事項に関わらず、あらゆる組織が必要とする特性
  • 戦略特有:特定の競争戦略や事業の優先事項を支える個別能力

図2に示した普遍的特性と戦略特有能力は、並行して測定、開発されなければなりません。

高業績に普遍的な特性

もしエンゲージしている社員が事業の優先事項に結びつかない仕事に時間を費やしていたり変化を予期してリードする能力を持っていなければ、組織は社員エンゲージメントをフルに活かすことができません。CEB研究から、企業業績にはエンゲージメント、アラインメント(整合性)、アジリティ(機敏さ)の3つの特性の固い結びつきが必要であることが確認されました。

社員エンゲージメントは企業の成功にとって重要ですが、十分ではありません。エンゲージメント、すなわち、プラスアルファの社員努力は組織目標に沿った仕事に向けられなければならず、チームは環境変化を予期し素早く対応できなければなりません。

エンゲージメント

長年に渡る研究と実務をベースに、CEBは社員エンゲージメントの定義を進化させ、以下の点を含むものとしました。

  • エンゲージメントの高い社員は自分の会社に誇りを持っており、顧客や同僚や関係者などとの会話の中で会社の支持者となる。
  • エンゲージメントの高い社員は自分の仕事からエネルギーを得、障害克服に必要な粘り強さや積極的な行動を発揮する。
  • 最後に、エンゲージメントの高い社員は会社の将来について楽観的で、加速する変化スピードの結果として生じるあいまいさや不確実さを見過ごすことができる。

【エンゲージメントの構成要素】

  • 誇り ――会社との同一化、推薦意向
  • エネルギー ――自分の仕事におけるわくわく感や切迫感
  • 楽観性 ――会社の将来に対する自信や信頼

アラインメント(整合性)

あなたの会社のエンゲージメントの高い社員は、組織目標達成に最終的にはあまり関係しない仕事についていませんか? 会社風土は事業目標に沿っていますか? アラインメントのないエンゲージメントは、多くの活動を生みはしますが展開に限界があります。アラインメントのあるエンゲージメントは社員のエネルギーを組織に利益をもたらす生産的なやり方に集中させます。

CEBはアラインメントを、個人とチームとリーダーそれぞれの行動と組織目標との間のつながりの明確さと定義します。

【アラインメントの構成要素】

  • コミュニケーション ――会社目標についてのコミュニケーション
  • 関係 ――個人、チーム、会社の目標の間の関係
  • 結合度 ――社員の仕事と目標の間の結びつきの固さ

アジリティ(機敏さ)

変化のスピードが加速する中、経営者は、今後3年間のビジネス優位性維持に最も重要な社員特性としてアジリティを挙げています。CEBは、アジリティを、ただ変化を切り抜けるだけでなく、それを予期しリードする能力と定義します。アジリティの高い会社は事業環境を感知したやり方を導入し、変化に適応して新しい道を構築するに必要な自律性を社員に与えます。

【アジリティの構成要素】

  • 変化の予期 ――環境感受性、計画立案
  • 変化のリード ――変化に優先順位をつける、業務における変化を実行する

アジリティは利益をもたらします。会社のアジリティが事業業績にもたらす効果は数多くのCEB研究調査にまとめられています。61社を対象とした最近のCEB調査分析では、アジリティの高いリーダーは鈍い人よりも、利益率で8ポイント勝っていました(図3)。このかなり大きな差異が、アジリティが競争優位の源泉であることの証拠です。アジリティで上位25%の会社は3年間の平均利益率が13%でしたが、鈍い会社は5%でした。

以上3つの社員特性は全ての業界のほとんどの企業に当てはまります。しかし、企業は自社に特有の戦略を遂行するために必要な能力についても掘り下げなければなりません。

CEBのクリア・アドバンテージの枠組みは、社員がエンゲージされ、組織戦略に沿っていることをリーダーが確認することを助けます。これが競争優位の源泉です。競争優位を長期にわたって維持可能なものにするのが、組織のアジリティ能力(変化を感知し反応する能力)です。

クリア・アドバンテージはCEBの提唱する社員調査モデルです。全企業に共通する普遍的要素と各社ごとに異なる戦略特有要素に分かれています。次回最終回では後者をご紹介します。

堀 博美

このコラムの担当者

堀 博美

日本エス・エイチ・エル株式会社

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