ハイ・ポテンシャル・プログラムの3大リスク-対応策
公開日:2015/06/24
このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるCEB SHL Talent Measurementがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
今回は、前回ご紹介した記事で提起された問題についての、人事としての対応策です。
CEBが世界中の先進的企業と協力してHIPO施策について10年以上研究した結果、最も効果的なプログラムは、適切な候補者をより正しく見極め、分析的な方法でプログラムの成果を評価し、伝統的トレーニングを超えるアプローチでHIPOのポテンシャルをフルに開発するものであることが明らかになりました。これら3つの領域、すなわち、「見極め」「ベンチマーク」「能力開発」について見ていきましょう。
過去の業績ではなく、実証された3特性でHIPOを正確に見極める
貴社のHIPOプログラムの能力開発面がいかに効果的であろうと、間違った人々を能力開発するなら結果は出ません。多くの企業はリーダーシップについて狭い見方をしており、知的能力や、「学びの速さ」「戦略的ビジョン」「変革推進」など特定コンピテンシーと同じものとみなしたりしています。CEBの研究から、この見方が結果的にHIPOの間違った見極めにつながっていることがわかりました。なぜならば、現在の高業績者でリーダー職で成功するポテンシャルも持っている人は7人に1人しかいないからです。つまり、焦点を絞りすぎたアセスメントはHIPOを間違って見分けることになり、投資の無駄使いになります。
CEBは、ハイポテンシャル者が他の人と違うのは次の3点であることを明らかにしました。
- 志(aspiration)
――認められたい、昇進したい、将来報われたいという意欲や欲求、また、本人が願うものが会社が彼または彼女に対して持っているプランとどれくらい一致しているか、です。将来リーダーの正確な見極めにおいて、「志」はコンピテンシーとほぼ同じくらいのインパクトを持っています。志の高い人はそうでない人と比べ、将来のリーダーになる可能性が11倍あります。 - 能力(ability)
――ますます複雑になっていく課題に対処するための、知的能力や専門スキル、感情面のスキルです(生来のものと学びによってえたものの両方)。 - エンゲージメント(Engagement)
――会社やそのミッションに対して社員が持つ個人的なつながりやコミットメントの程度です。
これら3つが豊富でなければ、その人は次のより重要な役割で失敗する可能性がかなり高いです。3つのうち1つだけない人でも、次のレベルで成功する確率は40%以下です。このことから、「志」と「能力」と「エンゲージメント」の予測力の高い客観的な測定を用いてHIPOを見極めることが非常に重要だとわかります。過去の業績だけではだめなのです。
貴社のHIPOプログラムを競合会社と比べて吟味する
貴社のプログラムはあるべき通りの成果を挙げているでしょうか?多くの企業はプログラムの結果を評価する正確なデータを欠いており、かなり主観的なデータ(アンケートなど)や経験に頼ってプログラムの決断を下します。この弱点を解消するために、HIPOプログラムを担当するマネジャーは以下のことをすべきです。
- HIPOの計器盤を作る。
HIPOプログラムの分析を行っていない場合、始めることを計画しましょう。定量的データを得ます。伝統的な9ボックスデータや管理職の評定点などを超えた、客観的な測定値と分析技術に基づいた全体的な見方を探りましょう。 - 結果を測定する。
HIPOプログラムを定期的にベンチマークすると、能力開発計画が明確になり、最も重要な経験や活動の優先順位をつけることに役立ちます。 - 社外の視点を取り入れる。
HIPOが社内のベンチマークに照らしてどうかだけではなく、競合会社と比較してどうかを知る必要があります。自社がその業界で最高の競合にどう匹敵しているかの理解がなければ、人材を効果的に能力開発できなかったり自社の業界マーケットの課題に対して間違ったスキルに焦点を当てたりすることになるリスクがあります。
能力開発によって、ポテンシャルとパフォーマンスの間のギャップを埋める
管理職の75%が部下の能力開発は自分の職務の一部だと考えていますが、HIPO能力開発プログラムでトップ人材が大きく業績を向上でき、そのポテンシャルをフルに発揮できるようなものはわずか5%です。何が欠けているのでしょうか?
問題は、HIPOが「何を」学ぶかではなく、「どのように」学ぶかです。大多数のHIPO能力開発プログラムには、職場から離れたところでのワークショップや教室形式のトレーニングコース、メンタリング、オンラインのEラーニングセッションが含まれます。これら構造的な活動にはそれなりの意味がありますが、フォーマルなトレーニングからの学びは10%に過ぎません。70%は経験から、残り20%は周囲の人からです。オン・ザ・ジョブ・トレーニングは伝統的なトレーニングに比べて、エンゲージメントにおいて2.5倍、業績においては3倍のインパクトを持ちます。
それゆえ、最も効果的なHIPO能力開発活動とは、非常に目立つような、重要でチャレンジングな経験を中心とするものです。つまり、企業は、露出を広げ学びを引き出せるような分野における実践経験でもって、フォーマルなトレーニングを支える必要があります。
研究に基づく以下の事実を考慮に入れましょう。
- 狙いを絞ったオン・ザ・ジョブの能力開発は社員の知識とスキルを16%まで向上させることができる。
- 非常に目立つ、報いの大きい任務の機会はエンゲージメントを70%引き上げる。
- 能力開発機会を個人のキャリア目標と対応させるとエンゲージメントは35%上がる。
- 明確なキャリアパスに沿った任務は、より上の職務に昇進したいという欲求を23%増やす。
端的に言えば、うまく設計された能力開発計画は、重要な3つのHIPO特性(志、能力、エンゲージメント)の全てを向上させます。
約束を実現し、リスクを低減する
HIPOプログラムが期待通りの成果を上げていないという現状を続けるリスクを考えてみましょう。高額な施策なのになかなか利益につながらず、強力な将来リーダーのパイプラインも生み出していない、高業績者が昇進するとどうしたわけかつまずく、と経営層はみなします。HIPOは能力開発計画が自分のニーズやゴールを反映していないと思い、自分のベストなキャリアパスは競合会社にあるのかもしれないと考えます。
これら風評や業績のリスクは解消されなければなりません。それが行動を促すきっかけです。
もし貴社のHIPOプログラムの結果が精彩を欠いたものでも、助けがあります。CEBは自信を持って、次のノウハウを通してより大きなビジネス・インパクトを与えるHIPO施策を再定義するお手伝いをできます。
- 「志」「能力」「エンゲージメント」というHIPO特性を客観的に評価して見極める。
- 同種の企業に照らしてHIPOを広くベンチマークする。
- オン・ザ・ジョブのHIPOプログラム活動についてカスタマイズされた提言をする。
- HIPO能力活動が時間と共にどう進展しているか、可視化する。
- HIPOプログラム担当マネジャーをサポートする洞察とツールを活用し、より強力な成果を推し進める。
現状では、業績に直結する投資利益を出しているHIPOプログラムは27%しかありません。残り73%を抑えているのはおそらく、2万社からのベスト・プラクティス(と得た教訓)なのでしょう。
もし貴社のプログラムがあなたが望む結果を出していないならば、CEBがどのようにお手伝いできるか見つけてください。
最後はCEBの宣伝調が強くなってしまいました。
皆様の会社のHIPO施策についてのレビューの参考になれば幸いです。
本コラムも今回が2015年の最後の記事となります。ご愛読ありがとうございました。2016年も旬な話題をご紹介していきたいと思っています。引き続きどうぞよろしくお願い致します。

このコラムの担当者
堀 博美
日本エス・エイチ・エル株式会社