SHL白書「タレント・アセスメント・テクノロジーの台頭」(連載6)――結論と提言
公開日:2018/06/25
このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるSHL Group Ltd. がお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HP、プレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
連載でお届けしているSHL白書「タレント・アセスメント・テクノロジーの台頭」の和訳、今回が最終回です。
結論
テクノロジーによって可能になったアセスメントの革新と受検者中心市場の台頭が、自社の人材アセスメントのやり方を再考するよう企業に拍車をかけています。ゲーム要素を応用したアセスメントには、受検者を惹きつけて離さず、ポジティブな企業イメージを与えながら、受検者のポテンシャルを予測する情報を出す可能性があります。しかしながら研究はまだ始まったばかりで、アセスメントの有効性を判断するいくつかの重要基準を充分に満たしていないようです。
ゲーム化されたアセスメントは双方向的で受検者の興味をそそりますが、開発と維持にコストがかかります。ユーザーはその利点がコストに釣り合わないかもしれないことを念頭に置いておかなければなりません。状況によっては(例えばリアリスティック・ジョブ・プレビューなど)、受検者を惹きつけてポジティブな経験を与えるためにゲーム化は有効でふさわしい方法です。
ゲーム要素を含んだアセスメントやシリアス・ゲームのアセスメントに関して、投資や活用を強く支持する研究はまだありません。テクノロジーによって可能になったアセスメントは非常にダイナミックな分野です。より多くの研究が積み重ねられれば、その有効性に関してより決定的な結論が導かれるでしょう。
マルチメディアのアセスメントは、他の新しい未検証のアセスメントのタイプと比べて、受検者エンゲージメントと頑健な測定のバランスをとる選択肢です。事実、マルチメディアのアセスメントは多くの実証された利点を提供します。例えば、ビデオベースの状況判断力テストは、同じ内容の文章ベースのバージョンよりもよりよく職務パフォーマンスを予測します。
テストユーザーの皆様には、様々なアセスメントツールの有効性を調べて吟味するようお願いします。予測力の高い、法的に防衛可能で、手の届く価格の、拡張性のあるテストプログラムの要件を評価してください。受検者は公平で適切で効果的なアセスメント経験を期待しています。
我々の提言
伝統的なアセスメント――進化を
テクノロジーを組み込んで今日の応募者が期待する経験を創り出すよう、妥当性や不利な影響、コスト、受検者反応についての広範な研究に裏打ちされた現在のアプローチを進化させること。
ゲーム要素を応用したアセスメント――分析を
職務に関連するスキルが測定されるよう、さらに分析が必要。
- 妥当性
- ゲーム要素を織り込んでも、その根底にあるアセスメント内容の妥当性は保持されている可能性が高い。
- 不利な影響
- さらなる研究が必要。
- コスト
- 既存アセスメントにゲーム要素を加えるのは比較的安価。
- 反応
- ゲーム化によって受検者のやる気が高まる可能性はあるが、同時に不安も増すかもしれない。さらなる研究が必要。
シリアスゲーム――注意が必要!
妥当性が未検証であることは、特に選抜など利害の大きいアセスメントでは危険である。初期の研究は多くの疑問に答えていない。
- 妥当性
- 選抜でのシリアスゲームの有用性と予測力はほとんどわかっていない。そのゲームが望ましいビジネス成果につながるコンピテンシーやスキル、能力を直接に測定していることを確認すべき。
- 不利な影響
- さらなる研究が必要。
- コスト
- シリアスゲームの開発にはコストがかかり、有効期間が比較的短い。利点がコストに見合わないかもしれない。
- 反応
- 職務関連性が低いと受検者の反応が悪くなる可能性がある。
マルチメディア・シミュレーション――このまま進むべき
仕事行動や背景をシミュレートすることはリアリスティック・ジョブ・プレビューになる。
- 妥当性
- シミュレーションは表面的妥当性と予測的妥当性を高める。
- 不利な影響
- オーディオやアニメーション、ビデオでは読む必要がなく、不利な影響は低減する可能性がある。
- コスト
- マルチメディア・シミュレーションの開発・維持は資源集約的。
- 反応
- 受検者は概ねマルチメディア・アセスメントを好み、それらはより職務に関連しているとみなす。
6回に渡って新しい時代のアセスメントについて連載してまいりました。テクノロジーが目覚ましい勢いで進化している中、今後10年を見通した時、採用や能力開発で使われるテストや検査がどんな形になっているのか、皆様と一緒に模索していきたいです。

このコラムの担当者
堀 博美
日本エス・エイチ・エル株式会社