機械学習は人間のバイアスを取り除くことができるのか?
公開日:2018/11/26
このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるSHL Group Ltd. がお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HP、プレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
今回はSHLグループのブログの記事をご紹介します。
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機械学習(マシーン・ラーニング)は採用担当者が見逃しがちな候補者を見つけます。しかし、テクノロジーが機能するためにはまだ人が必要です。
近年、テクノロジーは我々の生活に革命を起こしてきました。ただ、スキルの高い柔軟な人材の探索は企業にとって普遍的な難題のままです。今は、デジタル・イノベーションが採用テクノロジーや人材管理に応用され、大量の応募者をふるいにかけたり、個人の成功確率を評価したりする様々な方法が出されています。
アルゴリズム的なアセスメントと機械学習は、採用担当者にとても役立つツールです。しかし、機械学習は採用プロセスに存在する人間のエラーやバイアスを克服するのでしょうか?そして、人間的な触れ合いを取り除くことなしに、このイノベーションをどう取り入れることができるのでしょうか?
アルゴリズムが役立つ点
依然として人の目は選抜や採用の貴重な要素ですが、採用担当者は次の3つの重要な疑問と常に格闘してきました。
- 候補者のポジティブな特性を具体的なビジネス成果にどう関連づけることができるか?
- これらの成果のどれに焦点を当てるべきか?
- 採用プロセスを害しない、偏見のないやり方で、これらを予測することができるか?
答えは人間の判断を取り除いた機械学習と予測分析である、とテクノロジーの提唱者は言います。しかし、採用へのそのアプローチが実際にどれくらい役立つのか、疑問を持つ専門家もいます。結局のところ、先日のフォーチュン誌の記事で指摘されたように、これらモデルを作成するのは人間ですから、アルゴリズム自体が本質的に偏っています。
しかし、アセスメントの結果をまずくするのはアルゴリズムそのものではなく、アルゴリズム作成の背後にある手法です。もし適切に使われれば、アルゴリズムは人が持ち込む主観的見解を取り除くでしょう。人のバイアスの入った採用を模倣して強化する代わりに、理想的なアルゴリズムは採用後のビジネス成果を客観的に予測するでしょう。こうすればテクノロジーは社員の質を高められます。
例を挙げます。コールセンター担当者用に作成された最新モデルが、コールセンターの経験のある候補者は実は業績が低い可能性があることを明らかにしました。これは直観に反するものですが、テクノロジーはすぐに見つけました。一方、人間はおそらく見つけられないでしょう。実際には、人が採用される要因が必ずしもその職務をうまく遂行させるものであるとは限りません。しかし、アルゴリズムは、人と違って、2つの間の違いをうまく見分けます。
テストをテストする
機械学習に採用実務を大きく変える可能性があることは疑いありません。しかし、テクノロジーを使って、応募書類や履歴書の基本情報から職務へのベストフィットを評価することは、採用後の成果を予測することよりも簡単です。複雑なシナリオでは、コンピューターも間違います。例えば、スタッフの成功をよく予測するものとしてコンピューターサイエンスの学位があることを会社が好む場合、その分野で女性が相対的に少ないことを考えると、アルゴリズムは過度の数の女性応募者をはじくでしょう。アルゴリズムを検証テストできることが重要です。アルゴリズムの検証テストは対象者のデータを使って、これまでの応募者を採点し、彼らのその後に成功しているかどうかと共にデモグラフィックな分布を追います。
しかし、この等式に人間を忘れてはいけません。ウォートン・ビジネススクールのPeter Cappelliがハーバード・ビジネス・レビューで次のように述べている通りです。すなわち、『もし人事が人材マネジメントについての課題を設定するならば、それは自分でデータ分析ができるスタッフか、もしくはその仕事ができる人とパートナーを組めるスタッフのどちらかに違いない。』そうなれば、機械学習が役立つことがどんなに実証されたとしても、「人」の問題から逃れることはできません。組織がもしアルゴリズム作成に使われた手法を充分理解できないならば、それをする専門家を雇用する必要があるでしょう。
企業人事にAIをどう活用できるか、模索が続いています。エントリーシートの評価に試験的に活用している大手企業もちらほらあるようです。今後数年のうちに一気に進むかもしれませんね。
なお、本文中で言及されている”フォーチュン誌記事”と”ハーバード・ビジネス・レビュー記事”のURLは以下の通りです。興味をもたれた方はご参照ください。
http://fortune.com/2016/06/20/wall-street-new-hiring-diversity/
https://hbr.org/2015/07/why-we-love-to-hate-hr-and-what-hr-can-do-about-it

このコラムの担当者
堀 博美
日本エス・エイチ・エル株式会社