人工知能(AI)とアセスメント~前編~
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ビジネスのあらゆる場面で人工知能(以下AI:Artificial Intelligence)の活用が進み、人事領域においてもAIを活用したサービスが次々と生み出されています。それらのサービスは多種多様で、中にはAIを活用していると喧伝しているものの本質的には従来型のサービスと何ら違いが無いようなものも存在しています。人事領域でAIを活用することは大きな可能性を秘めている一方で、使い方を間違えると企業と従業員の信頼関係を大きく損なう危険性があります。
今回のコラムでは、前編と後編に分けて、AIを人事アセスメントに用いるとどのような良い事があるのかを整理した上で、後編においてはどんなリスクが発生するのか、それらのリスクを管理するために守るべき原則は何なのかを考察します。

アセスメントの文脈で言えば、AIがもたらす変化は次の2点であると考えられます。
1.新たな情報の活用が可能になる
具体的には、メール等の文字情報、職場での言動・表情、生体データ等などの情報を指しています。デジタル技術の向上により多様な情報をデジタルデータ化する事が従来よりも簡単になっています。どこまでの情報を個人に紐づけて分析することが倫理的に問題ないかという議論はさておき、同僚とのビデオ会議の中で、誰が、どのような表情で、どんな発言を行い、周囲はそれに対してどのような反応であったかはすべてデータ化されており、これらの情報を基にリーダーシップ等の能力を推定する事は夢物語ではなくなりつつあります。(ただし、現時点ではしっかりとした科学的根拠を持って妥当なアセスメントができるという技術が確立されているわけではないので、後述するリスクと合わせて考えていく必要があります。)
2.既存の情報の分析能力が強化される
既存の情報とは、アセスメントで得られるようなパーソナリティ、知的能力、モチベーションなどの情報のことを指しています。既存のアセスメント情報を分析・活用する際にAIを用いることにより、従来の統計学的な分析では得られることのできなかった知見が素早く簡単に取得できるようになります。また、どの設問が測定したい能力と相関が強いのかを検証することにより、妥当性を落とさずにアセスメントの時間を短縮するような事も可能です。いずれも測定手法自体の変容というより、そこから得られる情報の有効活用をするためにAIを駆使するという事です。

妥当性の向上:
前述の通り、大量のデータを適切に分析する事によって、従来のアセスメントでは為し得なかった水準で人や組織のパフォーマンスを予測する事が期待できます。人を選抜・異動させる時に、「その人の新たな職務における成功確率の予測」や「その人が加入する組織の風土がどう変容するかの予測」に関する精度が向上すれば、意思決定の過程に大きなインパクトを与えます。
バイアスの軽減:
特に人が人を評価するような場合、ハロー効果に代表されるような多様なバイアスが評価結果に反映される可能性がある事はよく知られている事実です。人間の特徴ともいえる主観的な判断は有用であることも多いですが、同じ情報を同じ様に安定的に評価するという事においては明らかにコンピューターの方が優れています。「仕事はできそうだけど、なんとなく当社っぽくないので高く評価できない」なんていう評価の仕方はコンピューターには逆に難しいのです。
前編では、AIがアセスメントの実施・運用に対してどのような影響を与え、どんなメリットが生まれるのかを考察してみました。後編においては、AIが持つリスクについて言及し、リスクを抑えつつAIを活用するための原則を考えてみたいと思います。
今回のコラムでは、前編と後編に分けて、AIを人事アセスメントに用いるとどのような良い事があるのかを整理した上で、後編においてはどんなリスクが発生するのか、それらのリスクを管理するために守るべき原則は何なのかを考察します。

AIとアセスメント
AIという用語の定義は研究者により異なり、明確な定義を述べる事は難しいですが、「人間のように思考・判断するように、人工的に作成されたコンピュータープログラムやアルゴリズム全般」のことを指しています。2000年代から、大量のデータを用いてコンピューター自らが学習し知識を獲得する「機械学習」の発達に伴い、多様な場面で実用化が進みました。アセスメントの文脈で言えば、AIがもたらす変化は次の2点であると考えられます。
1.新たな情報の活用が可能になる
具体的には、メール等の文字情報、職場での言動・表情、生体データ等などの情報を指しています。デジタル技術の向上により多様な情報をデジタルデータ化する事が従来よりも簡単になっています。どこまでの情報を個人に紐づけて分析することが倫理的に問題ないかという議論はさておき、同僚とのビデオ会議の中で、誰が、どのような表情で、どんな発言を行い、周囲はそれに対してどのような反応であったかはすべてデータ化されており、これらの情報を基にリーダーシップ等の能力を推定する事は夢物語ではなくなりつつあります。(ただし、現時点ではしっかりとした科学的根拠を持って妥当なアセスメントができるという技術が確立されているわけではないので、後述するリスクと合わせて考えていく必要があります。)
2.既存の情報の分析能力が強化される
既存の情報とは、アセスメントで得られるようなパーソナリティ、知的能力、モチベーションなどの情報のことを指しています。既存のアセスメント情報を分析・活用する際にAIを用いることにより、従来の統計学的な分析では得られることのできなかった知見が素早く簡単に取得できるようになります。また、どの設問が測定したい能力と相関が強いのかを検証することにより、妥当性を落とさずにアセスメントの時間を短縮するような事も可能です。いずれも測定手法自体の変容というより、そこから得られる情報の有効活用をするためにAIを駆使するという事です。

AIを活用することの具体的なメリット
AIを適切に活用する事で得られる代表的なメリットは、「妥当性の向上」「バイアスの軽減」の2つです。妥当性の向上:
前述の通り、大量のデータを適切に分析する事によって、従来のアセスメントでは為し得なかった水準で人や組織のパフォーマンスを予測する事が期待できます。人を選抜・異動させる時に、「その人の新たな職務における成功確率の予測」や「その人が加入する組織の風土がどう変容するかの予測」に関する精度が向上すれば、意思決定の過程に大きなインパクトを与えます。
バイアスの軽減:
特に人が人を評価するような場合、ハロー効果に代表されるような多様なバイアスが評価結果に反映される可能性がある事はよく知られている事実です。人間の特徴ともいえる主観的な判断は有用であることも多いですが、同じ情報を同じ様に安定的に評価するという事においては明らかにコンピューターの方が優れています。「仕事はできそうだけど、なんとなく当社っぽくないので高く評価できない」なんていう評価の仕方はコンピューターには逆に難しいのです。
前編では、AIがアセスメントの実施・運用に対してどのような影響を与え、どんなメリットが生まれるのかを考察してみました。後編においては、AIが持つリスクについて言及し、リスクを抑えつつAIを活用するための原則を考えてみたいと思います。

このコラムの担当者
杉浦 征瑛
日本エス・エイチ・エル株式会社 副部長