コラム

人事コンサルタントの視点

アセスメントの費用対効果の測定方法

公開日:2023/04/20

「事業は人なり」という言葉をよく聞きます。企業にとって、従業員の採用や育成、配置、エンゲージメントの改善など、様々な人事活動が収益に影響するのは明らかです。しかし、その影響の程度を正確に測定するのは容易ではありません。このコラムでは、アセスメントの費用対効果 を測るための考え方やポイントについてお伝えします。

費用対効果を測る目的

人事領域でも新しいキーワードが次々と生まれており、流行に惑わされずに根拠に基づいた人事施策を行うためには、成功の定義や測定、振り返りが重要です。プロジェクト開始前にこれらを定義することは、以下の利点があります。

・施策の価値を実証し、予算を確保できる。
・改善のサイクルを生み出すことができる。
・人事施策が事業成長にどのように貢献するかを経営層に示すことができる。

どのように測定するか

人材への投資は、効果測定の期間が長期になりがちで、曖昧さを多く含んでいます。そのため、財務的な指標だけでなく非財務的な指標も検証する必要があります。測定結果を報告する先のニーズに合わせて検証方法を選択することが重要なポイントです。

SHLは、効果測定を次の3つの観点で整理しています。1から3に進むほど算出の難易度とコストが上がります。これらの算出コストも含め、手法を検討する必要があります。効果測定の方法を決めることは、施策が成功するための重要な条件の一つです。プロジェクト開始前に検討してください。

1.ビジネスサティスファクション:関係者の満足度
2.ビジネスインパクト:主要なKPI(Key Performance Indicator)の変化
3.ビジネスアウトカム:売上や利益などの財務的指標への影響

ここからは、それぞれの観点について解説し、指標の例を紹介します。

ビジネスサティスファクション

多くの場合、関係者にアンケート調査を行い、その集計結果でもって効果を測定します。アンケートの質問項目では、その人事施策のプロセスや結果について回答してもらいます。以下の表は、アセスメントを活用した 人事施策を行った際に、ビジネスサティスファクションを測定する時の指標例です。

ビジネスインパクト

アセスメントの導入によって、人事施策の「効率」と「効果」にどのような変化があったのかを検証します。この検証を行うにあたってのポイントは次の2点です。

・導入前に測定 の指標を決めておく。
プロジェクト完了後に情報収集しようと思っても、データが残っていない場合があります。導入時の期待効果を検討する際にデータをしっかりと残しておきましょう。

・複数の指標 を用意する。
人と組織に関するデータは曖昧であり、ゆらぎがあります。検証するにあたっても複数の指標を用意しておいた方が良いでしょう。

以下の表は、ビジネスインパクトを測定する時の指標例です。

ビジネスアウトカム

企業業績とアセスメントの関連性を明らかにするには統計学や産業・組織心理学などの専門知識が必要です。しかし、この調査結果が得られれば人事施策がどの程度、企業業績に貢献しているかを説明することが可能になり、人事施策の正当性を経営に対して示せます。企業業績とは、収益の増加、コスト削減などを指します。

企業業績に関連する客観的なパフォーマンス指標を用意し、 検証を行うにあたっては、次のような点に留意する必要があります。

・パフォーマンス指標の時間経過による安定性
たまたま特定の期間の業績が大きく上がるなど、パフォーマンス指標自体が安定していない場合、適切な検証結果が得られなくなります。これを防ぐためには、複数の期間のパフォーマンス指標を平均化するなどの工夫が必要になります。

・外部要因の統制
在籍期間や地域、担当する顧客特性や連携する部署などによって、職種は同じであっても全く別の職務を担っている可能性があります。検証を行う際には、こうした条件は可能な限り統制して、均質な職務に従事する集団を対象として調査を行わないと適切な結果が得られなくなってしまいます。

終わりに

人事施策は未来を見据えた重要な取り組みです。HRテクノロジーやタレントマネジメントシステムの普及により、様々な人事データの保持が簡便になっています。現在の取り組みがどのような効果を生んでいるのかを日々検証し、経営の信頼を勝ち得て、将来への人材投資を活性化することが、持続的な事業成長に重要です。皆さまの人事活動の振り返りに役立つヒントとなればと願っています。
杉浦 征瑛

このコラムの担当者

杉浦 征瑛

日本エス・エイチ・エル株式会社 副部長

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