解像度高く人を理解するために~パーソナリティ検査解釈のポイント~
HRテクノロジーの隆盛も相まって、「人(従業員等)」に関するデータの量は増加の一途をたどっています。従来からあった勤怠情報や人事考課情報に加えて、自己申告の情報やエンゲージメントサーベイ、パルスサーベイ、パーソナリティ検査など様々な角度のデータが蓄積されています。「人」のことを理解しようという意図で取得したデータのはずが、いつの間にかデータの山に埋もれ、適切に解釈できなかったり、誤解したりしてしまう場合もあるかもしれません。複雑な情報を解釈するためにテクノロジーを活用することは一つの手ですが、適切な活用にはデータそのものの理解がまずは重要です。

ポイント①各項目の測定内容を理解する
項目名からの曖昧なイメージで解釈すると、適切な人物理解に繋がらないケースが多々あります。質問紙法のパーソナリティ検査では、各項目の定義や高得点者・低得点者の特徴が明文化されています。測定したい特徴を定義しないと測定が難しいからです。定義を踏まえて何を測定しているかを正しく理解すると、誤解が減ります。テストの取扱説明書にその項目を測定するための質問例が開示されていることがあります。質問例は測定結果を理解するためにとても重要な情報ですので、開示されている場合は確認してみましょう。
また次のような事を試すと、測定項目を理解するうえで効果的です。
1. 自分が人柄を知っているグループの検査結果をたくさん準備する(できれば数十件)。
2. 項目ごとに「高得点グループ」と「低得点グループ」を抽出して、各グループを見比べる。
3. 定義から外れない範囲で、2つの集団の違いを言語化してみる。
一人ひとりだとイメージが湧かない場合も、集団としてみるとどういう特徴を測定しているかのイメージがつかめます。
ポイント②項目を組み合わせて解釈する
複数の項目を組み合わせて解釈すると立体的に人物像を言語化できます。例えば、「よく考える」特徴を持っている人がいたとして、「計画的に仕事を進める」という項目も高い場合は「長期的視野に立って、じっくりと考えながら仕事を進めるのを好む」という解釈になります。同時に「フットワークが軽い」という項目が高かった場合は「長期的な視点でよく考えながらも、自分の仮説をぶつけながら情報収集する」という解釈も成立します。このように、単一項目だけよりも複数項目を組み合わせて解釈するほうが、人物像が鮮明になります。一方で、項目を組み合わせて適切に解釈するには経験が必要です。
その場合、なるべく身近な人の測定結果を、次のような手順で解釈することから始めるのがおススメです。
1. 測定結果を見ずに、普段の行動を書き出す。
2. 書き出した行動が測定結果のどのあたりに現れているかを複数ピックアップする。
3. ピックアップした項目を組み合わせて改めて解釈してみる。

ポイント③ギャップや矛盾を感じる部分を見つける
項目を組み合わせて解釈していくと、一部ギャップや矛盾を感じる部分が出てくる場合があります。例えば、「人に指示を出す行動は頻繁にとるのに、人を説得することは苦手である」という結果です。指示を出すのも、説得するのも影響力を行使する行動ですので一般的には同じような結果(両方とも高得点もしくは低得点)になりやすいのですが、そうではない場合はその人特有の経験や考え方が反映されている部分かもしれません。なぜそのような結果になったのかまでは分かりませんが、そこに着目して対話すると思わぬエピソードを聞けるかもしれません。ギャップや矛盾について気づくためのヒントとして、項目間の相関関係についてトレーニングコースの中でお伝えしています。これらの情報をヒントに前述のようなトレーニングを繰り返すことで、自然とギャップに気づくようになります。
終わりに
パーソナリティ検査の結果は自己申告の結果のため、周囲の人の印象と必ずしも一致するとは限りません。ただし、本人の認識を投影しているという意味では一つの事実情報です。解釈するにあたっては、結果データを仮説として取り扱う姿勢が求められます。それを基に対話し、異なる情報が出てきたら、検査結果と実際の行動のギャップを深堀してみると良いでしょう。本人が思わぬ努力をしている場合もあるかもしれません。フィードバック面談の進め方については、詳細な手順を示したハンドブックを用意していますので併せてご参照ください。是非、結果を基に対話することで解像度の高い人物理解が為されることを願っています。
このコラムの担当者
杉浦 征瑛
日本エス・エイチ・エル株式会社 副部長