リーダーシップコンテクストの選び方~サクセッションプランの実践
公開日:2024/09/27
一般的に後継者選抜の基準として用いられるものは、リーダーシップコンピテンシーです。リーダーシップコンピテンシーはリーダーの役割において共通に求められる人材要件ですが、特定のリーダーポストでうまく職務を遂行できるかどうかを予測するのに十分な指標とは言えません。リーダーを取り巻く環境は多様であり、各リーダーの解決すべき課題もそれぞれだからです。
この問題を解決するための新しい概念として、SHLはリーダーシップコンテクストを見出しました。リーダーシップコンテクストとは、リーダーを取り巻く文脈的な環境のことです。SHLの広範な研究によりリーダーシップコンテクストはリーダーの成功に大きな影響を及ぼすことがわかりました。
コンテクストを基準として選抜されたリーダーは、従来の方法によって選抜されたリーダーよりもパフォーマンスが約20%高いのです。優れたリーダーは置かれた環境で求められるリーダーシップを効果的に発揮し、その環境におけるビジネス課題を解決するのが得意であるということがわかります。リーダーの選抜も適材適所が重要なのです。
本コラムでは、サクセッションプランを行う際にリーダーの選抜基準としてリーダーシップコンテクストをどのように選べばよいかについて述べます。

27項目のリーダーシップコンテクスト
SHLのリーダーシップ研究によって見出された重要なリーダーシップコンテクストについて紹介します。SHLはリーダーの成功に大きな影響を及ぼすコンテクストを27個定義しました。コンテクストを抽出したリーダーシップ研究に関する詳細は、コラム「アサインメントは文脈を捉えよ ~次世代リーダー育成 先端研究~」をご覧ください。チームのパフォーマンスを推進する
変革をリードする
結果を出す
リスクと評判をマネジメントする

リーダーポストの要件を定義する
サクセッションプランで後継者を選抜するためには、リーダーの選抜基準を作る必要があります。SHLのサクセッションプラン・ソリューションではリーダーシップコンテクストによってリーダーの基準(プロファイル)を作ります。プロファイルを作る際には主要な関係者へインタビューを行います。主要な関係者の筆頭はサクセッションプランの対象となっているリーダーポストの現職者です。その他には上司やボードメンバー、人事などへインタビューします。
コンテクストを選ぶにあたって、現在に焦点を当てるのか、未来(1~2年後)に焦点を当てるのかを検討します。3年以上の長期的視点を持つべきではありません。環境変化に適応する新しいリーダーを輩出し続けることがサクセッションプランの目的だからです。現在から2年先までの役割、職務、組織が直面するビジネス上の課題に合ったコンテクストを選択します。
今は存在しない役割のプロファイルを作る場合、最も重要なステップは新しい役割を作る理由、目的、その役割が直面する重要課題を理解している関係者に対するインタビューです。ジョブディスクリプションがある場合は参考にするとインタビュー内容がより具体的になります。
適切なコンテクストの数
コンテクストはリーダーが解決すべきビジネス課題と捉えることができます。役割の複雑性が高まれば高まるほど、該当するコンテクストの数は増えます。極端な言い方をすれば27個すべてのコンテクストに該当するリーダーポストがあるかもしれません。現実に世界は複雑になっており、リーダーが解決すべき課題は増加しています。しかし、コンテクストを10個以上選択することはできる限り避けなくてはいけません。推奨するコンテクストの数は7個以下です。リーダーの成功と解決すべき課題の数との関係に関する研究から、リーダーが抱える課題の数が7個を超えるとパフォーマンスが急激に低下することがわかっています。
プロファイルのコンテクストが10個以上あるということは、誰がリーダーとなっても成功するのが難しいポストだということを示しています。本当に10個以上となった場合は役割の再設計を検討するか、万全のサポート体制を上層部とともに作ることをお勧めします。
難易度の高いコンテクスト
誰がリーダーになったとしても難しいコンテクストが存在します。以下4つのコンテクストはリーダーのパフォーマンスに悪い影響を及ぼすことがわかっています。これらすべてのコンテクストに直面しているリーダーの約7割が業績の問題で苦しんでいるというデータがあります。もし、プロファイルに4つの課題がすべて含まれている場合、慎重に人材選抜を行う必要があります。また、この場合も役割の再設計やサポート体制の構築が重要になります。

おわりに
SHLのサクセッションプラン・ソリューションでは、今回ご紹介したコンテクストによるリーダーの選抜基準をパーソナリティ検査OPQと経験サーベイによって測定します。OPQで各コンテクストに対応するポテンシャルを予測し、経験サーベイで各コンテクストにおける職務経験の有無を測定します。この手法が各リーダーポストに対するきめ細やかな適性の予測を可能にしています。最後に私が自分の役割を考慮して選択したコンテクストをご紹介します。
私は執行役員として、直販営業、マーケティング、SHLグループサービスの開発運営、海外とのブリッジを担当しています。選択したコンテクストは以下の通りです。

このコラムの担当者
清田 茂
日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員