コラム

人事コンサルタントの視点

パーソナリティからみるメンターとメンティーの相性について

公開日:2024/10/18

厚生労働省(2023)によると、新規大学卒就職者の約30%が入社後3年以内に離職をしています。早期離職の問題は、採用コストや育成コストの損失という点から、課題としてとらえる企業も少なくありません。「メンター制度」はこの早期離職の防止や社内コミュニケーションの活性化等を目的として実施される制度です。企業によっては、本制度が新入社員へのOJTも兼ねる形で実施されるケースもあります。
メンターとメンティー(指導を受ける立場の人)の信頼関係は主に面談や日々のコミュニケーションによって形成されるため、メンターとメンティー間でどのようにコミュニケーションを取っていくかが重要です。一方で、メンターとメンティーの組合せで失敗する事例もあり、その組合せには注意が必要です。本コラムでは弊社が2024年に行ったメンターとメンティーに関する相性の研究結果をご紹介します。

研究概要・方法

本研究では、パーソナリティ検査OPQから予測できる3つのコミュニケーションスタイル(下図)におけるメンターとメンティーの組合せについて、同じスタイル同士の組み合わせが好ましいかどうか?について研究を行いました。


本研究は日本企業31社のご協力を得て、2021年4月以降に入社した合計1138人のOPQデータとアンケート結果を用いました。アンケートでは、メンティーがメンターに仕事上のミスについて相談する場面の動画を3種類視聴し、自身にとって好ましいメンターの動画を1つ選択します。いずれの動画もメンティーからの相談内容は同じものですが、メンターは同一人物が3つのコミュニケーションスタイルの特徴に応じて、態度や会話展開、アドバイス内容を演じ分けています。
分析では、メンティーが各コミュニケーションスタイルに該当する場合と該当しない場合で、好ましいと選択したメンターのコミュニケーションスタイルが異なるのかをχ二乗検定と残差分析で検証しました。なお、メンター制度利用経験の有無が好ましいと思うメンター選択に影響する可能性を考慮し、分析対象をメンター制度利用経験有無で分けて検討を行いました。

分析結果

まず、メンター制度の利用経験があるメンティーの選択したメンタータイプ割合の結果をまとめると、以下のことが分かりました。
  • 「人間関係重視型」メンティーと「パワー型」メンティーは,統計的に有意な違いは見られなかったが、同じコミュニケーションスタイルの「人間関係重視型」メンターや「パワー型」メンターを選択する傾向が見られた。
  • 「プロセス型」メンティーは統計的に有意に「プロセス型」メンターを選択し、「人間関係重視型」メンターを選択しない傾向が見られた。


続いて、メンター制度の利用経験がないメンティーの選択したメンタータイプ割合の結果をまとめると、以下のことが分かりました。
  • 「人間関係重視型」メンティーは、統計的に有意に、異なるコミュニケーションスタイルである「パワー型」メンターを選択する傾向が見られた。
  • 「パワー型」メンティーは統計的に有意な違いは見られなかったが,同じコミュニケーションスタイルである「パワー型」を選択する傾向が見られた。
  • 「プロセス型」メンティーは統計的に有意に「パワー型」メンターを選択しない傾向が見られた。

結論と考察

上記の結果から、2つのことが分かりました。
  1. メンティーは、自身と同じスタイルのメンターを好む傾向がある
  2. メンター制度利用経験が無いメンティーは、自身と異なるスタイルのメンターを好む可能性がある
①は、同じスタイルのメンターからのアドバイスの方が、自身になじみやすいものであり、今後のアクションとして納得感が高いことが考えられます。
また②は、メンター制度利用経験が無いデータの約60%が、内定者または入社1・2カ月の具体的な仕事イメージがまだ無い人でした。そのような「人間関係重視型」メンティーにとっては、判断をメンティーに委ねるような同タイプの「人間関係重視型」メンターよりも、自らの意見を是として推してくる「パワー型」メンターの方が好ましく思えた可能性が考えられます。

おわりに

今回の研究では、「コミュニケーションスタイル」というモデルを利用して、メンターとメンティーの組み合わせを検討しました。メンティーは同じコミュニケーションスタイルのメンターを好むという結果となりましたが、実運用として理想の組み合わせを全て実現することは困難です
。 重要なのは、メンターがメンティーのパーソナリティを深く理解し、メンティーに合ったかかわり方やサポートを行うことです。その際はぜひ適性検査の結果を参考に、メンティーの人物像をプロファイリングしてみましょう。

※本稿は2024年9月に開催された、産業・組織心理学会第39回大会で発表した内容を一部抜粋してご紹介しています。
遠藤 亮介

このコラムの担当者

遠藤 亮介

日本エス・エイチ・エル株式会社

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