コラム

人事コンサルタントの視点

「万華鏡30」を能力開発に活用する方法(後編)

前編ではパーソナリティと適性の関係、能力開発の考え方について述べました。この後編では万華鏡30を能力開発に活用するための知識とフィードバックによって得られる情報の具体例をお伝えします。


万華鏡30を活用する上で必要な知識

まずは万華鏡30を能力開発で活用する際に必ず知っておかなければいけない2点について説明します。パーソナリティ検査OPQの解釈上の注意点とフィードバックの仕方です。前者は受検者本人と指導者の両方に、後者は指導者に必要な知識です。
OPQを解釈する上で注意すべきことを4つ申し上げます。

1.自己申告
万華鏡30は受検者が自らのパーソナリティについて回答した結果から出力されたリポートです。リポートはパーソナリティの自己理解像を顕在化したものですので、他の人から見たパーソナリティとは異なることがあります。

2.能力ではなくスタイル
OPQは能力を測定しません。あくまでもパーソナリティを測定し、能力の予測値を算出しているものです。

3.スナップショット
OPQの結果は受検した際の受検者の心理に影響を受けます。OPQは安定した結果の得られる項目を測定していますが、それでも受検の際の気分に多少影響を受けることがあります。

4.統計誤差
測定結果には統計誤差が含まれます。どの程度の誤差を考慮すべきかについては尺度によって異なりますが、当社が一般的に使用している標準点(10段階の偏差値)においては、プラスマイナス1点を誤差とします。

これらの注意点に鑑み、OPQを解釈する際は結果を確定的なものととらえず、本人との対話や周囲の人からの情報、行動観察の結果とともに総合的に特徴をとらえてください。
 次はフィードバックについてです。  フィードバックはOPQのトレーニングを受けた人が行います。受検後、出来るだけ速やかに実施してください。  フィードバックを行う人が守らなければならないルールがあります。機密を守ること、アセスメント結果から逸脱しないことです。実施におけるこれらのルールをトレーニングで学びます。 フィードバックを成功させるためにはフィードバックを行う人の姿勢が重要です。受検者に素直になってもらい、積極的に参加してもらうため、受検者を受け入れる雰囲気を作り、親密な関係作りを心がけてください。
話し方については万華鏡30フィードバック時のコメント例を参考にしてください。



質問をする際の心がけは以下3つです。
・短く端的に質問すること
・オープンクエスチョンをすること
・具体的な行動をたずねること

フィードバックで何を行うかについてはフィードバックのプロセスを参考にしてください。



どのようにフィードバックを行うか

万華鏡30を能力開発で活用するには受検者への結果フィードバックが有効です。
最も効果的な方法は1対1のフィードバックです。したがって1on1ミーティングはフィードバックに適した機会と言えます。フィードバックは1on1ミーティングの目的にもかないますので、積極的に取り入れていただくことをお薦めします。目標設定面談、評価面談、評価フィードバック面談など既に行っている1対1の面談機会を活用する方法もありますが、目的の異なるセッションを1回の面談で行うのは望ましいやり方とは言えません。1on1ミーティングを実施していない場合は、能力開発を目的とした万華鏡30のフィードバック面談を新たに設けてください。

事例

万華鏡30フィードバックによって把握できた強みと弱み(測定結果と職務行動との関連付け)および能力開発の行動計画についての事例をお伝えします。

ケース  HRコンサルタント(法人営業職、主な顧客は人事担当者)



<強み>
・顧客へのきめ細かいサポートを得意とする。既存顧客から信頼されている。
(マネジメントコンピテンシーPMC関連項目:まじめさ、情報をとる、判断、専門性、品質志向)
顧客から特定のテーマの情報を求められた際、独自の調査と情報収集を行うとともに専門部署への聞き取りを行い、調査結果リポートを執筆、顧客へ数日中に提供した。顧客から提供までの期間の短さ、資料内容の適切さとわかりやすさを評価され、その後も様々な課題を相談されるようになった。

・信頼関係のある人からの情報収集、情報整理、企画立案、準備してきた資料の説明は得意。
(マネジメントコンピテンシーPMC関連項目:情報をとる、問題分析、コピーセンス、品質志向)
既に信頼関係を構築している既存顧客から相談を受けた。顧客から話を聞くと課題は過去に他の顧客でソリューション提供の経験がある課題と類似したものであることがわかった。過去の経験に基づき課題解決に必要な情報のヒアリングを単独で行い、ヒアリング内容の整理と解決策の立案を単独で行った。企画提案のためのプレゼンテーションは同課のコンサルタントに対してリハーサルを行い、緻密な準備を行って本番に臨んだ。本案件の受注に成功した。

<弱み>
・新規開拓が苦手。
(マネジメントコンピテンシーPMC関連項目:関係構築、柔軟性、インパクト、粘り強さ)
はじめての人と会話することが苦手。相手に関する情報が無く、何も準備できない状態での会話がうまくできない。特に電話は苦手。こちらの話を聞く意思のない人の気持ちを短時間で変えた経験が少なく、自分にはそのようなことはできないと考えている。

・雑談や柔軟な対応が求められる場面では自信がない。
(マネジメントコンピテンシーPMC関連項目:関係構築、柔軟性、ネットワーキング、プレゼンテーション)
目的の無いおしゃべりやその場で対話のきっかけを見つけることが苦手。自分に知識がない話題になると自信がなくなってしまい、質問や意見を述べることができなくなってしまう。

<課題>
・新しい顧客との接点を創出すること
・関係の希薄な顧客の課題を対話によって明確にすること

<行動計画>
・既存顧客からの紹介企業を対象に新規開拓を行う。信頼関係が出来ている顧客に対して、同企業内の別の人事担当者や他企業の人事担当者を紹介していただけるようお願いした。

(この行動計画のねらい)
紹介によって弱みの「関係構築」、「ネットワーキング」を使わずに新しい顧客との接点を作り、強みの「情報をとる」、「専門性」、「判断」によってソリューション提案を行う。また強みの「品質志向」を強化し紹介してくれた顧客へのサービスの質を向上させる。

・柔軟な対話が求められる面談(初期の面談、課題が不明確な段階の面談)には柔軟な対話が得意な上司/同僚に同席してもらい、関係構築をサポートしてもらう。本人は強みの情報収集、企画立案、提案書作成に集中した。

(この行動計画のねらい)
他のコンサルタントからのサポートを得ることによって弱みの「柔軟性」、「インパクト」を補い、強みの「情報をとる」、「判断」、「専門性」を使って最適なソリューション施策を提案する。

最後に

本コラムでは本人や指導者が適性や資質、実際の職務行動を正しく理解することが能力開発に効果的であることを述べてきました。加えて能力開発をうまく進めるためには本人の成長意欲が不可欠です。会社が社員のことをよく知ろうとし、社員の幸せのために真摯に向き合い対話しようとすることが社員のエンゲージメントと成長意欲を向上させるのだと信じています。
清田 茂

このコラムの担当者

清田 茂

日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員

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