リーダーの組合せにおける組織への影響~新規事業創造における調査事例~
公開日:2022/12/16
組織における人と人との相性は、長年議題に挙がるテーマの1つですが、なにをもって相性を判断するかが判然とせず、相性の構造をとらえ、仕事上で応用することが困難なものでした。特に新規事業を進めている現場では、成功パターンが確立されていない中、手探りで意思決定し、業務を進めなければならないため、人の相性が組織へ及ぼす影響は既存事業よりも大きくなります。
本コラムでは、私が担当した調査プロジェクト「新規事業創造をミッションとしている組織におけるリーダー(課長およびグループリーダー)層のパーソナリティの組合せと、組織のエンゲージメントサーベイスコアの関係」の取り組みをご紹介します。
※本コラムは2022年8月開催の日本行動計量学会第50回大会で発表した内容を一部抜粋しています。
1.パーソナリティ検査OPQの受検データを用いてリーダーを3つのタイプに分ける
2.エンゲージメントサーベイスコアを主成分分析によって要約する
3.リーダータイプの全ての組み合わせについてエンゲージメントサーベイスコアを集計する
1.アイデア・人脈型: アイデアマン、人脈・情報提供型得点が他人よりも高いリーダー集団
2.ひっぱり型リーダー: ひっぱり型リーダー得点が他よりも高いリーダー集団
3. 実務協調型: 実務管理型、協調型得点が他よりも高いリーダー集団
1.仕事環境(人間関係側面)
2.上司・組織への信頼
3.企業理念の実践
4.成長実感
5.仕事環境(環境・ツール面)

この集計によって見えてきた組み合わせの傾向は下記の通りです。
【1】実務協調型がいると仕事環境(人間関係面)、上司・組織への信頼は良好
先行き不透明な新規事業の中で、具体的な作業まで落とし込み、チームの和を重視する実務協調型は、メンバーへ心理的な安心感を与えているようです。
【2】同じタイプ同士の組み合わせの場合、上司・組織への信頼は悪化
リーダーが同じタイプの場合、メンバーへ提示する方向性が似てしまい、「同じことしか言わない」といった閉塞感が生まれてしまうのかもしれません。
【3】ひっぱり型リーダー×アイデア・人脈型の組合せは、成長実感を生むものの、仕事環境(環境・ツール面)は不満足を生む
実務協調型が不在の組合せにおいては、どのように実現し、成果を上げるか、といった具体化は自ら行わなければなりません。そのため、環境や道具が整っていないと認識されつつも、成長実感は生まれていたとも考えられます。
【4】ひっぱり型リーダー同士の組合せは全体的に不満足を生む
船頭多くして船山に登る、ではありませんが、リーダーが別々の方向性を示していた場合、メンバーは疲弊してしまいます。ひっぱり型リーダー同士においては、良好な傾向性が見えず、最も注意すべき組み合わせと言えます。
本調査にご協力いただいた組織では、この結果をリーダー層への登用、リーダー間の異動の参考材料として活用することを検討いただいています。
本コラムでは、私が担当した調査プロジェクト「新規事業創造をミッションとしている組織におけるリーダー(課長およびグループリーダー)層のパーソナリティの組合せと、組織のエンゲージメントサーベイスコアの関係」の取り組みをご紹介します。
※本コラムは2022年8月開催の日本行動計量学会第50回大会で発表した内容を一部抜粋しています。
調査概要
本調査は以下の3ステップで進めました。1.パーソナリティ検査OPQの受検データを用いてリーダーを3つのタイプに分ける
2.エンゲージメントサーベイスコアを主成分分析によって要約する
3.リーダータイプの全ての組み合わせについてエンゲージメントサーベイスコアを集計する
リーダーのタイプ分け
リーダー層(課長、グループリーダー)へパーソナリティ検査OPQを実施し、チーム内でどのような役割を好むかの得点を算出しました。この得点でクラスター分析(いろいろな性質のものが混ざった集団の中から、似たものを集めていくつかの集団に分割する手法)を行い、各クラスターにおけるデータ数、特徴を加味し、下記3タイプに分類しました。1.アイデア・人脈型: アイデアマン、人脈・情報提供型得点が他人よりも高いリーダー集団
2.ひっぱり型リーダー: ひっぱり型リーダー得点が他よりも高いリーダー集団
3. 実務協調型: 実務管理型、協調型得点が他よりも高いリーダー集団

エンゲージメントサーベイスコアの要約
エンゲージメントサーベイは20項目以上に及んでいたため、主成分分析(大量の変数をもつデータを数個の合成変数によって表すことで、データの特徴を把握する方法)を行い、以下の5尺度に要約しました。1.仕事環境(人間関係側面)
2.上司・組織への信頼
3.企業理念の実践
4.成長実感
5.仕事環境(環境・ツール面)

リーダータイプの組み合わせごとのエンゲージメントサーベイスコア集計
課長とグループリーダーを3つのリーダータイプのいずれかに当てはめて、課長とグループリーダーの組み合わせを作ると、その組み合わせは全部で9通りになります。次に組合せごとに傘下のチームのエンゲージメントサーベイスコアを集計し、スコア平均値を算出しました。
【1】実務協調型がいると仕事環境(人間関係面)、上司・組織への信頼は良好
先行き不透明な新規事業の中で、具体的な作業まで落とし込み、チームの和を重視する実務協調型は、メンバーへ心理的な安心感を与えているようです。
【2】同じタイプ同士の組み合わせの場合、上司・組織への信頼は悪化
リーダーが同じタイプの場合、メンバーへ提示する方向性が似てしまい、「同じことしか言わない」といった閉塞感が生まれてしまうのかもしれません。
【3】ひっぱり型リーダー×アイデア・人脈型の組合せは、成長実感を生むものの、仕事環境(環境・ツール面)は不満足を生む
実務協調型が不在の組合せにおいては、どのように実現し、成果を上げるか、といった具体化は自ら行わなければなりません。そのため、環境や道具が整っていないと認識されつつも、成長実感は生まれていたとも考えられます。
【4】ひっぱり型リーダー同士の組合せは全体的に不満足を生む
船頭多くして船山に登る、ではありませんが、リーダーが別々の方向性を示していた場合、メンバーは疲弊してしまいます。ひっぱり型リーダー同士においては、良好な傾向性が見えず、最も注意すべき組み合わせと言えます。
本調査にご協力いただいた組織では、この結果をリーダー層への登用、リーダー間の異動の参考材料として活用することを検討いただいています。
終わりに
優秀なメンバーが揃っているものの、組織として成果が上がっていない場合、もしかしたら上記のようにリーダー同士の相性が影響しているかもしれません。また、人と人の相性の良し悪しは日本エス・エイチ・エルでも取り組み事例が少ないものです。是非、組織における相性の良し悪しにご関心をお持ちの企業様はお声がけください。共に可視化に取り組みましょう。
このコラムの担当者
重野 達也
日本エス・エイチ・エル株式会社
HRコンサルティング1課 主任