コラム 人事コンサルタントの視点

未来のスキルを見つける~地域別・業界別の特徴と経年変化~

現在、私たちはAI技術の革命的な進歩を目の当たりにするとともに、人材不足という課題にも直面しています。このような環境では、企業が競争力を維持するために必要なスキルが何かを特定し、そのスキルを持つ人材を見つけることがこれまで以上に難しくなっています。

本コラムでは、将来必要なスキルを持つ人材を確保する方法を検討する上で参考となる、SHLの白書「Skills of the Future and Where to Find Them(未来のスキルと、どこでそれらを見つけるか)」を一部抜粋してご紹介します。

変化し続ける世界とパワースキル

多くの研究では、AIが人間の社会的・感情的な知性や創造的・革新的なスキルを、他のスキルのように簡単に再現することは、難しいことを示しています。¹
このことから、ソフトスキルや創造的・革新的思考がより重要になりつつあること、これらのスキルを持つ人材はAIの時代に活躍するであろうことがうかがえます。

人事領域の世界的なエキスパート、Josh Bersin 氏は将来の成功のためのXファクターとなるスキルを調査し、その結果を「パワースキル(PowerSkills)」のフレームワークにまとめました。²この調査によると、未来のスキルは技術的なものではなく、行動的なものです。
AIの最初の黄金時代が間近に迫っている今、ソフトスキルやAIを活用できるスキルを持つ人材の採用は人事にとって重要です。³

SHLは、「パワースキル」を人事の実務家が活用しやすいように、仕事ですぐに役立つスキルに焦点を当てて定義を追加し、15のスキルにまとめました。

楽観性 (Optimism)
楽観性 (Optimism) 困難に直面したときに、否定的な出来事にとらわれるのではなく、前向きであり続ける。
好奇心(Curiosity)
好奇心(Curiosity) 新しいアイデアに対して開かれており、それを試してみる。
粘り強さ(Tenacity)アイコン
粘り強さ(Tenacity) 長期間にわたり課題に集中し、気を散らさない。
柔軟性(Flexibility)アイコン
柔軟性(Flexibility) 変化を受け入れ、適応する。
誠実さ(Integrity)アイコン
誠実さ(Integrity) 約束を守り、機密情報を漏らさない。
学習意欲(Learning)アイコン
学習意欲(Learning) 新しい情報を吸収し、新しい技術を容易に習得する。
寛大さ(Generosity)アイコン
寛大さ(Generosity) 情報を共有し、他者が成功できるように指導や支援を提供する。
推進力(Drive)アイコン
推進力(Drive) 高い目標を設定し、それを達成するために懸命に働く。
倫理観(Ethics)アイコン
倫理観(Ethics) 外部からの圧力や、個人または組織の目的を推進するための競合するアジェンダにかかわらず、倫理基準を守る。
フォロワーシップ(Followership)アイコン
フォロワーシップ(Followership) 他者からの指示を進んで受け入れる。
共感力(Empathy)アイコン
共感力(Empathy) 他者に思いやりと支援を示し、他者の感情的ニーズに敏感である。
時間管理(Time Management)アイコン
時間管理(Time Management) 自分の時間を管理し、期限通りに仕事を遂行する。
親切さ(Kindness)アイコン
親切さ(Kindness) 礼儀を示し、他者に対して丁寧に接する。
チームワーク(Teamwork)アイコン
チームワーク(Teamwork) チームの目標に集中する。
Communicationアイコン
コミュニケーション(Communication) 口頭での情報を理解し、明確かつ分かりやすく話す。自信を持って発表し、聴衆の反応・関心・理解度を把握し、それに応じてコミュニケーションのスタイルや内容を調整する。

調査データ

「パワースキル」を地域別、産業別、経年で調査するため、仕事に関連する96のスキルを測定するSHLのユニバーサル・コンピテンシー・アセスメント(UCA)を「パワースキル」にマッピングしました。

サンプル総数:67,592人
地域別の内訳:ヨーロッパ(49%)、北米(20%)、インド(20%)、中東(6%)、アフリカ(3%)、アジア(1%)、オセアニア(1%)、中南米(1%)

地域別

各地域の明確な強みを調べるため、各スキルで高得点域(候補者の上位3分の1)に入った候補者の割合を算出し、地域内で順位付けしました。以下は各地域の上位3つのスキルです。
地域 強み(上位3つ)
アフリカ 寛大さ 楽観主義 学習
アジア 誠実さ 寛大さ 倫理
中南米 誠実さ 楽観主義 倫理
ヨーロッパ 柔軟性 コミュニケーション 優しさ
インド チームワーク 寛大さ 楽観主義
中東 時間管理 楽観主義 倫理
北米 倫理 粘り強さ 時間管理
オセアニア 誠実さ 寛大さ コミュニケーション


各地域は独自の強みを示しています。採用担当者が必要なスキルを持つ候補者の確保に苦戦しているのであれば、そのスキルの高い他の地域から獲得することが考えられます。パンデミックで示されたように、地理的に離れていてもリモートで働くことができます。

比較的多く挙がっているのは、「楽観主義」「誠実さ」「寛大さ」です。一方、「共感性」「フォロワーシップ」「好奇心」「推進力」はどの地域でも上位ではありませんでした。しかし、業界によっては重要な強みとして挙がっています。

業界別

様々な業界の特徴を横断的に見ることで、採用担当者にとっての潜在的な人材パイプラインと働き手のキャリアパスが浮き彫りになりました。これらは特に、自動化の影響を受けやすい職務において重要です。既存のスキルセットを活用できる別の業界が分かるため、人材の流動性を高めるのに役立ちます。
業界 強み(上位3つ)
小売 共感性 優しさ 寛大さ
ヘルスケア 優しさ 共感性 柔軟性
銀行・金融サービス 時間管理 推進力 粘り強さ
製造 推進力 粘り強さ 倫理
エネルギー 好奇心 柔軟性 学習
電気通信 好奇心 学習 柔軟性


自動化の進む小売業界の人材にとって、主な強みが共通しており成長産業となる可能性が高いヘルスケア業界が潜在的なキャリアパスとなります。同様に、銀行・金融サービス業界と製造業、そしてエネルギー業界と電気通信業では強み2つが共通しており、人材プールを共有できる可能性が高いです。

新たなパワースキル

最後に経年変化の傾向を調査しました。2021年(N = 7,692)と2023年の最初の3ヶ月間(N = 13,137)について、高得点の候補者の割合を比較し、増加幅が大きいものから小さいものへと順位付けを行いました。大半のスキルで高得点の候補者数が増加しました。上位3つは「粘り強さ」、「優しさ」、「時間管理」です。

おわりに

複数の業界で、候補者の主な強みが共通していることが分かりました。チーム内のスキルギャップを埋めるのに苦労している採用担当者は、別業界の人材プールを活用することが有益です。別の地域へ目を向け、リモートワーカーを活用することも考えられます。

過去2年間で「パワースキル」を持つ人材は増加しており、多数の応募者からスキルを持つ人を見極めるのは困難です。気付かないうちにチーム内でこれらのスキルが高まっている可能性もあります。

スキルをもつ応募者を迅速に見極めるために、また、チームの強みを把握しAI黄金時代におけるチームの成功を阻むスキルギャップを特定するために、アセスメントを活用しましょう。

白書の原文はこちらからダウンロード可能です。

¹ 2017, McKinsey Global Institute, Jobs lost, jobs gained: What the future of work will mean for jobs, skills, and wages
² 3 2019, Josh Bersin, Let’s Stop Talking About Soft Skills: They’re PowerSkills
³ 2022, Research.com, Job Automation Risks in 2023: How Robots Affect Employment
⁴ UCA(Universal Competency Assessment)は、現在国内での取扱開始に向けて準備中です。

廣島 晶子

このコラムの担当者

廣島 晶子

日本エス・エイチ・エル株式会社 主任

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