コラム

人事コンサルタントの視点

応募者の声―40万件のレビューデータから見る応募者体験

はじめに

Candidate Experienceは応募者/候補者体験と呼ばれ、採用プロセス全体を通じて感じる経験や印象のことを指します。企業の求人を見つける段階から、応募、面接、内定、さらには不合格になった場合の対応に至るまでのすべてのやり取りやプロセスを含みます。人材確保が厳しくなる中で、どの企業にとっても応募者体験の重要性は増しています。また、応募者は、Xなどをはじめ、さまざまなデジタルプラットフォームで自身の面接体験を共有しており、その発信の数は増えています。
SHLグループは、独自のAIを活用して応募者の公開レビューを収集し、40万件以上のテキストデータを分析しました。その調査結果から採用プロセスにおける応募者体験にフォーカスしたヒントをお伝えします。

応募者にとってポジティブ/ネガティブな体験とは?

40万件以上のテキストデータから、ポジティブまたはネガティブだった応募者体験が明らかになりました。それぞれ上位10個の体験は次のとおりです。

〇ポジティブ体験
  1. 面接官は職務要件に関連した質問をした。
  2. 面接官は会社について、またその一員として働くことがどのようなものかを話した。
  3. 面接の各段階が想定されたスケジュール内で実施された。
  4. 応募者は面接官に質問する機会があった。
  5. 採用担当者は、採用プロセスの段階について明確に説明していた。
  6. 面接官は学歴や職務経歴に関する質問をした。
  7. 応募者は採用プロセスでのパフォーマンスについてフィードバックを受けた。
  8. 採用担当者は対応が迅速で効率的だった。
  9. 採用担当者は仕事内容や役割の要件について十分な知識を持っていた。
  10. 面接官は、応募者の回答を引き出すために適切な問いかけとフォローアップの質問を行った。


×ネガティブ体験
  1. 採用担当者は失礼な態度をとり(素っ気ない、横柄、または友好的でない態度をとるなど)、やり取りの中で非プロフェッショナルな対応をした。
  2. 面接官は失礼な態度をとり(素っ気ない、横柄、または友好的でない態度をとるなど)、やり取りの中で非プロフェッショナルな対応をした。
  3. 採用担当者が応募者との連絡を突然断ち、コミュニケーションがなくなった。(いわゆる「ゴースティング」)
  4. 面接が直前にキャンセルされた、またはほとんど説明がなくキャンセルされた。
  5. 面接官が遅れて面接に参加した。
  6. 面接官が職務要件について十分な知識を持っていなかった。
  7. 採用担当者が、応募者に対して採用プロセスの進捗を適切に共有しなかった。
  8. 求人情報が誤解を招く内容だった、または実際の職務内容を正確に反映していなかった。
  9. 面接官が面接中に集中しておらず、注意が散漫だった。
  10. 面接官がウェブカメラをオフにしていた。

採用担当者が気を付けること

採用担当者は応募者が採用プロセスのすべての段階で最初に接触する人物であり、常に応募者に最新の情報を提供する責任があります。採用プロセス(求人票作成からお互いの期待の理解までを)について採用担当者と採用する現場のマネジャー間で強力なパートナーシップを築いてください。
職務要件はあるペースで変化します。現場は求める具体的な役割内容と理想的な人物像について最もよく理解しており、採用担当者が古い仮定を持ち続けると、応募者が辞退する原因となる可能性があります。
また、選考の各段階で、意思決定を行い応募者に伝えるためのスケジュールもすり合わせが必要です。コミュニケーションのタイミングやその方法になんらかの問題がある場合、詳細を検証して改善します。

以下の点を押さえましょう。
  • 採用プロセスの各段階を明確に説明できること
  • 効率的で迅速な連絡を心掛けること
  • 職務要件や役割期待について十分な知識を持っていること

面接官が気を付けること

面接官は、従業員として、会社のブランドのアンバサダーであり、組織の文化や価値観を体現する人たちであるべきです。面接官のトレーニングにより、面接官が自信を持って一貫して面接に臨めることができます。採用基準を理解して面接官が適切に面接を行うことは当たり前と思うかもしれませんが、実際は注意点がいくつかあります。職務分析で特定された職務に関連する能力を理解し、適切な質問を投げかけて一定の基準で評価すること、またボディランゲージや積極的な傾聴などの態度などです。

以下の点を押さえましょう。
  • 応募者の貴重な時間を、配慮を持って取り扱うこと
  • 面接官が、組織や、その一員であることがどのようなことかについて伝えること
  • 応募者が面接官に質問する機会を持つこと

面接プロセスで気を付けること

採用プロセスでは、正確な職務内容や情報を提供すること、応募者に対して選考スケジュールを明確にすること、進捗状況を適宜共有すること、そしてフィードバックを提供することが欠かせません。

面接のプロセスでは以下の点を押さえましょう。
  • 面接の各段階が想定通りのスケジュールで実施すること
  • 応募者に採用プロセスでのパフォーマンスをフィードバックすること
  • 各面接がしっかりかつ細やかに行わること

おわりに

この調査結果から、応募者体験は採用担当者と面接官の行動や態度が直結していることが分かりました。応募者の声の中には、「自社では当たり前に実施している/そんなことは起こりえない」と思うものもあるかもしれません。しかし、一定のスケジュールの中で行う新卒採用だけでなく、同時並行で行われるインターンシップや様々な部署でスピーディに随時進んでいく中途採用など、自社で行われる採用活動のあらゆるタッチポイントが応募者体験を形成する要素になっています。このことを改めて認識し、今回のコラムが採用に携わるすべての人が関わる採用活動の点検を行うヒントになれば幸いです。
水上 加奈子

このコラムの担当者

水上 加奈子

日本エス・エイチ・エル株式会社
マーケティング課 課長

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