コラム

人事コンサルタントの視点

職務の満足と不満足は一軸ではない?

社員一人ひとりが職場や職務に満足し、不満を抱かず仕事に従事できることほど理想的なことはありません。「満足」と「不満足」という言葉だけを見ると、それらを一つの軸の両極にあるものと捉えてしまいがちです。たとえば、「社員の満足度を高める施策を行えば、不満もなくなるだろう」あるいは「不満を減らす施策を行えば、皆が満足するだろう」と考えてしまいがちです。
しかし、こうした考えとは異なる実験結果が1959年に発表されています。今回はその実験について改めてお伝えします。

アメリカの心理学者ハーズバーグの実験

ハーズバーグは、ピッツバーグ周辺のエンジニアと経理担当者計200名以上を対象に、インタビュー調査を行いました。
彼らは調査対象者に、「職務に関して最も好ましい、満足していること」と「最も好ましくない、不満に思っていること」を思い出してもらい、クリティカル・インシデント法を用いてそれらに関連するエピソードを詳細に聞き出して分析していきました。
分析の結果、職務の満足と不満足をもたらす要因が全く異なっており、それらは1軸ではなく独立した2軸であることが分かりました。
職務の満足度に影響する要因は「動機づけ要因」と呼ばれます。具体的には仕事の面白さ、達成すること、承認、責任、昇進などの職務内容が主に関わります。これらが満たされると満足度が高まりますが、これが無いことが必ずしも不満足につながるわけではないようです。
一方職務の不満足に影響する要因は「衛生要因」と呼ばれます。具体的には会社の施策や方針、給与、職場の対人関係、勤務条件などの職場環境が主に関わります。これらが社員の要求を満たすものでない場合は不満が高まりますが、それが解消されることが必ずしも満足感につながるわけではありません。
つまり、職務の満足度に関わるのは職務内容や結果であり、不満足に関わるのは職場環境や待遇なのです。

アメリカの心理学者ハーズバーグの実験

衛生要因を改善するには

職務への不満足感が高まれば、心身の不調や離職につながる可能性も高くなります。 まずは職場環境に関する問題がないか、社員の声を聞いてください。ミーティングやサーベイなどの実施をお勧めします。
そこで、例えば「上司部下間の人間関係が希薄」「自身の待遇に納得できていない」という不満を抱えている社員がいた場合は、定期的な1on1の実施が良いでしょう。お互いにフィードバックをし合えば待遇面や今後のキャリア形成に関するすり合わせができますし、人間関係の希薄さも改善できます。このように、声を聞いたうえで、それを改善できる施策をご検討ください。

動機づけ要因を満たすには

動機づけ要因が満たされた人は、その職務遂行のモチベーションをより高めるといいます。
動機づけ要因を高める方法としてハーズバーグが提唱しているのは職務の垂直的拡大です。職務領域の幅を広げるのではなく、今やっているのと同じ職務において、その権限や責任の範囲を今よりも広く与えることを指します。そうすることで社員は周囲からの承認を得られますし、自己責任で職務をやり通すことで達成感が生まれます。このように一人一人が能動的に職務に従事することで、モチベーションを高めるのが良いとされています。
しかし、昨今においては管理職になることを忌避してスペシャリストとなることを望む人も少なくありません。全ての社員が一律に動機づけ要因を満たせる施策を打つことは難しいでしょう。動機づけ要因についても、社員一人ひとりの声を聞き、その人が職務内容に何を求めているのかを確認すべきです。

動機づけ要因を満たすには

モチベーションリソースを確認する方法

社員一人ひとりの動機づけ要因を確認する方法のひとつとして、当社は意欲検査MQというツールをご提供しています。受検者一人ひとりが「どのような要因によってモチベーションを増減されるのか」を予測するツールです。
MQで測定できる18項目は、ハーズバーグが提唱した動機づけ要因だけでなく、幅広い文献の研究や実証的研究の末に選定されたものです。モチベーションリソースについて多様な角度から、客観的な数値情報で捉えることができます。
モチベーションリソースを上司および本人が把握するメリットを3点ご紹介します。

  • 部下が現在の職務に求めていることを知ることで、本人のモチベーションを高めるアプローチを選択できる
  • 部下のモチベーションが上がりやすい職務/ポストへとアサインすることができる
  • モチベーションリソースを本人が知ることで、長期的なキャリアを描く手がかりにできる

    • 一人ひとりのモチベーションリソースを知って職務に活かすことで、職務の成果向上につなげられます。ご興味のある方は、ぜひこちらの資料をご覧ください。

      参考文献:伊波和恵・髙石光一・竹内倫和(2014). マネジメントの心理学 ミネルヴァ書房

      モチベーションリソースを確認する方法

谷口 奈緒美

このコラムの担当者

谷口 奈緒美

日本エス・エイチ・エル株式会社
マーケティング課

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