コラム 人事コンサルタントの視点

次世代リーダーを可能性で選ぶ
――SHLハイポテンシャル人材要件とアセスメントが示す「予測の科学」

なぜ今、ハイポテンシャル人材要件なのか

サクセッションプランやハイポテンシャル人材プログラムにおいて、誰を将来のリーダーとして育てるのかは最も重要な意思決定であり、多くの企業で繰り返し議論されています。実際の人材選抜では、今までの実績や成果、上司の評価、過去の経験に基づいて判断がなされていますが、しっかりと検討された人材要件に基づいた客観的なアセスメントを導入している企業は多くはありません。本コラムでは、そうした前提を踏まえ、SHLが定義するハイポテンシャル人材要件、そしてOPQ、MQ、Verifyを用いたアセスメントが、将来の到達や成果をどの程度予測できているのか、その科学的根拠に焦点を当てて解説します。

なぜ今、ハイポテンシャル人材要件なのか

SHLが定義するハイポテンシャル人材要件の全体像

SHLはハイポテンシャル人材を次のように定義しています。
「現在ハイパフォーマーであるというだけでなく、将来さらに上位の役割に到達し、成果を上げ続ける可能性が高い人材。」
この可能性を捉えるため、SHLのハイポテンシャルモデルは三つの問い(要素)によって構成されています。
第一の問いは「Will they get there?」です。その人は将来、上位ポジションに到達しようとするのか。これはアスピレーションの問題です。
第二の問いは「Will they be effective?」到達した先で成果を出せる能力を持っているのか。これは能力の問題です。
第三の問いは「Will they still be with you?」組織に留まり、力を発揮し続けるのか。これはエンゲージメントの問題です。
この三要素(アスピレーション・能力・エンゲージメント)を統合的に捉えることで、ハイポテンシャル人材を上位のポジションに到達する確率として評価することが可能になります。

アスピレーション 能力 エンゲージメント ハイポテンシャル人材

三要素(アスピレーション・能力・エンゲージメント)の妥当性

このモデルと成功の関係を明らかにするため、SHLは世界中の約11,000人のリーダーを対象としたメタ分析を行い、妥当性を検証しました。

「Will they get there?(上位職へ到達するか?)」を予測する~アスピレーションの妥当性

アスピレーションとは、単なる意欲や向上心ではありません。SHLでは、6つの動機要因と2つの行動特性から構成される、上位の役割に到達しようとする構造的な動機づけとして定義しています。これらは、モチベーション・リソース検査MQとパーソナリティ検査OPQで測定します。
このアスピレーションが本当に将来の到達を予測しているのかを検証するため、基準として用いられたのは、実際にエグゼクティブレベルのポジションに到達しているかどうかです。
分析の結果、アスピレーションスコアの四分位で比較すると、最下位25%に比べ、最上位25%の人材はエグゼクティブポジションに到達している確率が約10.6倍高いことが示されました。実務的に重要なのは、これは「一部の例外的な成功者」の話ではなく、集団として明確な確率差が確認されている点です。特定のモチベーションリソースと行動特性のデータを用いることで、組織のトップとしての真の覚悟を予測することが可能になるのです。アスピレーションは、将来に向けた意思と方向性を可視化する指標なのです。
アスピレーションスコアの四分位比較グラフ

「Will they be effective?(効果的に活躍するか?)」を予測する~能力の妥当性

次に能力です。SHLでは能力を、将来の成果に結びつく行動を安定的に発揮できる力と定義しています。この能力の評価において中心となるのが、パーソナリティ検査OPQと認知能力検査Verifyです。
OPQは職務上のパーソナリティを測定し、コンピテンシーの発揮可能性を予測します。たとえば、ストレス耐性、チームワーク、手順化能力といったコンピテンシーは、マネジメント能力の基盤となります。
Verifyは分析力、創造力、対人積極性、完遂エネルギーといったコンピテンシーにも影響を与える概念的なスキル(思考力や判断力)を測定します。分析力や創造力は複雑な課題への対応力を、対人積極性や完遂エネルギーでは影響力や実行力を支えます。
OPQを統合した能力スコアは、上司による実際の行動評価を基準に検証されています。29の研究を統合したメタ分析の結果、総合マネジメントポテンシャルや総合リーダーシップポテンシャルに対する妥当性係数は概ね0.24〜0.34の範囲にありました。これは人材アセスメント分野では十分に強い水準であり、実務での意思決定に耐えうる予測力を示しています。
OPQを統合した能力スコアのメタ分析グラフ

「Will they still be with you?(組織にとどまるか?)」を予測する~エンゲージメントの視点

三つ目の問いがエンゲージメントです。SHLでは、エンゲージメントを合理的エンゲージメントと感情的エンゲージメントの二つに分けて捉えています。
分析の結果、これらの指標は5年後の定着意向に対して約0.49、職務満足度に対して約0.51という高い妥当性を示しました。これは、将来のリーダーとして育成した人材が組織に留まり続けるかという問いに対し、事前に一定の予測が可能であることを示しています。
ハイポテンシャル人材プログラムは投資であり、エンゲージメントはその回収可能性を左右する重要な要素となります。

総合ハイポテンシャル得点が示すもの

総合ハイポテンシャル得点は、能力とアスピレーションを統合した指標です。この得点を用いて、エグゼクティブと非エグゼクティブを分類した分析では、約88%という高い正分類率が確認されました。オッズ比は約3.4であり、高得点者は低得点者に比べ、エグゼクティブレベルに到達している確率が約3.4倍高いことを意味します。
ここで重要なのは、100%当たることではありません。人事の意思決定において重要なのは、成功確率をどれだけ高められるかという視点です。

総合ハイポテンシャル得点の比較図

公平性・多様性の観点から見た妥当性

性別、年齢、人種・民族といった属性による差異分析ではいずれも差異は小さく、不利な影響を示す水準ではありませんでした。これは、ハイポテンシャルアセスメントが特定の属性に偏らず、多様な人材を公正に評価できる可能性が高いことを示しています。

最後に~分析結果から人事が得るべき示唆

近年、経営層を対象にしたサクセッションプランや部長層を対象にした次世代リーダー育成で客観的なアセスメントを利用する企業が増えてきました。経営環境が目まぐるしく変化する現在において、適切なリーダーを選抜するためには、過去の経営者像にとらわれることなく、新しいリーダーに求められる能力と資質を客観的に測定することが必要だという考え方が一般的なものになってきたと感じます。
経験と勘で選ぶ時代から、客観的アセスメントによるデータで選ぶ時代への転換です。SHLのアセスメントは実績や経験だけではとらえることができないリーダーシップポテンシャルを客観的に測定し、人材のインサイトを提供します。今までの評価と将来可能性を切り分け、なぜこの人材を次世代候補とするのかを説明できることがサクセッションプランと次世代リーダー育成の質を高め、結果として組織の持続的成長につながります。

清田 茂

このコラムの担当者

清田 茂

執行役員

入社以来30年、HRコンサルタントとして日本の人事アセスメント界を牽引。大手を中心にコンピテンシーモデリングから選抜設計、サクセッションプラン構築まで広範なプロジェクトを完遂。特に経営層との対話を通じた次世代リーダー育成に高い実績を持つ。 2002年取締役、2020年より執行役員として直販部門を統括。最前線で「人と仕事と組織の最適化」を追求する傍ら、SHLグループのグローバル知見の国内導入も推進。

メールマガジン登録

日本エス・エイチ・エルのメールマガジンではタレントマネジメント・人材採用に関する様々な情報を発信しております。

メールマガジンに登録する

組織人事や採用の問題解決は
日本エス・エイチ・エルに
ご相談ください

サービスをもっと知りたい方

資料ダウンロード

サービスの導入を検討している方

お問い合わせ