EU大統領の選出方法はおかしい、とSHLが警告。
公開日:2009/11/17
このコーナーは、イギリスのSHLグループが配信している「SHL Global Newsletter」やHPから記事をピックアップ、日本語に翻訳してご紹介するものです。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
今回は時事ネタです。11月19日、EUの初代大統領を選出する会議が開催されます。それに絡め、組織トップの選抜方法についてSHLからのコメントがプレス・リリースされました。
企業が経営幹部を採用する場合、EU大統領という新しい役割を誰にするについてのEUのようなやり方をやってはいけない、と人材アセスメントプロバイダーの第一人者であるSHLが警告している。(2009年11月3日プレスリリース記事)
これまでのところ、EU大統領探しはトニー・ブレア氏を含む候補者たちについての混乱と主観で台無しである。そもそも候補者たちがその役割に適切かどうかを見ることもしていない。トップの職務を埋める際、企業ははるかにより構造的で客観的なやり方をとらなければならないとSHLは考える。さもなければ、間違った人を採用し、組織の成功に大きな影響を与える。
SHL CEOディビッド・リー氏は次のように述べている。「上級幹部を採用する際、組織はまず、その役割に何が必要なのかを慎重に検討すべきです。次に、求められる人物のタイプやコンピテンシー、経験の概要を描き、それらの基準に対して選抜されてきた候補者を客観的に評価します。EU大統領の場合、自分たちが何を求めているのか明確な考えをもっていないように思われます。それゆえ、提案されている候補者たちは全く不適当かもしれません。」
SHLが企業にアドバイスしていることは、「経営判断」(経営状況を効果的に比較考量し、判断を下す能力)を含む幅広いスキルに対して幹部レベル候補者を評価することである。
リー氏は続けて次のように述べている。「上級管理職には優れた経営判断が求められます。下された決定は、それが優れたものでもひどいものでも、事業業績に過度に大きな影響を与えます。「判断」は、現実場面で示される以外で、評価するのが非常に難しいスキルです。しかし、評価を可能にするツール(幹部向けのシナリオ)があります。これらのツールは、誰が組織に貴重で継続的な貢献ができるかを見分ける際に極めて有効です。」
この記事が更新される時にはすでに大統領が決定していることでしょう。大統領の選出がどのようなプロセスでなされているのか、実際にSHL CEOが言うように、大統領に求められる要件について何の議論もされず政治的な力学によってすすんでいるのか、私にはわかりかねるところです。日本ではEU大統領についてまだあまり報道されていないようで、SHLグループ本部のあるイギリスを始めとしたヨーロッパの空気を感じたいなあと思いました。
記事の本題はEU大統領そのものではなく、企業組織の上級幹部の選抜手法についてです。新卒や若手の中途採用など、初級・中級レベル社員の採用と基本的に同じことをきちんとやりなさい、ということでしょうか。上級幹部はそのひとつひとつの動きが組織やビジネスに与える影響力が格段に大きいですから、採用の基本プロセスをきちんと踏むと踏まないとで違いが歴然として現われるという警告に異論の余地はありません。

このコラムの担当者
堀 博美
日本エス・エイチ・エル株式会社