事例:日産
公開日:2011/07/12
このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループのネット配信「SHL Newsletter」や広報誌「SHL News」、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
今回ご紹介するのは、工場の大量採用に関する事例です。
背景
英国日産自動車製造会社のサンダーランド工場は、イギリスで最大の自動車工場です。『我々の将来への投資は車の開発だけに限られるものではありません。我々は人を第一に置く会社であり、社会的価値の創造を支援し、明日の社会を築く機会を人々に与えます。』
チャレンジ
数多くの賞を受賞している「キャシュカイ(QASHQAI)」(日本名:デュアリス)の売り上げの伸びに対応するため、日産は2008年1月、サンダーランド工場に800人の製造スタッフを採用する必要に迫られました。22週間で約5000人の応募者を評価しなければなりません。
解決策
選考では、基本的な言語、機械、計算スキルを判断するために、SHL能力テストが実施されました。また、DSI(Dependability & Safety Instrument:信頼性・安全性検査)も実施されました。DSIはプレスクリーニング用の短時間のツールで、勤怠が良く、有能で前向き、質の高い仕事をすると信頼できるような人を見分けるものです。さらに、安全が重要な職場で事故を起こす確率が低い人を明らかにします。
テストで平均以上の得点を取った応募者は最終段階に進み、手指の器用さテスト、生産ラインのトライアル、コンピテンシー面接を受けます。
最終的に、日産は8000人を越える応募者に対応し、1000人を採用しました。
結果
採用後6ヶ月の時点で、日産はSHLと連携し、DSIツールが成功をうまく予測できたかどうかを検証しました。新しく採用された社員のパフォーマンスをラインマネジャーに評定してもらいました。分析の結果、DSI得点は社員の総合パフォーマンスと有意に相関していることがわかりました。DSIで上位3分の1の得点を取った社員は、「優れたチームワーク・スキルを持っている」とマネジャーに評定される率が2倍でした。また、高得点の社員は「事故を起こしやすい」とマネジャーに評定される率が著しく低い結果となりました。
日産のシニア人事コントローラー、David Reay氏は次のようにコメントしています。『ラインマネジャーからの全般的なフィードバックは極めて好意的なものでした。分析の結果は、SHLのDSIが、安全志向が高く、質の高い仕事をすると信頼できるような応募者を、すばやく正確に見分けることができたことを示しています。』
『DSIと知的能力テストを併用することで、選抜プロセスの早い段階で応募者の約半分を客観的に選抜でき、能力のより高い応募者に集中することができました。膨大な量の時間と費用が節減できました。』
DSIは5~6分で実施できる短い検査です。最前線のオペレーション職や接客職を対象とし、勤怠がよい、事故を起こさない、チームワークよくきちんとした仕事をできる人を見分けることを目的としています。出力される得点もひとつだけです。OPQなどパーソナリティ検査で言うと、几帳面や友好性、情緒の安定性をざっくりと測定するものです。時間とコストの制約のある中での選択肢の一つと言えましょう。
特に海外ではこういった、integrity(誠実さ)やhonesty(正直さ)の測定を目的とした簡単な検査を良く見かけます。日本では勤怠が問題になるような事象はまだまだ少ないという文化なのでしょうか、これまで本格的に実用化される場面は見受けられませんでしたが、今後はどうでしょう?

このコラムの担当者
堀 博美
日本エス・エイチ・エル株式会社