2013年グローバル・アセスメント・トレンド調査報告書
公開日:2013/03/18
このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
今回はSHLが毎年実施しているグローバル・アセスメント・トレンド調査、第5回の結果に関するプレス・リリース記事を取り上げました。
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SHL 2013年度グローバル・アセスメント・トレンド調査の結果によれば、『ポテンシャルが企業業績にどう影響しているかをわかっていない』人事担当者は77%、『人材データを活用して事業上の意思決定を進めている』企業は半数以下です。世界の人事担当者約600人が回答したこの調査から、人事が社員データの量に圧倒され、事業推進に役立つような意味のある洞察を引き出すことに苦労している様子がうかがえます。
企業は厳しい市場でリストラやコスト・カットを行いながら売上を伸ばそうとしています。2013年の人事の優先課題はそのニーズを反映して変革を推進するための、『社員エンゲージメント』(55%)と『リーダー発掘』(52%)でした。『パフォーマンス管理』(49%)、『人員計画』(43%)、『トレーニング』(42%)が続きます。社員の生産性・パフォーマンスという短期的な側面と、会社のビジョン・ニーズに合った人材戦略という長期的側面のバランス間の争いを反映しています。
ケン・ラッチ(SHL商品開発改革部長)は次のように述べています。「たとえ企業が社員パフォーマンスを測定しているとしても、これまでは主に業務効率のデータでした。戦略的な人事決定を下せるようなデータではありません。つまり、人材のポテンシャルや将来の能力という重要情報は見過ごされてきました。そのため、次世代リーダーの見極めや重要職務につけての育成など、狙いを絞った施策がうまくいかず、業績や事業の継続性が危険にさらされています。」
ビッグ・データという課題
もうひとつ報告書が明らかにした点は、人事担当者が『データの大洪水』に直面しており、人材データをどうマネジメントして会社の業績に影響を与えるかについての混乱がみられる、ということです。2012年の時点で毎日約2.5エクサバイト(※1エクサバイト=10の18乗バイト)が作り出されており、40ヶ月ごとに倍増する見込みです。人事が克服すべき大きな課題の2つは『データの質』と『アクセスのしやすさ』で、これらの面で改善の余地があると回答者は答えています。
『人員計画』が優先課題の上位5位内に入っていますが、『自分の会社は人事決定を下すために社員の能力やスキルの客観データを使っている』と回答した人は半数以下(44%)、『自分の会社の人事データの管理方法に現在満足している』と答えた人はわずか18%でした。しかしながら、CEB社からまもなく発表される報告書によれば、人材データ分析をうまく活用している会社は社員の強みや業績、定着率を19%押し上げることができます。
ソーシャル・メディアもその大洪水に加わって人事の気をそらせるデータ源の一つです。88%が『ソーシャル・メディア・サイトからの受検者データの質に自信がない』としているにもかかわらず、20%が『採用決定にその情報を使う』、30%が『候補者の適性判定にそのデータは役立つと思う』と答えています。
「人事は社員についての戦略データをビジネスに提供できるよう取り組んでいますが、今のところビッグ・データを利用するには整備不十分です。ピープル・インテリジェンスを見極め、測定し、人事データを互いに関連付けるために必要なシステムやツールをまだ持っていません。社員の複雑な大量のデータを分析し、意味のある指標に変換する能力があれば、人事はスキル不足や能力開発機会を明らかにできます。ビジネスプランを実行して期待通りのペースで成長するための人材が社内にいるかどうかなど、人事に関する最も緊急な問いに答えることもできるでしょう。」(ラッチ)
調査には、10以上の業界、様々な規模の、イギリス、アメリカ、中国、オーストラリア、南アフリカなどを含む世界中の企業の人事担当者592名が回答しました。報告書は人事における2013年の主なトレンドと、人材アセスメントの実際についての洞察に焦点を当てています。
この調査はSHLが毎年実施しているもので、今回が5回目になります。2012年度の結果は本コラム第99回で、2011年の結果は本コラム第77回でご報告しています。
今回の調査報告書の特徴はEmerging経済圏(インド・中国・南アフリカ・中東)とEstablished経済圏(欧米・オーストラリア・シンガポール・香港)に分けて詳細を分析していることです。全体として、『人事の優先課題』などおおまかな結果は前回からさほど大きな変化はありません。ソーシャルメディア情報の台頭についても2012年から微増であり、人事を取り巻く環境が一年足らずでガラッと変わるものではないことはうなずけます。
調査報告書の本文はここから入手できます。画面上で申請フォームへのご記入が必要ですが、記入によって何らかの義務が発生することは全くありませんので、どうぞお気軽にご活用ください。

このコラムの担当者
堀 博美
日本エス・エイチ・エル株式会社