管理職によるコーチングに対する期待を再考する
公開日:2018/01/15
このコーナーは、当社がライセンス契約を結んでいるCEB SHL Talent Measurementがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主に広報誌やユーザー向けネット配信、HP、プレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
今回はCEBがトップエグゼキュティブに向けてCEBがまとめた白書「Top Insights for the World’s Leading Executives 2017-2018」から一部をご紹介します。
課題
今日、社員の働き方は大きく変わっています。社員が職務で活用するスキルの4割近くが前年一年間で獲得されたものだ、という事実があります。
通常のアプローチ
教育研修担当部門(L&D)は、社員の幅広いスキルの開発に「常時オンの」アプローチをとる管理職に頼ってきました。しかし、このアプローチは管理職にとって大変であり、社員のパフォーマンスを8%下げます。
ベストプラクティスの解決策
優れたL&Dは「コネクター」タイプの管理職の育成・支援に注目しています。コネクタータイプは部下ひとりひとりに合わせたコーチングを行い、部下と連携してチームで部下が互いに能力開発し合えるよう力を与え、ぴったりのコネクションと提携します。
L&Dは管理職に頼り切っている
平均的な管理職が部下の能力開発に使う時間はわずか9%。ほとんどの企業のL&Dチームはそれを30%以上に増やしてほしいと考えます。しかし、管理職は仕事が多く負担が大きすぎるのが現実です。その結果、管理職の資質がよどみ、社員は自分が現在の仕事や将来のキャリアに必要なスキルを欠いていると感じます。
社員の能力開発において管理職により大きな役割を果たしてもらいたい、とL&Dが考えていることは明らかです。しかし、管理職に「常時オンの」アプローチをとってもらいたいとL&Dが期待するのは正しいのでしょうか?
部下の能力開発への取り組み方のタイプ
管理職が示す行動とその有効性を評価した90近くの変数を我々が分析したところ、部下のコーチングや能力開発について、全ての管理職が次の4つのタイプのどれかに当てはまることがわかりました。
- 「常時オン」タイプ
継続的かつ頻繁にコーチングして能力開発を推進し、幅広いスキルに関してフィードバックを与えます。 - 「先生」タイプ
自分の専門性や経験に基づいて部下を能力開発します。アドバイス的なフィードバックを与えます。 - 「チアリーダー」タイプ
部下の能力開発にハンズオンのアプローチをとります。権限を委譲し、肯定的なフィードバックを与え、部下が自分で自身の能力開発を方向づけできるようにします。 - 「コネクター」タイプ
コーチングや能力開発で部下を他の人に紹介し、狙いを絞ったフィードバックを与えます。
どのタイプがベストか?
かなりの差で「コネクター」タイプがベストです。彼らは部下のパフォーマンスを26%向上させ、部下が高業績者になる確率は3倍です。
一方、多くの企業が他のタイプよりも強く重視するタイプ、すなわち「常時オン」タイプは改善どころかパフォーマンスを下げます。
「コネクター」タイプはどうやって成功するのか?
社員の57%が「自分は同僚を通して新しいスキルを開発する」と答えています。ただし「コネクター」タイプの管理職は単に部下と同僚メンターを組み合わせて、あとはよろしく、とするのではありません。彼らはコアとなるコーチング活動を数多く行い、次の3つのコネクションを育てます。
- 個別化する
部下のニーズや興味に合わせた能力開発を行います。 - 力を与える
チームメンバーが互いにリアルタイムで学び合えるよう促すことによって、仲間による能力開発ができるようチームに力を与えます。 - 提携する
ぴったりの提携先とパートナーを組み、新しいコンタクト先からどのように学ぶかを部下に教え、自分の管轄外のところで部下がそのネットワークや経験を広げることを支援します。
「コネクター」タイプの管理職を育成する3つの方法
部下を遠ざけることなく業績を推進する管理職を育てるには、次の3つで「コネクター」タイプの管理職育成に焦点を移行させてください。
- 部下のニーズを診断できる管理職を育成する
管理職に部下のあらゆるニーズに対するコーチングや能力開発をさせる代わりに、a)部下それぞれのニーズや興味を診断し、b)それに合った能力開発活動をアレンジすることを焦点を絞って管理職を支援します。 - 管理職にチーム開発を促進するスキルを身につけさせる
個々の部下の能力開発をどう推進するかを管理職に理解させることだけに注目する代わりに、チーム開発や仲間同士のスキル共有を促進するスキルを管理職に身につけさせます。 - コネクションの質を管理職が改善できるようにする
部下が能力開発に使えるコネクションをただ増やせるようにする代わりに、それらのコネクションの質を向上できるようなツールやプロセスでもって管理職を強化します。
「Top Insights for the World’s Leading Executives 2017-2018」はCEBの研究調査から得られた知見をまとめたもので、毎年発表されています。職務部門別に8つのテーマに分かれており、今回は人事テーマ3つのうちの一つをご紹介しました。
全文はこちらからダウンロードできます(お名前やメールアドレスなどの入力が必要です)。
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部下指導についての管理職のタイプ分け。常時オンタイプの管理職(Always On Manager)が部下のパフォーマンスにマイナスのインパクト、という点がかなりの驚きです。口うるさい上司は百害あって一利なし、というところでしょうか。

このコラムの担当者
堀 博美
日本エス・エイチ・エル株式会社