異動や配属を検討する際、本人の希望・適性・現場からの要望、どれを優先して決めていくべきでしょうか。
会社都合で異動や配属を一方的に決定できる時代ではありませんが、全社的観点から異動や配置転換が必要な場合も当然あります。「本人の希望・適性・現場からの要望」の3点のどれを優先事項とするかは、その会社の人事に関する方針や事業や組織の状況などによって異なりますが、異動や配属は「適材適所を踏まえ、その人が成果を出すことを期待して行うもの」であるはずです。
その点からは、まずは「本人の希望」を可能な限り考慮すべきでしょう。特に家族や生活環境など個人的な事情がある場合は、配慮を欠くとそのまま離職につながるケースが多々あります。
社員がどのような点にモチベーションや満足度を感じているのか、どのようなキャリアを築いていこうと考えているかなど、しっかりとヒアリングすることが必要です。
もちろん、異動先、配属先で本人が成果を出せるかどうかは、適性があるかどうかが大きく関わってきます。本人がモチベーションを高く持って強みを活かせる場所でこそ能力を発揮でき、かつチーム全体のパフォーマンスも向上するはずです。
長期的な視点からも、適性がない部署では成長が停滞したり、組織にマイナスの影響を与えるリスクが生じます。これまでの業績成果とアセスメントデータを活用してしっかりと適性を判断して下さい。
会社ですから、現場からの要望も当然あります。彼、彼女がほしい、あの人材なら即戦略として期待できるといった要望からの異動もあるでしょうし、将来の成長のためにこの仕事を経験させたいという場合もあるでしょう。この場合は、本人、現場に対して異動や配属についての理由を明確にして、適切な説明を行い、納得をしてもらい実行することが大切です。異動理由には、本人の希望や適性を考慮し、できるだけ近い部署への異動ができれば不満も和らぎます。
どのような観点を優先するかはバランスを取っていくしかないのですが、大切なことは短期的な異動・配属理由ではなく、その社員が5年後、10年後にどう成長しているかを考えることです。
この異動が、この先にリーダーとなるための本人の成長機会となるとなれば、社員も安心して異動できるのではないでしょうか。

このコラムの担当者
奈良 学
日本エス・エイチ・エル株式会社 代表取締役社長