採用基準にコミュニケーション能力というものがやたらと使用されます。
日本人同士ならある程度あって当然の能力をなぜ企業は重視するのですか。
日本人同士だからといって誰もがビジネス上のコミュニケーションをうまく取れるものではありません。同じ日本語で話すことと相手の言っていることを正しく(その意図通りに)理解できることとは別です。むしろ日本人と非英語圏のアジア人がお互い慣れない英語を使って会議をした時の方が、簡単な表現と相手の言葉をしっかり聞き取ろうという姿勢から中身のある議論ができたという経験をしたことのある人もいると思います。
会社の中で、以前と同じように若手社員に説明をしても昔のように伝わらない感じがすると思っているベテラン社員は多いのではないでしょうか。「コミュニケーション力」の定義は決まったものがありませんが、確かに「聞く力」と「確認する力」は落ちている気がします。最初から通話相手がわかっている携帯電話での会話や要件のみを伝えるショートメッセージで育った若者には、会社の固定電話での応対や文書、手紙のやり取りは別次元のものかも知れません。即戦力として学生の「コミュニケーション力」を重視するのはわかりますが、コミュニケーションの前提となるお互いの情報、常識レベルのすり合わせがまず必要ではないでしょうか。

このコラムの担当者
奈良 学
日本エス・エイチ・エル株式会社 代表取締役社長