ジョブ型採用(職種別採用)が増えてきている中で、新卒学生に対し「専門性」が求められるようになってきている気がします。しかし、こう言っては何ですが、学生が持っている専門性は、よっぽどのことが無い限り「多少の知識」でしかなく、それなりの能力がある学生であれば、入社後2~3年で身につくのではないかと思っています。また、専門性であれば中途採用をすれば補えてしまうとも思います。それでも新卒に「専門性」を求めてジョブ型採用(職種別採用)をしていく意味・メリットは何だと思いますか?
日本の大学生の大多数が入学後に幼稚園児のようになってしまうのでピンと来ないと思いますが自分の感覚では1割未満くらいはすでに企業が欲しがる専門性を身につけている人間は存在します。
猛烈に古い話で恐縮ですが、自分は学生の頃モデム(アナログ通信に使う)の構造やATコマンドなどは完全に理解しており入社直後から関連する開発やメーカーに行ってモデム設定方法の定義ファイルを作成(当時1日30万円)などしたことがあります。もちろん学生のレベルなのでその道のガチ勢に比べればお遊びみたいなものでしたが、社会のニーズ的には今考えても十分な専門性だと思います。
社内にいた同世代の中にも特定部門でずば抜けた存在の人間はおり、その専門性は高く評価されていました。同じ学部でもソーラーカーなどで実績を作った人間もいますし、ハンドメイドで回生ブレーキ(30年前ですよ)設計していたことを覚えています。その人は通信の会社に行きましたが、自動車関連の企業から声をかけられていました。
ご質問にあるように2,3年で身につくのであれば自分に言わせれば「大した仕事じゃないな」って思います。そんな歯車にできる仕事は別の人にやらせておけばいい。
企業が欲しているのは「藤井聡太二冠」のような人材であり、そこにジョブ型という専門性を発揮する部門と雇用体系でグローバルな競争に勝ち抜こうとしているのです。
現在でも総合商社がTOEIC400点の人を採用して英語の勉強を入社後にさせていますか?ということです。(他のレアな言語ができれば別)
できる人をより伸ばすことはやります。必要な専門性は持っていることが大前提。ジョブ型採用(職種別採用)はそういう環境になります。
中途採用は運が良ければ採用できますが、完全一致する専門性を持っている人は簡単には見つかりません。だからこそ新卒で十分なインセンティブを与え育てようとしているのです。それがジョブ型採用のメリットです。

このコラムの担当者
三條 正樹
日本エス・エイチ・エル株式会社 取締役