弊社でも新卒においてジョブ型採用の導入を検討していますが、育成を考えたときに、従来通りのメンバーシップ型の方が効率が良いのではないかとの意見があがりました。こうした意見についてどのようにお考えになりますか。
新卒採用においても、盛んに「ジョブ型採用」の導入を検討という声がきかれますが、採用対象すべてについてこれまでのメンバーシップ型(総合職採用型)から置き換わるわけではないでしょう。むしろ特定の職務について限定的に運用されていくのではと考えます。IT人材や法務部門、マーケティング部門といった専門職に近い人材です。
育成面でも、ジョブ型を専門職採用と考えれば、専門的知識、スキルを段階的に身に着けさせるためにはより高度な専門性をもつ上長がしっかりと指導していけますので、育成計画もたてやすいと思います。配属された現場でのOJT教育中心でかつ定期的にあらたな分野に異動させ一からまた仕事を覚えさせるということで中長期的な視点での育成計画がむずかしいメンバーシップ型よりかえって効率がよいともいえるのではないでしょうか。
いまの、「ジョブ型が人材課題の解決のための魔法のような処方箋」的議論は、一時の「成果主義導入こそが最善策」議論のときのムードに似ている気がします。
まわりの雰囲気に流されるのではなく、自社にとって必要な人材をどのように採用し、育成していくかという根幹をまずは確認すべきでしょう。表面的な欧米のジョブ型採用のまね事で解決するものではありません。

このコラムの担当者
奈良 学
日本エス・エイチ・エル株式会社 代表取締役社長