人材ポートフォリオを作成し、現在の人材を可視化するよう上層部から求められています。弊社はメーカーで職種が多岐にわたっており、明確に示すことができるか不安です。どのように進めたらよいでしょうか?
人材ポートフォリオは、社員数が多く、多様な職種を有する会社にこそ効果があります。人材ポートフォリオの目的は会社の人材をわかりやすくとらえることですから、貴社上層部の指示は適切であるといえます。
人材ポートフォリオを作る場合、人材を分類するための基準が必要ですので基準作りからはじめます。二つのアプローチ方法があります。
一つ目は上層部の人材に関する問題意識を聞き取ること。上層部へのインタビューです。可視化したい背後には必ず問題意識があります。例えば、新事業開発を進めたいが出来る人はいるか、若年層に次世代幹部になれる人はどれだけいるか、海外事業を強化したいが出来る人はいるか、中期的に店舗スタッフを別部門へ異動させたいがどんな適性を持った人がいるのか、などです。これら問題意識を捉え掘り下げていくことで、人材評価の基準を作るのです。
二つ目は全社員に適性検査を実施して、自社の社員を分類するために最適な軸を統計的に作ってしまう方法です。適性検査は、特定の職務やコンピテンシーに特化したものでなく、幅広い職務や階層、コンピテンシーに対応できる総合的なものが望ましいです。統計分析には様々な手法がありますが、主成分分析、因子分析、クラスター分析などの方法が使えます。
どちらかだけでなく両方を使って総合的に基準を決めてください。専門的な作業なので必要に応じてコンサルタントを使った方がよいと思います。
基準が出来たらその基準に照らして人材を分類します。基準作成で用いた適性検査データを流用し、分類するのが最も効率的です。その他には360度評価や様々なサーベイなどが分類に使えます。最も避けるべきは主観的な分類です。努力して適切な基準を作成しても、分類を誰かのさじ加減でやってしまったら、今までの努力が台無しです。できるだけ客観的な情報に基づき分類してください。

このコラムの担当者
清田 茂
日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員