数年前から副業を認める大企業が増えました。厚労省も原則副業を認める旨のガイドラインを出しています。しかし、実際に約50%の容認率をなかなか超えていきません。
その理由が分かれば教えてください。
理由は様々でしょう。働き方改革の一環として、多様な働き方の一つとしてということで「副業・兼業」を大いに推進するという姿勢はわかりますが、あまりに、メリットばかりを強調し過ぎているからではないでしょうか。
会社をあてにすることはできない、自らが自分でキャリアを考える時代ということで、主体的に学んでいこうという人が増えています。当然、一つの会社に長くいることに拘らない人が増え、人材の流動化か進むはずですが、一方で新卒学生にアンケ―トを取ると安定性を求める層が増えているとの結果も出ています。
つまり働き方についての考え方も、同じ方向に向かって大きく変わっていくということではなく、いろいろな流れが複雑に絡み合っていく時代になっているということでしょう。
企業側からは、優秀な社員が副業・兼業を経験し社外との交流の中でスキル向上を成し遂げてくれる、さらにはこれまでにはなかったかたちでイノベーションを社内にフィードバックしてくれるというプラス面を強調していますが、力をつけてくればもっと違ったフィールドでチャレンジしたくなり退職していく社員も当然いるはずです。正業と副業が逆転し、副業の方に力を入れてしまうこともあるでしょう。収入面で補填をするために副業をせざるをえず、無理をして体調を壊してしまう場合もあるかと思いますが、こうした場合は正業の側の企業はどこまで支援してくれるのでしょうか。残業の考え方も概要はできたものの詳細はこれからです。
こうした点を考えれば、副業解禁に踏み切れない企業、兼業をやろうとまでは思わない社員がまだまだ多いのも納得できます。
役職定年制を廃止する企業が増えているという話も同様です。年齢で一律に役職を外しかつ給与を下げてるシステムはおかしいという意見もわかりますが、それはこれまでの年功序列制度から生れたものであって、実力主義、つまり若いうちから能力があれば抜擢していくということになれば、当然役職定年それ自体は自然消滅していきます。いろいろなシステムが制度疲労を起こしている気がしますが、すべてがゼロクリアになる方策などありません。

このコラムの担当者
奈良 学
日本エス・エイチ・エル株式会社 代表取締役社長