シニア世代が管理職のポストに居座り続けることで、若手が昇進するためのポストが一向に空きません。かといって、日本の雇用制度上、人員整理を目的とした解雇をすることはできません。何か良いアイデアがあれば知りたいです。
当方シニア世代ですので、「居座り続ける」という言われ方には少々反発したいところもあります。我々が総合職として採用された時代は長期雇用と年功序列がセットでした。企業業績も右肩上がりで明日はもっとよい生活ができると期待できた良き時代でもありますが、厳しい競争を勝ち抜いて管理職になった方々は、自らがもう業務を遂行する能力がないと評価されるのなら、後輩に道を譲ることも致し方なしと受け入れてきたのではとも思います。
理想は、会社が成長し組織が拡大し新しい管理職ポストが増えることですが、変化の激しい現状では、なかなか難しい面があります。集中と選択をしながら、組織の見直しもしなければなりませんし、一方で、少子高齢化の中が既存の人材をどのように有効活用していくか、つねに求められています。どの会社組織も同じであり、ここで言う何かアイデアでといった対策もみつかりません。
まずは、役職にこだわった組織と処遇から離れることでしょう。シニアが役職に居座るという気持ちは、役職定年制などの実態が大きな収入減につながっていることも一因です。また若手が早く役職に就きたいと考えるのも役職に就くことが収入アップになるからでもあります。今後は、役職を固定せずチームごと、プロジェクトごとにリーダーを選出し、それにあった処遇を与えていくことが求められるでしょう。若手にはキャリアアップにつながるリーダーシップの経験を与え、成果に応じた処遇を与えます。シニア管理職は、アドバイザーやコンサルタントとしてサポートする役割を果たすことができます。
もちろん、シニア社員に対しては、定年後の再雇用制度での処遇を見直していくことも必要です。定年後の長い人生を維持できないほど収入が減るようでは、早めに老後を考える中堅社員も不安ですし、若手へのスキルや知識の引継ぎもままならなくなります。

このコラムの担当者
奈良 学
日本エス・エイチ・エル株式会社 代表取締役社長