退職代行サービスが話題です。話の通じないブラック企業に対しては良いビジネスだと思う一方、「ちょっとでもつまずきストレスになったら全部やめてしまえばよい」という志向を持つ若者が増えていると感じます。経営者の皆さんはどうお考えでしょうか。
「時代の流れだから仕方ない」。退職代行の広がりをそう片付けてしまうのは、思考停止にほかなりません。確かに、現実に広がっている以上「そういう時代だ」と解釈せざるを得ない側面はあります。
しかし、だからといって無条件に受け入れてよい話ではありません。
「退職代行」という言葉にすると軽く聞こえますが、本質的には雇用契約を結んだ相手への不誠実であり、引き継ぎを放棄する無責任な行為です。経営者や組織の立場から見れば、退職代行を選ぶ人材は「雇ってはいけない人」に分類されます。
想像してみてください。パイロットが退職代行を使って突然辞め、飛行機が飛ばなくなったとしたら。乗客の立場で「これも時代の流れですね」と笑って済ませられるでしょうか。
そう考える想像力があるかどうか。その差が退職代行を選ぶ人とそうでない人を分けているのです。
ただし、退職代行で辞めるスタッフが出た場合、企業側はそれを「職場環境を改善する機会」と受け止めるべきです。嘆いていても何も生まれません。むしろ「なぜ退職代行を選ばざるを得なかったのか」を真摯に見直すことでしか、組織の健全性は高まりません。
退職代行は時代の象徴であると同時に、企業への警鐘でもあります。それを「流れ」で済ませるのか、改善の契機とするのか。対応次第で企業の未来は大きく変わると思います。

このコラムの担当者
三條 正樹
日本エス・エイチ・エル株式会社 取締役