先日、「大卒後3年は新卒扱いとみなす」とする考えが採り上げられていました。就職活動のあり方を大きく見直す考え方だと思いますが、もし実現した場合、企業の採用活動にどのような変化が現れると思いますか。
若年層の就職対策として「学校卒業後3年以内」の既卒者を新卒としてみなす、採用した企業にいろいろな助成金を支給するなどの方策が検討されています。しかし、すでに実施している制度と重なる部分もあり抜本的な解決策にはほど遠いと考えます。はたして現行のような新卒一括採用制度の中で、学生側が「卒業後3年間は新卒として応募できるなら4年間みっちりと学業に専念し、卒業後じっくりと仕事を探そう」という気になるでしょうか。景気の低迷で家計も苦しい中、少しでも早く仕事に就いて独立したいと考えるはずで、「3年間」という単なる期間の延長では意味がありません。助成金目当ての企業は、助成金制度がなくなれば求人をストップします。いまやるべきことは新卒一括採用制度の見直しと同時に企業の業績復活に伴う求人数の増大という受け皿作りであり、未就職者増に対する後追いの策ではないはずです。医療、介護分野、IT関連といった今後求人が見込める業界、農業など新しい取り組みで受け皿として復活の可能性が出てきた業界の見直しなど、今後の日本経済の成長を担う軸をしっかりと決めてすすめていかなければ効果は期待できないでしょう。

このコラムの担当者
奈良 学
日本エス・エイチ・エル株式会社 代表取締役社長