要約
面接は何世紀も前から行われていますが、一貫性がなく、主観的で、偏った意思決定をするという問題に悩まされています。面接の質の低さは、応募者エクスペリエンスや組織の多様な人材づくりに大きな影響を与えます。
効果的な面接を行う上で、面接エクスペリエンスを測定する指標がないことは1つの大きなボトルネックです。しかし現在、面接での会話のほとんどがデジタル媒体に移行しており、人工知能(AI)を使って面接エクスペリエンスを測定し、ベンチマークすることが可能になっています。
そこでSHLは、面接における応募者エクスペリエンスに影響を与える重要な指標を定義し、面接インテリジェンスプラットフォームによって何千もの実際の面接のやり取りを分析し、面接の実施の仕方について知見を提供します。
本書でご紹介する重要な知見は以下の通りです。
- 面接官の80%近くが、応募者エクスペリエンス全体に影響を与える重要な行動を見落としている。
- 半数以上の面接官が、適切な面接エチケットを守っていない。
- 女性の応募者は、面接中により多く個人的な質問を受けている。
本書でお伝えする知見からは、組織が理解を深めることでより良い面接を実施することができると分かります。面接エクスペリエンスを自動的に測定することは、面接のやり方を変えるための第一歩です。
はじめに
現在の知識集約型経済において、人材の採用とマネジメントは組織の成否を分ける中心的な要素です。面接は、採用プロセスにおける長年の慣行の1つであり、その歴史は100年以上にも及びます。面接はこれまで 「ある仕事に対する個人の適性を評価するために行われる対面での対話」とされていました1。
テクノロジーが出現し、コミュニケーションの在り方が新たな時代に入ったことに伴い、採用面接は電話、オーディオ/ビデオ会議などの新しい媒体に移行しています。ここ2年のパンデミックで急激に移行が進み、今ではほとんどの面接がバーチャルで行われています。
面接(特に面接官)は、採用ライフサイクルの中で応募者エクスペリエンスに最も大きな影響を与えます2。
ネガティブな面接エクスペリエンスは、組織の印象を悪くし、人材を惹きつける力を弱める3
面接のやり方(特に面接官)は、この数十年間あまり変わっていません。以下の図1は、今日の面接のやり方のよく知られた問題の一部です。
第一に、ほとんどの組織と面接官は、確立された科学的手法(たとえば構造化面接など)に従っていません。Allan Huffcutは、この状態を”Two ships that pass in the night”(夜に行き違う2艘の船;滅多に同じ時間に同じ場所にいることがない者同士を指す)と言っています。採用面接に関する科学的研究と組織で実際に行われている面接の関係をよく表しています4。採用プロセスの他の構成要素とは異なり、採用チームは面接がどのように実施されているかをほとんど把握できていません。
また、面接官に対して、面接のやり方について実用的な知見を提供するフィードバックシステムもありません。パンデミックによる面接のデジタル化は、面接の会話を分析するまたとない機会となりました。SHLのSmart Interview Liveは、インドで60万人以上の面接を実施するのを支援しました。SHL ラボは、インド最大のITソフトウェアおよびサービス企業の数千の面接の会話を分析しました。
- Chapman, D. S., & Rowe, P. M. (2002). The influence of videoconference technology and interview structure on the recruiting function of the employment interview: A field experiment. International Journal of Selection and Assessment, 10(3), 185-197.
- Guide: Train your Interviewers, https://rework. withgoogle.com/guides/hiring-trainyour-interviewers/ steps/giving-interviewers-practice/
- Your Candidate Experience, Creating Impact or Burning Cash, https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/us/Documents humancapital/us-human-capital-yourcandidate-experience-creating-an-impact-or-burning-cash.pdf
- Huffcutt, Allen I. “From science to practice: Seven principles for conducting employment interviews.” Applied HRM Research 12.1 (2010): 121.
原文はこちらからダウンロード可能です。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/insights-on-your-candidate-interview-experience/
次回は面接エクスペリエンスの指標をどのように定義し測定したか、です。
1年ほど前の本コラムで、「キャリア・アンカー 」が紹介されました。キャリア・アンカーとはキャリアを選択する上での拠り所となるもので、得意なこと、やりたいこと、意味と価値を感じられることについての自己概念です。自己概念は、能力、意欲、価値観などによって構成されており、その価値観を測定するSHLツールがValue@Work(以下V@W)です。 V@Wは職業価値観を13尺度で測定します。(表1)

職業価値観とは、職務上いかに行動すべきかについて個人が抱く比較的永続的な信念です。人はこれを通じて自分の職務や仕事環境を様々に評価し、その結果が様々な態度や意見、行動となって現れます。つまり、職業価値観は、職業選択、職務満足度やモチベーション、延いては勤務態度や業績などに大きな影響を与えます。
活用事例1:若手社員の早期離職①
たとえば、「若手社員の早期離職」の問題にも価値観が絡んでいます。図1は、ある会社の入社3年以内の若手社員について、退職者と在職者の入社時のV@Wの平均値を比較したものです。人数が少ないので、こういうプロファイルの人は退職しやすい、という確固たる結論を導くことはできませんが、この会社の風土との関係で思い当たるところ、改善したいところについて社内での議論を深める一助になったそうです。
活用事例2:職務業績との関係
もう一つ、V@Wの活用事例をあげましょう。職務業績との関係を分析した事例です。 製造および小売業界3社の営業職社員165名にご協力いただきました。業績評価データに基づいてサンプルをH(高評価)、M(中評価)、L(低評価)の3群に分け、それぞれのV@Wの平均値を比較したのが図2です。「達成」と「芸術」で有意差が見られました。H群が成功すること、それによって評価を受けることに価値を置いているのは、営業職という職種を考えると頷ける結果です。
それでは、その「達成」価値観が低い人は営業職として不適格だと言ってしまってよいのでしょうか?
サンプルの165名はパーソナリティ検査OPQも受検していました。そこで、165名を、「達成」価値観7点以上の群(達成H群)と4点以下の群(達成L群)に分けて、それぞれで業績とOPQの相関を調べました。その結果が図3です。

図3の二つのグラフを比較すると、32尺度中16尺度で相関の方向が逆転しています。つまり、「達成」価値観の高低によって、業績に関連するパーソナリティ特性が大きく異なる、それぞれのやり方がある、ということです。
具体的に言うと、達成H群では、「上昇志向」の尺度が最も効いていました。一方、達成L群では、「上昇志向」は関係なく、「決断性」「心配性(-)」「協議性(-)」に有意差が見られました。「達成」価値観が低くても、大事な場面でも落ち着いていて自分で素早く決断する人は業績が高い傾向がありました。
上司が指導する際、これらのポイントを踏まえると、より効果が上がる可能性があります。
活用事例3: 若手社員の早期離職②
もうひとつ分析結果をご紹介します。「若手社員の早期離職」の1つの原因として、給与水準が取り上げられることが多いです。先の図1でも、「報酬」価値観の平均値は、在職者より退職者が高いという結果でした。しかし、給与を上げることは個々の管理職の立場では難しいです。では、「報酬」価値観の高い人をどう指導すべきなのでしょうか?サンプルは製造業99名です。V@Wの「報酬」の7点以上を「報酬H群」、4点以下を「報酬L群」として、それぞれのグループで業績とOPQの関係を調べた結果を図4に示します。

報酬価値観の高いグループで、業績と相関していたのは「タフ」「批判的」「指導性」「心配性(-)」です。グループのリーダーの役割を与えることが考えられます。一方、報酬L群で業績と相関していたのは、「几帳面(-)」「律儀(-)」です。指導において細かいことを言わないほうがよいかもしれません。
おわりに
以上の分析結果は、限られたサンプルに基づいた結果であることにご留意ください。価値観は人の持ち味の比較的表層にある概念ですので、組織風土との関連が強く、組織によって結果が変わる可能性が高いです。ただ、価値観を測定することで、従来のパーソナリティと職務行動の関係分析に新しい視点が加わります。人事データの1つに職業価値観を加え、それぞれの組織で分析・考察することをお薦めします。(参考文献)
堀博美・小川友美(2010)職業価値観測定の意義に関する一考察 ~職位・職務業績との関係~ 日本産業・組織心理学会第26回大会発表論文集 年末の大掃除でたまたま手にした古い講演録に面白い記述がありました。
ITバブルがピークを過ぎた2000年12月5日、当社は招待講演会「IT革命が変える人事インフラの未来」を開催しました。当時の日本企業は年功序列で運用されていた職能資格制度の制度疲労を背景に客観的な成果やコンピテンシーに基づく人事制度の導入を模索していました。
講演会の講師は当時代表取締役社長を務めていた清水佑三氏です。清水氏は講演の中で近い将来に起こる人事の変化について3つの予言をしました。
以下「」内の記述は2000年12月5日清水氏の講演内容抜粋です。
第一の予言:フリーエージェントが活躍する社会になる
働く人の価値観の変化について述べています。会社と社員の絆が忠誠心(ロイヤリティ)からエンゲージメントへ変わっていくと捉えています。現在のスカウト、リファラル採用の普及、兼業副業の推進などは自由契約の増加を示す事象のように感じます。
自由なキャスティングが競争力の源泉と言っています。プロジェクトごとに最適な人材を社内外から集め、プロジェクトが終了したら解散するような仕事の仕方が強い会社を作るという指摘です。この点について日本企業はまだまだです。ネットフリックス社はこの採用手法の成功事例です。パティ・マッコード氏(元NETFLIX最高人事責任者)が自身の著書「NETFLIXの最高人事戦略-自由と責任の文化を築く」でその手法について述べています。

第二の予言:アントレプレナーと職人の連合軍が主導権を握る社会になる
当時と今の時価総額ランキングを比較すると、金融、エネルギーの企業から主導権がシリコンバレーのIT企業に移ったことは明白です。講演はちょうど米国のITベンチャー倒産が急増している時期に行われましたが、その後もIT技術は進歩し、真の価値を創造するIT企業の打ち出す画期的なサービスや商品が私たちの生活を一変させました。スマホ、SNS、ネットショッピング、動画配信、リモートワークの無い生活を思い出すことすら難しくなっています。
2023年1月のユニコーン企業数は1,428社。アメリカには713社、中国には246社ありますが、日本企業はわずか13社※です。日本文化がこの結果をもたらしているとすれば、今後日本企業はどのように対処していけばいいのでしょうか。この課題について次のように述べています。
※参考:Crunchbase「The Crunchbase Unicorn Board」
この予言は、はずれました。既にシリコンバレーには様々な国籍のアントレプレナーがおりますし、ITエンジニアのスキルレベルについてもアメリカのみならず、インド、中国、インドネシア、ベトナムなどのアジア諸国からも遅れをとっています。清水氏の構想が実現していれば日本はもっと多くのユニコーンを輩出していたに違いありません。
第三の予言:IT革命によって新しい人事インフラが生まれる
前半の報酬と働き方については、日本でもジョブ型雇用システムを導入する企業が出始め、裁量労働制とリモートワークも一般的な人事制度となりましたので予言的中といえます。しかし、後半のマネージャーの消滅、都度のプロジェクト制、自己責任の論理は人事インフラとなっていません。
キャリア自律が重要になることについて述べています。企業主導ではなく社員の意思に基づく配置任用と育成を進めるべきであると。社員一人ひとりの心に寄り添った人事制度を作ることが重要というメッセージは予言ではなく、清水氏の願いであったのだと感じました。
おわりに
22年前の当社の社長が思い描いていた人事の未来についてご紹介しました。全ての予言が的中とはいきませんでしたが、これからも私たちは未来を見据えてタレントマネジメントソリューションをご提供し続けてまいります。IT サービス業界が人材採用/定着に問題を抱える最大の理由は、人材の面接の仕方であることをSHLラボが明らかにしました。
ニューデリー、2022年9月29日/PRNewswire/
人材の採用・マネジメントのテクノロジーのグローバルリーダーであるSHLは、インドの顧客に対して毎年30万件を超えるオンライン面接の実施を支援しています。SHLラボは、インドのITソフトウェア&サービス業界で面接がどのように行われているかについて、様々な企業で実施された面接からランダムサンプリングして分析しました。SHLラボの調査結果は、面接エクスペリエンスを複数の客観的で測定可能な指標に分解し、それらの指標を、SHLのAIを活用した面接インテリジェンスプラットフォームを使って測定しています。
面接官の80%は、応募者エクスペリエンスに影響を与える可能性のある、面接エチケット違反や応募者中心アプローチ上のミスなどの重大な間違いを、少なくとも1つ犯しています。応募者中心アプローチ上のミスよりも、面接エチケット違反をする面接官のほうが多いです。面接官の70%が面接エチケットに欠け、面接官の37%が適切な応募者中心アプローチに従っていません。
面接エチケットについてさらに掘り下げると、SHLラボの調査結果によれば、面接官の41%は会話を始める際に自己紹介をせず、26%は自分のカメラのスイッチを入れていません。
応募者中心アプローチに関しては、面接官が応募者の時間を尊重しない傾向がありました。13%もの人が面接に5分以上遅れて参加し、応募者に質問を許可したのは面接官のわずか28%でした。
Himanshu Aggarwal (SHL最高デジタル責任者)は次のように述べています。「これらの統計値は、面接慣行における重大な欠陥を明らかにしています。人事リーダーはこれまで以上に積極的な対策を講じて、面接のベストプラクティスを効果的に実施し、企業が質の高い人材を採用しながら、同時に前向きで記憶に残るエクスペリエンスを応募者に提供できるようにする必要があります。」
Arthur Rassias(SHL最高収益責任者)は次のように述べています。「この調査のおかげで、私たちは顧客に実用的なフィードバックを提供でき、顧客は面接プロセスに対してより標準化されたアプローチを取ることができるようになりました。SHLの面接インテリジェンスプラットフォームは、現在の面接の仕方に存在する重要なギャップを素早く特定して対処するために必要なデータを、人事リーダーに提供します。」
これはインドの話だ、と言い切ることができますか?
この調査については、このコラムで次回から4回に分けて詳しくご紹介する予定です。
DEIとは何か、より詳しいDEI戦略に関しては、こちらの記事 でご紹介しています。本コラムはさらに焦点を絞り、アセスメントプロセスにおいてDEI推進のために何をすべきかをお考えの人事ご担当者様に向けて、SHLグループの長年の経験から7つのヒントをご紹介します。

1.職務分析の実施
職務に関連する重要な知識、スキル、能力を測定するために、職務分析を実施しましょう。職務の成功に重要な要件のみに焦点を当てることで、ポテンシャルのある人材を排除するリスクを減らし、すべての候補者に平等に成功のチャンスが与えられる公平な競争の場を作り、多様性と包括性を高めることに繋がります。2.適切な比較対象グループの選択
テスト結果の偏差値を算出する際には、受検者グループのレベルに最も近い比較集団を選ぶことが重要です。受検者グループより成績が良い比較集団を使用すると、必要以上に受検者を選別することになり、合格率のグループ間の差異を拡大してしまう可能性があります。3.カットオフ得点の設定
能力テストのカットオフ得点は、慎重に設定することをお勧めします。あまりに高い点数を設定すると、その後の妥当性検証において、職務で成功するためにその能力が重要であることを証明するのが難しくなります。また、この場合もグループ間の差異を拡大してしまう可能性があります。4.グループ間の差異の監視
合格でも不合格でも受検者全員について、特定のグループがアドバース・インパクト(不利な影響)を受けていないかを確認する必要があります。例えば、性別や年齢、民族性などの面で、少数グループが主要グループよりもアセスメント得点が低い傾向がないかを確認します。5.受検者の準備
アセスメントプロセスがどのように進むかについて、受検者に伝えましょう。アセスメントを受検した経験がないことで不利になる人がいないように、受検者にはできる限り準備をさせることが望ましいです。SHLグループでは、受検者が匿名かつ無料で様々なタイプのテストを体験できる練習用サイトを用意しています。
6.受検者がどのように受け止めたかを確認する
採用プロセスにおけるDEIに対する受検者の反応を測定する有効な方法は、受検者から直接フィードバックをもらうことです。受検者にフィードバックをもらう理由を説明し、匿名性を確保します。また、回答が採否に影響しないことを明確にするために任意とします。確認するとよいポイントは、魅力的であったか、困難な点があったか、不安を感じたか、能力を発揮する機会があったか、公平性、包括性という点ではどうだったか、などです。7.障がいに応じて合理的な調整を行う
合理的な調整とは、障がいを持つ従業員や受検者が不利にならないように行うべき変更のことです。SHLグループのツールやソリューションでは、実施可能な調整についてのガイダンスを提供しています。しかし、その受検者の不利益を軽減するために必要な要件を特定するのはクライアント自身が行う必要があります。受検者の障がいについて、またそれがアセスメントの結果にどのように影響するか、どのように調整をするのが最善かについて知るには、受検者自身に尋ねるのが一番です。それぞれの受検者は、障がいの性質や度合いに応じて、個別に調整をうけるべきです。以上、7つのヒントをご紹介しましたが、特に1から3については、勘や経験によらない客観的なタレントアセスメントに取り組まれている組織にとっては、特に新しい観点ではないかもしれません。まずは、アセスメントツールを用いた客観的なアプローチをとることから、DEI推進に取り組まれてはいかがでしょうか。
また、アセスメントソリューションを選ぶ際には、より公平で多様な人材を受け入れることができるように、障がいのある受検者がアクセス可能かどうか、アセスメントの内容が障がいのある受検者にとって、また、文化的な面で包括的であるかどうかを、ご検討ください。 事業変革やデジタル化が進む現代において、IT人材の獲得が難しくなっているのは言うまでもありません。IT人材に求められるスキルや能力が凄まじいスピードで変化している中で、顕在化した能力での選抜は果たして有効なのでしょうか。
近年、社内で活躍しているエンジニアを、ソフトウェアエンジニアとしてリスキルする企業が増えています。既に活躍しているエンジニアだとしても、例えばハードウェアエンジニアとソフトウェアエンジニアでは活躍人材の特徴は異なることが考えられます。
本コラムでは、IT人材の顕在化したスキル・能力・経験と潜在的な特徴(コンピテンシーやパーソナリティなど)の関係性について調査した事例をご紹介します。
※本コラムは2022年9月開催の第37回産業組織心理学会で発表した内容を一部抜粋しています。
調査概要
IT関連業務に従事している682名に「アンケート」と「アセスメント」を実施しました。加えて、協力企業にご提供いただいた各受検者のスキルレベル情報も使用して、統計分析を行いました。■アンケート項目
・現在、過去、今後の職務におけるコーディング有無の度合い(各4段階)
・現在、過去、今後の職務におけるハードウェア/ソフトウェアの度合い(各4段階)
・IT関連資格保持の有無

日本エス・エイチ・エル株式会社のWebCAB
(知的能力テスト4科目とパーソナリティ質問紙OPQ1科目の計5科目)
※WebCABの詳細についてはコラム「IT人材の適性」 をご確認ください。
■スキルレベル
IPA(情報処理推進機構)が定義している7段階のスキルレベル(詳細はこちら)
結果1:IT関連資格“取得者”のほうが、知的能力が高い。
IT関連資格の登竜門である「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」の取得者と未取得者を比較したところ、資格取得者のほうが明らかに知的能力科目の得点が高い傾向がありました。
そのため、「知的能力科目が高得点の場合は資格が取得できる」というよりも、「知的能力科目が低得点の場合は資格取得が難しい可能性がある」と解釈するほうが適切かもしれません。
結果2:他集団と比較して、対人的に控えめで具体的なことに関心を持つ傾向がある。
ここからは、コーディングを行うソフトウェアエンジニア職に就いている方の、性格的な特徴を調査した結果です。■基準母集団との比較
当社の基準母集団(一般的な集団、平均が5.5)と比較して、人と関わる際には控えめで、具体的なことやデータに関心がある。また、実績のある確実な方法を取ることを好み、物事がうまく行くかどうかを心配する傾向があります。

■コーディングを行うハードウェアエンジニアとの比較
より強い自分の意見を持ち、対人的に控えめで、周りからはマイペースに見える傾向がありました。

結果3:高スキルレベル集団は、比較的行動力があり、目標に向かって努力する傾向がある。
高スキルレベル集団(レベル4以上)は、その他の集団(レベル3以下)と比較して、既にある方法を好まず、感情を抑えすぎない。また、比較的行動力があり、目標に向かって努力する傾向が見られました。
おわりに
今回の調査では、IT人材はポテンシャルの観点で一般的な集団と明らかな違いがあること、ソフトウェアエンジニアとハードウェアエンジニアの性格的な特徴が異なることがわかりました。知的能力や性格的な特徴といったポテンシャルを踏まえて選抜や育成をすることが必要なのではないでしょうか。今回の調査ではサンプル数が少なく集計ができなかった職種もあり、今後も検証を続けていく必要があります。ご協力頂ける企業があれば、ご連絡をください。ぜひ一緒に検証しましょう。
新しい研究結果をもとに、タレントアセスメントについて、ベンダーが主張している妥当性をより適切に評価するためのガイダンスを提供します。
ジェフ・ジョンソン
2022年12月8日
Journal of Applied Psychologyに最近掲載された記事は、タレントアセスメントと従業員の選抜の世界に大きな混乱をもたらすと予想されています。この記事では、一般的なメタ分析の進め方をレビューし、アセスメント得点と職務パフォーマンスの関連性は、過大評価されていることが多いと結論付けました。
働く個人や実務担当、そして顧客がこの調査結果を理解することを支援するために、SHLは、白書「Guidance for the Interpretation of Validity Coefficients(妥当性係数の解釈に関するガイダンス)」を作成しました。このブログでは、タレントアセスメントの妥当性を評価する上でのSHLのアプローチと、広く受け入れられている既存の研究結果を見直すことが必要な理由について説明します。まず、タレントアセスメントの分野で使用される用語を理解しましょう。
タレントアセスメントと従業員の選抜における用語
従業員を選抜するためのタレントアセスメントの世界では、「妥当性」という用語は、アセスメント得点から導き出される解釈の正確さを指します(たとえば、アセスメント得点が職務パフォーマンスを予測するなど)。「妥当性検証」とは、これらの解釈を裏付ける証拠を確立するプロセスです。
タレントアセスメントでは、最も強力な証拠は、一般に基準関連の妥当性検証から得られると考えられています。これは、アセスメント得点(つまり、予測変数) が、関心のある基準尺度得点(ほとんどの場合、職務パフォーマンス)に関連していることを示すものです。基準関連妥当性の証拠は、通常「妥当性係数」または相関(r)の形式で表されます。この係数は、0から1の範囲で、アセスメントと基準得点の間の関係の大きさを示します。
「予測的妥当性」の検証研究では、採用前に求職者から予測データ(アセスメント得点など)を収集し、一定期間仕事に従事した後に採用された求職者から基準データ (マネージャーの評価など)を収集します。「一致的妥当性」の検証研究では、現職者から予測データと基準データの両方を短い期間で収集します。
「メタ分析」とは、複数の妥当性検証研究の結果をまとめ、サンプリングエラーの影響を減らし、単一の研究よりも変数間の相関関係をより正確に推定する方法です。選抜プロセスの妥当性のメタ分析は、学術文献やアセスメントベンダーの間で非常に一般的であり、さまざまな種類のアセスメントの妥当性について期待される平均的なレベルを確立するために使用されています。選抜プロセスのメタ分析では、妥当性の推定値を押し下げる制限(たとえば、アセスメント得点に基づいて選抜を行うことによる範囲の制限)を考慮に入れるために、妥当性係数に統計的な修正を適用することがよくあります。妥当性研究のタイプによって異なる修正が必要なため、ここが最も間違いが起こりやすいところです。
SHLのアプローチと視点
SHLは歴史的に妥当性係数の修正において保守的なアプローチをとってきました。範囲制限の修正は通常行っていません。ほとんどの基準関連妥当性の検証研究が「一致的妥当性」についてであり、修正公式に入力する変数について、現実的な推定値を置くことが難しいためです。したがって、このブログの冒頭で言及した最近の記事によって得られた結論が、私たち自身の妥当性検証研究の結果やメタ分析に影響を与える可能性は低いです。当社のテクニカルマニュアルには、妥当性の計算と統計的な修正を評価するために必要なすべての情報が含まれています。他のタレントアセスメントベンダーが主張する妥当性も同様かというと、必ずしもそうではありません。
冒頭で紹介した記事が科学と実践の両方に与えるだろう影響、他のタレントアセスメントベンダーがメタ分析で同様の間違いをする可能性、そしてテーマそのものが妥当性分析に詳しくない人にとって複雑であることから、SHL は「Guidance for the Interpretation of Validity Coefficients」という白書を作成しました。この文書の目的は以下の通りです。
- 一次研究およびメタ分析における妥当性係数の推定に関連する問題を説明する
- さまざまな種類の選抜手法について、妥当性のレベルがどのように変化したかを要約する
- タレントアセスメントの購買者とユーザーに、ベンダーが主張する妥当性をより適切に評価するためのガイダンスを提供する
この文書は、タレントアセスメントベンダーが提供する技術文書を評価する際に十分な情報をもっていたいと考えている既存ユーザーだけでなく、使用を検討している方も対象としています。
冒頭で紹介されている記事では、メタ分析において範囲の制限に関する統計的な修正によって、妥当性が高く見積もられていると指摘しています。SHLグループの作成した妥当性計数の解釈に関する白書「Guidance for the Interpretation of Validity Coefficients」はこちらからダウンロード可能です。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/guidance-for-the-interpretation-of-validity-coefficients/
ポイント1.目的変数を設定しよう
人事関連のデータは、収集し始めると膨大なデータが集まります。勤続年数、学歴、研修履歴、異動歴、勤怠、業績評価、コンピテンシー評価、スキル情報、サーベイ結果、アセスメント結果、その他個人情報などです。多くの場合、まずは平均値を算出する、分布を見てみるなどの基礎分析に取り組みます。データの性質を理解する為には有用なステップですが、いつの間にかあらゆるデータを集計する事が目的化してしまいます。私もやってしまうのですが、いま目の前にあるデータをどう分析するかに執着し、何を明らかにしたいのかが抜け落ちてしまいます。
そんな時は、統計学で使われる「目的変数」という言葉を思い出してください。目的変数は、予測したい事象を表す変数です。データ分析によって明らかにしたい事(目的)を決めないと、目的変数は設定できません。ピープルアナリティクスにおいては多くの場合、事業戦略の実現や生産性の向上、組織の活性化などに関する指標が目的変数として設定されます。具体的には、業績そのものやKPI、エンゲージメントスコア、退職率などがよく用いられます。
目的変数を設定すれば、あとは何によってその事象が引き起こされているか、もしくは相関関係があるか、を明らかにしていきます。目的変数を説明するために用いる変数の事を「説明変数」と呼びます。なお、説明変数は複数の場合もあります。目的変数と説明変数の関係性を明らかにしていく事が重要であると考えれば、ピープルアナリティクスも身近に感じられるかもしれません。

ポイント2.「差」に注目しよう
ハイパフォーマー(以下、HP)分析という言葉が人事担当者の口からよく聞かれます。しかし、HPの特徴を明らかにするために、HPのデータだけを分析しているケースが散見されます。仮にバスケ選手のHPを分析した結果として、HPの95%は身長180cm以上であったという結果が出たとして、何を感じるでしょうか。バスケ選手なのだから身長が高くて当たり前、と思うのではないでしょうか。HPの特徴を明確化するためには、HPとその他集団の「差」が何によって生まれているかを明らかにすることが重要です。先ほどのバスケ選手の例で言えば、身長はいずれの集団も高いが滞空時間に差があった場合、滞空時間がパフォーマンスと関連していると考えられます。
このようにピープルアナリティクスにおいては、集団間の「差」に価値あるものが表れやすいという事を念頭に置いて分析を進めてみてください。
ポイント3.比較対象は慎重に吟味しよう
「差」に着目する事が重要と書きましたが、比較する集団を誤ってしまうと適切な結果が得られなくなります。先ほどのバスケ選手のHP分析を例にとると、走り幅跳びの選手と比較する分析を行った場合どのような結果が出るでしょうか。滞空時間に差は無く、身長に差が出てくるかもしれません。この事からお伝えしたいのは、説明変数以外の変数は揃える必要があるという点です。バスケ選手という属性は揃える必要がありますし、年齢や所属(実業団なのか大学なのか、高校なのか)なども揃える必要があります。ピープルアナリティクスでは、職種や階層を分けずに分析するようなケースを目にする事があります。総合職としての活躍人材を明らかにしたい場合など、必ずしも誤った分析とは言い切れませんが、明確な結果を得にくい分析である事は念頭において解釈する必要があります。別の例で言えば、退職者を分析する際にも早期離職と中堅層の離職は要因が異なる可能性があり、注意が必要です。この場合も、分析対象の集団の年次を揃える事で狙った結果を得やすくなります。このように、どの集団間で比較を行うかを慎重に検討することで、分析結果が明確になったり、結果を活用しやすくなったりします。

終わりに
適切なデータ分析を行うために注意すべきポイントを解説してきましたが、得られた分析結果を活用する前に留意した方がよい点があります。分析結果そのものを鵜呑みにしない、という点です。データは何らかの事実を指し示していますが、その解釈にあたってはその仕事に従事している人たちの実感が反映されているか、特定の属性を差別するような結論になっていないかなどをチェックする必要があります。より具体的な分析結果の例を見たい方や、適性検査を使った分析にご関心がある方は、ぜひ人材データ分析のダウンロード資料も合わせてご参照ください。
経営幹部の後継者計画に運任せは通用しません。コンテクチュアル・アプローチが必要です。
イシャ・ゴエル
2022年11月24日
経営幹部の後継者計画は、新しいリーダーを特定し、その人たちが役職を引き継げるよう育成するプロセスです。幹部交代の際にもすべての業務が円滑に進むようにするための、セーフティネットとして機能します。
多くの大企業は、リーダーシップのパイプラインと継承という重要な問題に焦点を当てていません。大手企業の中には、トップ層の大規模な退職があり、年間 1 兆ドル近くのコストがかかったケースもあります。このような場合の最大のコストは業績不振です。外部から不適格なCEOを採用したり、知的資本が失われたり、社内昇進の後継者が準備不足だったり……。
貴社のリーダーシップの可動性を再考する
組織はより良くなることができるし(またそうしなければならず)、解決策はそれほど複雑ではありません。リーダーの成功の予測因子に関してこれまでに実施された最大かつ最も包括的な研究で、SHLは、組織がリーダーの異動と開発を再考する必要があることを発見しました。今日の環境は挑戦的なものです。しかし、コンテクスト(文脈・背景)を使うことで、組織はターゲットを絞った動的で機敏で正確なリーダーシップ戦略を展開できます。さらに私たちが発見したことは、後継者計画の仕事は、必要が生じるかなり前に始めなければならない、ということです。クラウス・シュワブ(世界経済フォーラムの創設者兼会長)は次のように述べています。
「新しい世界では、大きな魚が小さな魚を食べるのではなく、速い魚が遅い魚を食べる。」
規模に関係なく、市場の変化に迅速に適応できる組織は、競合他社より抜きん出ます。VUCAの世界で組織が生き残り、繁栄するためには、機敏で能動的で、変化に対応する必要があります。
CEO はいつか必ずオフィスを去ります。しかし、調査によれば、長い間、ほとんどの組織はCEOに代わる人を準備していません。
経営幹部の後継者計画で考慮すべき5つのこと
後継者計画は、最悪のシナリオと予告なしの状況に備えて組織を準備します。ゲームのトップに留まり、「リーダーシップの空白」がないようにするために、取締役会は、経営幹部の承継プロセスについて、以下の原則を考慮する必要があります。
- 将来の経営幹部プロファイルに沿った取締役会にする。
十分に前もって取締役会の議論に関わり、彼らの期待を理解し、ビジネスの優先事項との整合性を確保することから始めます。これらの戦略的優先事項を、その役割に必要なビジネス上の課題、経験、およびパーソナリティ特性に関連付けます。経営幹部それぞれの成功プロファイルを作成し、それを基に社内外の人材を評価します。 - コンテクストと業界のベンチマークを考慮し、最良のプロセスを確立する。
候補者の得意分野と能力開発分野を偏りのない目で多面的に見、そのコンテクストで何がうまく機能するかを捉えます。コンテクスト特有の関連コンピテンシー、経験、背後にあるパーソナリティ特性を評価します。取締役会の支持を得て、しっかりした計画とスケジュールを作成します。私たちの研究によると、コンテクストを考慮すると成功確率が4倍になります。 - すぐの交代を計画するだけでなく、プランB、C、Dを作成する。
後継者計画は、人材パイプラインを作る継続的なプロセスです。将来にリーダーシップを発揮する可能性の高い優秀な人材(ハイポテンシャル人材:HiPo)を社内で特定することによって、短期的および中期的なリーダーを準備します。 - HiPo人材を育成し、クロストレーニングする。
OJT、コーチング、メンタリング、スキルトレーニングを組み合わせます。成長を加速し、重大なギャップを埋める領域を特定することによって、次の世代のための将来に備えた人材パイプラインを社内で確保します。一人ひとりのニーズと組織の期待を満たすようカスタマイズされた能力開発計画を使用して、貴社の人材がそのポテンシャルを開花できるよう支援します。 - 後継者計画を取締役会の固定議題にします。
経営幹部の後継者計画は、新しい経営幹部が任命された後も続く、継続的なプロセスです。取締役会に能力開発計画の進捗を知らせます。取締役会の戦略セッションを人材開発セッションとつなげ、戦略の変化があった場合に将来のリーダーに何が求められるようになるかの情報が伝わるようにします。
後継候補者は、一朝一夕に出現するものではありません。有能な後継者は、何年にもわたる計画、教育、指導の産物です。この投資によって、組織は、高業績達成に向けた戦略的優先事項の実行に必要なリーダーシップを継続的に強化できます。
原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2022/the-key-to-your-leadership-mobility-is-a-contextual-approach/
前回ご紹介した記事と内容的にかなり重なっているかもしれません。合わせてお読みいただき、貴社で取り入れられそうな点のヒントになれば幸いです。
また、コンテクストを織り込んでのリーダー配置について、SHLはMobilizeというシステムを開発しました。できるだけ早く日本語化されたものをご紹介したいと予定しています。
本年のこのコラムはこれが最後です。来年度も引き続きよろしくお願い致します。
今回はコロナ終息が見えてきた2022年下期に、最も読まれたコラムベスト8をご紹介いたします。