厚生労働省(2023)によると、新規大学卒就職者の約30%が入社後3年以内に離職をしています。早期離職の問題は、採用コストや育成コストの損失という点から、課題としてとらえる企業も少なくありません。「メンター制度」はこの早期離職の防止や社内コミュニケーションの活性化等を目的として実施される制度です。企業によっては、本制度が新入社員へのOJTも兼ねる形で実施されるケースもあります。
メンターとメンティー(指導を受ける立場の人)の信頼関係は主に面談や日々のコミュニケーションによって形成されるため、メンターとメンティー間でどのようにコミュニケーションを取っていくかが重要です。一方で、メンターとメンティーの組合せで失敗する事例もあり、その組合せには注意が必要です。本コラムでは弊社が2024年に行ったメンターとメンティーに関する相性の研究結果をご紹介します。

研究概要・方法

本研究では、パーソナリティ検査OPQから予測できる3つのコミュニケーションスタイル(下図)におけるメンターとメンティーの組合せについて、同じスタイル同士の組み合わせが好ましいかどうか?について研究を行いました。


本研究は日本企業31社のご協力を得て、2021年4月以降に入社した合計1138人のOPQデータとアンケート結果を用いました。アンケートでは、メンティーがメンターに仕事上のミスについて相談する場面の動画を3種類視聴し、自身にとって好ましいメンターの動画を1つ選択します。いずれの動画もメンティーからの相談内容は同じものですが、メンターは同一人物が3つのコミュニケーションスタイルの特徴に応じて、態度や会話展開、アドバイス内容を演じ分けています。
分析では、メンティーが各コミュニケーションスタイルに該当する場合と該当しない場合で、好ましいと選択したメンターのコミュニケーションスタイルが異なるのかをχ二乗検定と残差分析で検証しました。なお、メンター制度利用経験の有無が好ましいと思うメンター選択に影響する可能性を考慮し、分析対象をメンター制度利用経験有無で分けて検討を行いました。

分析結果

まず、メンター制度の利用経験があるメンティーの選択したメンタータイプ割合の結果をまとめると、以下のことが分かりました。

続いて、メンター制度の利用経験がないメンティーの選択したメンタータイプ割合の結果をまとめると、以下のことが分かりました。

結論と考察

上記の結果から、2つのことが分かりました。
  1. メンティーは、自身と同じスタイルのメンターを好む傾向がある
  2. メンター制度利用経験が無いメンティーは、自身と異なるスタイルのメンターを好む可能性がある
①は、同じスタイルのメンターからのアドバイスの方が、自身になじみやすいものであり、今後のアクションとして納得感が高いことが考えられます。
また②は、メンター制度利用経験が無いデータの約60%が、内定者または入社1・2カ月の具体的な仕事イメージがまだ無い人でした。そのような「人間関係重視型」メンティーにとっては、判断をメンティーに委ねるような同タイプの「人間関係重視型」メンターよりも、自らの意見を是として推してくる「パワー型」メンターの方が好ましく思えた可能性が考えられます。

おわりに

今回の研究では、「コミュニケーションスタイル」というモデルを利用して、メンターとメンティーの組み合わせを検討しました。メンティーは同じコミュニケーションスタイルのメンターを好むという結果となりましたが、実運用として理想の組み合わせを全て実現することは困難です
。 重要なのは、メンターがメンティーのパーソナリティを深く理解し、メンティーに合ったかかわり方やサポートを行うことです。その際はぜひ適性検査の結果を参考に、メンティーの人物像をプロファイリングしてみましょう。

※本稿は2024年9月に開催された、産業・組織心理学会第39回大会で発表した内容を一部抜粋してご紹介しています。

Z世代とは、一般的に 1997 年から 2012 年の間に生まれた世代を指します。彼らが労働力の大部分を占めるようになると、職場に新しいスキルや視点をもたらします。Z世代について、怠惰である、対面でのやり取りを嫌がる、脆弱であるなどといったステレオタイプ(固定観念)をしばしば耳にします。しかし現実には、他の世代も慣習やそれまでの仕事のやり方に疑問を持ち、反発してきました。 Z世代も例外ではありません。本コラムでは、Z世代の強みとそれを組織が活かす方法について、SHLグループのブログ記事をご紹介します。


Z世代は仕事に関連するさまざまなスキルで高得点

世界中の76,000人のZ世代の求職者を分析した結果、対人スキル戦略的思考がZ世代の際立った強みであることが分かりました。対人スキルでは、特に多様な考え方を促す、他者と相談する、対人スタイルを順応させるなどの分野で高得点でした。戦略的思考では、批判的に評価する、戦略的なビジョンを検討する、改善を推進する、説得力のあるアイデアを生み出すなどの分野で高得点でした。

ハイブリッドワークが増加したことで、仕事の経験が少なくなり、同僚と対面で協力する機会も減りました。そのため、Z世代は他の世代からやや異質に感じられるような働き方を身につけています。加えてAI による大きな変革やスキルへのシフトも進行しており、組織は仕事や役割、そしてキャリアに対する考え方を変える必要があります。

他の世代と比較すると、Z世代はイニシアティブをとることに関連するスキルが最も優れています。つまり、彼らは追加の仕事を探し、積極的に新しい責任を引き受ける可能性が高いのです。また、コミュニケーションに関連するスキル、特に話された情報とその背後にある意味を理解する、他者に好印象を与えるという分野でも同様です。

Z世代が活躍できる職場環境

Z世代は、柔軟な働き方を普通のこととして期待するようになっているため、ワークライフバランスを維持することは重要です。リモートワーク、そして従来の 9 時 から5 時までの時間に縛られずに勤務ができることは、非常に高く評価されます。

次に、従業員が安心して意見を述べ、アイデアを共有し、建設的なフィードバックを受け取れるオープンな職場環境を整えることも有益です。Z世代は誠実さとオープンさを重視するため、双方向の対話と率直に話す機会を設けることは彼らと信頼関係を築く上で役立ちます。


イノベーションのために協力する: チームとテクノロジーの力

ソーシャルメディアの世界で育ったZ世代は、比較、競争、協力に慣れています。こうした特徴は、チームワークが重視され、知識が共有され、イノベーションが奨励される環境を整えることで、組織にとって有益なものになります。成果を認めて祝い、業績に基づく報奨をすることで、ハードワークを促しエンゲージメントを高めます。

デジタルファーストの世界では、Z世代は技術革新の推進、最新ツールの利用、AI の活用において有利な立場にいます。最新テクノロジーの活用は、Z世代のスキルを活用できるだけでなく、彼らにやる気と刺激を与え、ビジネスの生産性と効率の向上につながります。

Z世代へのエンパワーメント:将来の成功への鍵

Z世代は学習と自己啓発に熱心であるため、体系的な育成計画とトレーニングリソース、そして育成すべきスキルとその方法についての知見が重要です。これはZ世代の大きな意欲源の1つであるキャリアアップにもつながり、彼らが新しいスキルの習得と開発が組織内での昇進や成長にどのようにつながるかを明確に把握できるようになります。

おわりに

Z世代は将来の企業の成功に不可欠な存在です。適切な若手人材を採用し、その強みを活かして適切な方法で育成することが、成長を促進するために不可欠です。ステレオタイプによる誤解ではなく、スキルを正確に測定し、データに基づいて人材の特徴を把握することで、組織は従業員が活躍できる環境を構築することが可能になります。

過去数回コラムでも取り上げている「スキルベース」の組織。日本ではジョブ型雇用に注目が集まっていますが、世界ではスキルを中心とした「スキルベース」の人事へ変革が推進されています。企業はスキルデータを活用することで、従業員の流動性を高め、明確なキャリアパスを構築し、新たなギャップを社内の人材で埋めようとしています。今回は、スキルベース組織に移行する際、避けるべき3つの落とし穴とその効果的な対処法を探ります。

複雑すぎるスキルフレームワークは異動や昇進の障壁に

タレントマネジメントにスキルを導入する狙いは、従業員の流動性を促進し、組織内のさまざまな役割への移行を支援することです。目標は、従業員が既存のスキルを活用し、組織のニーズに合わせて新しいスキルを開発でき、柔軟な労働力を生み出すこと。しかし、複雑で面倒なスキルのフレームワークは、多くの組織にとってかえって足かせとなっています。
例えば、調達部門の社員が経理部門への異動を希望しているとします。すると、現在不足している20のテクニカルスキルという気の遠くなるようなリストに直面します。この複雑さは、従業員を圧倒するだけでなく、組織内での潜在的な流動性も阻害します。前進する道筋が見えるのではなく、乗り越えられない壁が見えてくるのです。解決策は、フレームワークを単純化すること。
職種群を超えて明確に定義された一貫性のあるスキルのフレームワークは、真のスキルベース組織の基礎を築くのに役立ちます。
クリティカルシンキング、データ分析、分析的推論などの中核となるトランスファラブルスキル(Transferable Skills:移行可能なスキル)に焦点を当てることで、従業員は新しい職務に移行できる可能性を認識できます。これら基礎的なスキルは、テクニカルスキルの学習と開発(L&D:Learning & Development)のリソースを活用することで、より円滑な異動が実現し、組織の機動性も向上します。

手探りで進めると、不正確なスキル測定に

スキルのフレームワークが確立されたら、次に重要なステップは、組織内にどのようなスキルが存在するかを理解することです。スキルギャップを特定し、そのギャップを埋めるための戦略を策定することは、L&D、採用、異動に関する意思決定をする上で不可欠な情報となります。
残念なことに、多くの組織は自己申告によるスキルデータに大きく依存しており、客観的な現実よりも個人の認識を反映した不正確で不完全なデータであることが多いです。

推測のスキルデータの増加により、網羅性は向上しましたが、正確な意思決定に必要な厳密性はまだ不足しています。スキルの状況を真に理解するためには、組織は客観的なスキル評価に目を向ける必要があります。
アセスメントは、従業員の能力開発プログラムや業績評価に組み込むことができ、従業員の能力をより正確に把握することができます。アセスメントデータは、研修ニーズの特定から戦略的採用の計画まで、タレントマネジメントに関する情報に基づいた意思決定を行う上で、非常に貴重なものとなります。

リスキリングを可能にするポテンシャルに目を向けず、不確実な未来への備えが不十分に

技術の進歩や市場の要求が絶えず変化する世界では、将来のスキルニーズを予測することは困難であり、特にテクニカルスキルにおいてはなおさらです。この不確実性から、競争力を維持するためには、スキルアップとリスキリングへの継続的なアプローチが必要となります。
このような不確実性の中にも、普遍的に価値のあるスキルは存在します。例えば、素早く学習する、変化に適応する、達成しようと努力する、など。これらは、リスキリングを可能にするポテンシャルとして新しい組織や業務にスムーズに移行できる人材の特定に役立ちます。従業員が迅速に学習し、新たな課題に適応できるようにすべく、組織はこれらソフトスキルを優先すべきです
継続的に学習し、適応する文化を育成することで、組織は従業員を将来に備えるだけでなく、変化に直面したときのレジリエンス(回復力)を高めることもできます。

おわりに

「スキルベース」は最近注目されるキーワードのひとつですが、解きほぐしてみると、組織として押さえるべきポイントは決して新しいものばかりではありません。コラムで紹介したスキルフレーム(馴染みのある表現に言い換えると人材要件定義)の簡素化、アセスメントを活用した正確なスキル測定の徹底、リスキリングを可能にするソフトスキルの重要性は、いずれも当社が以前からお伝えしていたポイントです。
持続可能なスキルベース組織の構築は、組織・仕事と人を客観的に把握し続ける取り組みにより実現可能です。

参考:Sidestepping Common Mistakes in Skills-Based Organizations

サクセッションプランを成功させるためには、特定のリーダーポストに適した後継者を選び、常に後継者席に人がいる状態を作る必要があります。
一般的に後継者選抜の基準として用いられるものは、リーダーシップコンピテンシーです。リーダーシップコンピテンシーはリーダーの役割において共通に求められる人材要件ですが、特定のリーダーポストでうまく職務を遂行できるかどうかを予測するのに十分な指標とは言えません。リーダーを取り巻く環境は多様であり、各リーダーの解決すべき課題もそれぞれだからです。
この問題を解決するための新しい概念として、SHLはリーダーシップコンテクストを見出しました。リーダーシップコンテクストとは、リーダーを取り巻く文脈的な環境のことです。SHLの広範な研究によりリーダーシップコンテクストはリーダーの成功に大きな影響を及ぼすことがわかりました。
コンテクストを基準として選抜されたリーダーは、従来の方法によって選抜されたリーダーよりもパフォーマンスが約20%高いのです。優れたリーダーは置かれた環境で求められるリーダーシップを効果的に発揮し、その環境におけるビジネス課題を解決するのが得意であるということがわかります。リーダーの選抜も適材適所が重要なのです。
本コラムでは、サクセッションプランを行う際にリーダーの選抜基準としてリーダーシップコンテクストをどのように選べばよいかについて述べます。


27項目のリーダーシップコンテクスト

SHLのリーダーシップ研究によって見出された重要なリーダーシップコンテクストについて紹介します。SHLはリーダーの成功に大きな影響を及ぼすコンテクストを27個定義しました。コンテクストを抽出したリーダーシップ研究に関する詳細は、コラム「アサインメントは文脈を捉えよ ~次世代リーダー育成 先端研究~」をご覧ください。

チームのパフォーマンスを推進する
  • 人材を最大限に活用する
  • 創造性と革新を推進する
  • ネットワークパフォーマンスを向上させる
  • 地理的に散らばったチームをリードする
  • グローバル/異文化のチームをリードする
  • 協力し合わない風土を変える
  • 揉め事の多い風土を変える


  • 変革をリードする
  • 新しい戦略を立案し、推進する
  • 急速に変化する製品、サービス、プロセスに対応する
  • 不確実性が高くあいまいな状況で業務を遂行する
  • 合併や買収でリードする
  • 頻繁なリーダー交代に適応する


  • 結果を出す
  • 高い利益率を実現する
  • イノベーションでビジネスを成長させる
  • 市場シェアを伸ばしてビジネスを成長させる
  • コスト競争力でビジネスを成長させる
  • 地理的拡大を通じてビジネスを成長させる
  • 独立採算の事業を経営する
  • 製品・サービスの幅広いポートフォリオをマネジメントする
  • 卓越した顧客サービスを提供する共通する
  • 共通する業務やサービスを集約して果たすチームをリードする


  • リスクと評判をマネジメントする
  • 高いリスクをとる状況下で業務を行う
  • リスクを嫌う状況下で業務を行う
  • リソースがかなり制限された中で運営する
  • 人や業務の安全とセキュリティを確保する
  • 対外的に組織を代表する
  • 環境の持続可能性を確保する
  • リーダーポストの要件を定義する

    サクセッションプランで後継者を選抜するためには、リーダーの選抜基準を作る必要があります。SHLのサクセッションプラン・ソリューションではリーダーシップコンテクストによってリーダーの基準(プロファイル)を作ります。
    プロファイルを作る際には主要な関係者へインタビューを行います。主要な関係者の筆頭はサクセッションプランの対象となっているリーダーポストの現職者です。その他には上司やボードメンバー、人事などへインタビューします。
    コンテクストを選ぶにあたって、現在に焦点を当てるのか、未来(1~2年後)に焦点を当てるのかを検討します。3年以上の長期的視点を持つべきではありません。環境変化に適応する新しいリーダーを輩出し続けることがサクセッションプランの目的だからです。現在から2年先までの役割、職務、組織が直面するビジネス上の課題に合ったコンテクストを選択します。
    今は存在しない役割のプロファイルを作る場合、最も重要なステップは新しい役割を作る理由、目的、その役割が直面する重要課題を理解している関係者に対するインタビューです。ジョブディスクリプションがある場合は参考にするとインタビュー内容がより具体的になります。

    適切なコンテクストの数

    コンテクストはリーダーが解決すべきビジネス課題と捉えることができます。役割の複雑性が高まれば高まるほど、該当するコンテクストの数は増えます。極端な言い方をすれば27個すべてのコンテクストに該当するリーダーポストがあるかもしれません。現実に世界は複雑になっており、リーダーが解決すべき課題は増加しています。
    しかし、コンテクストを10個以上選択することはできる限り避けなくてはいけません。推奨するコンテクストの数は7個以下です。リーダーの成功と解決すべき課題の数との関係に関する研究から、リーダーが抱える課題の数が7個を超えるとパフォーマンスが急激に低下することがわかっています。
    プロファイルのコンテクストが10個以上あるということは、誰がリーダーとなっても成功するのが難しいポストだということを示しています。本当に10個以上となった場合は役割の再設計を検討するか、万全のサポート体制を上層部とともに作ることをお勧めします。

    難易度の高いコンテクスト

    誰がリーダーになったとしても難しいコンテクストが存在します。以下4つのコンテクストはリーダーのパフォーマンスに悪い影響を及ぼすことがわかっています。

  • 頻繁なリーダー交代に適応する
  • 不確実性が高くあいまいな状況で業務を遂行する
  • 協力し合わない風土を変える
  • 揉め事の多い風土を変える


  • これらすべてのコンテクストに直面しているリーダーの約7割が業績の問題で苦しんでいるというデータがあります。もし、プロファイルに4つの課題がすべて含まれている場合、慎重に人材選抜を行う必要があります。また、この場合も役割の再設計やサポート体制の構築が重要になります。

    おわりに

    SHLのサクセッションプラン・ソリューションでは、今回ご紹介したコンテクストによるリーダーの選抜基準をパーソナリティ検査OPQと経験サーベイによって測定します。OPQで各コンテクストに対応するポテンシャルを予測し、経験サーベイで各コンテクストにおける職務経験の有無を測定します。この手法が各リーダーポストに対するきめ細やかな適性の予測を可能にしています。

    最後に私が自分の役割を考慮して選択したコンテクストをご紹介します。
    私は執行役員として、直販営業、マーケティング、SHLグループサービスの開発運営、海外とのブリッジを担当しています。選択したコンテクストは以下の通りです。

  • 人材を最大限に活用する
  • 急速に変化する製品、サービス、プロセスに対応する
  • 市場シェアを伸ばしてビジネスを成長させる
  • 高い利益率を実現する
  • リソースがかなり制限された中で運営する
  • SHLのインクルージョンへの取り組みの1つとして、一般的でない経験を持つ候補者に対しても平等な革新的なアセスメントをクライアントと共同で開発した事例をご紹介します。

    エリック・ポップ
    2024/8/29

    本事例のクライアントは、ホームレス、不安定な家族構成、薬物乱用、搾取、投獄歴、障害などの困難な状況に陥っている人々に様々な行政サービスを提供しています。クライアントは、サービス対象者と同様の経験をうまく乗り越えた人を採用したいと考えていました。そのような経験をすることで、共感や変わろうとするモチベーションへの理解など、職務に関連するスキルや態度が育まれ、職務で高いパフォーマンスを発揮できるだろうと考えたためです。

    人生経験や社会的アイデンティティから仕事のパフォーマンスを予測することは、新しい概念ではありません。個人の経歴が人々の仕事における違いを説明するという原則に基づいて構築されたバイオデータのアセスメントは、1900年代初頭から使用されてきました。ただし、歴史的にバイオデータのアセスメントは、一般的に肯定的とみなされる経験と肯定的とみなされるグループとの関わりに焦点を当ててきました。典型的な項目は以下の通りです。

    しかし、今回の対象となる応募者層は一般的にこうした肯定的な経験を積むために必要なリソースがありませんでした。STEM(科学、技術、工学、数学)プログラムがある学校へ通うリソースが不足している場合、親があなたにSTEMへの関心を深めるように促すことはまずありません。それどころか、今回の対象層の多くは良くないグループとのつながりを強いられていました。
    したがって、このプロジェクトの目標は、文化的にしばしば偏見の対象となるけれども仕事に関連したスキルを開発する機会となるだろう経験を活用し、仕事のパフォーマンスを予測するバイオデータ項目を特定することでした。同時に、より一般的な経験を通じて同じスキルを育んだ可能性のある人々を排除しないことも必要でした。

    クライアント、対象となる経験を持つ現職者、SHLの三者がもつ、それぞれの知見とスキルを活用し、公平な競争の場を作ることができるアセスメントが実現しました。対象となる経験を持つ人と持たない人の間で平均得点に大きな差がないことが示されました。

    現職者のプライバシーや尊厳、そして幸福を守ることに関係者全員が尽力したことで、現職者が自分の体験談を率直に語ってくれ、仕事に関連したスキルの開発、そして最終的にはアセスメントの開発そのものに有益な知見が得られました。科学的に厳密なプロセスで開発されたアセスメントによって、すべての候補者に対して平等に、仕事に関連したスキルを発揮する機会を提供できるようになりました。

    最終的に、クライアントは一般的ではない背景を持つ人とより一般的な背景を持つ人が同等の得点をとることができ、職務パフォーマンスを予測できるアセスメントを手にすることができました。

    このプロジェクトはSHLでの18年間で私が関わったプロジェクトの中で最も困難で最もやりがいのあるプロジェクトの1つだった、と言わざるを得ません。困難な人生経験を持つ人々に、その経験を通じて培ったスキルを活用して、就職活動において平等な機会を提供するためのアセスメントを開発するためにリソースを費やす組織の一員であることを嬉しく思います。

    原文はこちらです。
    https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2024/helping-level-the-playing-field-developing-a-lived-experience-assessment/

    科学的なアセスメントによってインクルージョンを実現した、非常に興味深い事例でした。

    最近、新卒採用業務に携わる人事ご担当者さまと関わることが多くあります。
    各社各様ですが、と、様々なことに翻弄されつつ、かなりお忙しくされているご様子です。
    第三者から見て、極めてストレスフルな環境下であるとお見受けします。

    もし、そのような状況下で、かつすでに当社の「ストレス耐性リポート」がお手元にあれば、是非あらためて眺めていただきたい項目があります。「ストレス対処法」です。ストレスへの対処の一助としていただければと思い、今回は標題のテーマを掲げております。

    ストレス耐性リポートとは

    「ストレス耐性リポート」は、パーソナリティ検査OPQから出力できるリポートです。受検者のストレスについての理解を深め、その結果を人事施策に活用することを目的に開発されました。
    ストレス状態は、自分がこうあってほしいと思うけれどもそうならないときに、人が感じる「いらいらした状態」と定義されます。そしてストレス要因(ストレッサー)は人によって異なります。つまり同じ状況であっても人によってストレス反応やその強さには違いがあるのです。物事が起こったときの受け止め方、立ち向かい方はいずれもパーソナリティの影響を受けます。「ストレス耐性リポート」では、OPQ によるパーソナリティの個人差データに基づき、次の指標を提供しています。

    1. ストレス要因
      受検者がどのような活動・条件・環境をストレスに感じやすいかを、①職場環境要因、②仕事要因、③人間関係要因の3 つの要因から把握します。

    2. ストレス対処法
      受検者が、ストレスにつながるような場面で、どういう行動・認識をするかを把握します。

    今回は、「ストレス対処法」について取り上げます。

    ストレス対処法とは

    ここで用いている対処法という言葉は、ストレス要因やストレス状態を処理するためにとる行動と認識という意味あいで使っています。心理学者リチャード・ラザラスは、大きく2つの対処法があると指摘しています。1 つは、問題そのものに対してぶつかってゆこうとする「問題中心型」対処法です。もう1 つは自分の心の平静さを維持しようとする「感情中心型」対処法です。
    研究の結果によれば、人はストレスに対して単純な形では対処せず、必ず複数の対処法を組みあわせようとします。このときに、事態の評価の仕方、とりうる手段として思いつく案とその選択は、パーソナリティによって差が出ます。
    リポートでは、OPQ のプロファイルから推論されるその人の「得意とするストレス対処法」に関する指標です。

    ストレス対処法の種類

    以下に、8項目のストレス対処法とその具体例を示します。具体例は「採用担当者として対処しきれるぎりぎりの過密スケジュールに置かれ、ストレスを感じている場面」を想定したものです。

    1. 勇気をもって立ち向かう
      逆境に立ったときに、勇気を奮い起こして、問題そのものに取り組む。直接、相手の考えに対決して、その考えを変えさせようとする。

      例:あらためてタスクを分析し重要度を整理し、重要度が低いものについてアウトソーシングや実施可否の再検討をするよう社内調整を行う。

    2. 距離をおいて見る
      今いる状況から自分を離して眺める。物事の明るい楽観的な面に目を向けるように努力する。

      例: 5分間一人になって深呼吸し、第三者として自身を眺める。「応募者がいること自体は良いことである」「そもそも仕事として任されていることは良いことである」「これを冷静に対処しきれば、次のキャリアに役立つ経験となる」と考える。

    3. 冷静に自分を保つ
      自分の感情や行動を抑えて、表に出さない。不当な批判を浴びたような場合であっても冷静に自分を保ち取り乱さない。

      例:20分間の休憩を取り、一人になって深呼吸し、自分の感情に目を向ける。「なぜ自分だけこんな目に」あるいは「自分はこんなことに翻弄されていてダメではないか」等、自分の中の不満や不安の声に耳を傾ける。その声を、落ち着いて深呼吸しながら冷静に聞き続けることで、徐々に徐々に解消していく。

    4. 胸襟を開いて助力を求める
      自分だけで問題を抱え込まないで、人に率直に話して援助を求め、アドバイスや共感を勝ち取る。

      例:上司や同僚、部下に業務に直接協力してもらえるよう相談する。他部署にいる同期社員、社外の友人(SNSでつながっている採用担当者含む)や知人で対人感受性が高そうな人に嘆く。

    5. 責任を認める
      問題に対して自分の責任を認めて、逃げない。それによって物事を打開したり、同じ間違いや問題を繰り返したりしないように決意する。

      例:この業務、責任を引き受けているのは自分であり、またこの状態を作った(もしくは合意した)のも自分であると冷静に解釈し、今後同様の事態にならないために何ができるかを考える。自分自身を非難するのではなく、事象を分析的に捉え、部分的に批判するのがポイント。
      ※この対処法一辺倒の方は、負荷が大きくなると気付かないうちに対処しきれなくなる可能性が高いので注意が必要です。

    6. 他のことに目を向ける
      つらい状況や嫌な問題にいつまでも悩まない。楽しいことや自分の好きなことに目を向けようと努力する。

      例:退勤後や休日には仕事のことを一切考えず趣味に没頭する。動画配信サービスなどは、夜更かしや運動不足になりすぎないように注意が必要。旅行はよいが、長期旅行からの仕事復帰につらさを感じる方は日帰り旅行がベター。

    7. 着想豊かな解決案をつくる
      よく問題を見極め、問題そのものを解決する案を工夫して打開する。その解決案を実行するために自分ができる努力を増やす。

      例:現在おこなっている施策の質と量が適切かどうか精査する。不要なものはやめる。社内外の協力者に任せる。自動化を試みる。

    8. プラス思考で打開する
      人間的に成長する、変貌することの利益に注目して、努力する。危機をチャンスと見て前向きに努力する。

      一連の業務を経験できる貴重な機会だと認識する。自社の採用活動について社内外の専門家にみてもらい、フィードバックをもらって成長の機会とする。


    そもそも、何をストレス要因だと感じやすいか、そして得意とする対処法には個人差があり、また対処法においては、現実的に取りやすいものとそうでないものが存在します。
    当社「ストレス耐性リポート」の結果がお手元にあってもなくても、今回の記事が、皆様の業務にとって前向きになる一助になれば幸いです。

    面接は採用選考において最も一般的な評価手法です。採用面接は、面接官に質問内容や評価基準を委ねて候補者と自由に対話する「非構造化面接」と、あらかじめ決められた質問内容や評価基準、面接の手順に沿って構造的に対話と評価を行う「構造化面接」に大きく分かれます。一般的に構造化面接のほうが妥当性(面接時の評価と将来の職務業績との関連性)が高いため、構造化面接、その中でも特に「コンピテンシー面接」が多くの企業で実施されています。
    コンピテンシーとは、職務で成果を上げるために必要な行動特性を指します。営業職なら高い売上予算を達成するための「ヴァイタリティ」、研究職であれば、事象や問題を構造的に分析して論理的な結論を導く「問題解決力」などが該当します。コンピテンシー面接とは、確認するコンピテンシー、質問、判別指標をあらかじめ決めておき、それらに沿って評価を行う面接手法です。しかし、コンピテンシーによっては面接で評価しにくいものもあるため、別の選考手法で補完、または代替したほうが望ましい場合もあります。
    そこで本コラムでは、当社が定義する「様々な職務の遂行において一般的に必要とされる9つのコンピテンシー」を例にとり、面接での評価のしやすさ・しにくさを紹介します。

    評価しやすいコンピテンシー

    面接で評価しやすいコンピテンシーは以下の4項目です。
    1. ヴァイタリティ(困難な目標をやり遂げるのに必要な体力・気力がある)
    2. 人あたり(人に対してよい印象を与え、思いやりと節度を持った態度がとれる)
    3. チームワーク(チーム全体の目標に向かって、協力・協調ができる)
    4. 状況適応力(状況に合わせて行動する。自分の行動を客観的に眺められる)
    「ヴァイタリティ」は高い目標に挑戦し、困難を乗り越えて課題をやり遂げるエネルギーに関連する項目です。過去の成果・実績から評価しやすく、多くの企業で評価対象になりやすい項目の1つです。しかし、「静かに淡々と話すが、実はエネルギーが高い」、「好きなことのみにエネルギーを発揮できる」という候補者もいるため、態度や話し方だけ、高い成果を上げたことだけ、に注目してしまうと判断を誤る可能性があります。そのため、話の内容の具体性に注目して目標の高さや取り組んだ期間、成果をよく確認し、本人の価値観、動機、興味関心に注目して取り組んだ理由や意欲的になれた・なれなかった場面を確認し、「ヴァイタリティ」を発揮できる環境が自社にあるか検討してください。

    「人あたり」と「チームワーク」はいずれもメンバーの一員としてチームに貢献した経験を詳しく掘り下げることで確認していきます。「人あたり」は相手を思いやる行動を指し、話し方や言葉の使い方から評価します。「チームワーク」は自分よりチームの成功を優先し、メンバーと協調して課題解決にあたる行動を指し、他者と協力して何かを成し遂げた経験から評価します。どちらも面接で評価しやすいコンピテンシーですが、グループ討議などのグループ型演習を実施すると、より明確に評価することができます。

    「状況適応力」は相手や状況に応じて、自分の考えや行動を柔軟に変化させることができるかを示すコンピテンシーです。これまで経験した最も大きな変化や、海外生活や留学など今までと全く違う環境に身を置いた経験などを尋ね、その時の対応を詳しく確認していきます。面接以外の手法では、その場で候補者に特定の役割や設定を与えて課題に取り組んでもらうシミュレーション演習によっても評価することができます。

    評価できるが注意が必要なコンピテンシー

    面接で評価できるが注意が必要なコンピテンシーは以下の4項目です。
    1. 創造的思考力(斬新で創造力豊かなアイデアを思いつく)
    2. 問題解決力(問題を構造的に捉え、合理的な手順で適切な推論を行う)
    3. プレッシャーへの耐力(緊張の強い場面でも冷静で、自分を見失わない)
    4. 統率力(周囲の動きに注意を払い、先頭に立ってチームをまとめる)
    「創造的思考力」は、アイデアを提示させるような質問をしたり、何かを改革した経験を尋ねたりして、独自の視点から数多くアイデアを出せるかどうかを確認していきます。ただし、斬新な発想や画期的なアイデアを評価するには、面接官側にも高い「創造的思考力」が求められます。筆者は以前、ある会社でイノベーション人材の要件定義を支援したことがありますが、要件に合致した応募者は面接選考で全員不合格となってしまいました。「発想が非現実的」、「常識が無い」といったコメントが多かったため、人事の方と相談して、翌年度の採用ではその会社のイノベーション事業部の社員だけを面接官にしたところ、数名が採用に至りました。入社された方々は、のちに新規事業を立ち上げたり、部門業務を大幅に効率化するアイデアを提案・実現したりするなど活躍されています。このコンピテンシーの評価は面接官の人選がカギになると言えます。

    「問題解決力」は様々な観点から情報を収集し、問題を分析して適切な結論を導くためのコンピテンシーです。過去の実績以外に話し方からもある程度評価できますが、中程度以上のレベルの候補者は「中程度」か「高い」かの判別が難しいので評価者間のばらつきが大きくなります。また、事前に想定問答で練習してから面接に臨んでいる候補者の場合、受け答えがスムーズで納得感のある回答が多くなるため、候補者本来の問題解決力を評価しにくくなります。そのため、知的能力テストや、多くの資料を読み込んだ上で課題に対する結論や理由を記述、あるいは発表させるイントレイ演習やプレゼンテーション演習といった選考手法も実施できると、より評価精度を高めることができます。

    「プレッシャーへの耐力」はプレッシャーを過度に強く受け止めず、冷静に対処するためのコンピテンシーです。強いプレッシャーがかかった経験を尋ねてその時の対応を詳しく確認する、あるいは意表をついた質問を投げかけて想定外の場面での行動を観察するなどして確認していきます。ただ、面接では「プレッシャーへの耐力」が低い人は分かるものの、高い(強い)人の見極めは困難です。過去の経験の確認では、当時をある程度冷静に振り返れるようになっていることと、意表を突いた質問1つ2つの反応を見るだけでは「高い(強い)」とまで判断することは難しいためです。そのため、たとえば候補者の質問に対して面接官が様々な反応を示す「逆面接」演習のように、先の展開が予想しにくく、その場で相手との当意即妙なやり取りが一定時間求められる演習のほうが適しています。

    「統率力」はリーダーシップに関わる項目であり面接で評価できますが、学生を対象とする新卒採用の場合は注意が必要なコンピテンシーです。企業における「統率力」とは、様々な年齢、立場、価値観の人々をまとめることを指しますが、学生からはゼミやサークルなど「自分自身に近い存在の集団」をまとめたエピソードが挙がりやすく、その中で発揮した「統率力」が社内でも発揮できるとは限りません。そのため、できるだけ幅広い年齢、経験、考え、文化を持った人たちをまとめた経験を確認してください。




    評価しにくいコンピテンシー

    面接で評価しにくいコンピテンシーは以下の通りです。
    「オーガナイズ能力」は無理と無駄のない計画を立て、適切に進捗管理を行う能力に関連する項目です。面接では自ら計画を立てて物事に取り組んだ経験や、集団の中で手配や段取りを付ける役割を担った経験を尋ねて確認しますが、計画や進捗管理が適切だったかどうかは「失敗」という結果にならない限り判断が難しいため、面接だけでは評価しにくいコンピテンシーです。面接よりも、課題に対処する優先順位を決めたり、対処するための行動計画を立てたりするイントレイ演習のほうが評価に向いています。

    ここまで、面接で評価しやすい・しにくいコンピテンシーについて紹介してきました。面接は、質問の仕方や内容を変えることで候補者の様々な能力を評価できる汎用性の高い選考手法です。また、よく構造化された面接は高い妥当性を持つことが研究でも明らかになっています(Smith & Robertson, 2001)。しかし、面接は万能ではありません。面接選考の特徴や限界を理解した上で、場合によっては別の選考手法に切り替えることで、より適切に候補者を評価することができるようになるでしょう。

    労働市場の流動性が高まり、優秀な人材の離職を防ぐ一つの手段として、社内公募制度への関心が改めて集まっています。日本ではバブル崩壊後の90年代、事業ポートフォリオの見直しに伴った既存社員の再配置で注目されました。その後異動増による現場側の負荷などから下火になったものの、雇用流動化の背景から再評価されているようです※1。「日本の人事部 人事白書 2024」によれば、社内公募制度の導入/導入予定はおよそ50%、5001名以上の大企業ではすでに8割が導入し、予定を含めれば9割に迫ります。
    本コラムでは、社内公募制度でのアセスメント活用についてお伝えします。

    求人・選抜

    通常の人事異動とは異なり、社内公募制度は人材が必要な部署が社内で求人を出し、他部署の従業員が応募する制度です。募集対象が組織内の従業員であるだけで、社外での採用と似たプロセスを経ます。よって、通常の外部からの採用選考と同様に、各ポストの要件定義や求められるスキルの言語化にアセスメントが活用できます。各ポストの要件定義の手法は、こちらをご参照ください。
    選抜場面では、応募者は在籍する従業員のため、これまでの経歴・実績、保有資格やスキル、上司の評価など、参照できる情報が多くあります。これに加え、アセスメントでポテンシャルを測定すると、応募する未経験業務のパフォーマンス予測の精度が向上します。

    従業員の自己理解とキャリア形成の促進

    アセスメントは求人側だけのツールではありません。従業員一人ひとりが定期的にアセスメントを受検し結果をフィードバックすることで、自分自身の強みや弱みを可視化し自己理解を促すことが可能です。自分自身の特徴を含めたこれまでのキャリアを棚卸しして気づきの機会を提供することで、主体的に自分のキャリアを描く支援ができます。これは、近年推進されているセルフ・キャリアドッグ施策にもつながります。主体的なキャリア形成の促進は、社内公募制度の肝である、「従業員自らが応募する」ことの促進にもつながるでしょう。
    アセスメントは、オンラインで簡単に従業員が結果を見られる万華鏡30がお勧めです。上司との1on1での活用など様々な利用が可能です。

    アセスメントが制度活性化の鍵に

    冒頭紹介した調査では、多くの企業が社内公募制度を導入していることが分かりましたが、制度が効果的に機能しているかは企業によってまちまちでしょう。求人に際して、応募者がよく理解できるジョブディスクリプションやポストの説明を行うこと、また応募する従業員自身が自分のことをよく理解する機会を定期的に提供することは、ともすると形骸化してしまう社内公募制度の活性化につながります。いずれもアセスメントが補完できる部分ですので、ぜひご活用ください。

    1. 日経新聞「NECや富士通、社内公募制度を再評価 人材定着の効果も」2024年5月17日記事

    タレントマネジメントのためのソリューションプラットフォーム「Insight Platform」

    SHLのタレントマネジメントソリューションサービスであるInsight Platformの日本語版が2024年9月よりリリースされます。
    本コラムでは従来のアセスメントサービスとは異なるInsight Platformの機能や魅力をご紹介します。

    Insight Platformとは

    Insight Platform(インサイトプラットフォーム)は、従業員・役員の人材アセスメントデータから優れた人事の意思決定に貢献するための洞察を得る人材可視化プラットフォームです。
    人材アセスメントと個人別レポートに加え、アセスメント結果による人材可視化を行うインサイト(集団レポート)の機能を持ち、タレントマネジメントにおける以下5つの課題に対するソリューションを提供します。
    1. サクセッションプラン
    2. ハイポテンシャル人材の特定
    3. エンタープライズリーダーの育成
    4. セールストランスフォーメーション(デジタル環境に適した新しい営業)
    5. コンピテンシーフィット

    Insight Platform が解決する5つの課題

    Insight Platformの特長

    主な特長は以下の3つです。

  • ポテンシャルを客観的に測定する
    複数のアセスメントを用いることで日常業務では顕在化していない人材のポテンシャルを客観的に捉えることができます。

  • 各タレントマネジメント課題に適した新しい基準モデルを持つ
    SHLの広範な研究に基づき、各ソリューションのための全く新しい基準モデルを持っています。これまで、アセスメントを用いた選抜や能力開発は汎用性の高いリーダーシップコンピテンシーモデルに基づいて行われてきました。Insight Platformの各ソリューションは、激しく環境が変化する現在の状況に適した全く新しい測定項目や基準モデルを持っています。

  • 素早く集団をとらえることができる人材可視化の機能を持つ
    人材可視化のための機能であるインサイト(集団レポート)を持つことがInsight Platformの最大の魅力です。アセスメントから人材データを得るだけでなく、タレントマネジメント施策を運用するためにデータ活用をすることを目的としたインサイトを提供します。
  • 5つの課題に対応するレンズ

    Insight Platformは5つの課題に対応する「レンズ」を持っています。レンズとはアセスメント、個人レポート、インサイトを含む一連のソリューションパッケージです。

    各レンズは以下のサービスを含みます。



    ここでは各アセスメント、個人レポート、インサイトの詳細な説明は割愛しますが、インサイトの例としてサクセッションのインサイトContextual Leadershipの画面イメージを掲載します。


    サクセッションプラン

    Insight Platformのソリューション第1弾として2024年9月に日本版がリリースされるサクセッションプランで注目していただきたいのは、リーダーシップコンテクストという概念です。
    従来の後継者選抜はリーダーシップコンピテンシーに基づいて行われてきました。しかし、SHLのリーダーシップ研究からリーダーの成功により大きな影響を与える要素としてコンテクスト(リーダーを取り巻く環境)を見出しました。SHLはコンテクストを4つの要素(役割、チーム、組織、外的環境)の複合であると捉えています。コンテクストが違えばリーダーはそれぞれ異なる課題に挑戦することになります。また、全てのコンテクストに効果的なリーダーのコンピテンシーは存在せず、リーダーもコンテクストに基づく適材適所で決められるべきであるという考え方に基づいています。
    SHLは4カテゴリ27項目のリーダーシップコンテクストを定義し、各コンテクストにおけるポテンシャルと経験を測定します。経験とポテンシャルの両面から後継者を選抜できます。また、現職のリーダーが経験してきたコンテクストをとらえることで、各リーダー候補者にとって真のリーダーへの近道となるポストがどれなのかを判断しやすくなります。

    リーダーの成功に影響する27のコンテクスト(一部抜粋)
    <チームのパフォーマンスを推進する>
  • 人材を最大限に活用する
  • 創造性と革新を推進する
  • ネットワークパフォーマンスを向上させる
  • 地理的に散らばったチームをリードする
  • グローバル/異文化のチームをリードする
  • 協調し合わない風土を変える
  • 揉め事の多い風土を変える
  • ハイポテンシャル人材の特定

    ソリューション第2弾として2024年内のリリースに向けて準備を進めているのはハイポテンシャル人材の特定です。
    このソリューションには、ハイポテンシャル人材の3要件に適したアセスメントが含まれており、インサイトによって多くの人材の中から素早くハイポテンシャル人材を特定できます。
    ハイポテンシャル人材要件とその測定方法についての詳細は以下のコラムをご覧ください。
    コラム「ハイポテンシャル人材に求められる3つの要件」


    エンタープライズリーダーの育成

    ソリューション第3弾として2025年春までのリリースを計画しているのがエンタープライズリーダーの育成です。
    エンタープライズリーダーとは、変化の時代に求められる新しいリーダーです。このリーダーの特徴は変革と執行を推進できるだけでなく、共創のためのネットワーキングができること。新事業創造に不可欠なネットワーキングの力を持つリーダーこそが今の日本に求められています。このソリューションではエンタープライズリーダーとしてのポテンシャルを測定し、インサイトによりエンタープライズリーダー候補者を素早く発見します。また、リーダー候補者に対してエンタープライズリーダーになるための個別の育成課題をフィードバックできます。

    測定するコンピテンシーは以下の3カテゴリ12項目です。

    1.変革のためのリーダーシップコンピテンシー
  • 創造と構想
  • 交流とプレゼンテーション
  • 指導と決断
  • 進取の気性とパフォーマンス


  • 2.執行のためのリーダーシップコンピテンシー
  • 分析と解釈
  • 適応と対処
  • 支援と協力
  • 組織と実行


  • 3.ネットワークのためのリーダーシップコンピテンシー
  • ネットワークの構築
  • ネットワークの活性化
  • 相互依存の創造
  • ネットワークの有効化


  • エンタープライズリーダーとエンタープライズリーダーシップのアセスメント結果を活用する方法の詳細については以下のコラムをご覧ください。
    コラム「エンタープライズリーダーとはなにか」
    コラム「新しいリーダーに求められるネットワークの力」
    コラム「エンタープライズ・リーダーシップ・リポートの活用・能力開発」

    おわりに

    今回残念ながらご紹介できなかった2つのソリューション「コンピテンシーフィット」と「セールストランスフォーメーション」は2024年8月現在、日本版のリリース時期が確定しておりません。速やかにリリース情報をお伝えできるよう引き続きローカライズを進めます。また、リリースが確定する前に、これらのソリューションに関わる詳細については改めてコラムでご紹介することをお約束します。
    当社がタレントマネジメントソリューションの領域のマーケティングを強化し始めたのは、本サイトがスタートした2020年です。それから4年が経過し、私たちのタレントマネジメントソリューションは新しい段階に突入しました。Insight Platformが日本企業のタレントマネジメントの活性化と組織パフォーマンスの向上に実際に貢献し、日本の人事に携わる皆様から愛されるソリューションとなるよう力を尽くして参ります。

    産業:テクノロジー、規模:2000名以上、地域:東南アジア

    One Mount Groupは、以下の3つの主要製品を通じてバリューチェーン全体にわたるソリューションを提供するベトナム最大のテクノロジー企業です。

    One Mountは競争優位性を維持すべく、事業を前進させるスキルを持つ人材を確保したいと考えていました。One Mountのタレントマネジメントおよび能力開発ダイレクターである Phi Thi My Hanh氏は次のように述べています。「One Mountは、会社の戦略を成功させるために大胆かつ断固とした行動をとることができる将来のリーダーたちを特定し、育成したいと考えていました。」

    これを実現するためには、まずは従業員を評価し、最も高いポテンシャル(潜在能力)を持つ人材を特定する必要がありました。

    これまで人材の評価は、年次業績報告、直属上司からのフィードバック、行動に関する選択式の質問などの主観的に行われていました。 Phi Thi My Hanh 氏は、人材を評価するには、より信頼性が高く、正確で、公平な方法が必要だと気が付きました。「測定の3つの柱であるコミットメント、能力、貢献は維持したいと考えていました。しかし測定の仕方については、より客観的でデータ主導のアプローチへの移行が必要でした」と彼女は述べています。

    次に新しいアプローチを支援してくれる適切なパートナーを探しました。One Mountがパートナーの要件としたのは 以下の3点です。

    1. アセスメント結果の妥当性が検証されており、信頼性が高い
    2. 従業員向けの能力開発に関する知見とヒントがある
    3. 管理職と参加者の双方にとって使いやすいプラットフォームである

    Phi Thi My Hanh氏は、SHLのハイポテンシャル人材ソリューションのデモを見て、3つの要件を十分に満たしており、将来のリーダーを正確かつ容易に特定できるようになると考えました。彼女は次のように述べています。「SHLは、組織全体の人材を迅速に評価し、個人やチーム全体のリーダーシップ能力に関する知見を即座に得る方法を示してくれました。」

    One Mountは、上級職での成功を決定づけることが証明されている3つの重要な特性(アスピレーション、能力、エンゲージメント)を測定する簡単なSHLのアセスメントを既存の従業員と新規採用者に実施しました。そして従業員のうち50名が、最もポテンシャルが高く、One Mountがターゲットとしたリーダーのプロファイルを満たす適切なスキルを持つ人材として特定されました。

    この50名には「Unlocking Potential Report(ポテンシャルを解き放つリポート)」が提供されました。このリポートは、個人の特徴に応じた知見を提供し、リーダーシップへの明確な道筋を持って彼ら自身が学習を管理する上で役に立ちます。

    Phi Thi My Hanh氏のチームは、集団としてのインサイト(知見)と個人のリポートを活用することで、組織全体で最も注意を払うべき能力開発領域はどこかを把握することができ、育成に役立つ適切なプログラムに従業員をアサインすることもできました。

    SHLインサイト
    SHLのハイポテンシャル人材インサイトでハイポテンシャルと特定された人材は、経営幹部の地位を獲得する可能性が11倍高くなります。

    Phi Thi My Hanh氏は、SHLがこのプログラムを展開したスピードと効率に感銘を受け、次のように述べています。「SHLが提供してくれたスケジュールとサポートに、本当に満足しています。」

    このハイポテンシャル人材発掘の新たなアプローチに関する従業員への調査では、非常に肯定的な結果が得られました。80%以上が、個人リポートなどで得られる知見は将来高い職位に就きたいというアスピレーションを実現するためにとても参考になると回答しています。

    本プログラムはOne Mountで初めて実施されたリーダーシッププログラムであったため、 SHLの高い専門性に満足しており、Phi Thi My Hanh氏は次のように振り返っています。「このプログラムはOne Mountにとって本当に前進です。将来のリーダーたちの成長を楽しみにしています。」

    原文はこちらです。
    Leading Technology Firm Develops Skills of Highest Potential Talent With SHL

    ハイポテンシャル人材ソリューションの詳細はこちらからご確認いただけます。

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