労働者数が減少し、雇用コストが増加する中、企業は人材を最大限に活用するためにこれまでとは異なる考え方をする必要があります。ゼネラル・ミルズは、採用時に未来に求められる能力を優先し、スキルベースアプローチで従業員が自らの能力開発を主導できるようにする方法を紹介しています。

アンドリュー・ネレセン 著
2024年3月14日

個人のポテンシャルを最大限に引き出し、進化するビジネスニーズに対応できるような戦略を構築することは、今日の組織にとって重要なテーマです。

スキルベースアプローチでは、学歴や経験年数を重視するのではなく、個人が持っているスキルと、それをどのように活用できるかを重視します。組織は、ポテンシャルを考慮して個人を採用、昇進、育成することができ、指数関数的な変化のペースに対応しやすい労働力を生み出すことができます。

スキルの詳細やデータを得るには、さまざまな方法があります。例えば、AIを使用して過去の経験から推測することができます。しかし、本当に価値を提供できるのは、ある人が発揮することができるけれども未だ発揮していないスキル、つまりポテンシャルを示すことができるアセスメントです。スキルについて将来を見据えた客観的な視点を提供できるアセスメントメントは、様々なツールの中でも強力なツールとなり得ます。

ゼネラル・ミルズのタレント・ダイレクター、リチャード・チェンバース氏に、タレント・マネジメント戦略と、人材データを活用したスキルベースアプローチによって、人材を最大限に活用し、各従業員が自らの能力開発をリードできるようにする方法について伺いました。

Q:ゼネラル・ミルズがタレント・マネジメントにどのように取り組んでいるかを教えてください。
A:ゼネラル・ミルズでは、継続的に適応し、物事のやり方を再考しているため、その適応性とレジリエンス(回復力)を備えた人材を必要としています。さらに、継続的な学習と開発を通じて進化できる人材を求めています。

従業員がここに残りたいと思った場合、ここで長期のキャリアを築くことができると感じることが重要です。私たちは引き続き賢明であり、従業員が転職を選択した場合にパイプラインの観点から確実に保護されるようにしますが、彼らがここで個人的なキャリアの成長を遂げ、必要なサポートが確実に得られるようにすることを目指しています。

Q:人材戦略の概要について教えてください。
A:最終的な目標を明確にした上で計画を立てました。その結果、ゼネラル・ミルズの3つの差別化要因を特定することができました。それは、将来に求められる能力を特定すること、優秀な候補者を特定し選抜すること、そして確実で実用的なインサイト(知見)を用いてキャリアを促進することです。
最初の2つは入社前に焦点を当てたものですが、3つ目については、実用的なインサイトを提供し、学習マインドを生み出す能力開発体験を作りたいと考えました。そのため、スキルベースアセスメント主導のアプローチを作成しました。これは選考にとどまらず、タレント・マネジメントのエコシステムに統合され、能力開発計画の基礎となり、社内における人材の流動性を促進します。そして、能力開発だけでなく、自己省察や機会の創出を促進するために、厳選された堅牢なツールとリソースを用意しました。
Q:人材戦略の一環として人材データをどのように活用していますか?
A:アセスメントから得られる優れたデータを活用することで、スキル面をより深く掘り下げ、戦略的な人員計画、後継者計画、能力開発計画に役立てることができます。L&Dチームと連携することで、スキルに基づいてより強固な戦略を構築することができます。同時に、従業員に付加価値を提供し、個人的な成長という点で他社と差別化しています。 また、オンボーディング・エクスペリエンスの向上などを通じて、入社した社員に何かを還元する機会も生まれました。組織に入った初日から、あなたとあなたのリーダーが、あなたの強みとそれに基づく機会が記載された能力開発リポートを受け取り、個別の能力開発計画に組み込むことができる世界を想像してみてください。
Q:人材戦略はどのように社員の能力開発を促進するのでしょうか?
A:当社では、各機能のコンピテンシー・モデルとして「人材プロファイル」を使用しています。このプロファイルには、各機能で成功するために必要な経験や、その機能内での役割に期待されるリーダーシップ行動などが含まれています。

その目的は、ある部門で働く人が短いアセスメントに参加して客観的なインサイトを得ることで、自分自身の能力開発計画を立てることができるようにすることです。その後、他部署でクロスファンクショナルな役割を担いたいと考えた場合は、自分の強みと機会を他の人材プロファイルやその職務に最適なコンピテンシーや能力と比較することができます。

このようなアセスメントへの参加はすべて従業員主導で行われ、組織はマネジャーがアセスメントのインサイトを活用する際に適切な会話ができるようにサポートしています。従業員に責任を持たせることで、従業員に力を与え、希望すれば簡単に能力開発を受けられるようにしています。ただし、従業員には自らキャリア開発を求めるアスピレーションを期待しています。

原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2024/talent-and-careers-strategy-for-skills-of-the-future/

ゼネラル・ミルズのリチャード・チェンバース氏が登壇したウェビナーを抜粋した記事でした。詳細にご興味のある方は、ぜひ原文記事のリンクからオンデマンド配信をご確認ください。

以前のコラムで「パワースキル」という新しいフレームワークと、各スキルの地域や業界別の分布をご紹介しました。従来のコンピテンシーとは異なる、新たな観点として注目を集めているスキルアプローチですが、今回は組織内でスキルをどのように活用するかを、SHLグループのe-book「How to build a skills based organization」より一部抜粋してご紹介します。

なぜスキルベースの組織なのか

現在、人事は事業戦略の変化に合わせて人材を素早く効果的に活用することに苦慮しています。組織はスキルを特定し、測定し、配置するための体系的な、あるいは有用な方法を持っていません。人材とスキルを中心に仕事を組織化する、つまり、スキルベースの組織を作ることで、生産性、パフォーマンス、アジリティ(敏捷性)を最大化することができるのです。スキルを理解し、管理するシステムを構築することで、人事はすべての人材業務に一貫した戦略を適用することができ、優先事項や経済状況、人材市場の変化に事業が適応できるようになります。
調査によればスキルベースの組織は、以下の傾向があります。

スキルへの移行にあたり検討すべきポイント

具体的な移行のプロセスは組織によって異なりますが、ここでは有意義な変化を起こすために検討すべき4つのポイントをご紹介します。

1. 「なぜ」から始め、成功をイメージする
自問自答してみてください。なぜスキルベースへ移行するのか?スキルによって最終的に何を達成したいか?スキルアプローチに取り組む理由はたくさんあります。しかし、目的を明確にすることで、焦点を絞ることができます。成功とはどのようなものかを考えてみてください。どのようなKPIか確認し、それがどのようにビジネスに役立つのですか?

2. 組織を結束させる
スキルベースの組織作りは、一人でできるものではありません。組織内の他の利害関係者と目標や戦略を共有し、一緒に取り組む必要があります。上級リーダーから一般社員まで組織内のあらゆるレベルの人々が、このアプローチの利点を理解し、移行中および移行後に果たす役割を把握しているようにしましょう。

3. 道具を揃える
どのような形であれ、スキルアプローチに取り組む上では、スキルを正確に識別し、測定し、マッピングする必要があります。ここにアセスメントを導入することで、従業員のスキルを客観的に測定し、タレントマネジメントに関する迅速で十分な情報に基づいた意思決定が可能になります。まずは、スキルを記述しマッピングするための共通言語を見つけます。SHLのスキル分類法は、科学的な根拠に裏付けられたフレームワークに基づいています。次に、スキルを測定するツールが必要です。SHLのGlobal Skills Assessment(グローバル・スキルズ・アセスメント)は、わずか15分で96のビジネススキルを測定することができます。

4. 成功を祝う
すべての前進は進歩です。小さな成功や前進はあまりに簡単に忘れてしまうものです。こうした小さな成功の棚卸しをし、次のステップへの活力とすることが重要です。

おわりに

「人材をより事業戦略に合致させたい」。これは、スキルベースのアプローチに移行する組織に共通する理由です。事業戦略や人材戦略をスキル要件に置き換えることは、最初は難しく感じられるかもしれません。しかし この情報があれば、戦略的な採用、配置、リスキリングなどの活動を通じて、事業を助けることができます。

e-bookでは、この後、スキルベースの組織への移行をどこから開始すべきか、そしてスキルアプローチへ移行する上での障害と対処法についても言及しています。詳細はこちら からご覧ください。

以前から「VUCAの時代」と言われていましたが、ここ数年の世界の出来事を振り返ると、まさにその言葉通りのような時代であると感じます。パンデミック、地政学的リスクの高まり、AIなどのテクノロジーの目覚ましい発展と普及は、世界が常に不確実性にあふれていることを私たちに実感させました。
このような世界で、組織はどのようなリーダーシップが必要となるのでしょうか?
今回は、SHLグループのコラム「Effective leadership in a world of geopolitical upheaval—a contextual challenge for organizations(地政学的な動乱の世界における効果的なリーダーシップ-組織における文脈上の課題)」から、特に地政学的に不確実な世界のリーダーにとって重要なコンテクストを6つご紹介し、直面する課題について考察します。

リーダーのコンテクスト(文脈)が重要

組織は、さまざまな状況で機敏に対応し、変化に適応して成長できる人材を適切に配置することが重要です。
SHLは、9,000人のグローバルリーダーを対象に3年間の調査を行い、リーダーの成功にはコンテクスト(文脈)が重要であるということを明らかにしました。コンテクストとは、リーダーが活動するコンテクスチュアル(文脈的)な環境のことで、リーダーが働かなければならない業界や場所、ビジネスの優先順位を含む組織、チーム、職務特性や心理的要求を含む役割といった外部環境が含まれます。
リーダーを選抜する際、より広く仕事の背景を考慮に入れると、「画一的な」アプローチよりも平均で4倍正確な予測が得られます。パフォーマンスの高いリーダーをより正確に予測することで、リーダーのパフォーマンスが平均 22% 向上し、それが売上・純利益ともに4%の増加につながります。

この調査では、ダイバーシティに関連する別の注目すべき成果もありました。世界中の組織がリーダーのパフォーマンスの成否に最も重要であると特定した27の課題のうち 21 項目において、女性の方が男性よりも強みがあるという結果が得られました。コンテクストは、特定の課題に誰が最適であるかを評価する非常に柔軟かつ強固な方法です。それだけでなく、コンテクストを活用することで、潜在的な可能性のある人材のターゲットを広げ、人材プールに存在する可能性のある隠れた逸材を組織が見逃さないようにすることができるのです。

不確実な世界で特に重要となるコンテクストとは

SHLは、リーダーが直面する約300の課題から、リーダーの成功に影響を与える最も重要な27のコンテクストを抽出しました。コンテクストは「チームのパフォーマンスを推進する」、「リスクと評判をマネジメントする」、「変革をリードする」、「結果を出す」の4つのグループに分類されます。
これらの中には、時間の経過や新たな課題の出現に伴って重要性が高まったり薄れたり、ある時点での組織の優先順位や目標に固有のコンテクストがあります。しかし、今日の地政学的に不確実な世界の状況に鑑みると、次の6つのコンテクストが前面に出てくる可能性があります。

・不確実性が高くあいまいな状況で業務を遂行する
当然ですが、不透明で、想定外の変化がありうる環境で活動する能力は、極めて重要です。

・人や業務の安全とセキュリティを確保する
事業やオペレーションの一部が不安定な場所にある場合、地域紛争、政治、環境問題、インフラの課題などを乗り切る能力が最も重要になります。サイバー攻撃の脅威に対処する仕組みの構築も、組織にとって注力すべき重要な点です。

・急速に変化する製品、サービス、プロセスに対応する
これは、サプライチェーンマネジメントに関わる問題に一部関連しています。確立されたサプライチェーンラインが中断された場合、組織は代替プロセスを迅速に再検討する必要があります。

・高いリスクをとる状況下で業務を行う
混乱や予期せぬ事態は、組織が大きな決断を迫られることを意味します。例えば、事業を別の地域に迅速にシフトしたり、突然紛争状態になっている国に新商品を一か八か投入したりすることが考えられます。長期的には大きな市場機会となりえます。

・リスクを嫌う状況下で業務を行う
混乱によって、組織は新たなグローバルな機会を模索することになるかもしれません。このような新しい環境では、規制が強化されたり、他の「官僚的」なステークホルダーとの関係を調整したりする必要が生じる可能性があります。これまでのビジネスの進め方とはかなり異なる可能性があります。

・地理的拡大を通じてビジネスを成長させる
特定の国・地域における地政学的な課題によって、組織は、製造拠点や製品・サービスの市場として、新たな地域を検討する必要に迫られるかもしれません。

コンテクストとリーダーの特性をそれぞれ見極める

今回は地政学的状況に伴う不確実性にフォーカスして、より密接に関わるコンテクストをご紹介しました。
ただ、組織や事業が直面するコンテクストはこの一面だけではありません。それぞれの環境における特定のコンテクストを理解し、最適な組み合わせの人材を測定することで、混沌とした世界で組織を発展させる将来のリーダーを発掘することが可能です。
なかなか予測が難しい未来のリーダーを選抜・育成する際は、成功確率を高めるためにコンテクストという考え方をぜひ取り入れていただければと思います。

はじめに

コンピテンシーの360度評価は1990年代から存在するアセスメント手法です。管理職の評価育成方法として長年活用されており、多くの効用がある一方で運用を誤ると副作用が生じることがあり、活用には注意が必要です。近年、人的資本経営のための人材データ収集方法として改めて360度評価に注目が集まっています。
本コラムでは、当社の360度評価ツール「無尽蔵」について紹介します。

360度評価とは

360度評価は一人の被評価者に対して、周囲の複数人が能力を評価する仕組みです。1990年代にコンピテンシーアセスメントの手法として普及しました。コンピテンシーは能力が行動として顕在化したものですので、他者から評価しやすくこのツールとの相性がよかったのです。
主な利用目的は能力開発です。評価、選抜にも使うことも可能ですが、綿密な計画と適切な開発、細心の注意を払った運用が求められます。
メリットは複数の他者から評価を受けられること。自分ではできていると思っている行動が周囲からはできていないと見られていることがわかり、問題の原因究明や効果的な能力開発計画の立案ができます。デメリットは評価スキルが弱い評価者による偏った評価となることです。偏った評価は、誤った人事判断を導くだけでなく、被評価者と評価者との関係を悪化させることにつながり、チームをバラバラにしてしまうこともあります。

360度評価「無尽蔵」

360度評価「無尽蔵」は当社が2001年にリリースされたオンラインの360度評価ツールです。英国SHL社の「Perspectives on Management Competencies (PMC)」をベースに、より効果的な能力開発ができるよう日本独自の機能を搭載し、世界のSHLに先駆けてオンラインツールとして販売をはじめました。

360度評価「無尽蔵」の概要

「無尽蔵」の特徴

「無尽蔵」には能力開発に効果的な三つの特徴があります。