日本エス・エイチ・エルでは過去数十年にわたり、あらゆる業界のクライアント企業に対し、優秀なマネジャーの行動特性の調査と妥当性検証を行ってきました。その結果は、職務適性は職種によって非常に変化に富むのに対し、職場で高い評価を受けるマネジャーの特徴は、企業規模および産業界をまたいでも、大きく変化しないというものでした。
一方、近年は新規事業人材の発掘・育成・登用が注目を集めており、必然的にマネジャーの役割もチームの創造性をブーストすることが期待されると考えられます。このような場合、マネジャーにはどのようなマネジメントが望まれるでしょうか?目標達成において高く評価されてきた従来のマネジャーの特徴と、大きな違いは生まれるでしょうか?
2015年に心理的安全性の重要性を発表して注目を集めたGoogleの研究チームは、イノベーションを生むチーム作りについて、一貫したメッセージを打ち出しています。

イノベーションが生まれる職場環境をつくる:リーダーシップを示して指導する

Googleはイノベーション創造において、ビジョン共有や主体性と好奇心の奨励、リスク許容、社員同士のつながりの促進の重要性を強調するとともに、リーダーの役割の重要性にも触れています。ここでは、創造性研究者であるテレサ・アマビールの論文をもとに、マネジャーが社員の創造性を抑圧しない方法にフォーカスしています。

① キャパシティだけを見て機械的に仕事を割り当てない。適材適所を考え、やりがいのある仕事を任せること。
② 目標を設定したら、あとは任せる。目標を定めずに指揮権を渡してしまったり、自分の考えに沿ったマイクロマネジメントをしてはいけない。
③ 誤った期限を設定しない。時間や費用について適切なリミットを設定すること。
④ 「なあなあの」慣れ合いのチームに迎合しない。均一的なグループは集団思考にとらわれ、創造的思考力が阻害される。
⑤ 批判的な態度を取らない。新しいアイデアに懐疑的な態度をとったり、失敗したアイデアを無視したりすると、メンバーはアイデアについて話す意欲を失う。
⑥ 自己中心的な仕事、駆け引き、ゴシップを許容しない。その代わりに、ビジョン共有の感覚や、チーム間の繋がりを活性化する。

(出典はこちら

イノベーティブなチームのためのマネジャーは、従来と異なるか

高度な創造性を発揮するチームのマネジャーに求められる行動傾向は、従来評価される傾向にあったマネジャーの行動と比較し、構成要素とその重みづけが若干変化するかもしれません。たとえば、指揮・指導の重要性は減少・もしくは限定的となり、実利主義でないほうがよく、批判性よりもむしろ信頼する力が必要になる。トライ&エラーへの風当たりに耐えるタフさが必要になり、リスクをとって決断する力はますます重要となるかもしれません。しかし当然ながら、すべてのマネジャーにこうした特徴が求められるわけではないでしょう。変化に適応するためにチームやメンバーに多様性が求められる今、マネジャーにも役割に応じた適材適所が求められるといえます。
グローバル化や技術革新などが急速に進む社会で、組織を率いるリーダーの役割は重要性を増しています。新型コロナウィルス感染症の蔓延により、不確実性がますます高まる中、その重みもさらに増大しています。今回は、変化の時代に必要とされる変革型リーダーについて取り上げます。


リーダーシップの機能とリーダーシップモデル

SHLのモデルでは、組織において有効にリーダーシップを発揮するために重要な4つのリーダーシップの機能を定義しています。
  1. ビジョンを作る(戦略)
  2. 目標を共有する(コミュニケーション)
  3. 支援を得る(人)
  4. 成功をもたらす(オペレーション)

各リーダーシップの機能は、マネジメントとリーダーシップという2つの観点で分かれます。

マネジメント・フォーカス(業務型):システムをうまく動かし続けることや、特定目的に対して信頼できるパフォーマンスをあげる
リーダーシップ・フォーカス(変革型):システムの方向性を創り出し、発展・変化させることや、人と組織の両方を鼓舞して期待以上の成果を達成する

各リーダーシップの機能は関連する2つのコンピテンシーがあり、ひとつはマネジメント・フォーカスに、もうひとつはリーダーシップ・フォーカスに、より関連します。



SHLリーダーシップモデルにおけるリーダーシップ・フォーカス(変革型)は、まさに変革型リーダーであり、様々な影響を受けて変化する今の世の中で必要とされるリーダーシップと言えます。

コロナ禍のチャレンジと変革型リーダーに求められるもの

コロナ禍では、リーダーにとって次のようなチャレンジが鮮明になりました。


コロナ禍の文脈で、変革型リーダーに求められるコンピテンシーを解釈します。

ビジョンを作る「創造力」革新的なアイデアを生み出し、戦略的に考える
→ 誰も経験したことのない世界的パンデミックで、様々な制約が課される状況下での組織運営です。これまでのやり方ではなく、革新的な手法を発案、取り入れてリーダーシップを発揮する必要があります。

目標を共有する「対人積極性」 人とコミュニケーションをとり、説得し、影響を与える
→ 物理的な接触が減り、リモート下でのコミュニケーションが主流となります。非言語情報を含めて相手を見ながら自分を伝える方法は封じられます。また、同様の方法で相手の情報を得ることもできません。より積極的かつ明確にメッセージを発信し、相手からのフィードバックを適切に受け取れるようになる必要があります。

支援を得る「リーダーシップ」率先して行動を起こし、指示を与え、責任を引き受ける
→ パンデミックの収束が見えない状況で、今進むべき目標に向かって周りを鼓舞しながら巻き込んでいくことが求められます。すばやく決断し、自分が主導権を持って強いリーダーシップを発揮する必要があります。

成功をもたらす「完遂エネルギー 」結果を出すこと、目標を達成することに焦点を当てる
→ 未知の経験であっても、目標達成のためにエネルギーを注いでやりきることが求められます。やるべきことを認識して具体的な行動に移せることが重要になります。

おわりに

急速な変化は以前から叫ばれていましたが、新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより、多くの人がパラダイムシフトを実感しています。この変革が進む世界で組織を率いていくには、同じく変化に順応し、変革を起こしていける人材が必要です。変革型リーダー(あるいはそのポテンシャルを持つ人)をいかに見つけ、アサインし、業務を実行していくかが、これからの組織の継続と発展の鍵となります。パーソナリティ検査OPQではリーダーシップ・リポート(サンプルリポート抜粋)を用いて、ご紹介した変革型リーダーシップや個々のコンピテンシーについてポテンシャル予測が可能です。ご興味のある方は当社コンサルタントまでお問い合わせください。