リアルタイムのタレントインサイトを効果的に活用できる人事チームは、より迅速かつ正確な人材に関する判断を行い、その結果、人材のポテンシャルを最大限に引き出すことができます。
人材データを活用して人事施策を進化させる方法については、白書やベストプラクティス、他社の成功事例など、様々な情報が溢れています。その多くは、「大規模な3年がかりのプロジェクトの成果」といったような大がかりな取り組みですが、実際には小規模な取り組みであっても意味のある変化を起こすことが可能です。
本コラムでは、人事機能のレベルアップのために何ができるかを検討している人事ご担当者向けに、SHLのタレントインサイト成熟度診断についてご紹介します。
タレントインサイト成熟度とは?
ある組織の採用からオンボーディング、能力開発や業績管理、そしてサクセッションプランまで全てを含めたタレントマネジメントの洗練度と有効性を評価するために使用されるもので、様々なモデルがあります。一般的に基礎から上級までいくつかのレベルに分かれており、高いレベルであるほどタレントマネジメントの取り組みが効果的で洗練されていることを示します。
SHLのタレントインサイト成熟度モデル
以下の5つのレベルに分かれています。- レベル1 旅の始まり:データが限られており、活用の余地が大きい
- あなたの組織は、人材データの活用が最小限にとどまっており、タレントアナリティクスの旅を始めたばかりです。妥当性のある人材データを収集することで、意思決定の質を大幅に向上させることができます。バイアス(偏見)を減らし、多様な人材のパイプラインを強化し、透明性のあるプロセスを促進することで、効果的な人材の維持、育成、昇進戦略が可能になります。
この段階では、取り組むべき領域や考慮すべき事項が多すぎて圧倒されるように感じるかもしれません。どの組織も、どこかの時点で経験したことなので心配しないでください。まずは最大の懸念点やリスクを1つ特定し、小さく始めましょう。自社の課題のリストを作成することをお勧めします。よくある問題意識の例を以下に挙げます。
取り組むべき課題を特定するのに支援が必要だとお感じになった場合には、ぜひ当社コンサルタントにご相談ください。- 将来のリーダーを準備するために、ハイポテンシャル人材の発掘・育成計画はあるか?
- 従業員に昇進やキャリア開発の機会を提供できているか?
- スキルギャップに対応するための人事戦略は何か?
- 現在組織内にどのような人材がいるか把握できているか?
- レベル2 戦略的に進める:データ活用に一貫性がなく、新たな優先課題が生じている
- あなたの組織は人材データの旅に乗り出しましたが、データの活用に一貫性がありません。優先的な課題は認識しているものの、組織全体でみるとデータ活用はまだ限定的です。
一般的に、アセスメントデータはハイポテンシャル人材の発掘や後継者育成などのより上級職務の意思決定に使用され、幅広い従業員層にはあまり使用されません。しかし、すべての従業員に能力開発と異動配置の機会を提供することで、定着率を高め、個人、ひいては組織のパフォーマンスを向上させることができます。
ここで主な障壁となるのは予算です。まずは客観的なデータを使った意思決定を行い、その結果どのように改善したか、影響を証明します。データ活用の価値とROIを証明できれば、組織の別階層への展開につながります。この次に重要なことは、組織内のあらゆるレベルにわたって大規模に人材ソリューションを提供でき、従業員のライフサイクルにおける全ての人事課題に対処するためにデータを再利用できるパートナーを見つけることです。
- レベル3 進捗を管理する:データ活用が組織内で別々に行われおり、統合の余地がある
- あなたの組織では、人材データは一貫して収集され利用されています。しかし多くの場合、別々に実施・保存されています。前進していることは明らかですが、より統合的で戦略的なアプローチはまだ手つかずのままです。このレベルでは、組織はアセスメントデータを客観的に収集するものの、その戦略的活用に苦慮していることが多いでしょう。
SHLの顧客の多くはこのレベルに該当します。次のステップは、既存の人材データを統合し、より総合的なアプローチに移行することです。特定の目的のために収集されたデータを、戦略的に複数の意思決定に活用しましょう。例えば、採用で収集したデータは、オンボーディング、能力開発、キャリアパスのサポートに再利用できます。また、アセスメントデータを上級職以外にも活用することを検討しましょう。ハイポテンシャル人材として認識されていない従業員を育成し、戦略的に再配置するためにデータを活用します。これには、データを保存し再利用できるプラットフォームが鍵となります。
- レベル4 優れた戦略を持つ:アセスメントがオペレーションの規範として統合されている
- あなたの組織は、人材データと分析の最前線にいます。人材に関する意思決定は客観的で妥当性のあるデータに基づいており、従業員のパフォーマンスと定着率は高まっています。このレベルの組織は、特定の目的のために個人データを収集し、目的に適うデータ活用を行います。質の高いデータが一つひとつの意思決定を支援し、組織の業績にプラスの影響を与えています。
次のステップは、集約された人材データの分析です。集団間の比較によって全体像を把握できるようになります。スキルギャップや多様性の問題、人材パイプラインの弱点の特定など、幅広くデータを活用する方法を検討しましょう。従業員の全体像を把握することで、事業戦略や環境の変化に合わせて機動的に行動できるようになります。つまりゴールポストが変わったときに、どのような影響があり、それに対して何をすべきかがわかるのです。
- レベル5 卓越している:タレントマネジメントが戦略的な事業運営の一部となっている
- あなたの組織は、客観的で妥当性のあるアセスメントデータを業務にシームレスに統合し、個人や組織全体のレベルで人材に関する意思決定に活用しています。この段階になると、複数の総合的な人材決定にデータを効果的に活用することができます。
タレントマネジメントを事業と同じように行うことで、業績向上や離職率の最小化など、大きなメリットが得られます。このような戦略的なアプローチにより、直近のニーズと将来の課題の両方に備えることができます。
課題はこの水準を維持することであり、そのためには継続的な評価と改善が重要です。テクノロジーと科学の進化に伴って、継続的な革新、投資、成長が必要です。タレントマネジメント施策の効果を追跡し続け、人材プロセスを改善し、組織外の専門知識も活用しましょう。

おわりに
SHLのタレントインサイト成熟度診断ツールは、画面に表示されるいくつかの質問にお答えいただくことで、ご自身の組織が上記5つのどのレベルに該当するかが分かります。まだ日本語版のご用意がありませんが、今後の人事組織改善のヒントをお探しの方はぜひ一度お試しください。
学習文化を作ることで、将来ビジネスをリードする人材を育成し、より機敏に従業員を配置することができます。では、学習する文化を作り、組織全体に浸透させるにはどうすればよいのでしょうか。経験豊富な人事リーダーであるジョン・マロニー・フィリップス博士に、学習文化を築くための5つの方法についてお話を伺いました。
ナタリー・アッシャー 著
2024年6月6日
文化は一夜にして実現できるものではない
学習文化とは、メンバー間の継続的な学習、成長、能力開発を優先し、奨励する組織環境です。学習文化は、個人が知識を求め、自発的に学習し、知見を共有し、新しいスキルを活用して個人と集団のパフォーマンスを向上させるという考え方を育みます。
多くの組織は、最新の学習ツールやコンテンツを購入するという落とし穴に陥ります。これらが人材育成を強化するための万能薬だと考えてしまいますが、これらの利用を促すために莫大な労力をかけなければ、効果はあまり得られないかもしれません。それよりも基本的なソリューションを使用して、従業員に利用を奨励してやる気にさせ、関係者全員に利益をもたらす学びを実現するよう、強力な計画を実行するほうが成功の確率は高まります。学習文化を構築する上で良い出発点となる5つのステップをご紹介します。
学習文化を築くための5つのステップ
- 学習目標を定義する
これは当然のことのように思えますが、まず従業員にスキルの開発を奨励する目的を理解することが重要です。一般的に買い手は、売り手に対し特定の業界の最前線にいて、最新の関連技術、研究、トレンドに精通していることを期待するので、この点が目標となるでしょう。しかし、それ以外の目標もあります。組織内のスキルギャップを埋めることや、従業員が個人的な目標(例:予算編成をする)を達成できるようにすること、AIなど業界外の新しいトレンドに遅れずについていくことなどです。最終目標が何であるかを理解することは、その目標に到達するためのステップ、そして適切なツールとプロセスを決定する上で役立ちます。 - メリットを伝える
今日の世界では、あらゆるレベルと役割において、自分のスキルを最新の状態に保つことが極めて重要です。新しいスキルの習得に時間を投資しなければ、雇用が危うくなるでしょう。このようなメリットを伝えることで、学習は組織を助けるだけでなく、その人の組織内での昇進や将来のキャリアに役立つことを理解してもらえるでしょう。 - リーダーの協力を得る
リーダーは、成功のチャンスを掴むために学習を支援する必要があります。チームに学習の時間を与えるだけでなく、利用可能なリソースを思い出させて学習を促したり学習のメリットを伝えたりするという重要な役割を担います。リーダーは、他者の学習を支援するだけでなく、自らも積極的に学習をして模範となる必要があります。 - 報酬と表彰
業績管理に学習を含める必要があります。ボーナスなどに影響する定期的な目標と評価に、学習の要素を含めるべきです。金銭的な報酬がなくても、学習を個人の重要な目標とすることで、組織が能力開発を重視していることを示すことができます。成功を祝いましょう。リーダーが「学習のヒーロー」を称えることは、従業員にとって、自分の仕事が注目され評価されていることを実感でき、大きな動機付けとなります。
従業員に期待する行動を強化する上で役に立ちます。 - 適切な構造とツールを提供する
目標が決まったら、使いやすく理解しやすい効果的なツールを用意できるかどうかで大きな違いが生まれます。最適なツールは、スキルギャップや開発すべき領域に関する知見を提供し、個人に合わせた能力開発計画を関係者間で容易に共有できます。そして組織が適切なリソースを確保し、透明性のあるキャリア開発の道のりを作るための構造的な手法を提供してくれます。
学習文化を実現する方法はひとつではなく、各組織はそれぞれの目的に応じて独自のアプローチをとりますが、事前によく検討することと、リーダーシップチームが有能であれば、学習文化を根付かせ、従業員と組織の両方に利益をもたらすことができます。
SHLのスキル開発ソリューションは、客観的なスキルに関する知見を提供し、外部採用であれ育成であれ、いずれの人材戦略であっても、より的を絞った人材育成投資ができるように支援します。
原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2024/5-steps-to-build-a-learning-culture/
以前からスキルベース採用、スキルベースの組織という話題をご紹介してきました。この記事もスキルに関係したものです。従来のコンピテンシーが職務を中心としていたのに対し、スキルは人を中心とする考え方です。今回はスキルベースの組織が成功するには、個人のスキル習得を促す、学習する組織文化が必要であり、そのような文化を築くためにまず検討すべきポイントとして5つを紹介しています。
SHLのニューロダイバーシティ研究プログラムは、ニューロダイバースな人材をアセスメントする際のエビデンスに基づいたベストプラクティスを追求し続けています。このブログでは、最新のニューロダイバーシティ研究レポートからの知見をご紹介します。
マッケンジー・スペクト 著
2024年4月17日
ニューロダイバーシティとは何か?
ニューロダイバーシティ(神経学的な多様性)とは、人々の考え方や情報処理の仕方における自然な変異を指す包括的な用語です。世界人口の約15~20%がニューロダイバージェントであると推定されています。
近年、障害者雇用の拡大を目指したインクルージョンの取り組みに対する関心が高まっています。しかし、ニューロダイバージェントな成人の失業率は、他の障害のある人の3倍、障害のない人の8倍です。
ニューロダイバーシティ研究の主な発見
50万人以上の候補者のパフォーマンスと反応を分析した白書「ニューロダイバースな人材のアセスメント」発表後のニューロダイバーシティ研究の進捗状況を、2023年「ニューロダイバーシティ研究レポート」にまとめました。この研究では、3つの主要分野におけるニューロダイバージェントな人材の受検体験を理解することに焦点を当てました:
異なるテストタイプに対するパフォーマンスと反応、障害開示の決定、調整の検討、です。
主な発見は以下の通りです:
- 認知能力アセスメントが有望な選択肢であることを強調しています。認知能力アセスメントはインタラクティブな形式であっても伝統的な形式であっても、ニューロダイバージェントな候補者が自分のスキルや能力を示す機会を提供します。
- 研究は、支援的なアセスメント環境を育むためにインクルーシブな言語を使用することと調整の重要性を強調しています。
- 研究は、認知的な観点の多様性を強調し、アセスメントの内容や技術におけるユニバーサルデザインの原則を支持するという、ニューロダイバーシティの動きと一致しています。
- 様々なニューロタイプにわたる継続的なデータ収集は、私たちの包括性へのコミットメントを強調し、多様な候補者により良いサービスを提供するために、プラットフォームと製品の継続的な改良を推進しています。
インクルーシブなアセスメントによるDEIへの取り組みの継続的な推進
SHLは、ダイバーシティ、公平性、インクルージョン、帰属意識、アクセシビリティへのコミットメントを誇りにしています。この分野のリーダーとして、SHLは研究と実践の間の溝を埋めることを目指しています。私たちの研究は、ニューロダイバースな人材をアセスメントするためのベストプラクティスに役立つだけでなく、受容の文化を育むというより広範な価値も強調しています。
2024年、私たちのニューロダイバーシティ研究チームは、研究範囲を引き続き拡大する予定です。私たちは、より多くのニューロタイプを取り入れることを目的とした継続的なデータ収集に加え、状況判断テストや履歴情報などを含める研究を行い、アセスメントを多様化させています。
原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2024/insights-into-neurodiversity-in-the-workplace
2023年の研究結果の詳細にご興味のある方は、ぜひ以下のリンクからリポートをダウンロードしてください。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/neurodiversity-research-program-annual-report/
労働者数が減少し、雇用コストが増加する中、企業は人材を最大限に活用するためにこれまでとは異なる考え方をする必要があります。ゼネラル・ミルズは、採用時に未来に求められる能力を優先し、スキルベースアプローチで従業員が自らの能力開発を主導できるようにする方法を紹介しています。
アンドリュー・ネレセン 著
2024年3月14日
スキルベースアプローチで、避けられない変化から組織を守ります
個人のポテンシャルを最大限に引き出し、進化するビジネスニーズに対応できるような戦略を構築することは、今日の組織にとって重要なテーマです。
スキルベースアプローチでは、学歴や経験年数を重視するのではなく、個人が持っているスキルと、それをどのように活用できるかを重視します。組織は、ポテンシャルを考慮して個人を採用、昇進、育成することができ、指数関数的な変化のペースに対応しやすい労働力を生み出すことができます。
スキルの詳細やデータを得るには、さまざまな方法があります。例えば、AIを使用して過去の経験から推測することができます。しかし、本当に価値を提供できるのは、ある人が発揮することができるけれども未だ発揮していないスキル、つまりポテンシャルを示すことができるアセスメントです。スキルについて将来を見据えた客観的な視点を提供できるアセスメントメントは、様々なツールの中でも強力なツールとなり得ます。
ゼネラル・ミルズのタレント・ダイレクター、リチャード・チェンバース氏に、タレント・マネジメント戦略と、人材データを活用したスキルベースアプローチによって、人材を最大限に活用し、各従業員が自らの能力開発をリードできるようにする方法について伺いました。
- Q:ゼネラル・ミルズがタレント・マネジメントにどのように取り組んでいるかを教えてください。
- A:ゼネラル・ミルズでは、継続的に適応し、物事のやり方を再考しているため、その適応性とレジリエンス(回復力)を備えた人材を必要としています。さらに、継続的な学習と開発を通じて進化できる人材を求めています。
従業員がここに残りたいと思った場合、ここで長期のキャリアを築くことができると感じることが重要です。私たちは引き続き賢明であり、従業員が転職を選択した場合にパイプラインの観点から確実に保護されるようにしますが、彼らがここで個人的なキャリアの成長を遂げ、必要なサポートが確実に得られるようにすることを目指しています。
- Q:人材戦略の概要について教えてください。
- A:最終的な目標を明確にした上で計画を立てました。その結果、ゼネラル・ミルズの3つの差別化要因を特定することができました。それは、将来に求められる能力を特定すること、優秀な候補者を特定し選抜すること、そして確実で実用的なインサイト(知見)を用いてキャリアを促進することです。
最初の2つは入社前に焦点を当てたものですが、3つ目については、実用的なインサイトを提供し、学習マインドを生み出す能力開発体験を作りたいと考えました。そのため、スキルベースアセスメント主導のアプローチを作成しました。これは選考にとどまらず、タレント・マネジメントのエコシステムに統合され、能力開発計画の基礎となり、社内における人材の流動性を促進します。そして、能力開発だけでなく、自己省察や機会の創出を促進するために、厳選された堅牢なツールとリソースを用意しました。 - Q:人材戦略の一環として人材データをどのように活用していますか?
- A:アセスメントから得られる優れたデータを活用することで、スキル面をより深く掘り下げ、戦略的な人員計画、後継者計画、能力開発計画に役立てることができます。L&Dチームと連携することで、スキルに基づいてより強固な戦略を構築することができます。同時に、従業員に付加価値を提供し、個人的な成長という点で他社と差別化しています。 また、オンボーディング・エクスペリエンスの向上などを通じて、入社した社員に何かを還元する機会も生まれました。組織に入った初日から、あなたとあなたのリーダーが、あなたの強みとそれに基づく機会が記載された能力開発リポートを受け取り、個別の能力開発計画に組み込むことができる世界を想像してみてください。
- Q:人材戦略はどのように社員の能力開発を促進するのでしょうか?
- A:当社では、各機能のコンピテンシー・モデルとして「人材プロファイル」を使用しています。このプロファイルには、各機能で成功するために必要な経験や、その機能内での役割に期待されるリーダーシップ行動などが含まれています。
その目的は、ある部門で働く人が短いアセスメントに参加して客観的なインサイトを得ることで、自分自身の能力開発計画を立てることができるようにすることです。その後、他部署でクロスファンクショナルな役割を担いたいと考えた場合は、自分の強みと機会を他の人材プロファイルやその職務に最適なコンピテンシーや能力と比較することができます。
このようなアセスメントへの参加はすべて従業員主導で行われ、組織はマネジャーがアセスメントのインサイトを活用する際に適切な会話ができるようにサポートしています。従業員に責任を持たせることで、従業員に力を与え、希望すれば簡単に能力開発を受けられるようにしています。ただし、従業員には自らキャリア開発を求めるアスピレーションを期待しています。
なぜスキルベースの組織なのか
現在、人事は事業戦略の変化に合わせて人材を素早く効果的に活用することに苦慮しています。組織はスキルを特定し、測定し、配置するための体系的な、あるいは有用な方法を持っていません。人材とスキルを中心に仕事を組織化する、つまり、スキルベースの組織を作ることで、生産性、パフォーマンス、アジリティ(敏捷性)を最大化することができるのです。スキルを理解し、管理するシステムを構築することで、人事はすべての人材業務に一貫した戦略を適用することができ、優先事項や経済状況、人材市場の変化に事業が適応できるようになります。調査によればスキルベースの組織は、以下の傾向があります。

スキルへの移行にあたり検討すべきポイント
具体的な移行のプロセスは組織によって異なりますが、ここでは有意義な変化を起こすために検討すべき4つのポイントをご紹介します。1. 「なぜ」から始め、成功をイメージする
自問自答してみてください。なぜスキルベースへ移行するのか?スキルによって最終的に何を達成したいか?スキルアプローチに取り組む理由はたくさんあります。しかし、目的を明確にすることで、焦点を絞ることができます。成功とはどのようなものかを考えてみてください。どのようなKPIか確認し、それがどのようにビジネスに役立つのですか?
2. 組織を結束させる
スキルベースの組織作りは、一人でできるものではありません。組織内の他の利害関係者と目標や戦略を共有し、一緒に取り組む必要があります。上級リーダーから一般社員まで組織内のあらゆるレベルの人々が、このアプローチの利点を理解し、移行中および移行後に果たす役割を把握しているようにしましょう。
3. 道具を揃える
どのような形であれ、スキルアプローチに取り組む上では、スキルを正確に識別し、測定し、マッピングする必要があります。ここにアセスメントを導入することで、従業員のスキルを客観的に測定し、タレントマネジメントに関する迅速で十分な情報に基づいた意思決定が可能になります。まずは、スキルを記述しマッピングするための共通言語を見つけます。SHLのスキル分類法は、科学的な根拠に裏付けられたフレームワークに基づいています。次に、スキルを測定するツールが必要です。SHLのGlobal Skills Assessment(グローバル・スキルズ・アセスメント)は、わずか15分で96のビジネススキルを測定することができます。
4. 成功を祝う
すべての前進は進歩です。小さな成功や前進はあまりに簡単に忘れてしまうものです。こうした小さな成功の棚卸しをし、次のステップへの活力とすることが重要です。

おわりに
「人材をより事業戦略に合致させたい」。これは、スキルベースのアプローチに移行する組織に共通する理由です。事業戦略や人材戦略をスキル要件に置き換えることは、最初は難しく感じられるかもしれません。しかし この情報があれば、戦略的な採用、配置、リスキリングなどの活動を通じて、事業を助けることができます。e-bookでは、この後、スキルベースの組織への移行をどこから開始すべきか、そしてスキルアプローチへ移行する上での障害と対処法についても言及しています。詳細はこちら からご覧ください。
より適切な採用、育成、異動の決定をサポートする最先端のソリューションとプラットフォームによって、人事慣行を変革することを目指しています。
ロンドン、2024年3月6日――タレントインサイトの世界的リーダーであるSHLは、タレントアクイジションおよびタレントマネジメントソリューションにおける地位向上戦略の一環として、人材アセスメント事業者であり長期パートナーであるエシャエル・インドネシアの買収を発表しました。
SHLは、企業とそのリーダーが適切な人材を雇用、動員、育成するのを支援するデータ主導型SaaS人材ソリューションを拡張し、インドネシアの組織と人々の成長機会を解き放ちます。
SHLのチーフ・ストラテジー・オフィサー(最高戦略責任者)であるヒマンシュ・アガルワル氏は、「当社のインドネシアへの投資は、このダイナミックな市場への戦略的対応であり、世界的な展開を強化し、成長の機会を解き放つものです。インドネシアでは、経済が発展しており、世界第4位の生産年齢人口をもち、そして急速なデジタル化によって変革が進んでいます。組織は機会を最大化し成果を達成するために、適切な人材と適切な HRテクノロジーに投資する必要があります。」
アガルワル氏はさらに、「エシャエル・インドネシアは、人材を通して事業の成果を推進することに情熱を注ぐ専門家チームであり、市場をリードするビジネスを構築してきました。これからも共に、組織の成功を促進する革新的なデータ主導型の人材ソリューションによって、戦略的な人事決定を強化することに取り組んでいきます。」
この買収により、SHLは東南アジアの主要市場であるインドネシア、シンガポール、フィリピンでの直接的なプレゼンスを通して、東南アジアにおける主導的地位を強化し、米国、EMEA、APAC地域にわたる当社の顧客に大規模にサービスを提供できるようになります。
エシャエル・インドネシアのマネージング・ディレクター、マリツカ・タンブナン氏は、顧客への影響を次のように説明しています。「この地域におけるタレントマネジメントの新時代が来ました。SHLの専門知識と、世界中で構築されテストされている強力なソリューションが利用可能になり、顧客はSHLと共にグローバルに活動できます。」
SHLはこの12ヶ月間で2回の買収を行いました。1回目は日本であり、今回は2回目です。アンディ・ブラッドショーが2018年にCEOに就任して以来、SHLは従業員のライフサイクル全体にわたってデータに基づいた意思決定を強化するSaaSソリューションを提供するタレントインサイトパートナーへと戦略的な進化を遂げており、今回の買収はその最新のステップです。
東南アジアでのプレゼンスを高めたSHLグループですが、次なる進化のステップは何でしょうか。
人事異動に関する重要な決定には客観的なアプローチが必要
イギリス海軍とイギリス海兵隊は、平和を維持し、イギリスの自由を守り、世界貿易を守るために世界中で、年中無休で活動しています。30 年以上勤務してきたマイク ヤング大佐 (博士) MBE は、イギリス海軍のリーダーシップアセスメントと能力開発のアドバイザーであり、上級士官に対して心理測定アセスメントを実施し、コーチングを行い、適切な専門能力開発の取り組みを設計しています。
マイク大佐が説明するように、英国海軍は上級リーダーに関して独特の課題を抱えていました。「軍と民間組織の主な違いは、異動と再編の量です。通常、上級リーダーは同じ役割に留まるのはおよそ 3年間だけです。」
イギリス海軍は最近まで、どの士官を任務あるいは昇進に推薦するかを決定する際に、ほぼ年次評価報告書だけに頼っていました。
しかし、この主観的なアプローチには欠点がありました。マイク大佐は次のように述べています。「評価システムは、個人のパフォーマンスに対する満足度を伝えるのにはうまく機能しますが、誰が特定の任務に適しているか、個人の強みがどの分野にあるかを見分ける上ではあまり役に立ちません。 」
SHL はリーダー向けのアセスメントを通じて人材を効果的に見分けます
イギリス海軍のトップは、陸軍およびイギリス空軍のトップとともに、すべての人のポテンシャルを最大限に引き出し、目標達成と並行して感情知能の誠実さと行動についても同等に考慮したものとなるように、昇進システムの近代化に尽力していました。
イギリス海軍内で広範な研究を実施し、リーダーのパフォーマンスを予測する際に認知能力やパーソナリティ特性よりもモチベーションが重要であることが明らかになりました。マイク大佐は、この近代化の取り組みにおいて心理測定アセスメントが「追加のレンズ」を提供できると考えました。
アセスメント事業者として SHL を選んだことについて、マイク大佐は次のように説明しています。「これまでの数多くのリーダーシップ調査プロジェクトから、SHL の製品とサービスは非常に正確で信頼できるものであることがわかっていましたし、入札プロセス中にもその能力を十分に証明しました。」
イギリス海軍は、全般的な職業に関連するパーソナリティ特性を理解するためにOPQを、モチベーションの詳細な側面を理解するためにMQを、上級リーダーの全般的な認知能力を測定するためにVerify Interactive G+ を選択しました。
データ主導の意思決定により、リスクを軽減し異動を助ける
マイク大佐はすぐに SHL のアセスメントを 350 人以上の上級リーダーに実施し、結果がもたらす利点をすぐに実感しました。マイク大佐は「初めて、その職務にとって重要な能力に関するデータに基づいて、個人の包括的な全体像を任命委員会に提示することができました。可能な限り十分な情報に基づいた意思決定を行っているという自信を持つことができました。」と述べています。
この上級スタッフに対するより深い理解は、大きな利点をもたらしました。マイク大佐は「SHL のアセスメントを使用することで、他の役割を担うことができる人材のプールを持つこと、そしてより多くの情報に基づいた後継者育成計画を立てることができます。特に、人材を素早く異動させなくてはならないことが多い我々にとっては、成功に不可欠です。」
同氏はさらに、「リスクの軽減にも役立ちます。たとえば、取締役会が誰かを通常よりも早く昇進させることを検討している場合、従来の年次評価やコースレポートに加えて、今は『追加のレンズ』である心理測定データを利用できるのです。」
海軍士官が専門能力の開発を正しい方向に導く
SHL はイギリス海軍向けにカスタマイズされたリーダーシップ開発リポートの作成も支援しました。3 つの SHL アセスメントに基づくリポートであり、過去 20 年間にわたってイギリス海軍に関連することが実証されてきたリーダーシップのコンピテンシーに紐づけられています。
マイク大佐は、これらが従業員にもたらす利点を次にように説明します。 「SHL と開発したリポートにより、個人は自分の行動を振り返り、何が動機になっているのかについて知見を得ることができます。リーダーが昇進するための適切なスキルを身につけられるように、彼らが開発したいであろう分野を明らかにすることができます。リーダーが自らの成功を形作るための知識を提供できるのです。」
将来の成功を確実なものにする組織全体の知見
より広範なレベルでは、長期にわたる傾向を追跡できるようになりました。マイク大佐は、「以前はできなかったけれども、できるようになったことの1つは、経年変化の追跡です。出ていく人もいれば入ってくる人もいる。海軍の上級スタッフの平均的な一般知的能力やモチベーションなどが変化したかどうかがわかります。また、組織内のさまざまなレベルでグループと個人を比較することもできます。」と説明しています。
このアセスメントアプローチは非常に成功し、イギリス海軍とイギリス海兵隊はそれをすべての指揮官に広げています。マイク大佐は人材発掘の利用を組織のさらに下層部まで拡大することについて海軍委員会の承認を得ました。「あらゆる階級において、全員が、自分自身のリーダーシップに関連した特性に関する『追加のレンズ』を使って、自分自身の成長についてより多くの情報に基づいた選択ができるようにする機会を提供することを目的としています。」
革新を続け、組織の最も重要な部分である人材に投資を続けることで、イギリス海軍は未来が安全に保たれていると確信することができます。
原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/customer-stories/the-royal-navy/
リーダーのパフォーマンスを予測する上で、認知能力やパーソナリティよりもモチベーションが重要な要素であることが判明した、という点が非常に興味深いです。長くても3年で異動をするという特殊な環境が関係しているのでしょうか。
異なる文化間で公平なアセスメントを構築することの難しさと、それに対して何ができるかを学びます。
私はアセスメントセンター(本ページ下部の訳者コメント参照)を実施しており、観察用のシートに「発見した能力開発の領域について直接的かつ明確に言及していない。」と走り書きしています。この記録は、この受検者がこのコンピテンシーについて最高点をとることはできないことを意味します。結局のところ、私たちが求めているのは、あまり「回りくどい話し方」をせずに自分の考えを直接述べ、重要な点に明確に対処できるマネジャーです。しかし、私は心の中で「ちょっと待って。私は今、あまりにも『ドイツ的』に考えていないか?『直接』とはどういう意味だろう?」と考えます。その受検者が相対した「従業員」役は、メッセージを非常に明確に理解していました。
アセスメントセンターの次の演習は、コンピテンシー面接です。私のメモには「自分の貢献を明確にせず、『私』ではなく『私たち』を多用している」と書かれていました。私はまた不公平になっていますか?私はドイツの個人主義的な文化で育ち、幼い頃から個人の貢献や成功について話すように訓練されてきました。しかし、ほんとんどの国は集団主義的な文化であり、自分自身の成功を強調することはむしろ一般的でないことが多いです。このタイプの文化では、人々は自分自身をグループの一部とみなしているため、アセスメントの状況設定の中でもそのようにコミュニケーションをとる傾向があります。「では私はどうすればよいのか?私たちが求めている望ましい行動やスタイルは何だろうか?」私は考え、混乱しています。
上に挙げた2つの例は、異なる文化を持つ人々のアセスメントにおいて評価者が直面する課題の一部を浮き彫りにしています。実際、アセスメントセンターやディベロップメントセンターはあらゆる側面で文化の影響を受けます。文化的多様性により、バイアス(偏見)や誤解、ミスコミュニケーションが生じる可能性が非常に高いのです。
異文化間で公平かつ包括的なアセスメントを構築するという課題
リーダーシップとフィードバックのスタイル
リーダーシップのスタイルは文化によって異なります。中国における優れたリーダーは、英国における優れたリーダーとは大きく異なり、リーダーシップスタイルの違いがアセスメントセンターやディベロップメントセンターでも同様に現れる可能性が高いです。西洋諸国では、部下が上司にフィードバックを行うことは歓迎されていますが(360度フィードバックなど)、アジアのほとんどの国では受け入れられません。私は、中国の組織に360 度フィードバックを導入しようとして失敗する顧客を多く見てきました。実際、ほとんどの文化では、ドイツ人のように率直かつ直接的にフィードバックを与えることはありません。文化によっては、コミュニケーションが一方向、つまりトップダウンでしか機能しない場合もあります。したがって、受検者と(受検者の)上司役とのやりとりを観察し、上司に公然と反対する受検者を高く評価するロールプレイ演習は、一部の文化にとって不利であり、公平な演習とは言えません。
グループ演習
複数の受検者を同時に評価することができ非常に効率的ですが、この手法は信頼性が低く、方法論に問題があります。他の受検者は訓練された評価者ではなく、1対1のロールプレイ演習などとは対照的に、望ましい(望ましくない)行動を引き起こす事前に定められたスクリプトに従うわけではありません。そのため、グループ演習の結果は実際には比較できず、他の受検者の力に大きく左右されます。さらに、若い頃から自分自身や自分のアイデアを「売る」ことを学ぶ人たち(アメリカ人など)もいれば、特に集団主義的な文化において目立たないように、集団のコンセンサスに従うようにと教えられる人たちもいるという、文化的な差異という問題を加えたら、予測妥当性はごくわずかです。
パーソナリティモデル
西側諸国で広く受け入れられているパーソナリティモデルは、他の文化ではあまり役に立ちません。たとえば、有名なビッグファイブは個人主義的な文化の影響を受けています。ビッグファイブはアセスメントセンターで使用される多くのパーソナリティモデルに影響を与えるため、ほぼ自動的に特定の文化グループに不利になります。研究によると、西洋文化では、特質、意見、目標、その他の非常に個人的な特徴が、一貫し安定したアイデンティティの基礎を形成していることがわかっています。しかしアジア文化では、このような連続性が、一般社員やマネジャーなどの役割によって形成される場合があります。したがって、研究によると、性格特性と行動の関連性は、アジア文化では西洋文化に比べて低い可能性があり、パーソナリティに関するアンケートの妥当性も同様であることが示唆されています。
組織が、最も基本的な検討すべき点の1つは、(将来の) 従業員やマネジャーが(通常は本社によって形成される) 組織文化にどの程度適応することを期待しているか、またはどの程度文化差を受け入れて、慣れた行動をとることができるようにするか。優劣はなく、どちらも、スタッフやリーダーを選抜または育成する際の組織文化とアセスメントに強い影響を与えます。
異文化を包括するアセスメントへ向けて
最も異文化に適用可能なアセスメントソリューションの1つは、より客観的で偏見の少ない人事決定を可能にするオンラインアンケートです。このための前提条件は、国際的に検証されていることです。SHLは、最もよく使用されるアセスメントツールであるOPQ(Occupational Personality Questionnaire)について、ローカル比較グループを提供しています。これにより、受検者を同じ文化的背景を持つ人々と比較できるため、異文化間のバイアスが軽減されます。(強制選択手法が社会的に望ましい回答を大幅に減らすことが研究によって示されているにもかかわらず、中国など一部の文化ではアンケートは一般的に普及しておらず、回答者は社会的に望ましい回答をする傾向があり、結果が歪められることを完全に防ぐことはできません)。
文化的バイアスを軽減できる可能性がある、もう1つの方法は、受検者と同じ文化をもつ、またはその文化での生活した経験を持つ評価者を用意することです。こうすることで、すべての文化が望ましい行動を発揮するチャンスが同じになるように、「単一文化」で評価するよりも行動指標を「より緩やかに」解釈することにも役立ちます。
私の意見では、異文化を包括するアセスメントというテーマは、これまで以上に重要度が高まっています。しかし、多くの場合、最初の重要なステップは、これらの複雑さを認識することです。さらに、異文化間で公平なアセスメントを課題としてだけでなく、時間とエネルギーを投資する価値のある貴重なものとして捉えることが重要です。
上述のアセスメントセンターでは、私は他の評価者と自分の考えを率直に共有しました。次に、リーダーシップやフィードバックのスタイルなど、求められる行動について明確な最低基準を定義しました。他のコンピテンシーについては、文化間の違いを反映するように、事前に定められた行動指標を少し緩やかに解釈することにしました。
原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2023/the-challenges-of-cross-culturally-fair-assessments/
アセスメントセンターとは、仕事場面を模した複数の演習(プレゼンテーションや部下との面談など)を通して、受検者の能力を多面的に評価する手法です。受検者の能力開発を目的と行う場合にはディベロップメントセンターと呼ばれます。
2024年の人事に影響を与える、7つのコンテクスト
ダイナミックな人材の世界では、優位性を持つことは必要なことであり、選択の余地はありません。本ブログでは、2024年のタレントマネジメントで予想されるトレンドと、AIの波が人事領域をどのように再構築しているか、世界経済の動向が人材戦略にどのような影響を与えるか、なぜスキルと人材獲得へのアプローチが進化しているのか、をご紹介します。課題を乗り越えてチャンスをつかむために、必要な知識を身に付けましょう。
今後注目すべきコンテクスト(文脈)や見通しは以下の通りです。
1. AI革命が進行中
2023年は、ChatGPT Plusなどのテクノロジーを含む生成AI(Gen-AI)の出現により、止められない変化の波の始まりの年になりました。生成AIは、人事およびビジネスプロセスをより効率化し、繰り返しのタスクを減らし、予測力の高い人材分析を可能にします。ただし組織がこの波に乗る場合には、十分な注意を払い、テクノロジーを徹底的に理解し、2024年に導入すべきかどうかを検証する必要があります。
2. 世界経済の不確実性は従業員に影響を与える
パンデミック後、雇用市場は大きく変化し、大退職時代につながりました。従業員が力を持つ一方で、現在の労働市場が逼迫していることと経済の不確実性によってバランスが変化しつつあります。組織は長期的な利益を得るために、人材への投資を継続し、能力開発、流動性やキャリアの成長を提供し続けることが必要です。
3. ビジネスの変革により人事戦略が変化する
デジタル化、持続可能性、多様な競争が2024年のビジネスの変革を推進し、成功に必要なスキルと人材が変化します。人事はスキルギャップを迅速に特定し、ギャップに対処するために、人材獲得や社内の人材の流動性を高める必要があります。
4. 労働力不足と労働人口の人口動態の変化
世界的な人材不足は過去最高に達しており、組織は必要な人材を確保する効率的な方法を批判的に検討する必要があります。解決策としては、さまざまな人材プールを活用することや、重大なスキルギャップに対処するために社内の人材開発に焦点を当てることが考えられます。
5. 技術的なスキルから行動的なスキルへの移行
人事のスキルへの重点は、2024年には行動的なスキルへと移行します。学習、問題解決、効果的なコミュニケーションを素早く行うことができる人材を特定することが極めて重要になります。このようなソフトスキルや行動スキルを備えた人材を採用、育成、配置することは、人事にとって競争上の優位性となります。
6. データの民主化
2024年には、人事担当者はテクノロジーに精通し、分析的で戦略的になる必要があります。人事が組織内で戦略的機能へと変化する中で、データ主導の意思決定とプロアクティブなアプローチは不可欠となります。
7. 採用は減速し、社内流動性は高まる
2023年は採用が減速し、社内の流動性が高まっています。組織は、社内での異動に関するプログラムをより効果的にし、従業員が組織内のチャンスと組織に留まるメリットを確実に認識できるようにすることに重点を置く必要があります。
SHLが新たに作成したeブック「2024 Talent Outlook」では、上述の7つのコンテクストについてより詳細な情報をまとめています。
2024年に向けて、SHLはお客様を全面的にサポートできるように尽力します。
原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2023/2024-talent-outlook-navigating-the-future-of-hr/
eブック(英語)は以下のURLよりご確認いただけます。
https://www.shl.com/assets/premium-content/shl-2024-talent-outlook-ebook-en.pdf
変化し続ける世界とパワースキル
多くの研究では、AIが人間の社会的・感情的な知性や創造的・革新的なスキルを、他のスキルのように簡単に再現することは、難しいことを示しています。¹このことから、ソフトスキルや創造的・革新的思考がより重要になりつつあること、これらのスキルを持つ人材はAIの時代に活躍するであろうことがうかがえます。
人事領域の世界的なエキスパート、Josh Bersin 氏は将来の成功のためのXファクターとなるスキルを調査し、その結果を「パワースキル(PowerSkills)」のフレームワークにまとめました。²この調査によると、未来のスキルは技術的なものではなく、行動的なものです。
AIの最初の黄金時代が間近に迫っている今、ソフトスキルやAIを活用できるスキルを持つ人材の採用は人事にとって重要です。³
SHLは、「パワースキル」を人事の実務家が活用しやすいように、仕事ですぐに役立つスキルに焦点を当てて定義を追加し、15のスキルにまとめました。

調査データ
「パワースキル」を地域別、産業別、経年で調査するため、仕事に関連する96のスキルを測定するSHLのユニバーサル・コンピテンシー・アセスメント(UCA)⁴を「パワースキル」にマッピングしました。
サンプル総数:67,592人
地域別の内訳:ヨーロッパ(49%)、北米(20%)、インド(20%)、中東(6%)、アフリカ(3%)、アジア(1%)、オセアニア(1%)、中南米(1%)
地域別
各地域の明確な強みを調べるため、各スキルで高得点域(候補者の上位3分の1)に入った候補者の割合を算出し、地域内で順位付けしました。以下は各地域の上位3つのスキルです。

各地域は独自の強みを示しています。採用担当者が必要なスキルを持つ候補者の確保に苦戦しているのであれば、そのスキルの高い他の地域から獲得することが考えられます。パンデミックで示されたように、地理的に離れていてもリモートで働くことができます。
比較的多く挙がっているのは、「楽観主義」「誠実さ」「寛大さ」です。一方、「共感性」「フォロワーシップ」「好奇心」「推進力」はどの地域でも上位ではありませんでした。しかし、業界によっては重要な強みとして挙がっています。
業界別
様々な業界の特徴を横断的に見ることで、採用担当者にとっての潜在的な人材パイプラインと働き手のキャリアパスが浮き彫りになりました。これらは特に、自動化の影響を受けやすい職務において重要です。既存のスキルセットを活用できる別の業界が分かるため、人材の流動性を高めるのに役立ちます。

自動化の進む小売業界の人材にとって、主な強みが共通しており成長産業となる可能性が高いヘルスケア業界が潜在的なキャリアパスとなります。同様に、銀行・金融サービス業界と製造業、そしてエネルギー業界と電気通信業では強み2つが共通しており、人材プールを共有できる可能性が高いです。
新たなパワースキル
最後に経年変化の傾向を調査しました。2021年(N = 7,692)と2023年の最初の3ヶ月間(N = 13,137)について、高得点の候補者の割合を比較し、増加幅が大きいものから小さいものへと順位付けを行いました。大半のスキルで高得点の候補者数が増加しました。上位3つは「粘り強さ」、「優しさ」、「時間管理」です。おわりに
複数の業界で、候補者の主な強みが共通していることが分かりました。チーム内のスキルギャップを埋めるのに苦労している採用担当者は、別業界の人材プールを活用することが有益です。別の地域へ目を向け、リモートワーカーを活用することも考えられます。過去2年間で「パワースキル」を持つ人材は増加しており、多数の応募者からスキルを持つ人を見極めるのは困難です。気付かないうちにチーム内でこれらのスキルが高まっている可能性もあります。
スキルをもつ応募者を迅速に見極めるために、また、チームの強みを把握しAI黄金時代におけるチームの成功を阻むスキルギャップを特定するために、アセスメントを活用しましょう。
白書の原文はこちらからダウンロード可能です。
¹ 2017, McKinsey Global Institute, Jobs lost, jobs gained: What the future of work will mean for jobs, skills, and wages
² 3 2019, Josh Bersin, Let’s Stop Talking About Soft Skills: They’re PowerSkills
³ 2022, Research.com, Job Automation Risks in 2023: How Robots Affect Employment
⁴ UCA(Universal Competency Assessment)は、現在国内での取扱開始に向けて準備中です。