ポテンシャルの高い(HiPo)従業員は、通常の従業員よりも高い価値をもたらします。ベストな人材を採用しその人たちのスキルを伸ばすためにどのようにAIが使えるか、見ていきましょう。
Howard Rabinowitz
2023年6月15日
NFLドラフトで199位に選ばれた選手がスカウトを驚嘆させる選手ではないことは明らかです。しかし2000年に199位に選ばれたのは、ほかでもない、トム・ブレイディでした。
そう、トム・ブレイディ、チームを7回のスーパーボウル優勝に導いたクォーターバックです。どういうわけか、鋭い目を持つプロのスカウトは彼の大きな才能を見逃しました。
ポテンシャルの高い(HiPo)従業員、つまり組織内で2段階上のレベルに昇進してリーダーシップの役割を担う可能性、能力、意欲を持つ従業員を見分ける際、企業は同じ間違いを犯すわけにはいきません。Gartner社の調査によると、HiPo従業員は、他の従業員、さらには業績の高い従業員よりも91%多くの価値を組織にもたらします。これは重要な違いです。業績の高い従業員のすべてが高いポテンシャルを備えているわけではありません。実際、CEB社の調査によると、業績の高い従業員のうち、HiPo従業員はわずか15%(6人に1人)です。
このふるい分けのプロセスを支援するために、多くの企業が人工知能(AI)に注目しています。組織心理学者によって開発された適性、態度、行動アセスメントからのデータを活用し、AIはどの従業員が真のリーダーシップの可能性を持っているかを判断して、企業がリーダーシップ開発のための希少なリソースをより効果的に投入できるようにします。さらに、AIツールは、HiPo従業員がそのポテンシャルを発揮するために必要なスキルを開発できるようコーチングします。
データ駆動型のHiPo検出
どの従業員が高いポテンシャルを持っているかの判断は、長い間、管理職の主観的な評価や「直感」に基づいた不正確な科学でした。さらに悪いことに、無意識の偏見が管理職の判断を鈍らせ、女性や少数派のキャリアアップを妨げる場合があります。
「対象者の人種や性別を無視するようAIを訓練することはできますが、それらを無視するよう人間の脳を訓練することはできません」と、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのビジネス心理学の教授であり、『I, Human: AI, Automation, and the Quest to Reclaim What Makes Us Unique』の著者であるトーマス・チャモロ・プレムジック博士は言います。「AIがHiPoのより公正で公平、多様かつ包括的な識別に使用される可能性があることは明らかです」。
SHL、Plum、TestGorilla、ghSMARTなどの人材分析会社は、AIを使用してHiPo識別のプロセスから暗黙のバイアスを取り除きます。その代わり、組織心理学者や行動心理学者が開発したアセスメントツールから収集したデータに依存しています。
SHLではAIがアセスメントプロセスのあらゆる側面に組み込まれている、と欧州プロフェッショナルサービス ディレクターのサラ・マクレラン氏は述べています。さまざまな職種、業界、企業規模の従業員を対象とした研究からAIがデータセットをトレーニングします。また、AIはSHLの予測機械学習アルゴリズムを構築するものでもあり、テストプロセスを分析したりもします。
「私たちは単に正解数と不正解数を見ているだけではありません。答えに到達するために受検者がとったアプローチも分析しています」とマクレラン氏は説明します。
その結果が、知的能力、昇進意欲、組織へのエンゲージメント、という3つの領域における従業員のポテンシャルの予測的な評価です。チームをマネジメントする適性があるか?管理職やリーダーの役割に昇進したいという真の意欲があるか?長期にわたって組織に貢献してくれるか?
マクレラン氏の指摘によれば、特定のリーダー役割を果たす可能性があるかどうかに関する27の重要な要素のうち21について、SHLのアセスメントで女性が男性よりも優れた成績を収める傾向があり、AIのデータ駆動型成果によって女性にとっての昇進機会が平準化される見通しがあります。
しかし、アルゴリズム設計における暗黙のバイアスの可能性が実証されていることを考慮すると、少なくとも現時点では、アウトプットをモニターするために人間が関与する必要がある、とマクレラン氏とチャモロ・プレムジック氏は共に警告します。その従業員とじかに接している管理職からのインプットを考慮に入れたり、アウトプットに多様性と公平性が確保できているかどうかをデータサイエンティストが調べたりすることが必要です。
「人間とテクノロジーが一緒にやれば、片方だけの場合よりも、より正確で包括的なものが生み出されます」とチャモロ・プレムジッチ氏は述べます。
AIによるソフトスキルのコーチング
ポテンシャルの高い従業員が特定されたら、リーダーとしてのポテンシャルを発揮するためのスキルを開発するのに役立つ新しいAIツールの出番です。人間的なタッチが必要なスキルについてもそうです。
ハーバード ビジネス スクールのアンソニー・メイヨー教授は、2003年から2021年まで同大学の主力であるハイ・ポテンシャル・リーダーシップ・プログラム(HPLP)の参加者3,000人以上を研究しました。感情知能やコミュニケーションなどのソフトスキルが、HiPosがトレーニングを必要とする分野のトップ3に常にランクインしていました。
「これらのスキル開発は、多くの場合、挑戦です」とメイヨー氏は説明します。「結果重視で自立しているなど、彼らがリーダーの役割に就くきっかけになったものが、さらなる成長の妨げになる可能性があるからです。考え方の転換が必要です」。
従来、ソフトスキルのリーダーシップコーチングは、1対1のメンター制度や1週間の研修合宿を通じて行われてきましたが、メイヨー氏が指摘するように、「コストと規模を考えるとそれは不可能です」。
それでは、新しいテクノロジーはメンター制度を拡張して民主化できるのでしょうか?最近の研究では、10カ月の集団生活でソーシャルスキルの向上において、AIチャットボットが人間のコーチと同様に効果的であったことが示されています。他の研究では、トレーニーが、人間のコーチに対してと同じようにAIと「前向きな協力関係」を築くことができることがわかっています。
ChatGPTのような生成AIプログラムを含む自然言語処理の進歩により、チャットボットのコーチング能力が加速している、とチャモロ・プレムジック氏は言います。「ウェアラブルが私たちに十分に動いているのか椅子に長時間座りすぎているのかを教えてくれるのと同じやり方で、AIは私たちの行動に関するフィードバックを提供してくれるのです」。
例えば:管理職としてトレーニング中のHiPoが電子メールや文書を送信する前に、AIコーチに依頼して、メールや文書内の感情的なトーンを確認し、より共感的な言葉を提案してもらう。また、AIコーチにオンライン会議をモニターしてもらい、参加者たちが肯定的な反応をしたかどうか、誰に話しかけたか無視したか、誰の話を途中で遮ったか、評価してもらう。
ただ、AIリーダーシップ コーチング ツールという新しい産業が現れつつありますが、感情知能と真の共感を効果的に育成するという点ではAIは「まだそこまで来ていない」、とチャモロ・プレムジック氏は述べています。
ポテンシャルの高い従業員に向けたAI自体のポテンシャルは、まだ十分に活用されていないようです。
記事の原文はこちらです。
https://www.servicenow.com/workflow/it-transformation/hipo-employees.html
人事におけるAI活用についての記事、いかがお感じになったでしょうか。人事の世界にもDXの波が押し寄せてきています。
この「SHLグローバルニュース」のコラム、私が担当するのは今回が最後となりました。2008年6月の第1回から約15年間、ご愛読ありがとうございました。このコラムが少しでも皆さまの興味を惹き、お役に立っていたならば幸いです。
(コラム自体は引き続き継続します。どうぞご期待ください。)
Sabia Akram
2023年7月27日
知的能力テストの問題
長年に渡って、知的能力テストは受検者の職務適性を評価するために使用されてきました。知的能力テストの成績が将来の職務パフォーマンスと直接相関していることが研究によって示されてきたためです。しかしながら、最近のメタ分析研究は、知的能力テストは当初確立されていたほど総合的な職務パフォーマンスと高く相関していないことを示しています。
一方、知的能力テストは特定の人種/民族グループに不利な影響を与える(アドバースインパクト)という点についての懸念もあります。したがって、インクルージョンの観点から、知的能力テストを選抜で使うべきかどうかについて疑問が生じます。
これらの最近の研究結果と懸念点を考慮すると、知的能力テストはもはや役に立たないということなのでしょうか?私たちはそれらを捨て去るべきでしょうか?
もちろん違います!
知的能力テストが依然として重要な理由
知的能力テストは、公平性・妥当性・信頼性が確保されるよう開発されて正しく使用されれば、人材のアセスメントにとって優れたツールです。受検者の能力を客観的に測定し、職務パフォーマンス全般、特に知的能力が必要な職務におけるパフォーマンスをよく予測します。
知的能力の関わるコンピテンシー(たとえば、素早く学ぶ能力)がその職務にとって重要であることが職務分析によって特定された場合、それらは、「知的能力テスト」と「行動ベースのコンピテンシー評価」の組み合わせで測定できます。「行動ベースのコンピテンシー評価」自体はアドバースインパクトを示しませんから、2つを組み合わせることで、選抜プロセスにおいてアドバースインパクトの可能性を軽減すると同時に、プロセス全体の予測的妥当性を高めることができます。
SHLはしっかりしたテスト開発プロセスを採用しています。SHLのテストは、厳格なレビュー、広範なトライアル、包括的な分析を経て開発されており、高品質でバイアスのないコンテンツのみを使用しています。実際、私たちは最近、質問の内容が特定グループの人々に対して偏っていないかどうかを判断するために、個々の質問レベルの成績の違いを調査しました。年齢、人種、性別、障がいの有無による差を分析した結果、バイアスを示すものとして特定された項目はほとんどありませんでした。さらに、これらの項目を削除することでテスト全体の差に影響を与えるかどうかを調べましたが、ほとんど影響はなく、私たちは質問レベルでの差がテストレベル全体でのさらなるアドバースインパクトにつながることはないと結論付けました。(が、公平性の観点からそれらの項目はやはり削除されました。)
ベストプラクティスに関する推奨事項
しっかりした科学的設計の原則に従い、その設計においてダイバーシティ&エクイティ&インクルージョンを確保することが、知的能力テストの有用性の1つの側面であることは間違いありませんが、もう1つの側面は、それらのテストが責任を持って適切に使用されるようにすることです。SHLのお客様が当社のアセスメントを責任を持って利用できるよう、バイアスを最小限に抑えながら知的能力テストを最大限に活用する方法について、「すべきこと」と「してはいけないこと」をいくつか用意しました。
「すべきこと」:
- 知的能力テストと実際の職務との関連性を検討してください。知的能力はその職務にとって重要ですか?そうでない場合は、代わりに、行動評価、構造面接、職務サンプルなど他のツールを使用して、その職務の主要なコンピテンシーを測定することを検討してください。
- 選抜プロセスに総合的なアプローチを採用し、職務に焦点を当てたアセスメントの一部として知的能力テストを組み込んでください。その職務にとって重要なスキルは何ですか?
- 最初のふるい分けでは、成績上位者をとるのではなく、最低限の目安を設定してください。アセスメントの段階で受検者プールの3分の1以上を失わないようにすることで、アドバースインパクトを最小限に抑えます。
「してはいけないこと」:
- 大量採用、特に初級レベルの職務の採用で、知的能力テストを単純なふるい分けツールとして使用してはいけません。
- 包括的な職務分析がない場合、または知的能力がその職務にとって重要であるという強力な証拠がない場合は、知的能力テストを使用してはいけません。
- 貴社の人材アセスメントプログラムに、画一的なアプローチ(どの職種、どの職位にも当てはまるようなアプローチ)を採用していけません。
人材アセスメント分野のリーダーとして、SHLは貴社の人材アセスメントの意思決定をサポートする膨大なツールを持っています。
知的能力テストが貴社に適しているかどうか、どのようにすればわかるのでしょうか?当社にご連絡いただければ、上記の疑問を解決するお手伝いをし、知的能力テストを活用して最適な応募者を公正に選抜する際のベストプラクティスに関するご相談を承ります。
記事の原文はこちらです。
https://www.shl.com/resources/by-type/blog/2023/are-cognitive-ability-tests-still-relevant/
(訳では一部、専門的な内容を省略しています。)
記事の中で触れられている「最近のメタ分析研究」とは、
Paul R. Sackett, Charlene Zhang, Christopher M. Berry, & Filip Lievens (2021)による
『Revisiting Meta-Analytic Estimates of Validity in Personnel Selection: Addressing Systematic Overcorrection for Restriction of Range』です。
https://pdfs.semanticscholar.org/915a/a40e852d5975086111dcd359967400cc5150.pdf
この研究結果から、知的能力テストの予測力が従来語られているよりも低いのではないか、との疑問が出されています。
従来の採用選抜慣習で最も多いのは、知的能力テストで予備選抜して面接で決定というプロセスです。知的能力偏重ともいえるこのやり方を再考する時かもしれません。
SHLグループの最新ツール、Job Focused Assessmentは、知的能力テストをスキルや経験を評価する検査と組み合わせて適性を判断しています。
ミネアポリス・ロンドン ― 2023年6月21日 ― 人事アセスメントの世界的リーダーであるSHLが白書「Skills of the Future and Where to Find Them(未来のスキルと、どこでそれらを見つけるか)」を発表しました。この白書では職場におけるスキルの包括的な分析調査の結果が提示されています。組織が求めるものの進化に対応するために、技術面のスキルよりも行動面のスキル、つまり「ソフトスキル」の重要性が高まっていることが強調されています。
急激な変化のスピードに伴い、特にITやテクノロジーの領域では、新たな職務に就く人材を見つけて育成することがますます困難になっているとリーダーが感じており、スキルギャップによって企業の成長とイノベーションが妨げられ続けています。
「AI黄金時代を迎える中、スキルベース採用とタレントマネジメントプログラムを加速することが、成長を促進するために不可欠です。自動化とロボット工学の台頭、そして労働力の分散化に伴い、リーダーは創造的かつ革新的な思考を促進するスキルセットを活用して競争力を維持し、新しいテクノロジーによってもたらされる大きなチャンスで優位に立つ必要があります。」(Andy Nelesen SHLソリューショングループリーダー)
SHLはJosh Bersin 氏の研究を基に広範な分析調査を実施しました。Bersin氏の『パワースキル』フレームワークをSHLのアセスメントツールに紐づけ、企業組織が15分以内に業務関連スキルの完全なセットを正確に測定できるようにしました。
多様な背景を持つ約7万人の世界規模サンプルからのデータを活用し、各地域および6つの広い業界(小売、ヘルスケア、銀行および金融サービス、製造、エネルギー、電気通信)にわたるユニークなスキルプロファイルをまとめています。
スキルは地域や業界によって異なる
SHLの調査によると、各地域は独自の強みを示しています。いくつかの地域では「楽観主義」「誠実さ」「寛大さ」が主要なパワースキルとして特徴付けられます。ヨーロッパは「柔軟性」「コミュニケーション」「優しさ」に優れており、北米は「粘り強さ」「時間管理」スキルが優れています。アジアの「誠実さ」「寛大さ」「倫理」と比べ、インド全土では「チームワーク」「寛大さ」「楽観主義」が広まっています。
「共感性」「フォロワーシップ」「好奇心」「推進力」はどの地域でも上位ではありませんでしたが、業界によっては重要な強みとして挙げられています。たとえば、「推進力」は製造と銀行・金融業界に、「共感性」は小売とヘルスケアに多く見られます。業界全体で共有されているパワースキルを活用することで、採用担当者は空きポジションの補充に苦労しているときに新たなアプローチを得ることができるでしょう。
Cameron Beazley(SHLサイエンスディレクター)はさらに次のように付け加えています。「私たちの分析では、時間の経過とともにパワースキルが台頭し、2021年から2023年にかけて人々の「粘り強さ」「優しさ」「時間管理」のスコアがより高くなったことも示されています。これらの強力なインサイトがあれば、企業組織は従業員をより深く理解し、ポテンシャルを引き出して未開発のスキルを特定する戦略を構築できるでしょう。」
世界的な業界アナリスト、作家、思想的リーダーであるJosh Bersin 氏は次のように述べています。『SHLがこの仕事をしてくれたことに興奮しています。非常に必要とされていた調査です。そしてもちろん、フレームワークとしてSHLがパワースキルを使ったことにも興奮しています。』
この白書で提示された調査は、SHLが職場におけるあらゆるスキルや価値観、コンピテンシーのフレームワークに対して紐づけて測定し、人材に関する意思決定やプログラムに役立つ客観的な人材インサイトを提供できることを示しています。
プレスリリースの原文はこちらです。
https://www.shl.com/about/news-and-events/press-releases/shls-new-study-examines-most-sought-after-power-skills/
白書はこちらからダウンロードできます。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/skills-of-the-future-and-where-to-find-them/
欧米では、『スキルベース採用』という考え方が人事の主流になってきているようです。
スキルとコンピテンシーはどう違うのか、識者によって言わんとしていることが若干異なっているようで、実は私自身まだよく説明できません。もう少し様々な書籍や記事を読んできちんと理解したいと思っているところです。
ロンドン 2023年5月4日 ―― Fast Company 誌による 2023年 World Changing Ideas Awards(世界を変えるアイデア賞) の受賞者が本日発表されました。持続可能なデザイン、革新的な製品、大胆な社会的取り組み、および私たちの働き方、生活様式、世界との関わり方を変える創造的なプロジェクトを表彰するものです。これらの先駆的なイノベーションの中、SHLが「ニューロダイバースな人材のアセスメント」レポートで、職場部門のファイナリストの地位を獲得しました。
この種のものとしては初めてのSHLの研究は、通常の採用プロセスにおいて、特に、様々な選抜アセスメントにおいて、ニューロダイバージェントな人々がどのような経験をし、どのように行動するかを調べています。さらに、この研究では、応募者が、自分がニューロダイバージェントであることを応募先の会社に開示しようと思うかどうか、インクルーシブな言葉がその開示率にどのような影響を与えるか、についても調査しています。
今年の World Changing Ideas Awards では、45件の受賞者、216件のファイナリスト、および 300件以上の佳作が紹介されました。最も人気のある部門は「健康」「気候」「エネルギー」「AI」 です。Fast Company誌の編集者と記者で構成されたパネルが2200件を超える応募作品の中から、受賞者とファイナリストを選出しました。今年追加された新部門は、「迅速な対応」「暗号通貨とブロックチェーン」「農業」「職場」などです。
2023年春号のFast Company (2023年5月9日発売) では、世界で最も独創的な起業家や、世界的な課題に積極的に取り組んでいる先進的な企業が紹介されています。ソリューションは、都市環境やモジュール式住宅における水の再利用から、政府による禁書と闘う取り組みや、世界中のトランスジェンダーに優しいサロンに焦点を当てたプログラムまで、あらゆるものをカバーしています。
「私たちの研究は、ニューロダイバージェントな人々が仕事に応募する際に直面する、様々な採用エクスペリエンスと障壁についての重要な洞察を共有しています。 ちょっとした変更で採用側が偏見を最小限に抑え、応募者の採用エクスペリエンス全体を通じてインクルージョンとアクセシビリティを劇的に向上させることができます」と、最高科学責任者のサラ・グティエレス氏は述べています。 「今年、Fast Company 誌の名誉ある『世界を変えるアイデア』リストのファイナリストになれたことを本当に光栄に思います。今日のイノベーターおよび業界の破壊者の1つとみなされた大きな成果です。」
「今年の受賞者たちの豊かな創造性と革新性を見るのはとてもうれしいことです」と、Fast Company誌編集長ブレンダン・ヴォーン氏は言います。 「世界情勢に落胆しがちですが、ここに登場する起業家、企業、非営利団体は、社会の最も緊急な問題に対処できる無限の可能性を示しています。私たちジャーナリストは、住宅から公平性や持続可能性に至るまで、今日行われている最もエキサイティングで影響力のある仕事のいくつかに光を当ててきました。これらのプロジェクトがどのように進化するかだけでなく、それらが他の独自のソリューション開発にどのような刺激を与えていくかを見ることを楽しみにしています。」
プレスリリースの原文はこちらです。
https://www.shl.com/about/news-and-events/press-releases/shl-named-finalist-in-workplace-category-of-fast-companys-2023-world-changing-ideas-award/
World Changing Idea Award (世界を変えるアイデア賞)とは、アメリカのビジネス雑誌Fast Companyが主催するアワードです。創意工夫を表彰し、イノベーションを促進することが目的だそうです。
ニューロダイバーシティに関するSHLの研究については、本コラムでも2回取り上げました(第325回、第364回)。日本語にすると「神経学的な多様性」。自閉症や多動性、失語症などの神経疾患を、病気や障害ではなく、脳の違い、すなわち個性であり才能であると見る考え方です。
2023年 5月 2日、ロンドン
SHLは本日、第三者販売業者である「日本エス・エイチ・エル」をpublic-to-private「P2P」取引で買収することを発表しました。日本エス・エイチ・エルは、1987年以来、日本市場におけるSHLグループのローカルパートナーです。
この取引により、グループはアジアで比類のない地位を獲得し、日本、インド、中国という三大市場のそれぞれでリーダーシップを発揮するとともに、SHL のグローバルなリーチを拡大し、米国、ヨーロッパ・中東・アフリカ、アジア太平洋地域のそれぞれで確固とした規模をもつ唯一のプレーヤーとなります。
取引は、日本の新卒採用サービスの大手プロバイダーであり、日本エス・エイチ・エル製品の長年のユーザーである、「マイナビ」との合弁事業として構成されています。
この買収は、職場におけるアセスメントのサプライヤーから、データインテリジェンスプラットフォームからインサイトを提供して従業員のライフサイクル全体の意思決定に情報を提供するタレントパートナーへの、SHLの戦略的進化における最新のステップです。
2018年以降、その変革においてM&Aが重要な役割を果たしてきました。これには、インドでのAspiring Mindsの買収や、Kenexa Talent AssessmentsでのIBMとの提携が含まれます。 グループはまた、コアのB2Bビジネスに集中するために、最近PDRIをピアソンに売却しました。
「日本エス・エイチ・エルは、30年以上にわたって我々が一緒に仕事をしてきた素晴らしい人々を擁する、市場をリードする企業です。彼らと一緒に、この重要で成長中の市場に我々の強力なSaaSソリューションをもたらすことができることを喜ばしく思います。」SHLのアンディ・ブラッドショー最高経営責任者(CEO)は述べています。「マイナビは、日本エス・エイチ・エルの主要な販売チャネルであり、比類のない市場知識を持っています。我々にとって、彼らは日本エス・エイチ・エルを一緒に成長させるための完璧なパートナーです。」
日本エス・エイチ・エルの奈良学代表取締役は、次のように述べています。「30年間、我々は哲学、文化、コミットメントをSHLと共有し、アセスメントを使用して顧客に大きな成果をもたらしてきました。リーダーが適切な人材を採用、能力開発、昇進させることに役立つ幅広いツールとテクノロジーに対する需要が高まっています。SHLグループに加わることで、我々は顧客により多くの価値を提供できるようになるでしょう。」
株式会社マイナビの西達也取締役常務執行役員は、次のように述べています。「マイナビは、日本エス・エイチ・エルおよびSHLグループとの長年にわたる関係を継続することを嬉しく思い、日本市場においてSHLグループの新しい製品群に大きなチャンスがあると考えています。」
取引は公開買付プロセスを完了しています。今年の夏に正式に完了する予定であり、合弁会社に事業の100%の所有権が与えられます。
プレスリリースの原文はこちらです。
https://www.shl.com/about/news-and-events/press-releases/shl-to-acquire-its-third-party-distributor-shl-japan/
日本エス・エイチ・エルの社員である私にとって、今回の動きは非常に楽しみです。
1987年の創業以降、2007年にSHLグループが日本エス・エイチ・エルの株を完全に手放すまで、当社にはグループの資本が入っていましたが、当社の経営に対してグループ側が過度な干渉をすることなく、我々は日本市場に適した製品やサービスの開発と普及に集中することができていました。
再度、グループの資本が入ることになって我々の強みが補強され、さらに世界最新のテクノロジーや製品をお客様に提供できるようになる可能性にワクワクしています。
SASRIは、従業員の高齢化による後継者不足のため、自社の研究者たちの強みを理解する必要がありました。所内のインターンや学生、そして現在の従業員の中で最も有望な才能を特定し、開発することを、SHLが支援しました。
課題
SASRIはアフリカにおける先進的なサトウキビ農業研究所です。SASRIの科学研究部門は後継者のギャップに直面していました。今後2~3年のうちに多数の世界有数の科学者たちが定年を迎えるためです。
SASRIは作物の新品種開発、作物マネジメントや農業システムの改善などの研究で世界的に有名ですが、自社の研究者たちの強みと課題領域を理解することも必要でした。能力開発が目的です。
解決策
SHLはSASRIと協力して人材レビューを行いました。人材のギャップがどこにあるか、潜在的な後継者はどこにいて、その人たちの能力開発ニーズは何か、を正確に判断するためです。
調査は、研究部門における将来の成功に必要な主要コンピテンシーを明らかにし、それを組織戦略と紐づけることから始まりました。これには、複数手法を用いての職務プロファイリングや、ビジョナリーインタビュー、フォーカスグループ、一対比較などの職務分析が含まれていました。
その結果、SASRIは、若手研究者、研究者、上級研究者について、将来成功しそうな職務プロファイルを作成できました。次に、SHLがSASRIの科学者のアセスメントを実施して、それらのプロファイルに対するポテンシャルの適合度を判断しました。 行動パフォーマンスについての上司評定も収集され、統計分析によってパフォーマンスとアセスメントデータの相関が計算され、職務プロファイルと対応付けられました。
グループレベルでの結果を理解するために、SHLがギャップ分析とグループ傾向分析を実施しました。結果は、どのようなアセスメントが今後の採用や従業員の能力開発に最も効果的かを明らかにするために使用されました。
最後に、どのようにすれば最も優秀な理系人材を惹きつけて確保できるのかを理解するために、SHLはSASRIの科学者にとっての主要な動機付け要因を分析しました。
結果
分析の結果、SASRIのトップ研究者として認められている15人は、上司による行動パフォーマンス評定が高いことが明らかになりました。ある人がトップ研究者15人であるかどうかを予測する最も大きな要素は、『創造・革新』の行動でした。トップ研究者15人に典型的に見られた点は次のとおりです。
- (職位に関わらず)職務プロファイルに対するポテンシャル適合度が、他の研究者よりも高い。
- 他の研究者よりも、計数能力テストの結果が高い。
- 測定された多くのコンピテンシーで、コンピテンシーポテンシャルの得点が高い。
分析結果は、SASRIが若手研究者を育成して必要な時に「ステップアップ」できるようにすることに役立ちました。また、自分たちの人材プールや現研究者の強みとギャップを特定することにも役立ちました。SHLの支援によって、SASRIは、新世代の世界クラスの農業科学者の採用と育成に必要なインサイトを得ることができました。
『私たちは、採用や育成計画、インターンと学生の確保の質を高めることに役立つような、人事決定の基準を作ることができました。』(キャサリン・ボーテス、SASRI 人事マネジャー)
南アフリカの研究所研究員に関する事例です。どんな人材が優秀なのか、どんな人材が求められているのか、アセスメントによって暗黙知が形式知に変わりました。
面接におけるジェンダーバイアス
質の高い多様な人材を採用しようとする組織は、無意識の偏見が採用決定に影響を与える可能性を最小限に抑える必要があります。偏見を低減するための重要な戦略は、面接の質問すべてが仕事に関連しているようにし、個人的な質問を避けることです。性別、年齢、民族などの属性の特定グループに、他のグループよりも数多く個人的な質問をすることはさらに問題になります。
私たちの分析では、女性応募者の 42%が個人的な質問を少なくとも 1つされましたが、男性応募者では 33%だけでした。図5は、男性と女性の両方の応募者に尋ねられた様々な種類の個人的な質問の内訳です。
また、男性の面接官は、女性の面接官よりも、応募者に個人的な質問をするようです。応募者が女性の場合、男性面接官の 43%近くが個人的な質問をしたのに対し、応募者が男性の場合、個人的な質問をした男性面接官は 35%だけでした(図6)。
面接担当者が職務に関係のない質問をする時、面接の予測力は低下し6、採用決定にバイアスがかかる可能性があります。さらに国によっては、企業組織が法的リスクにさらされます。上記の分析結果のように、あるサブグループのメンバーが他のサブグループのメンバーよりも頻繁にそのような質問をされる場合、これらの効果は増幅されます。
面接エクスペリエンスを改善するための提言
この白書では、面接における応募者エクスペリエンスを評価するためのフレームワークと指標について説明しました。面接エクスペリエンスは、応募者エクスペリエンス全体の中で最も影響力があるため、採用リーダーは最大限の注意を払わなければなりません。今後に向けて、私たちは、企業組織および採用リーダーに対して以下のことを推奨します。
1.「面接エクスペリエンス」を測定して追跡する
私たちの分析では、多くの面接官が会話中に適切なエチケットを示さず、応募者の全般的なエクスペリエンスに影響を与えていることが示されました。面接の会話の多くはデジタル プラットフォームを使用して実施されています7。採用リーダーは、面接の分析に役立つ『面接 インテリジェンス プラットフォーム』とその機能に投資する必要があります。リアルタイムもしくはオフラインで面接が見えるようにし、面接エクスペリエンス全体を追跡することに役立ちます。
2. 面接のやり方を組み立てる
構造面接が職務の成功を最も予測する採用アセスメントであることはわかっています8。企業組織は、様々な部署や職務プロファイルに渡って、構造化された面接のやり方を取り入れるようにする必要があります。一貫した面接エクスペリエンスを提供しながら、質の高い人材を採用することに役立ちます。『面接 インテリジェンス プラットフォーム』は、構造面接のやり方に従っているか、つまり、どれくらいの面接官が実際の会話中にこれらの慣行に従っているかの追跡を支援します。
3. 面接官トレーニング
面接官は面接中、企業組織のブランド大使として動きます。組織は面接官をトレーニングし、面接の実施方法に関するベストプラクティスを身に付けさせるための積極的な措置を講じる必要があります。面接のトレーニングは現実的なシミュレーションを通して実施できます。また、作業フローの中で自動的なフィードバックが返されて面接官が学ぶことができる学習方法(learning-in-the-flow of work)を使用するのもよいでしょう。
- Huffcutt,A.I., & Arthur, W. (1994). Hunter & Hunter (1984) revisited: Interview validity for entry-level jobs. Journal of Applied Psychology, 79, 184-190.
- The Virtual Interview Is The New Resume: What You Need To Know, https://www.forbes.com/sites/forbesbusinesscouncil/2022/05/05/ the-virtual-interview-is-the-new-resume-what-you-need-to-know/
- Levashina, J., Hartwell, C. J., Morgeson, F. P., & Campion, M. A. (2014). The structured employment interview: Narrative and quantitative review of the research literature. Personnel Psychology, 67(1), 241-293.
原文はこちらからダウンロード可能です。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/insights-on-your-candidate-interview-experience/
本連載、特に第3回と第4回の分析結果をご覧になっていかが思われたでしょうか?
日本ではもっとポジティブな結果になるのではないか、と思いたいところですが、どうでしょう。
オンライン面接が定着してきた昨今、面接の中身を可視化することが以前よりやりやすくなりました。応募者にとってのより良いエクスペリエンスを作り出し、自社の採用ブランドを高める努力が一層必要なのではないでしょうか。
面接エクスペリエンスの定義
「応募者エクスペリエンス」は採用業界でよく話題になる言葉ですが、「面接エクスペリエンス」に関する議論や研究文献はあまりありません。しかしながら、面接エクスペリエンスは応募者エクスペリエンスにかなり大きな影響を与えます5。
私たちは、デジタル面接におけるポジティブな面接エクスペリエンスの主要指標をいくつか設定しました (図2)。
これらの指標は、調査を通して私たちが理解した応募者からの期待と、Glassdoor や Indeed などのウェブサイトに何千人もの応募者が匿名で投稿した文章を分析することによって導き出されました。
1.面接エチケット
面接官は、面接の会話中、組織のブランド大使として行動します。就職面接は他の職業上の会話と同じであり、面接官は適切なエチケットに従うべきです。
- 自己紹介
面接官は面接の会話中に自分と所属組織を紹介すべきです。 - 傾聴力
面接官は応募者に話させ、応募者が自分の能力を最大限に発揮できるようにすべきです。 - ウェブカメラをオンにしておく
応募者がウェブカメラをオンにすることを期待するならば、面接官は自分も同じようにすべきです。
2.応募者中心の会話
面接官は、応募者中心の会話を行うべきです。応募者の時間と存在を大切にし、仕事に必要なスキルに焦点を当てた会話を維持する必要があります。
- 応募者の時間を大切にする
面接官は応募者の時間を尊重し、大切にすべきです。特に、時間通りに面接を開始し、割り当てられた時間内に評価を完了しなければなりません。 - 応募者が質問する機会を与える
面接官は、仕事や採用プロセスや組織について質問する機会を応募者にきちんと提供すべきです。 - 不必要な個人的な質問を避ける
面接官は応募者に個人的な質問をすることを避けるべきです。特に、仕事に関係のない質問をしてはいけません。個人的な質問をすることは応募者を不快にさせることがあり、無意識のバイアスにつながる可能性があります。
3.面接の組み立て
面接内容(つまり質問)や応募者からの回答の評価を標準化するなど、面接をしっかり組み立てることで面接の質は向上します。
- 質問の標準化
当該の職務について、コンピテンシー、関連質問、および難しさのレベルは、すべての面接で一貫していなければなりません。 - 採点の標準化
面接官は、標準化された採点テンプレートを使って応募者の回答を評価し、バイアスを最小限に抑えるべきです。
面接エクスペリエンスの測定
私たちが開発したエンドツーエンドの AI を利用したシステム (つまり、SHL インタビュー インテリジェンス プラットフォーム)は、面接の録画から主要な面接エクスペリエンスの指標を抽出することに役立ちます。 図3 は、オーディオ、ビデオ、および会話のストリーミングからこれらの洞察を抽出する方法についての、ざっくりしたモデルです。
- Guide: Train your Interviewers, https://rework.withgoogle.com/guides/hiring-train-your-interviewers/steps/giving-interviewers-practice/
原文はこちらからダウンロード可能です。
https://www.shl.com/resources/by-type/whitepapers-and-reports/insights-on-your-candidate-interview-experience/
次回はいよいよ分析結果についてです。
1年ほど前の本コラムで、「キャリア・アンカー 」が紹介されました。キャリア・アンカーとはキャリアを選択する上での拠り所となるもので、得意なこと、やりたいこと、意味と価値を感じられることについての自己概念です。自己概念は、能力、意欲、価値観などによって構成されており、その価値観を測定するSHLツールがValue@Work(以下V@W)です。 V@Wは職業価値観を13尺度で測定します。(表1)

職業価値観とは、職務上いかに行動すべきかについて個人が抱く比較的永続的な信念です。人はこれを通じて自分の職務や仕事環境を様々に評価し、その結果が様々な態度や意見、行動となって現れます。つまり、職業価値観は、職業選択、職務満足度やモチベーション、延いては勤務態度や業績などに大きな影響を与えます。
活用事例1:若手社員の早期離職①
たとえば、「若手社員の早期離職」の問題にも価値観が絡んでいます。図1は、ある会社の入社3年以内の若手社員について、退職者と在職者の入社時のV@Wの平均値を比較したものです。人数が少ないので、こういうプロファイルの人は退職しやすい、という確固たる結論を導くことはできませんが、この会社の風土との関係で思い当たるところ、改善したいところについて社内での議論を深める一助になったそうです。
活用事例2:職務業績との関係
もう一つ、V@Wの活用事例をあげましょう。職務業績との関係を分析した事例です。 製造および小売業界3社の営業職社員165名にご協力いただきました。業績評価データに基づいてサンプルをH(高評価)、M(中評価)、L(低評価)の3群に分け、それぞれのV@Wの平均値を比較したのが図2です。「達成」と「芸術」で有意差が見られました。H群が成功すること、それによって評価を受けることに価値を置いているのは、営業職という職種を考えると頷ける結果です。
それでは、その「達成」価値観が低い人は営業職として不適格だと言ってしまってよいのでしょうか?
サンプルの165名はパーソナリティ検査OPQも受検していました。そこで、165名を、「達成」価値観7点以上の群(達成H群)と4点以下の群(達成L群)に分けて、それぞれで業績とOPQの相関を調べました。その結果が図3です。

図3の二つのグラフを比較すると、32尺度中16尺度で相関の方向が逆転しています。つまり、「達成」価値観の高低によって、業績に関連するパーソナリティ特性が大きく異なる、それぞれのやり方がある、ということです。
具体的に言うと、達成H群では、「上昇志向」の尺度が最も効いていました。一方、達成L群では、「上昇志向」は関係なく、「決断性」「心配性(-)」「協議性(-)」に有意差が見られました。「達成」価値観が低くても、大事な場面でも落ち着いていて自分で素早く決断する人は業績が高い傾向がありました。
上司が指導する際、これらのポイントを踏まえると、より効果が上がる可能性があります。
活用事例3: 若手社員の早期離職②
もうひとつ分析結果をご紹介します。「若手社員の早期離職」の1つの原因として、給与水準が取り上げられることが多いです。先の図1でも、「報酬」価値観の平均値は、在職者より退職者が高いという結果でした。しかし、給与を上げることは個々の管理職の立場では難しいです。では、「報酬」価値観の高い人をどう指導すべきなのでしょうか?サンプルは製造業99名です。V@Wの「報酬」の7点以上を「報酬H群」、4点以下を「報酬L群」として、それぞれのグループで業績とOPQの関係を調べた結果を図4に示します。

報酬価値観の高いグループで、業績と相関していたのは「タフ」「批判的」「指導性」「心配性(-)」です。グループのリーダーの役割を与えることが考えられます。一方、報酬L群で業績と相関していたのは、「几帳面(-)」「律儀(-)」です。指導において細かいことを言わないほうがよいかもしれません。
おわりに
以上の分析結果は、限られたサンプルに基づいた結果であることにご留意ください。価値観は人の持ち味の比較的表層にある概念ですので、組織風土との関連が強く、組織によって結果が変わる可能性が高いです。ただ、価値観を測定することで、従来のパーソナリティと職務行動の関係分析に新しい視点が加わります。人事データの1つに職業価値観を加え、それぞれの組織で分析・考察することをお薦めします。(参考文献)
堀博美・小川友美(2010)職業価値観測定の意義に関する一考察 ~職位・職務業績との関係~ 日本産業・組織心理学会第26回大会発表論文集
IT サービス業界が人材採用/定着に問題を抱える最大の理由は、人材の面接の仕方であることをSHLラボが明らかにしました。
ニューデリー、2022年9月29日/PRNewswire/
人材の採用・マネジメントのテクノロジーのグローバルリーダーであるSHLは、インドの顧客に対して毎年30万件を超えるオンライン面接の実施を支援しています。SHLラボは、インドのITソフトウェア&サービス業界で面接がどのように行われているかについて、様々な企業で実施された面接からランダムサンプリングして分析しました。SHLラボの調査結果は、面接エクスペリエンスを複数の客観的で測定可能な指標に分解し、それらの指標を、SHLのAIを活用した面接インテリジェンスプラットフォームを使って測定しています。
面接官の80%は、応募者エクスペリエンスに影響を与える可能性のある、面接エチケット違反や応募者中心アプローチ上のミスなどの重大な間違いを、少なくとも1つ犯しています。応募者中心アプローチ上のミスよりも、面接エチケット違反をする面接官のほうが多いです。面接官の70%が面接エチケットに欠け、面接官の37%が適切な応募者中心アプローチに従っていません。
面接エチケットについてさらに掘り下げると、SHLラボの調査結果によれば、面接官の41%は会話を始める際に自己紹介をせず、26%は自分のカメラのスイッチを入れていません。
応募者中心アプローチに関しては、面接官が応募者の時間を尊重しない傾向がありました。13%もの人が面接に5分以上遅れて参加し、応募者に質問を許可したのは面接官のわずか28%でした。
Himanshu Aggarwal (SHL最高デジタル責任者)は次のように述べています。「これらの統計値は、面接慣行における重大な欠陥を明らかにしています。人事リーダーはこれまで以上に積極的な対策を講じて、面接のベストプラクティスを効果的に実施し、企業が質の高い人材を採用しながら、同時に前向きで記憶に残るエクスペリエンスを応募者に提供できるようにする必要があります。」
Arthur Rassias(SHL最高収益責任者)は次のように述べています。「この調査のおかげで、私たちは顧客に実用的なフィードバックを提供でき、顧客は面接プロセスに対してより標準化されたアプローチを取ることができるようになりました。SHLの面接インテリジェンスプラットフォームは、現在の面接の仕方に存在する重要なギャップを素早く特定して対処するために必要なデータを、人事リーダーに提供します。」
これはインドの話だ、と言い切ることができますか?
この調査については、このコラムで次回から4回に分けて詳しくご紹介する予定です。