ひとつは評価です。求める技術水準にあるか、会社になじみ成長してくれそうか、という戦力性の見極めです。
もうひとつは、広報です。候補者に対してよい心象形成や適切な情報提供を行い、優秀な人材の惹きつけを行います。
適切な評価ができるようになるには、面接時間や環境、評価基準といった適切な設計と、十分な訓練を受けた面接官が必要となります。これらは一朝一夕には整わない、時間と労力をかけて取り組むべき課題です。
一方、候補者の惹きつけは、技術もさることながら「感情」が強く作用する領域です。
本コラムでは、評価か惹きつけかに関わらず良い面接を行うために面接官が持つべき、候補者の感情に作用する5つの心がけをご紹介します。
1. 相手に興味を寄せる
強く関心を持つ、という心がけです。関心を持つと、知りたいと思います。知りたいと思うと丹念に尋ねようという態度と行動になります。人は関心を向けられると、相手に肯定的な感情を持ちます。候補者は、ぜひ伝えたい、知ってもらいたいと思うようになります。
よりよくおこなうコツは、面接前にエントリーシートなどの資料を見て、候補者の持ち味が垣間見える事柄を探すことです。情報をもつと、仮説や疑問をもつことができます。それが興味・関心を掻き立てます。
2. 相手に共感を示す
面接官が共感を示すと、候補者は気持ちよく話すことができるようになります。「自分の伝えたいことが伝わっている」という実感が候補者の緊張を解き、より積極的な情報の開示につながります。
あいづちをうったり、伝え返しをしたりして、「あなたの話は私に伝わっていますよ」ということを表してください。
3. 本音を話す
面接官の人柄が伝わります。人柄が伝わることによって、候補者は面接官について知りたいと思い、印象に残ります。
候補者からすると、面接官という偶像からリアルな一人の社員としての認識に変わり、働いている人の姿が、現実味を持って描けるようになります。
面接の中で、候補者から質問を受ける場面があるかと思います。
予め、仕事のやりがいや楽しみ、大変さなどを面接官自身の言葉で話せるようにしておくと良いでしょう。

4. 場を楽しむ
楽しいという感情は伝播します。互いに表情が和らぎ、緊張が解けます。そして心地よい対話を続けようという意識に双方がなります。
面接官と候補者が、楽しい時間を共に作っている、という感覚です。
笑顔を作ると良いでしょう。
感情が表情を作るのではなくて、表情が感情を作るのだ、という顔面フィードバック仮説というものがあります。笑顔を作ることによって、楽しいという感情が作られます。これはすぐ実践できます。
5. 感謝をする
言動に、相手への配慮が現れます。感謝の気持ちを示してください。
面接官と候補者という立場ですが、何の縁もない人と一定の時間を共にします。
人は一生のうちに、3万の人と出会うといわれています。
世界人口が80億人ほどですから、おおよそ0.0004%。奇跡です。
その時間を共にできること、その人の人生の一端を共有し、話ができることに感謝の気持ちを示してください。
最後に
面接官の方に、面接に臨む際にふっと思い出していただきたい、そんな心がけを5つお伝えしました。面接官と候補者は、本来、利害が一致している関係にありますが、評価する/されるという構図の中で相手を上回ることに腐心するような側面が強調されがちです。
(検索エンジンで「面接」と検索してみてください。「面接対策」「必ず聞かれる質問」「これで合格」「見抜く」…といった事柄ばかりがヒットします。)
両者が対等に対話できたその先に、適切な評価と意欲形成があります。
このコラムをご覧になった皆様が、5つの心がけを実践し、心を通わせるような対話の時間を作り上げてくださることを願っています。 今日では、新卒・中途といった社外からの人材採用や、昇進・昇格、登用といった社内人材の評価など、さまざまな選抜の場面で適性テストが使われています。本コラムでは、良い適性テストを選ぶ際の考え方についてご紹介します。

適性テストとは
適性とは、あることを行うのに適した性質を言います。身体・遺伝的なものから、思想、教養、嗜好、関心など人にはいろいろな個人差がありますが、これらはただの個人の性質です。私たちは、組織における人と仕事の最適化を課題にしていますので、特定の業務・役割に適しているか、が最大の関心事です。この特定の業務・役割に適しているかに関係する性質を調べることができるテストを、適性テストと呼んでいます。
適性テストの利点
適性を見極める手法としてよく用いられるのは面接でしょう。ただ、応募者が多人数であった場合、人手がかかり、効率が良くありません。また、さまざまな誤差が混入しやすく、面接官や応募者の対話のスキルに依存します。 ある面接官の見極めが適切であると仮定しても、それを維持しつつ、すべての応募者をその面接官が対応する、というのは多くの時間と費用を要します。
適性テストは少ない時間と費用で、全員に等しい設問を投げかけ、得られた回答を一律の基準で分類、評価して、数値化します。 誤差の入り込む余地が少なく、かつ面接に比べて時間も労力も格段に少なくて済みます。 効率的に、幅広く、客観的な情報を収集できる点が適性テストの秀でたところです。
適性テストの選び方
1.品質妥当性:測りたいものが測れるか 信頼性:正確に測れるか 標準性:比較集団の質
2.使い勝手
受検・採点方式、応募者管理システムとの連携 等
3.コスト
テストの費用、検討・導入コスト 等
適性テストを選ぶ際の検討基準は、上記の3点にまとめられます。
この中で最も優先されるべきは、品質、それも妥当性です。テストを使う目的を達成できるかどうか、期待通りの使い方ができるかどうかは、この妥当性にかかっています。これを蔑ろにすると、適性テストに係るコストを無駄にするだけでなく、誤った人事判断につながります。
妥当性を確認するには、一定の人数に適性テストを実施して、得られたテストデータと測定したい指標との関係性を分析します。これを妥当性検証と呼びます。例えば、秀でた営業成績をあげられるような人材を採用したければ、社内の営業職社員に適性テストを実施して、適性テスト結果と営業成績に関係性が見られるかを確認します。
終わりに
適性テストの導入効果は、1.ビジネスサティスファクション(関係者の満足度)、2.ビジネスインパクト(コストなど重要なビジネス指標の変化)、3.ビジネスアウトカム(売り上げや利益の増加などビジネス上の成果)に大別されます。目的に沿った適性テストを適切に使えば、必ずその効用を得られます。
残念ながら適性テストを活用できていないと嘆いている方々の多くは、テストを使う目的が曖昧であったり、選び方が不適切であったりします。今日では、さまざまな用途や使い方に馴染むよう、数多くの適性テストが開発され、選べる環境になっています。適性テストを選ぶ際には、目的を明確にしたうえで、専門家のアドバイスを受けながら妥当性の確認を行ってください。