
リーダーシップの機能とリーダーシップモデル
SHLのモデルでは、組織において有効にリーダーシップを発揮するために重要な4つのリーダーシップの機能を定義しています。- ビジョンを作る(戦略)
- 目標を共有する(コミュニケーション)
- 支援を得る(人)
- 成功をもたらす(オペレーション)
各リーダーシップの機能は、マネジメントとリーダーシップという2つの観点で分かれます。
マネジメント・フォーカス(業務型):システムをうまく動かし続けることや、特定目的に対して信頼できるパフォーマンスをあげる
リーダーシップ・フォーカス(変革型):システムの方向性を創り出し、発展・変化させることや、人と組織の両方を鼓舞して期待以上の成果を達成する
各リーダーシップの機能は関連する2つのコンピテンシーがあり、ひとつはマネジメント・フォーカスに、もうひとつはリーダーシップ・フォーカスに、より関連します。

SHLリーダーシップモデルにおけるリーダーシップ・フォーカス(変革型)は、まさに変革型リーダーであり、様々な影響を受けて変化する今の世の中で必要とされるリーダーシップと言えます。
コロナ禍のチャレンジと変革型リーダーに求められるもの
コロナ禍では、リーダーにとって次のようなチャレンジが鮮明になりました。- リモートワークによって物理的に散らばるチームをうまくリードする
- 曖昧さ、不確実性、混沌であふれる世界で成果を出す
- 目標に向かうべく、従業員に安全と安心を提供する
- 組織を前進させるために新たな戦略を立案し、実行する
- プロダクトやサービス、プロセスが急速に変化する環境で業務を遂行する
- リソースの制約が絶えずつきまとう状況で組織を運営する
コロナ禍の文脈で、変革型リーダーに求められるコンピテンシーを解釈します。
ビジョンを作る:「創造力」革新的なアイデアを生み出し、戦略的に考える
→ 誰も経験したことのない世界的パンデミックで、様々な制約が課される状況下での組織運営です。これまでのやり方ではなく、革新的な手法を発案、取り入れてリーダーシップを発揮する必要があります。
目標を共有する:「対人積極性」 人とコミュニケーションをとり、説得し、影響を与える
→ 物理的な接触が減り、リモート下でのコミュニケーションが主流となります。非言語情報を含めて相手を見ながら自分を伝える方法は封じられます。また、同様の方法で相手の情報を得ることもできません。より積極的かつ明確にメッセージを発信し、相手からのフィードバックを適切に受け取れるようになる必要があります。
支援を得る:「リーダーシップ」率先して行動を起こし、指示を与え、責任を引き受ける
→ パンデミックの収束が見えない状況で、今進むべき目標に向かって周りを鼓舞しながら巻き込んでいくことが求められます。すばやく決断し、自分が主導権を持って強いリーダーシップを発揮する必要があります。
成功をもたらす:「完遂エネルギー 」結果を出すこと、目標を達成することに焦点を当てる
→ 未知の経験であっても、目標達成のためにエネルギーを注いでやりきることが求められます。やるべきことを認識して具体的な行動に移せることが重要になります。
おわりに
急速な変化は以前から叫ばれていましたが、新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより、多くの人がパラダイムシフトを実感しています。この変革が進む世界で組織を率いていくには、同じく変化に順応し、変革を起こしていける人材が必要です。変革型リーダー(あるいはそのポテンシャルを持つ人)をいかに見つけ、アサインし、業務を実行していくかが、これからの組織の継続と発展の鍵となります。パーソナリティ検査OPQではリーダーシップ・リポート(サンプルリポート抜粋)を用いて、ご紹介した変革型リーダーシップや個々のコンピテンシーについてポテンシャル予測が可能です。ご興味のある方は当社コンサルタントまでお問い合わせください。はじめに
近年日本政府や企業は女性の活躍推進に力を入れており、特に管理職層における女性の数を増やそうとしています。昨今話題となっているSDGsの目標でも「Gender Equality」が掲げられており、日本では「SDGsアクションプラン2020」として女性のエンパワーメントを3本柱の一つに据えています。今回は、女性リーダーのマインドセットにフォーカスし、組織における女性リーダー育成について考察します。
女性活用の現状
日本での管理職に占める女性の割合は令和元年10月1日時点で、部長相当職6.9%、課長相当職10.9%、係長相当職 17.1%となっており、先進国の中では最低水準です。政府が掲げていた「2020年度までに指導的地位に女性が占める割合を30%に」という目標には遠く及ばず、「30年までの可能な限り早期に」と計画が先送りされました。現状は、リーダー層における女性活用が浸透しているとは言い難いです。女性が指導的立場につくことが難しい背景には、様々な要因が複雑に絡み合っています。高い非正規雇用労働者の割合、都市部ではいまだ行き渡っていない保育の受け皿、妻が家庭内の労働の多くを引き受ける偏った家事育児労働、男性の育児休業取得率の低水準など、日本における社会構造、仕組み、ジェンダーロールといった様々な要素が女性のリーダーを生み出す障壁となっています。
参考:
(厚生労働省 プレスリリース「令和元年度雇用均等基本調査」結果を公表します)
(男女共同参画局 男女共同参画白書 平成30年版本編 > I > 第2章 > 第1節 就業をめぐる状況)
(厚生労働省 プレスリリース 令和元年 10 月時点の保育所等の待機児童数の状況について)
組織にとってなぜジェンダーダイバーシティが必要か
ジェンダーダイバーシティの経営上のメリットは、様々な調査から明らかになっています。マッキンゼーによれば経営陣のジェンダーダイバーシティの高い企業は、より高い収益性や価値創造性があります。ゴールドマンサックスは、欧米においてボードメンバーに女性が一人もいない企業のIPO支援を行わないことを表明しました。ボードメンバーに女性が一人以上いる企業のほうが業績が優れていることを理由の一つにあげています。単なる経済的メリットだけでなく、社会全体へ良い影響をもたらすから、とも語っています。組織における女性活用の推進は経営的な視点で多くのメリットがあると言えます。参考:
(McKinsey&Company Delivering through Diversity)
(Goldman Sachs Goldman Sachs’ Commitment to Board Diversity)
能力不足ではなく自信の欠如
CEB のHigh Performance Survey(2012)によれば、初級レベルの従業員は男女ともパフォーマンスは同じであり、女性はパフォーマンスが悪いためにリーダーシップパイプラインから落ちているわけではありません。女性リーダーが生まれづらい要因の1つとして、能力不足ではなく自信の欠如が挙げられます。女性管理職は男性管理職と比べて自分の能力に自信を持っておらず、その結果より高いポジションを求める人が少ないと推測されます。Facebook COO、シェリル・サンドバーグは、著書「LEAN IN」の中で、女性が男性に比べて自分を過小評価したり、まだ起こっていない将来の懸念から、リーダーのポジションに就くことを敬遠する傾向があると述べています。また、昇進に二の足を踏み、キャリアにブレーキをかけることが、単なる個人の選択ではなく、社会的慣例・期待やステレオタイプ(強いリーダーシップを振るうのは「女性らしくない」、家庭と仕事の一方を選択するのであれば女性は家庭を選ぶべき、など)から多分に影響を受けているという重要な指摘もしています。アセスメントで自分の強みを振り返る
あるメーカーで女性のハイポテンシャル人材を対象に、当社のパーソナリティ検査を用いた研修を行いました。研修では、アセスメントから自分の強み・弱みを把握し、「自分らしさ」を活かしたリーダー像を具体的にイメージできるよう支援を行いました。リーダーとして求められる要件はある程度共通していますが、多様なリーダー像があってしかるべきです。自分を客観的に振り返る機会を与え、活躍する女性が、現実的に自分が管理職になれると思えるような支援を行うことが重要です。アセスメントは、性差を問題にしていません。仕事上の行動特性にフォーカスします。「自分には無理だろう」と思う女性自身のバイアスを取り払い、自分の強みを活かしたリーダー像とマインドセットの構築の一助となるでしょう。
「彼女たちの課題」から「私たちの課題」として
今回は、あくまでも「女性リーダーのマインドセット」にフォーカスしましたが、転勤や時間外労働、上位管理職のロールモデル不足など、「マインドセット」だけでは解決されない課題が組織にはまだまだ存在します。パートナーがいればパートナーの職場環境も多分に影響します。また、冒頭述べた通り、大前提として様々な仕組み・制度、社会的に醸成された性役割によって活躍しづらい環境が依然としてあります。女性当事者に意識が向かいがちですが、「彼女たちの課題」と捉えることは本質的な問題を隠すだけでなく、活躍を阻むことに加担する危険性さえありえます。「マインドセット」は女性にだけ必要なのではありません。多様な組織を目指すのであれば、全社員が多様性を受け入れるマインドセットを持つべきです。ジェンダーに限らず、様々な多様性の問題は、マジョリティ/マイノリティの立場に関わらず、我々すべてが「私たちの問題」として当事者意識を持つことで、社会全体が良い方向に向かっていくと信じています。 従来の上司と部下の個人面談と言えば、目標設定や評価の面談など、実務的な確認やメッセージを伝える上司主軸の面談でした。近年は部下個人にスポットライトを当てる1on1ミーティングを導入する企業が増えてきています。今回は、1on1ミーティングの要点を整理した上で、パーソナリティ検査を活用するメリットについてご紹介します。
1on1のヒント
1on1ミーティングを効果的に実施するために、どのようなポイントを押さえればよいでしょうか?ハーバード・ビジネススクールの上級講師で自らがエグゼクティブコーチでもあるJulia Austinの知見を借りながら要点を整理します。目的(期待)を伝えること
なぜミーティングを実施するか、ミーティングの重要性を伝えます。お互いに実施することに納得感を持つことが大事です。
トピックを決めておくこと
ミーティングで話し合うトピックを整理します。トピックは仕事に関わる能力開発、人間関係、お互いのフィードバックなどです。
双方向のコミュニケーションを意識すること
部下が話したいことがないか、常に確認します。会話を独り占めせず、常に立ち止まってディスカッションや質問をする機会を設けましょう。
フォローアップすること
ミーティング終了後、議論した内容や意思決定したものを簡潔にまとめて共有します。ミーティングを実施したすべての対象者に実施しましょう。
※詳しくはMaster the One-on-One Meetingをご参照ください。
1on1でパーソナリティ検査をフィードバックするメリット
1on1ミーティングは、お互いのパーソナリティ検査結果を持つことで、より実りのあるものになることが期待されます。どのようなメリットがあるのか?平たく言えば、「お互いをよりよく知ること」に役立ちます。- 1.自分が気づいていない部下の一面を認識できる パーソナリティ検査は自己理解像の投影です。自分の視点から見ていた部下の姿を、部下自身が認識する視点で見ると、また違った情報が得られるでしょう。1on1では、相手を支援する観点でミーティングを行うことがとても大事です。様々な行動特性を持つ人がおり、自分のやり方の押し付けではうまくいきません。相手がどのような自己理解像を持っているかを認識した上で、相手の立場に立って対話をすることが肝要です。
- 2. 部下との間で共通言語ができる ミーティングでは、個人の能力開発や職場の人間関係を含めて、様々なトピックを話し合います。パーソナリティ検査の項目を共通言語として持つことで、より具体的な行動をイメージすることができ、お互いの認識の齟齬が少なくなります。
- 3.上司の自己開示も容易にできる 部下だけでなく、上司もパーソナリティ検査を受検することも効用があります。上司自身のパーソナリティ検査の理解が深まるだけでなく、上司も同様にパーソナリティ検査結果を部下に開示することで、お互いの理解促進にも役立ちます。自己開示は、双方向のコミュニケーションの土台となる信頼関係の構築につながります。

まとめ
パーソナリティ検査を上手に活用することで、1on1をより有意義にすることが可能です。1on1を効果的に実施することは、単に個人の能力開発やモチベーションを向上させるだけでなく、チームのパフォーマンスを向上させることにもつながります。パーソナリティ検査を用いた1on1ミーティングについてご興味をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてください。
近年、競争が激化するグローバル市場において、新たな事業やサービスを生み出すことはどの企業にとっても重要な経営課題となっています。さらに、私たちが現在直面している新型コロナウィルスの蔓延によって、これまでの価値観や生活様式を揺るがす大きなパラダイムシフトが起こっています。このスピーディな変化にさらされる社会で、新たな付加価値を生み出すイノベーティブな人材はますます求められる一方、多くの企業でそういった人材は不足しており、イノベーティブな人材の獲得・発見・育成が急務であるといえます。
イノベーション人材はどこにいる?どんな人?
「イノベーション人材」と聞いて、みなさんはどんな人を想像しますか?パナソニックの創業者・松下幸之助、Appleのスティーブ・ジョブズなど著名な創業者が思い浮かぶ人も多いと思います。時代を築く寵児となるイノベーション人材はそうそう存在するものではない、とも思うかもしれません。しかし、ある調査によれば、実は17人に1人は真のイノベーターのポテンシャルを持っているのです(The 2012 Talent Report、CEB2012)。およそ5.8%ですから、イノベーション人材のポテンシャルを持つ人はみなさんの組織にもいる可能性があります。イノベーションの研究で著名なクリステンセンらによれば、イノベーターにとって重要なスキルは次の5つです:関連づける力、質問力、観察力、実験力、ネットワーク力
では、イノベーションを起こす人材はどんなパーソナリティなのでしょうか?
イノベーション人材のパーソナリティ
当社は2016年にイノベーション人材の行動特性を明らかにするため、パーソナリティ検査OPQを用いて定量化する研究を行いました。この研究では、イノベーション人材を「独立起業家」及び「企業内新規事業創造人材」と定義しました。研究概要は以下の通りです。
【調査期間】2015年~2016年
【対象】
①独立起業家 36人
②企業内新規事業創造人材 179人
(メーカー6社64名、商社1社41名、金融1社34名、通信1社14名、サービス5社13名、メディア1社7名、IT4社6名)
【結果】
●イノベーション人材は共通して、
‐論理的かつ新たなアイデアを発案するのが得意(問題解決力+、創造的思考力+)
‐環境変化に強い(状況適応力+)
‐協調性は低いが、強いリーダーシップを発揮する(人あたり‐、チームワーク‐、統率力+)

●独立起業家と企業内新規事業創造人材を比較すると、
‐独立起業家は自分の信念がより強く、目の前のことに取り組む(独自性+、計画性‐)
‐企業内新規事業創造人材は妥協ができて、より長期的なスパンで物事を見る(独自性‐、計画性+)

イノベーション人材の発掘・活用にむけて
研究結果から、イノベーション人材は共通する強い特徴を持っていることが分かりました。この特徴は、「とても優秀である」というポジティブな見方で捉えられる場合もあれば、ネガティブな見方をすることもできます。
これら両側面を理解することで、見過ごされていたかもしれないイノベーション人材を発掘、採用することができるかもしれません。
また、イノベーション人材のポテンシャルはパーソナリティだけではなく、他にも重要な要素があります。知的能力を含めた能力評価も重要ですし、実際に改革・変革を起こした過去の実績の有無も関係するでしょう。また、今あるものを変えていきたい、という強いエネルギー、ある種の使命感や意欲を本人が強く持っているかも重要です。最後に、いくらポテンシャルを秘めていても、それを発揮できる環境がないと結局イノベーション人材を活かしきれません。失敗を許容できる環境、また変革を受け入れられる組織風土でこそ、イノベーション人材のポテンシャルが顕在化します。

人と環境の両面からイノベーションを生み出す組織づくりが必要と言えるでしょう。
※引用文献:石橋 加奈子・堀 博美(2016)新規事業創造人材の行動特性に関する一考察 産業・組織心理学会 第32回