中堅層のロールモデルが少ないこと、昇進・昇格への意欲が薄い社員が多いことは事実かもしれませんが「次世代リーダーの発掘や育成」を考えることを妨げるものではありません。
むしろ社員の意識改革ができ、若手社員が大きな成長をするチャンスがあるとお考え下さい。中堅層のロールモデルがいないからこそ、自分たちで「この会社にはこうしたリーダーが必要だ」と考えるチャンスです。新たなリーダー像を造れるのです。経営層と若手社員とで「新たなリーダーとは」というテーマで議論して、イメージを具体化して下さい。そして若手社員がどのようにして成長すればリーダーになれるのか、キャリア育成計画を設計していきます。
現在では働き方に対する考え方も多様化しています。「昇進」がゴールと考える人もいれば、ワークライフバランス重視の人もいます。なぜ「昇進・昇格意欲が薄い」のか、いろいろヒアリングしてみて下さい。個々人のキャリアに対する考え方の違いが見えてくるでしょう。
昇格後に責任だけが重くなるというマイナスイメージが強くあるのでは、誰も昇格を望みません。キャリア選択のなかで自分の成長を感じられるものとしての「昇格」でなければならないでしょう。
役職に就くという「昇進・昇格」ではなく、仕事を通じて成長していけばリーダーシップはついてくるもの、誰もが目指していけるものという意識がもてるような仕組み作りを考えて下さい。

「通年採用イコール100%ジョブ型採用」と無理に考える必要はないと思います。企業の中でジェネラリスト人材が必要とされる場合もあるでしょうし、ジョブ型だから完全に一つの専門職としてしか扱わないと硬直的に考えることもないでしょう。柔軟に対応してよいのではないですか。
通年採用は、本来「必要に応じてタイミングに合わせて人材を採る」ということですから「ジョブ」を特定しなければ、現場が必要とする人材要件を明確にできません。一方で、幅広く経験を積んだうえで成長し戦力になってほしい、柔軟に配属を検討できる方が望ましいと考える会社では、ジョブ型への抵抗感が残ります。
日本型雇用のよい点もありますので、ジョブ型に合いやすい一部の職務で「職種別採用」を導入してみる。総合職であっても本人とのヒアリングで配属先や職務のイメージを聞き出し、イメージに近い育成計画やキャリアプランを用意してあげて、採用時期も長く取る。といったハイブリッド型はどうでしょう。実際に入社後に働いてから職務に対するイメージが変わることも多いはずです。会社側、働く側にとっても柔軟性のある仕組みがお互いにとってもよいはずです。

サクセッションプランを実行するためには、会社の事業戦略が明確で、そのために必要な人材戦略が紐づいていることが大切です。そのうえで、必要な人材要件を定義し、アセスメントを実施しサクセッションプランに参加させる人材を導き出すことになります。
社員の経験の棚卸は、サクセッションプランを成功させるための重要なステップであり、単にこれまでの経歴をなぞるだけでは意味がありません。社員がこれまでどのような業務を行いどのような役割を果たしてきたか、またその経験を通じて何を得て、自身の強みとなっているか、また弱みを自覚しどのように対処してきているかを把握することが必要です。
まずはサクセッションプランの目的に沿うように、社員のどのような情報を収集するかを明確にします。次はどのような方法で収集するかです。棚卸シートを準備し本人に自己申告させ、上司もふくめてヒアリングを行い、本人の業務経験から認識している強み、弱み、課題といった項目を把握します。
これらの情報をデータ化し整理し、可視化する。あわせてアセスメントを実施し、その結果も参考に分析・評価します。
最後に、情報をもとに育成・選抜プログラムを計画する。こうした流れでしょうか。

少子高齢化により今後も若年層は減少しますので、新卒採用は売り手市場が続きます。新卒を含む、人の働き方も多様化してキャリア観も変化していくでしょう。
グルーバル化、DXも進んでいきますし、AI普及も活発となりますので、DX人材ニーズが高まり、加えて外国人材比率も上がっていくでしょう。
こうした点を考えれば、どの業界でも今後は自律的に行動できる人材、変化に強い人材、デジタルリテラシーのある人材が求められることになります。
御社の事業構想を踏まえながら、こうした人材を採用できるように採用戦略を組んで下さい。

既存社員のかかわり方は、インターンシップ実施中や選考過程といった入社以前からとても重要です。内定段階から入社を決めるポイントにもなりますし、入社直後のオンボーディング期間でも同様です。
既存社員の中でも、後輩である新入社員に対する感覚はいろいろなはずです。自分の後輩であり、将来は部下上司の関係になるから親身になって職場に馴染めるように協力しようという社員もいれば、自分の仕事で忙しいなか、なんで面倒をみなければいけないのか。それは人事部の仕事でしょ。と考える社員もいるはずです。
まずは、すべての社員に同レベルの協力を期待することを止めましょう。面接官やリクルータを依頼するときに、その人に適性があるかどうかを考えて依頼するのと同じです。
新入社員を「仲間として迎え入れる意識」が持てない人に無理にお願いしてもだめです。新入社員の方が気をつかってしまい萎縮してしまいます。
自分も先輩に育ててもらったのだから、今度は自分が恩を返そうという気持ちがある人、一緒に頑張っていく後輩を応援していきたいという共感性をもつ人がいいでしょう。
社内で、こうして応援して下さいといった具体的な内容を示してあげることも必要ですし、新入社員からのお世話になったお礼や感謝の言葉を社員に伝える仕組みがあるとより効果的ではないでしょうか。
先輩後輩の自然な声がけができる社内の雰囲気と、業務上の具体的な内容を質問できるメンター制度とを両面にしてうまく回して下さい。

トランプ大統領の相互関税発動発言によりグローバルに大きなショックが伝わっています。特に米中の報復的対立が激しくなると双方との経済的結びつきが強い日本には相当の影響が出ると思われます。トランプ大統領や周辺閣僚の発言により市場も揺れ株価も乱高下しています。この先は不透明で、このまま長期の景気低迷に向ってしまうかはまだわかりません。いましばらくは、様子見でしょうか。
そもそも新NISAは「長期保有での非課税枠活用」が前提です。短期的な上げ下げに過剰に反応しては、もったいないです。ここは慌てることなく状況を見守るスタンスでいきましょう。もちろん現状の不安定要素や下落要因などをしっかりと理解することも大切です。
むしろ、投資先内容を見直す機会にしてはいかがでしょうか。特定の国や業種に偏っていないか、リスク分散ができているかどうかを確認して、必要であれば積立金額や投資対象を見直します。
株式投資は長期で必要のない余剰資金で投資していくのが理想ですが、どうしても不安でストレスがたまるようであれば少額でもいいのでリスク資産を減らしてみましょう。

「中堅はほとんど変わりませんし福利厚生の一部がカット」とお書きです。すべての企業が同じだとは申しませんが、新卒給与を上げている会社は、概ね会社全体では調整をはかっているはずです。原資は限られているはずですから。この前の春闘での満額回答にも、実現できている背景があるはずです。社員全体で給与アップできる会社はごく一部でしょうし、限られた時期だけかもしれません。
新卒採用が売り手市場になっており、優秀な人材獲得のために、初任給がどんどん上がっています。少子化による人材不足を考えればこの傾向は続くと思いますが、中堅層の給与の伸びを抑えるということになれば、結局は中堅層から不満が出てきて人が流出してしまいますので、元の木阿弥ではないでしょうか。
中小企業は、初任給競争自体に付いていけません。
このまま賃金(初任給)競争が続いても、企業はもちません。給与以外に働くモチベーションをもってもらうための要素を考えていく時代に来ているということでしょう。
働きがい、成長機会、年齢に関係なく能力を活かせる働き方、などでしょうか。

CXOとは事業における各業務組織の最高執行責任者ですから、サクセッサーは次世代の最高幹部候補者ということでしょうか。
候補者に対してフィードバックの際に気分を損なってはいけないなどの忖度をする必要はないはずです。候補者になっているということは会社からの期待の大きさも十分に感じているはずですし、これまでの実績もあり能力的にも高いはずです。
それだけに候補者が受け入れられやすい具体的な形で説明することが大切ですし、フィードバックのタイミングや伝える環境にも配慮してください。弱みや改善点を指摘するだけではなく、強みや期待したとおりの成果を示しながらこうするとさらによいのではという提案型です。
またフィードバックして終わりではなく、進捗を確認し、成長を見守る姿勢を示すことも大切です。
こうした配慮をすることでCXOサクセッサーとしての自覚と自尊心を傷つけることなく、前向きな成長を促すことができます。

人事の立場からいえばやはり労務管理上のリスクでしょう。本業と副業の労働時間の管理をどのように行うか、難しい点があります。過剰労働による疲労、パフォーマンスの低下や健康面へのマイナスの影響をどう防げばいいでしょうか。
本業での経験を活かし近い業種での副業を望む場合は、競業避止の義務をルール化しておかないと取引先情報の漏洩、自社ノウハウの流失といったリスクを生じます。
通常は社員の事前申告や許可制を取るケースが多いですが、どこまで認めるかの判断基準作りが難しいです。一部社員だけ認めることになれば、不公平感が生まれます。
副業を積極的に進める企業からは、「優秀な社員が副業・兼業を経験し社外との交流の中でスキル向上を成し遂げてくれる、さらにはこれまでにはなかった形でイノベーションを社内にフィードバックしてくれる」というプラス面を強調しています。一方で、力をつけてくれば違ったフィールドでチャレンジしたくなり退職していく社員も当然いるはずです。本業と副業が逆転し、副業の方に力を入れてしまうこともあるでしょう。収入面で補填をするために副業をせざるをえず、無理をして体調を壊してしまう場合もあるかと思います。
社員からの副業解禁要望の内容、理由をヒアリングして貴社としてのご対応を検討してください。

富士通のこのニュースは大きな反響を呼んでいるようですが、すでに他社でも同様な流れは出てきています。通年採用型へのシフト、ジョブ型採用枠の拡大、中途採用枠の拡大などの大手企業の流れです。
背景には、少子高齢化の中で、初任給値上げ競争に表れているように、総合職、専門職で一律の給与体系での新卒一括採用では優秀な人材が確保できなくなっているという現状がありますが、加えて企業の事業変革のスピード感が加速していく中で、イノベーション人材をいかに採るかが企業の今後の成長に関わってくるという人材戦略の転換、危機感があるからです。製造業界特に電気機器・通信業界ではハードからソフトへの事業構造の変革が進んでいます。既存社員にリスキリングを実施し配置転換を行っていくことも必要となってきています。富士通のような大手IT企業では、他社もこうした流れになってくるでしょう。
ただ、通年採用やジョブ型採用にはデメリットもあります。通年採用にすれば、一括集中型採用より企業側の採用業務の負担は時間面、コスト面で当然増えますし、ジョブ型採用となれば会社都合での部門間での配置転換が難しくなり人材配置の柔軟性が薄くなる面もあります。
こうした点も踏まえながら各企業が工夫を凝らして対応していくことになるのでしょう。