ご質問者様は老害にならないと考えます。なぜならご自身の考え方の変化を自覚し、客観的にとらえているからです。自分が老害となる可能性のある考え方をしていると認識しており、それが老害にならないよう統御しています。自覚があり、自己統御ができれば、若者たちに迷惑をかけることはありません。
私も最近新しいものを面白がったり、興味を持ったりする感覚が弱くなっていることを自覚しています。年をとるほど慣れ親しんだものを好む理由は、楽しむこと自体にエネルギーを使うからなのだと思います。加齢により代謝が落ち、多くのエネルギーを使えなくなるため、省エネを余儀なくされ、多くのエネルギーを使う変化への対応ができなくなるのです。
私から申し上げられることは二つです。変化対応に大量のエネルギーを使う覚悟を決めること。大量のエネルギーを生み出すために、健康を維持する生活を送ること。以上です。
Personnelは人事、Human Resourceは人的資源、Human Capitalは人的資本、Talentはタレント(有能な人)。歴史的に人事を表す言葉はこのように変化してきました。人を単なる労働力ととらえるところから、資源として活用する対象、資本として増殖させる対象、有能な一人の個人として尊重する対象ととらえ方が変化してきました。
この変化に対応する能力開発施策をどのように設計していけばよいかというご質問です。
人材育成における7・2・1の法則にそって考えると、7の職務経験は最も重要です。本人のポテンシャルと目指すキャリアを踏まえ、最適な配置を行います。次に重要な2の薫陶はよき指導者をつけるということ。メンター制度の導入やメンター・指導者の育成を行います。最後は1の研修です。研修で獲得しやすいものは、知識です。各従業員にとって必要な業務知識を獲得するための研修を準備してください。オンデマンドの研修や大規模な教育プラットフォームを活用すれば、様々なコンテンツを安価に提供できます。
ジョブクラフティングとは、従業員が自分の仕事に対して主体的に工夫を加え、仕事の内容や人との関わり方、仕事の捉え方を自ら変えることで、働きがいやモチベーションを高める取り組みのことです。
OPQフィードバックのなかで行動変容を考える際、ジョブクラフティングが可能な環境にいる人ほど選択肢が多いと考えることはできます。しかし、セットで考えなければ意味がないとは言えません。組織から与えられている仕事の枠組みの中で努力し、行動改善や業績改善につなげることは可能です。OPQフィードバックによってわかることは、職務に対する自分の強みと弱みです。強みは職務に求められる行動のアクセルで、弱みはブレーキです。自分の弱みを理解するとは、ブレーキを踏みがちな自分を知ることであり、行動変容とは意識的にブレーキを踏まないようにすることなのです。ですからジョブクラフティングができなくても行動変容は可能。OPQフィードバックはジョブクラフティングとセットである必要はありません。
中途採用で知的能力テストは不要とする考え方は誤りです。
即戦力であるならばなおさら、職務に求められるコンピテンシーを選考時にしっかりと見極めるべきです。コンピテンシーの中には知的能力と密接に関連する項目が多く含まれます。例えば、分析力。情報を分析し評価するためにはデータのパターンや因果関係をとらえ、重要なものとそうでないものを区別し、適切な推論を導く必要があります。これら一連の作業は知的能力テストを使えば明確に評価できます。学習というコンピテンシーを構成する行動に「素早く思考すること」があります。具体的には、新しく提示された情報を素早く理解する、有益な洞察を行い複雑な情報に素早く反応するなどの行動です。これらを確認する際も知的能力テストは有益です。
即戦力であるかどうかではなく、採用職種に求められるコンピテンシーやスキルを知的能力テストで予測できるかどうかが、利用の要不要を判断する基準となります。
現場上長が事業責任者なのであれば、現場上長が後継者を作る責任を持っている当事者ですから承認を得られない異動はそもそもサクセッションプランとして適切な異動ではないと判断できます。人事はサクセッションプランを仕組み化して運営をサポートする役割であり、サクセッションプランの当事者は後継者を必要とするポストに現在就いている人自身です。自分で自分の後継者を作っていく必要があります。当事者とよく話し合い、後継候補者にどのような職務経験を積ませる必要があるのかを明確にしてください。そうすれば、現場の承認が得られないという事態は無くなります。
面接前に受検させてください。そうすれば面接時に適性検査の情報を活用できます。
採用選考での適性検査の利用目的は主に二つあります。一つめはスクリーニングです。入社後の職務成果と関連がある項目を基準に合否判定をします。二つめは面接支援です。適性検査結果から人物像の仮説を立て、仮説検証の面接を行います。コンピテンシー面接、構造化面接を行う上でとても役立ちます。
加えて、適性検査は人を選ぶためだけの道具ではありません。選考以外の活用法は主に三つあります。一つめはフィードバック。適性検査をフィードバックすることで、自己理解を促しながら自社での活躍イメージを確固たるものにしてもらいます。入社意欲を高めるのに効果的です。二つめはマッチングです。面接官やリクルータとのマッチングは入社意欲を高めるため、配属部署とのマッチングは定着や早期戦力化を促すために効果があります。三つめは適性検査データの分析です。適性検査データを用いて、応募者、各選考の合格者、内定者、辞退者などの特徴を分析します。分析結果を踏まえて、採用プロセスを改善します。
サクセッションプランとは
サクセッションプランとは、将来組織のリーダーを担う人材を計画的に発掘、育成、選抜する仕組みです。経営トップや事業責任者など、組織の持続的な成長に欠かせないポジションにおいて、誰が役割を引き継ぐのかをあらかじめ定めておくことで、不測の事態にも備えられると同時に、戦略的な人材育成にもつながります。

サクセッションプランの必要性
サクセッションプランの必要性が世界中で高まっている主な理由は二つあります。一つ目は経営環境の不確実性が高まり、予期せぬリーダー交代が組織の大きなリスクとなっているから。二つ目はリーダー人材の獲得競争が激化し、自社内での育成が重要になっているからです。加えて、社会の価値観が多様化していることで、経営リーダーに求められる要件が急激に変化していることも影響を与えています。
ハーバードビジネスレビューシニアエディターのエベン・ハレル氏が行った研究では、退任するCEOの後任をすぐに見つけられない企業は平均で18億ドルの株主価値を失い、社外から採用されたCEOの平均報酬は社内出身のCEOの平均報酬よりも320万ドル高いことが述べられています。
サクセッションプランを行うべき組織
今すぐにでもサクセッションプランに着手すべき組織はどのような特徴を持っているのでしょうか。以下の6つのいずれかに該当する企業にとってサクセッションプランは重要課題と言えます。
- 経営層の高齢化が進んでいる
- キーポストが属人化している
- 後継者選抜が主観的に行われている
- 次世代リーダー候補が育っていない
- 新事業創造やグローバル展開を進めている
- 急激に組織が拡大し、複雑化している
サクセッションプランの進め方
次に、サクセッションプランの進め方についてです。サクセッションプランは以下のステップで構成されます。
1. 現状把握とキーポストの決定
経営層や人事が中心となり、経営戦略と連動した組織の将来像を描き、サクセッションプランの対象となるキーポストを決めます。キーポストには経営層や事業トップだけではなく、企業にとって必要不可欠な重要ポストを含める必要があります。キーポストが決まったら、各ポストについて後継者候補の有無を確認し、現状と将来像の人材ギャップを明確にします。
2. 後継者候補のアセスメントと選抜
従業員のなかから後継者候補をリストアップし、アセスメントを実施します。アセスメントを行うためには事前に各キーポストの人材要件を定義しておく必要があります。人材要件を定義するにあたって考慮すべき要素は、実績、コンピテンシー、ポテンシャルの3つです。実績は、業績、職務経験、保有資格、研修歴など今までの職務成果に関連する情報です。コンピテンシーは発揮された能力や行動特性です。定期的に行われる上司評価や360度評価によって得られる情報です。ポテンシャルは資質や潜在能力と呼ばれる保有している能力や才能です。仕事場面で顕在化していないことがある個人属性のため、アセスメント(認知能力測定、パーソナリティ測定、モチベーションリソース測定など)を使って測定する必要があります。
3. 育成プランの策定と実行
アセスメントによって選抜された後継者候補に対し、個々のスキルや経験のギャップを明確にし、それを埋めるための具体的な育成計画を作成します。例えば、戦略的視点を高めるためのプロジェクト参画、戦略的な異動による実務経験、メンタリング、外部研修など多様な方法を組み合わせます。育成の状況を上司や人事、キャリアコーチが定期的に確認し、必要に応じて柔軟に内容を見直すことが重要です。
4. メンテナンス
定期的に候補者の成長度合いや組織の状況変化を踏まえ、サクセッションプランが機能しているかを確認し、調整します。例えば、候補者が適切に育っているか、候補者の状況に変化はないか、重要ポストに変化がないか、部門責任者が役割を果たしているか、施策が経営や人事に貢献しているかなどをチェックします。必要に応じて対象ポストや候補者、育成方針の見直しを行い、仕組み全体の精度と実効性を高めていきます。ここでは経営層と人事が密に連携し、柔軟に対応することが求められます。
導入にあたっての注意点
一方で、サクセッションプランの導入にあたっては以下の点に注意が必要です。
組織に適した透明性と機密性を確保する
サクセッションプランの候補者選抜プロセスをオープンにするか、選抜された後継者候補にも通知せずに進めるかは組織ごとに慎重な検討が必要です。透明性を高めることが組織全体の活性化につながるのか、秘密裏に進めることが全体のモチベーションの低下を防ぐのかは組織の状況や対象となるポスト、サクセッションプランの施策内容によって異なります。経営トップの強い賛同を得る
経営トップの強いコミットメントも成功の鍵となります。人事部門だけで計画を立てても、現場の理解や協力が得られなければサクセッションプランはすぐに形骸化します。キーポストの後継者を作り続けることは全社の利益につながる重要事項であることを経営トップから発信し続けてください。経営戦略、人材ポートフォリオと連動させる
キーポストを定義する際は、現状だけでなく、将来の組織や経営戦略の変化を見据える必要があります。サクセッションプランは静的なものではなく、変化を前提とした動的な計画であるという視点が求められます。

おわりに
サクセッションプランは未来の経営リーダーを育てる最も重要な人事施策の一つです。しかしながら、次の社長候補者を客観的な選抜と計画的な育成によって万全に準備できている企業は極めて少ないことが現状です。突発的に経営陣の交代を余儀なくされる場合のみならず、経営環境の変化に対応できる経営陣を育成し、円滑な後任への引継ぎを行うことは企業価値を向上させるうえで極めて重要です。
Insight Platformは、現在の複雑な経営環境に適応できる経営リーダー候補者の選抜に適したアセスメントツールです。オンラインで簡便に実施できるパーソナリティ測定と職務経験サーベイで、経営リーダーとしてのポテンシャルを測定し、人材選抜に対する有用なインサイトを提供します。
参考:Succession Planning: What the Research Says
Most organizations aren’t prepared. by Eben Harrell
From the Magazine (December 2016)
https://hbr.org/2016/12/succession-planning-what-the-research-says
職種別採用を行っているのであれば、各職種の採用要件を定めて採用活動をすることが前提となります。そのため、職種の変化に追いつけないということは職種別採用を行っておらず、職務適性とは異なる基準を設けて採用活動を行っているということですね。貴社の現状を踏まえると、現在のジェネラリスト採用は適切な手法であると考えられます。組織と役割が頻繁に変化し、人事異動が頻繁に発生するのであれば、様々な役割や組織に柔軟に対応できる人材を採用すべきであり、特定の職務適性を基準に採用すべきではありません。
今のやり方を変える必要はありません。
サクセッションプランは社員の流出を防止するために行うものではありません。企業変革や経営陣の交代を円滑に行うことを目的として、最適な経営リーダーを計画的に準備し育成することがサクセッションプランです。最前線の現場経験を積んでなんぼという考え方に反する施策ではなく、むしろサクセッションプランには最前線の現場で修羅場経験をさせるというプログラムが組み込まれていることが一般的です。
様々な要因により変革が必要な企業は、本気でサクセッションプランに取り組んでいます。例としては既存ビジネスの転換が求められている企業、不祥事などにより経営陣の変更が求められている企業などです。これらの企業ほどの本気度ではないですが、人的資本開示でよい情報を出したい企業も粛々とサクセッションプランに取り組んでいます。
社員の流出を防ぐのであればサクセッションプランよりもリテンション施策の導入を検討してください。
4つのアプローチ方法をご提案します。いずれの方法も効率的に行うことが難しく業務量が増大します。覚悟して挑んでください。
・研究室へのアプローチ
ターゲットとなる研究室を定め、すべての研究室に訪問し、教授との良好な関係を構築してください。社内にOB/OGがいる場合はその方を通じて教授にアポを取ります。アポを取る際に、単に企業説明を依頼するのではなく、「技術系の〇〇分野で研究の社会実装を考えていて、先生の専門と接点がありそうなので、意見を伺えませんか?」という形でアプローチします。教授の信頼を得ることが肝要です。
・OB/OG社員による卒業生ネットワークの活用
理系出身の現職社員に母校研究室でのOB/OG活動を依頼し、研究室で説明会や座談会をやってもらいます。学生に具体的なキャリアパスを提示して、自社での仕事は研究の延長線上にあるという印象を作ることができれば成功です。就活に積極的ではない理系学生に対してはキャリア相談という切り口でアプローチしてもらいます。
・リサーチインターンシップ、技術体験プログラムの活用
ターゲットとなる学生を意識したリサーチインターンシップや技術体験プログラムを開催します。自社でどのような研究ができるのかを実感してもらう機会を作ります。就職活動として行うのではなく、研究をいかに社会に実装していくかを体験してもらうことが重要です。
・理系特化のオファー型求人サービスの活用
具体的な理系オファー型のサービス名は控えますが、複数のサービスがありますので、調べてみてください。オファーメール文面は定型を使うのではなく、相手にあわせて1通ずつ手作りすることがコツです。研究内容や経歴に触れると読まれる確率が高まります。