真面目過ぎてオモロない答えになってしまい恐縮です。
保守‐革新のパーソナリティだけで採用のメリットとデメリットを考えるのは無理があります。すべての人が完全な保守と完全な革新の中間にいて、その時々に適切な判断をしています。また、情報の消費期限が短いことと変化のスピードが速いことは、一般的な時代認識として適切ですが、企業や職務によってはそうでない環境もあります。300年間同じ技術と道具と方法でやり続けている仕事もあるのです。
保守的な性格は保守的な行動が求められる職務に対する適性であり、革新的な性格は革新的な行動が求められる職務に対する適性です。職務が求める適性を持つ人を採用すると短期間で高いパフォーマンスが期待でき、そうでない人を採用すると育成に時間とコストがかかります。以上がメリットとデメリットです。
ジョギングをはじめたことが素晴らしい。フルマラソンへ道のりでいえば既に8合目は越えました。もう少しです。
目標は以下2つです。
- 10kmを歩かずに走れるようになること。
- マラソン本番までに月間100kmを4か月間続けること。
練習メニューなんてどうでもいいです。毎週4回ジョギングをしてください。1回は10kmにチャレンジして、残りは5kmです。そうすると走行距離は週25kmですので、月に100km完走できます。いきなり10kmが大変だったら、途中歩いてもいいです。とにかく10km歩いたり走ったりで完走しましょう。
試験対策すると点数が低くなるのは一般的かと問われたら、必ずしもそうではないとお答えします。問題形式、問題数、制限時間、必要な道具、問題の解き方、ページの進め方をよく理解し、練習したうえでテストを受検することではじめて真の能力が測定できます。テストに必ず練習問題がセットされているのはこれが理由です。
文章やデータを理解し、論理構造を把握し、応用して正答を導く能力は、ちょっとした練習によって成長するものではありません。運動能力に類似したものと考えてください。なまった体を本調子に持っていくところまでは、みるみるうちにパフォーマンスが上がります。しかし、自己ベストを超えるパフォーマンスを出すためには血のにじみ出るような努力が必要です。当社の知的能力が即しているものもこれに類似しています。
入社1年未満の退職を早期退職とするならば、主な原因は採用選考にあります。入社後にアセスメントを使って社員を留めることは困難です。
アセスメントには社員を留める力はありませんが、アセスメント結果を用いたキャリアカウンセリングを行えば、退職リスクとその理由が早期にわかり、具体的な対策を打つことも可能です。間接的に離職防止に貢献できると考えます。
二つの研究
締め切りに追われてしまう原因とその解決策を考えるヒントになりそうな研究を二つご紹介します。一つ目は、日本のAI研究第一人者である松尾豊氏が2006年に発表した論文「なぜ私たちはいつも締め切りに追われるのか」です。この論文はジョークか真面目かよくわからないところが面白いのですが、創造的な仕事をする研究者が常に締め切りに追われる理由についてわかりやすく述べています。仕事を行うリソースを集中力として、締め切り日までにどのようにリソースを配分することが仕事量を最大化するかについて数式を用いて説明しています。結論を要約すると以下のようになります。
創造的な仕事は高い集中力がなければ進まないので、低い集中力で長時間仕事をしても意味がない。したがって、仕事量をしっかりと見極め、集中力を最大化させれば間に合うぎりぎりのタイミングで集中力を高めることが重要。仕事のなかには高い集中力を用いても仕事の効率が高まらないものもあるので、そのような仕事は一定の集中力で計画的に進めた方がよい。創造的な仕事をしている研究者は、もっと時間があればよかったのにと考えるのではなく、もっと集中すべきだったのにと反省すべきである。
さらにもう一つの研究を紹介します。ティム・アーバン氏が行った2016年のTEDでのプレゼンテーション「Inside the mind of a master procrastinator」です。私が邦題をつけるとすれば「先延ばし名人の頭の中」です。
先延ばし名人が締め切りギリギリにならないと仕事に手を付けない理由を頭の中で起こっている3者の対立として説明します。
先延ばししない人の頭の中には合理的意思決定者がいて、その人の行動の舵取りをしています。他に誰も合理的意思決定者を邪魔する者はいませんので、合理的に計画的に仕事が進んでいきます。先延ばし名人の頭には合理的意思決定者ともう一人、今すぐ満足したいサルがいて、合理的意思決定者が仕事をしようとするとその舵を奪い取り全く関係ないことをさせます。サルが求めるものは今お気楽で楽しいことだけ。やるべき仕事と気楽で楽しいことの葛藤が生まれた時、サルに舵取りされている先延ばし名人は「闇の遊び場」に逃げます。闇の遊び場とはやるべきことがあるという罪悪感や不安を持ちながら、関係のない気楽なことをする本当の楽しみとは異なる遊び場です。このままでは本当に間に合わないという状態になると合理的意思決定者の救世主が現れます。パニックモンスターです。パニックモンスターは普段は眠っているのですが、締め切り直前、仕事上の大問題などのピンチで目を覚まし、サルを追い払ってくれます。パニックモンスターの出現により合理的意思決定者は舵を取り戻し、先延ばし名人は生産的な仕事に取り掛かることができるのです。

パーソナリティの影響
次はパーソナリティの視点から締め切りに追われる理由を探ってみたいと思います。OPQの測定因子のうち締め切りに追われることに関連する因子には以下ものがあります。
・計画性(低得点)
計画性は先を見通して計画的に行動することを好む性質を表します。この因子の低得点者は場当たり的な行動を好む傾向があり、計画的に行動することは自発性を損ねると考えています。低得点者ほど、計画的に仕事を進めることを好まないため、締め切りに追われることになります。
・几帳面(低得点)
几帳面は提出期限や約束を必ず守ることを好む性質を表します。この因子の低得点者は提出期限や約束は状況次第で柔軟に変更できるものと考えています。大きな目的を達成するためには多少の締め切り遅れは仕方がないと考えており、品質へのこだわりや突発事態の発生などを理由に締め切りに間に合わないことがあります。
・心配性(低得点)
心配性は仕事や責任が与えられた際に発動する不安感情です。仕事や責任を全うしたいという気持ちの強さからうまくできるかどうかを心配してしまう性質がこの心配性です。この因子の低得点者は、仕事を与えられても常にリラックスしています。ティム・アーバン氏のいうパニックモンスターがなかなか現れないパーソナリティと言えるでしょう。
・行動力(高得点)
行動力はとにかく行動することを好む性質です。高得点者はハードワークや長時間労働を厭わないため、とにかく行動を増やすことで問題解決を試みます。締め切り直前からの徹夜仕事が苦にならないため、この方法でも締め切りに間に合わせることができると自信をもってしまいます。このことが締め切りに追われる一つの要因となります。
・上昇志向(高得点)
上昇志向は目標達成意欲と言い換えることができます。高得点者は目標達成に向けて常に努力します。その理由はどうしても目標達成したいから、目標達成できないことが嫌だからです。高得点者は締め切り直前の仕事が与えられても何とかして締め切りを守ろうとします。その結果、短い時間で仕事を完了させる能力が身についていきます。この能力によって仕事に要する時間を短く見積もるようになり、締め切り間際に着手することが習慣化します。
私のOPQプロファイルは締め切りに追われる5つの特徴に概ね合致しています。パーソナリティからみて私は締め切りに追われがちな特徴を持っています。

改善方法を考える
松尾豊氏からの重要な示唆は、締め切りに直前にならずとも集中力を高める機会を持つべきであるということ。締め切りに余裕をもって集中力を発揮するには、ゆとりのあるタイミングで集中する時間を設けることが必要です。このアクションを行うには私の計画性4点はやや低く、明確な業務ルールを自ら定める必要があります。例えば、締め切り2週間前に必ず3時間以上のまとまった時間を確保し執筆を開始する、などです。ティム・アーバン氏からの重要な示唆は、早めにパニックモンスターを出現させる状況を作るべきであるということ。几帳面2点、心配性3点である私のパニックモンスターは一般的な人に比べてなかなか起きてくれません。そんな私がパニックモンスターをたたき起こすためにやれることは、事故を想像することです。来週の原稿が間に合わない、掲載できなくなった、執筆者の休職、退職など、通常では起きないが絶対起きないとは言えない状況をありありと想像し、次週のコラムとして自分の原稿を出せるようにしておくこと。これも慣れればすぐに効果を失うと思いますが、当面はこのプランで進めたいと思います。
おわりに
実を言うと私が締め切りに追われる理由を私は知っています。締め切りに追われると不安に襲われます。そして、その不安と戦うために集中力を高め一気に仕事を終えることができると不安が払しょくされ強い達成感が得られます。この達成感が報酬となり、締め切りに追われる行動を強化してしまうのです。締め切りに追われる快感によっているだけなのです。
今後は、今回の反省を踏まえ周囲の人にご迷惑をおかけすることがないよう、締め切りに追われない仕事の仕方に改善することをここに誓います。
また、このコラムが締め切りに追われている同志の皆様のために少しでもお役に立てたら幸いです。
参考:
松尾豊(2006). 「なぜ私たちはいつも締め切りに追われるのか」 http://ymatsuo.com/papers/neru.pdf
Tim Urban(2016)「Inside the mind of a master procrastinator」、TED https://www.youtube.com/watch?v=arj7oStGLkU
面接は最も多くの観点で評価できるアセスメント手法です。学チカと志望理由を聞くといっても、聞き方によってはコンピテンシー、価値観、パーソナリティ、モチベーションリソース、知的能力、学力、興味関心、専門知識、取得資格、語学力、学業成績、得意科目、苦手科目、コミュニケーションスタイル、チーム内の役割タイプ、感情知能、リーダーシップスタイル、ストレッサー、好むストレスコーピング、キャリアゴール、部下としてのスタイル、学習スタイル、経験など、まだまだいくらでも出てきますが、色々なことを聞き取り、評価できます。
面接基準として欠かすことができないものは2つあります。職務適性と組織適性です。職務適性とは、特定の仕事ができるかどうかに関する適性で、コンピテンシーと言い換えることができます。組織適性とは、特定の組織になじめるかどうかに関する適性で、組織風土や組織構成員との相性と言い換えることができます。
ここまでは抽象的な採用選考で行うべきことという話でした。ここからは具体的に、2次と最終で何をやるかについてです。
お勧めは合宿選考です。この名称は三井物産が2018年に行ったことで有名になったのですが、実はそれよりも20年以上前に大手マスコミがやっていました。おそらく採用選考を本気で考えると行きつく方法のひとつなのだと思います。期間は少なくとも1泊2日以上、できれば2泊3日にしたいところです。社員1名につき参加者6名までであれば比較的細やかな観察が可能です。行うことは泊りがけのアセスメントセッションです。グループワーク、プレゼンテーション、インタビューなどのアセスメントセッションに加えて、研修やゲーム、食事や自由時間まですべてが観察対象になります。この選考のメリットは、応募者の本質が見えやすいことです。
集合研修形式のメリットは以下の通り。
- 運営側の拘束時間が短い。間接コストが低い。
- 外部に依頼する場合は、直接コストも低く済む。
- 参加者同士の相互理解を促進できる。
個別形式のメリットは以下の通り。
- 詳細に結果を伝えられる。
- 訓練されたフィードバック担当者との対話によって、結果の解釈と職務行動との関連付けを適切に行える。
- 被検者のニーズにあったフィードバックができる。
- 被検者に関する新たな情報を収集できる。
- キャリア自律支援として効果がある。
- 直属の上長や職務をよく知る人がフィードバックを行えば、能力開発としての効果が高い。
以上です。
結果です。組織が変わったら、J1優勝チームになりますし、J3へ降格するチームにもなります。いくら大金を払って優秀な選手を補強してもチームが勝てなければ変化したとは言えません。ただし、組織の変化には時間がかかります。組織改革の成果を短期間で求めすぎると必ず失敗します。
どのような人事制度のどの部分を改定しようとしているかが重要です。
極端な話ですが、人事制度が全くない状態を思い浮かべてください。どんなお困りごとが発生するでしょうか。誰にいくら給料を払えばいいかわからなくなります。仕事をよくやっている人とそうではない人を正しく見分けることができなくなります。従業員間の不公平感を低減することが難しくなります。従業員の能力開発と意欲開発が難しくなります。その他にも色々な問題を簡単に思い浮かべることができるでしょう。しかし、これらの問題は個別に従業員とじっくり話をすればすべて解消できます。
今生じている(これから生じる)問題を解決するために、人事制度のどの部分を変えると効果があるかを判断することが重要です。
人事制度の改定で最初に必要なものは評価基準ではありません。最初に必要なものは解決すべき問題です。まずはこれを考えてみましょう。
初任配属を会社が決めるのは問題ありません。本人の適性を考慮して決めているのであればさらに良い意思決定です。しかし、その後の異動がほとんどない点については、吟味が必要です。初任配属が適切で育成環境も従業員にとって良い判断ができており、結果として異動の必要性がなかったというのであれば素晴らしい会社としかいいようがございません。見直す必要など全くございません。
しかし、組織の不活性化、業績の低迷、早期退職者の増加など組織上の問題が発生しているのであれば、やり方を見直す必要があります。その場合は、発生している問題を明確にして解決策を検討する必要があります。単に初任配属と異動の問題だけではないと考えます。