タレントマネジメントの概念的な位置づけがわかると、何をすればいいかがわかります。
タレントマネジメントとは、組織人事戦略を実現するために行われる、人に対する様々な取り組みのことです。採用、配属、任用登用、昇進昇格、報酬制度、能力開発、リテンションプラン、サクセッションプラン、ハイポテンシャル人材プログラム、組織開発、DEIなどの取り組みはすべてタレントマネジメント施策です。これらの施策は組織人事戦略を遂行するために必要なのです。そして、組織人事戦略は何によって作られるかといえば、経営戦略と事業戦略です。つまり、経営事業戦略を遂行するために必要な組織と人を作るという目的で立案させたのが組織人事戦略です。
これでおわかりですね。タレントマネジメントとして何から着手するかといえば、経営事業戦略を明確にすることです。次に組織人事戦略を明確にし、その後は必要な人事施策を立案、さらに人事施策を実行するうえでの問題を明確にします。最も具体的なタレントマネジメントの効用は、現在発生している人事上の問題を解決することです。
1on1面談による対話が必須です。普段から上司との対話がなされていれば、退職につながる兆候を早めに捉えられます。もし早めに気づくことができれば、退職を決意する前に何らかの対策を打つことができるかもしれません。
しかし、実際に転職するかどうかは本人の価値観や性格によるところが大きく、上司から見てほんの些細なことに見える問題が本人とって重大な退職理由になることや、上司からはいつ辞めてもおかしくないと思う状況にある社員が全く転職に関心がないということもあります。
どこまで行っても転職するかどうかは本人次第です。人それぞれの事情があるので退職者をゼロにすることは不可能ですが、辞めそうな雰囲気を全く捉えられない現状の中で辞めていく人を早めに把握できるように変えることはできます。適切な1on1面談を実施してください。
管理職は周囲をやる気にさせることが仕事です。意欲形成業といってもいいでしょう。普通に考えれば昇進させるべきではありません。しかし、その方にしかできない特別な任務のための管理職昇進であれば話は別です。特別任務に求められる知識、能力、スキル、経験等の条件を満たす方であれば積極的に任用すべきです。すこぶる悪い現場の評判にも理由があります。この理由すらその方を積極的に任用する根拠になるかもしれません。
ヒューマンアセスメントの結果は、ある条件下でのコンピテンシーを評価したものに過ぎず、あくまでも昇進を検討するための参考資料です。どれだけ優れたアセスメント結果であったとしてもそれだけでは昇進の意思決定はできません。
MBTIとは
MBTIの正式名称はマイヤーズ・ブリッグス・タイプ・インディケーター(Myers- Briggs Type Indicator)です。イザベル・マイヤーズとキャサリン・ブリッグスという親子によって開発されたパーソナリティテストです。心理学者カール・グスタフ・ユングの性格類型論に基づいて測定モデルが作られました。
1962年米国のテスト専門機関ETSから研究用ツールとしてリリースされ、日本には1964年にはじめて紹介され、日本語版の翻訳研究がはじまりました。1968年に大沢氏がマイヤーズ氏から日本での正式な利用許可を受けたことで日本での利用がはじまり、このことが後押しとなりマイヤーズ氏は1975年に第一回全米MBTI学会を開催しました。この学会をきっかけに米国のみならず、ヨーロッパ、アジアなど世界70か国以上の利用がはじまりました。この学会がプロフェッショナルユーザー組織の結成につながり、資格認定などの仕組み作りが整備され、1988年に倫理憲章が制定されました。

MBTIの16タイプ
MBTIはユングの性格類型論に基づいて、性格を16タイプに分けています。
まずは、知覚と判断という心理的な機能で人の行動をとらえます。知覚機能は物事をどうとらえてどう意識するかを決めるものであり、判断機能とは知覚したことをどう結論付けるかを決めるものです。知覚と判断にはそれぞれ異なる二つの方法があります。知覚の二つの方法は感覚と直観です。感覚による知覚は五感を使って対象をあるがままにとらえ、直観による知覚は自分の内面にある想念を対象に付加して間接的に対象をとらえます。知覚型は目に見える現実に関心が向き、直観型は可能性や想像に関心が向きます。判断の二つの方法は思考と感情です。思考による判断は論理的な方法で客観的な結論を導き、感情による判断は好き嫌いによって主観的な結論を導きます。思考型は客観的な分析で結論を出す冷静なタイプであり、感情型は人の気持ちを配慮した結論を出すタイプです。ここまでで述べた4つの心理的機能(感覚、直観、思考、感情)がユングの性格類型論の基本概念です。
この4つの機能に基本的態度と呼ばれる外向型と内向型が加わります。この二つのタイプはエネルギーの方向を示しており、外向型は外の世界との関わりを求め、内向型は内なる世界にこもろうとします。最後に外的世界の処理に使われる心理的機能の判断と知覚が加わります。
エネルギーの方向が外向型(E)か内向型(I)か、知覚の方法が感覚型(S)か直観型(N)か、判断の方法が思考型(T)か感情型(F)か、外界を処理するプロセスが判断型(J)か知覚型(P)の4つのタイプの組み合わせから16タイプに分類する仕組みが作られています。
ちなみに私は内向、直観、思考、知覚のINTPタイプです。たしかに新しい仕事を作り出すことに目が行きがちで、目の前のタスクがおざなりになることがよくあります。
外向(E) | 内向(I) |
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感覚(S) | 直観(N) |
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思考(T) | 感情(F) |
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判断(J) | 知覚(P) |
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※大沢武志「心理学的経営 個をあるがままに生かす」(PHP研究所 1993年)より引用
活用方法
MBTIは自己理解のための質問紙です。専門教育をうけたプロフェッショナルユーザーからのフィードバックにより受検者が自分のタイプを探索し、ベストフィットタイプをみつけます。人はベストフィットタイプ以外の行動を一切取らないというわけではありません。何かを行う上では、ベストフィットタイプと反対のタイプの行動をバランスよくとる必要があります。ベストフィットタイプに関連する行動が現在の社会生活でどのように発揮されているか、反対のタイプの行動をあまりとらないことがどのような影響を及ぼしているかをよく考え、行動を強化したり改善したりすることに役立てるのが適切なMBTIの活用法です。

管理職と経営者のMBTI
MBTIを選抜目的で使うことは推奨されていませんが、大沢氏は管理職に共通のタイプがあることを著書で述べています。日本とアメリカの調査データから管理職で最も多いタイプは思考・判断(TJ)タイプでした。また、経営者は管理職に比べ個性のばらつきは大きくなるものの、独創と信念で組織に君臨する孤高の経営者に内向・思考(IT)タイプが多いと述べています。その代表的な方は以下の通りです。
井深大氏(当時ソニー社長)INTP
堤清二氏(当時セゾングループ相談役)INTP
伊藤雅俊氏(当時イトーヨーカ堂相談役)INTP
佐治敬三氏(当時サントリー会長)INTJ
このような伝説の経営者からMBTIデータを収集していた大沢氏のMBTIに対する情熱と行動力に敬服いたします。
おわりに
大沢氏は1993年に出版された「心理学的経営」で社員の自己実現を経営のゴールに位置付ける企業経営者が増えてきた状況を伝え、社員一人ひとりの個性を生かす経営の必要性とその方法を提示しました。そこで個性をとらえるツールとして紹介されたのがMBTIです。このツールは自分の個性を正しくとらえ、組織においてその個性を最大限に活用するために使われるべきものなのです。自分のタイプを見つけるだけでなく、自分にとって未発達な特徴を把握し、問題の発生を未然に防いだり、周囲の人との協力によって問題を解決したりするために使われます。
MBTIというバズワードをきっかけとして、正しいMBTIの理解とその適切な活用が普及していくことを同じアセスメントを取り扱う者として切に願います。
参考文献
大沢武志「心理学的経営 個をあるがままに生かす」(PHP研究所 1993年)
やる気のなさがどのような悪影響をもたらしているかによって、対応が変わります。
やる気がなく、業績が悪いということでしたら、厳重な指導が必要です。求められる職務成果を出せるようパフォーマンス管理を行います。態度姿勢の改善と業績の改善が見られない場合は、キャリア面談を通じて人事異動の可能性を探ります。その可能性がないと判断した場合、退職勧奨にうつります。
やる気はないが業績はよいという場合は、周囲への悪影響を軽減すべく、指導が必要です。面談を通じて、やる気のない姿勢が周囲の人に対してどのような悪影響を及ぼしているかについての理解を促します。そのうえで、態度や姿勢、発言などの外から観察できる言動を変えてもらいます。重要なポイントはやる気そのものではなく、行動を変えてもらう点にあります。
もし、やる気がないという状態が、その部下自身を苦しめているのであれば、その問題解決のために一緒に意欲開発の方法を考えます。やる気がない理由は様々です。健康状態、ライフイベント、キャリア観、組織に関連する事項、職務に関連する事項、その他の問題等。生まれてから今までのその人をとりまくすべてがやる気にかかわっています。企業としての責任範囲を超えた問題が見つかることもあります。そんな時には従業員の気持ちに寄り添い、一緒に解決したいという姿勢を見せ続けることが重要と考えます。
お金がかからない趣味は際限なく思いつくのですが、続けられるかどうかはご質問者様次第ですので、ご容赦いただきたく存じます。私が厳選した20の趣味からお好みのものを試してみてください。
- 読書(図書館)
- 音楽鑑賞(YouTube)
- ウォーキング
- ジョギング
- サイクリング(自転車所有者のみ)
- 楽器演奏(楽器所有者のみ)
- 筋トレ(自宅で自重トレーニング)
- ヨガ(YouTube)
- 作詞作曲(無料アプリ)
- エッセイ執筆(無料プラットフォーム)
- 俳句
- 写真撮影(スマホ)
- 料理
- 掃除
- ポイ活
- フリマアプリ
- 語学学習(無料アプリ)
- MOOC
- 謎解き/クイズ(無料サイト/アプリ)
- バーチャル旅行(Google Earth)
興味をひくものがありますか?
変革する以外に生き延びることができない環境に置くことです。
既に従来のやり方では成功しない状況にある事業や製品、職務環境で成長を求めるのです。成功する人はほとんどいませんが、そんな中でトライアンドエラーを続け、結果的に成功を手にすることができる人が出てきたら、その人は変革型のリーダーシップを発揮できた人と認定してよいでしょう。ミドルマネージャーだけでなく、どんなレベルの人に対しても効果的な施策です。気を付けなければならないのは、このようなポストで成功する人はほとんどいないということです。どんなに優秀なマネージャーであっても成功率は極めて低い。これは人材の非効率的な活用方法といえます。変革リーダーとしてのポテンシャルをアセスメントでしっかりと見極めたうえで任用すべきです。
スキルベース組織です。
仕事をジョブ単位で切り分けるのではなく、スキル単位で切り分けて再構成することで、特定の人の持つスキルに最適な仕事を作り、適材適所を実現し、組織のパフォーマンスを高めようとする考え方です。仕事に応じてどのようなスキルを身に着けさせるべきかがはっきりするため、教育投資も効果的に行うことができます。
今までであれば人が努力して役割に即した能力を身に着けて仕事を完遂していましたが、スキルベースの組織では今持っているスキルで完遂できる仕事をその人のために設計するので、低業績に陥ることはなくはじめからハイレベルな業績を目指すことができるのです。
全ての人が自分の持っている力を最大限に発揮できる素晴らしい組織形態ですが、一方問題点もたくさんあります。スキルベースの基準となるスキルをどのように定義したらいいか。新しく作った仕事の組織に対する貢献をどのように評価し、どのような報酬を支払うべきか。誰がどのようにスキルを管理(更新、変更、削除等)するのか。社員のスキル評価をどのように行うか。誰がどのように新しい仕事を作るのか。採用はどのように行えばいいか。会社に貢献できるスキルを持っていないと認定された社員はどうするか。これらの問題をうまく解決する方法や道具が生まれてくることが、スキルベースが社会に浸透していく条件だと考えています。
二つの考え方があり、これらはいずれも事実だと考えます。
一つは能力が意欲を作るという考え方です。
適性のある職務に就くことでその職務でよい成績を上げることができ、その職務に対する意欲を向上させ、高い意欲で職務に取り組むことでさらによい成績を上げることができます。この繰り返しによって、今やっている職務に対して強いやりがいを感じるようになります。
もう一つは意欲が能力を作るという考え方です。本人が強くやりたいと希望する職務に就くことで失敗しても意欲を失わず努力を継続し、その努力により能力が徐々に向上することでその職務での成績も徐々に高められます。その職務に従事すること自体が喜びですから、何があってもくじけず飽きもせず、誰よりもその職務を長く続けることができます。
多くの普通の新卒入社者は、特定の職務に対しての強い熱意を持っているわけではなく、内定した会社に就職して会社の決めた配属命令にしたがっています。その場合は「能力が意欲を作る」の考え方に基づき、育成とサポートによってよい結果を出してもらい、成長実感を味わってもらうことがエンゲージメントの向上につながります。
物事の本質にせまる大変優れた質問、ずばりお答えします。
部下が求めている上司がいい上司です。
部下により求める上司像が異なりますので、よい上司の特徴を述べることは困難です。それぞれの部下に応じた対応ができるといいたいところですが、それぞれの部下に応じた対応をする上司を不公平な上司ととらえる部下がいた場合、この行動もいい上司の条件ではなくなります。
部下の行動を観察し、全体として最適な行動を追求していくことが上司道の修行です。