ないと思います。
手厚いオンボーディングが早期離職を防ぐという考え方に異議はありません。しかし、関わる人が多ければ多いほどよいといわれると、データでは結果的にそうなっていたのではないかと考えてしまいます。企業でより上位の職位ほど男性の割合が多い、というデータと同じです。結果的に様々な要因によってそうなっているのであって、男性が上位職に向いているというわけではありません。
従業員のメンタルヘルスとウェルビーイングを阻害するものの代表格は、過重労働とハラスメントです。この二つをなくすための施策を徹底して行えば、目的にかなうと考えます。
いずれもトップが明確になくすことを宣言し、ルールを作り、教育して、組織風土を改革することが必要です。従業員からやっていこうとすれば必ずこの施策は失敗します。組織の上から真面目に取り組む必要があります。
本コラムでは、ハイポテンシャル人材を選抜する際に重要な3つの要件について説明します。
ハイポテンシャル人材とは
SHLの調査によって経営幹部として成功する人材は共通する3つの要素を持っていることがわかりました。3つの要素は以下の通りです。
組織の上位職に就きたい、重職を担いたいという野心や意欲、上昇志向です。仕事の高い能力を持っていてもアスピレーションが無い場合は昇進したくないと考えます。仮にハイポテンシャル人材プログラムに参加したとしても途中で離脱してしまいます。
経営幹部として成功するための能力です。現在の職務でよい結果を出していても上位職としてよい結果を出せるとは限りません。リーダーとして成功する人材はハイパフォーマーの約15%しかいないことがSHLの調査でわかっています。また、組織での昇進を強く望んでいたとしてもリーダーとしての能力・スキルが弱ければ、経営幹部として高いパフォーマンスを出すことは不可能です。
エンゲージメントは企業や組織に居続けたいと考える愛着心のことです。エンゲージメントが弱い人は仕事、組織、人に対する思いが弱く、退職する可能性が高まります。競合他社からの誘いに乗りやすい傾向があります。
これら3つをすべて持っていて、現在の職務で成功しているハイパフォーマーがハイポテンシャル人材です。
アスピレーションの見分け方
経営幹部として成功している人のアスピレーションを調査すると以下に述べる6つのモチベーションリソースと2つの行動特性がアスピレーションに影響を与えていることがわかりました。モチベーションリソース
モチベーションリソースとはやる気の出方に影響を与える職務の環境や条件を表しています。モチベーションリソース検査MQで測定できます。
忙しいほど仕事のやる気になる。精力的に仕事をすることを好み、時間のプレッシャーがある方が生き生きする。常に活動的で物事をやり遂げることに意欲を燃やす。
大きな権限を行使できるとやる気になる。人を動かしたり権限を行使したりする職務を求める。大きな責任が与えられると意欲的になる一方で、責任が与えられないと意欲を失う。
公私の境なく常に仕事をしている状態を好み、意欲的になる。常に仕事に携わっていると感じることを糧とする。仕事に全精力を注ぎ込み、残業や休日の業務も進んで引き受ける。
興味をそそられる仕事に対してやる気になる。刺激があったり、変化に富んでいたり、創造的であったりする仕事を重視する。平凡な業務が多すぎると意欲が低下する。
柔軟にできる仕事に対してやる気になる。型にはめられることのない流動的な環境を好む。曖昧さにかなり寛容で、むしろ整い過ぎた環境では意欲的になれない。
自主的に働けるとやる気になる。自分で仕事のやり方を考えるのが好き。細かく管理されると意欲が低下する。
行動特性
行動特性とは典型的な考え方や行動の仕方のことです。パーソナリティ検査OPQで測定できます。
機会を作るために積極的にリスクをとる。プロジェクトなどの目標に影響を与える責任ある役割を好んで引き受ける。
目標達成のための努力を惜しまない。自己開発のための投資に積極的。
アビリティーの見分け方
SHLはリーダーの役割を以下の通り定義しました。これらの役割を遂行するための2つのリーダーシップスタイルが定義されており、経営幹部としての成功は両方のスタイルをどれだけ強く持っているかにかかっています。
この2つのリーダーシップスタイルとは変革型リーダーと執行型マネジャーです。それぞれのスタイルは異なる4つのコンピテンシーによって構成されています。

変革型リーダー・コンピテンシー
新しいアイデアや経験をオープンに受け入れることが必要な状況でうまく仕事をする。学習機会を求める。革新性と創造性を持って状況や問題に対処する。組織変革をサポートし、推進する。
コミュニケーションをとり、うまくネットワークを築く。人をうまく説得し、影響を与える。自信を持ったリラックスした態度で人と接する。
主導権を握り、リーダーシップを発揮することを自然と好む。率先して行動を起こし、指示を与え、責任をとる。
結果や自分の仕事目標の達成に焦点を当てる。競争心から、ビジネスや商売、財務に積極的な関心を示す傾向がある。自己啓発や昇進の機会を求める。
執行型マネジャー・コンピテンシー
明快で分析的な考え方をする。複雑な問題の核心に迫る。自分の専門性をうまく活用し、新しい技術を素早く取り入れる。
変化に適応し、うまく対応する。プレッシャーのもとで力を発揮し、失敗にもうまく対処する。落ち着いていて楽観的に見え、不確実な時や変化の時に、周囲に安定感や安心感を与える。
人の問題を第一に考え、同僚を支援し、他の人に敬意と前向きな配慮を示す。人に影響を与えるような厳しい選択をすることを難しいと感じる可能性がある。
指示や手順に従い、事前に計画を立てる。エネルギッシュに体系的かつ段取りよく仕事をする。決まった商品やサービスを定められた水準で遂行することに焦点を当てる。
これらのコンピテンシーはパーソナリティ検査OPQ32と認知能力検査Verify Interactiveで測定できます。
エンゲージメントを見分ける
アスピレーションとアビリティーに加えて、個人のエンゲージメントを評価することは不可欠です。ハイポテンシャル人材プログラムは有望な人材への大きな投資です。組織に留まる可能性が高い人材に投資を集中させるべきです。エンゲージメントの高い人材は、エンゲージメントの低い人材に比べて組織に留まる可能性が2倍高まります。
エンゲージメントの評価は上長による面接と行動観察によって行います。
評価の観点は現在と未来、合理的と感情的の2つ。現在のエンゲージメントとは、今の仕事や組織、周囲の人に対するやりがいや満足感です。将来のエンゲージメントとは、会社のミッション、ビジョン、バリューに対する共感であり、将来を託せるという期待です。合理的なものは成長や報酬など、感情的なものは帰属意識や仲間意識、共感などのことです。
今の仕事にやりがいと成長を感じており、職場環境や人間関係に対して帰属意識や共感を示している人は、現在の満足度が高い人です。加えて、将来のこの会社でのキャリアに希望があり、組織のミッション、ビジョン、バリューに共感している人は未来の満足度が高い人です。両方が高くて初めてエンゲージメントが高いと言えます。
現在と将来のエンゲージメントを面接で確認するためのチェックリストは以下の通りです。
現在のエンゲージメント
将来のエンゲージメント

おわりに
今回はハイポテンシャル人材に求められる3つの要件と各要件の構成要素を詳しく説明しました。ハイポテンシャル人材プログラムを成功させるポイントは、適切な人材の選抜にあります。なぜ適切な人材選抜が難しいかというと、顕在化していないポテンシャルを評価しなければならないからです。
この問題を解決する最適な方法は、アセスメントを導入し、ポテンシャルを客観的に測定することです。
ハイポテンシャル人材の選抜育成についてより詳しく知りたい方は、ハイポテンシャル人材の発掘と育成に関するご提案(無料)をご覧ください。
私は生まれてこの方就職活動をやったことが無いため、再度ではなく初めての就職活動になってしまうのですが、今と同じ職種を選ぶことはないと断言できます。HRコンサルタント職に長く従事してきましたが、私がこの仕事に就けたことは偶然以外のなにものでもありません。現在でもHRコンサルタント職はとても従事する人数が少ない職種であり、難しいという意味ではなく人数が少ないという意味で狭き門の仕事です。私が選ぶことはないと言った理由は、仕事が嫌いだからではありません。仕事内容は面白く深い専門性が求められるため、職人気質の私にはぴったりで天職に巡り合えたと思っています。しかし、もう一度30年前にもどって就職活動をしたとしてもこの職種を選ぶことができないと思っています。この職種の存在に気付くことがないまま就職活動を終えてしまうだろうと感じるのです。
この職種と出会えた奇跡に心から感謝しています。
今のインドでは3年以内で退職する人が平均的な人材です。転職するたびに給料を上げることができるため、特に若い世代は同じ会社に長く勤めることをよいことと捉えてはいないようです。
さて、定着のための対策について述べたいのですが、正直なところ特効薬はないと考えています。着実にオンボーディング施策を行うことくらいです。
手厚い導入教育、メンター制度、定期的なキャリアカウンセリング、上司との1on1ミーティング、チーム内コミュニケーション施策、他部署とのコミュニケーション施策、適切な目標設定、適切な配属、適切なプロジェクト割当、インセンティブ制度、ジョブクラフティング、プライベートなコミュニケーション、副業、社内公募など考えられるあらゆる方法を導入してください。それでもインドでは定着が困難とのことです。
是正する必要はありません。面接は最初から最後まで主観に左右されてしまいます。主観の働かせ方が重要です。私の好き嫌いを基準にするのではなく、仕事や職場との相性を基準にして勘を働かせることができるようになれば一人前の面接官です。
必要なものは知識と論理的思考と経験です。それも人にだまされる経験を積むしかないのだと思います。達人は普通の人では気付かないわずかな変化や兆候に気付きます。また意識的に気付かなかったとしても、無意識的に違和感を持つのです。
勘が働くまで経験を積んでください。
経営陣に限らず人の内面を変えることは難しいです。すぐに成長できるものでもありません。しかし、経営陣を総入れ替えすることは株主であればできます。
経営陣のビジョンに基づいて人材要件を定義することは一般的に行われている方法ではありますが、必ずやらなければならないものでもありません。人材要件を定義する目的を踏まえた別の方法や別の対象者に対するインタビューを検討することも可能です。
このままではプロジェクトが頓挫してしまいます。人材要件定義の目的に立ち返り、別の手法を検討してください。
適性テストでわかるものとわからないものをしっかり区別しましょう。
適性テストでわかるものは、認知的能力、作業スキル、パーソナリティ、モチベーションなどの一般的な要素です。職務のコンピテンシー、環境に対する適応度などは予測できます。
適性テストでわからないものは、特定の職務に求められる専門知識や専門スキル、保有資格、職務経験などです。専門知識を持つ人が作ったテストや口頭試問、面接などで評価します。
プレーヤー層を採用する場合はジョブコンピテンシー、マネジャー層を採用する場合はマネジメントコンピテンシーの評価の参考にしてください。
マネジメント能力やリーダーシップコンピテンシーのポテンシャルを測定する適性検査はたくさんあります。当社の適性検査もその目的で開発されたものが多くあります。
代表的な当社のアセスメントをご紹介します。
- 万華鏡30
パーソナリティ検査OPQ30により、マネジメントコンピテンシーのポテンシャルを測定します。リーダーシップスタイルがわかるマネジメントコンピテンシーIMC(16項目モデル)とより詳細なマネジメントコンピテンシーPMC(36項目モデル)の得点を算出でき、様々な部門や階層のマネジャー/リーダー適性がわかります。 - 決裁箱
マネジャーに求められる分析力と手順化能力を測定するマークシート形式のイントレー演習です。インバスケットとも言われます。架空の会社の管理職として、資料を読み込み様々な事案の意思決定を行います。模擬的に管理職としての決裁を行う演習です。マネジャーに求められる概念的スキルがわかります。 - 羅針盤
マネジャーに求められる判断力を測定するオンラインアセスメントです。仕事上で遭遇する極めて判断の難しい状況に対して様々な判断の適否を評価するテストです。過度に保守的にならず、現実的で野心的な判断ができる人を見つけられます。 - タレントセントラル リーダーシップレポート
パーソナリティ検査OPQ32により、リーダーシップスタイルを測定します。変革型リーダー/執行型リーダーそれぞれに求められるコンピテンシーのポテンシャルを把握できます。40言語以上の受検言語とリポート言語、グローバル比較可能で様々な階層のリーダーに適した複数の採点ノルムを持つなど、国を問わず活用が可能です。
ご質問者様の所属する組織はとても良い社風を持っていますね。現場の管理職がうまくいかないことを人事部長に直接相談できる会社なんてそうあるものではございません。従業員が人事部を信頼していることがよくわかります。そこまでの信頼関係があれば、敢えてアセスメントを使った能力開発を検討するまでもなく、ご質問者様の人事としての経験に基づくアドバイスをする方がよほど効果的と考えます。
アセスメントを活用した能力開発は、必ずフィードバックを伴います。フィードバックするためには、仕事や部下を知っているだけでは不十分でアセスメントとフィードバックについての知識が必要です。もちろん、管理職の方々にアセスメントのトレーニングを受講いただき、部下にはアセスメントを実施して、結果を効果的にフィードバックできるようになれば、能力開発はうまくなると思います。しかし、この方法は本当に貴社の管理職が望む解決法になっているでしょうか。人事部長に直接アドバイスを求める管理職の方々です。きっとご質問者様からの言葉を待っているはずです。一夜漬けの知識に頼らなくても既によいアドバイスができるはずです。自信を持って本当に良いと思うやり方を伝えてください。