コラム

人事コンサルタントの視点

次なるマネジャー(管理職)は誰か
~要件の考え方と選定方法~

現プレーヤーの中から「誰を次のマネジャー(管理職)」にするのか。何(能力や経験など)を重視し、それらの点をどのように見極めればよいのか。
これまで多くの人事担当者はこの問題について頭を悩ませ、議論を重ねてこられたかと思います。様々な考えや理論がある中で、本コラムでは「アセスメントを活用した一つの解」を示したいと思います。皆様が今後の指針や施策を検討される際の足掛かりとなれれば幸いです。

そもそもマネジャーとはどのような役割を担っているのか?

    前提として本コラムで言及するマネジャーは「プレーヤーから初めて部下を持ち、管理職としての役職を与えられた人」とします。そして、一般的なマネジャーを構成する要素は下記が挙げられます。
  • 求められる役割:組織の長として、部下を指揮・管理して成果を創出する
  • 主な業務:目標設定と進捗管理、部下の育成・評価、リスク管理など
  • 与えられる権限:一定の裁量を持ち、業務遂行の担当者指名やリソース配分などが可能
  • 評価軸:個人実績ではなく、部門/チーム全体の成績によって評価される
  • 働き方:労働時間/休日に関する規定が適用されない
  • 役員との違い:管理職はチーム/部門視点、一方で役員は企業全体視点・権限を持つ
既述の通り、非常に広範囲で多様な役割を与えられているのがわかります。それぞれに対して十全に役目を果たす人材は果たして誰なのか。よく取り上げられる管理職に「向いている人」と「向いていない人」の特徴や能力を事項にピックアップしました。

そもそもマネジャーとはどのような役割を担っているのか?

よく言われるマネジャーに「向いている人」と「向いていない人」

向いている人

リーダーシップ、部下の成長への関心、モチベーション管理能力/コミュニケーション能力/情報収集・分析能力/気配り など

向いていない人

責任感の欠如/業務の抱え込み(他人を信頼しない)/意思決定や決断の遅さ など

上記は、いずれも一般的に納得感はあるかと思います。ただ、この項目をそのままマネジャーを選定する要件とすることは可能でしょうか。おそらく実際にはあまり機能しないでしょう。一つひとつの定義や具体的な行動まで落とし込まれていないため、抽象度が高いからです。
例えば、「リーダーシップを発揮する人材」とは具体的にどのような行動をする人か、「コミュニケーション能力」とは単純に色々な人と気負いなく話せる人ということなのか、など、具体性が伴わないと見極めるポイントの解像度が低くなったり、ズレが生じたりする可能性が高くなります。
では、どのように要件を設定すればよいのか、そしてそれをどのように評価すればよいのか。一つの方法として下記をご提案します。

マネジャー要件の考え方と具体的な評価手法

Step1:要件を「先天的な素質」と「後天的に習得可能な能力」に分けて考える

前述の通り、求められる能力が多岐にわたり、かつそもそも見極めや評価も簡単ではないため、絶対に見逃してはいけない(必要不可欠な)要件に焦点を絞ることが重要です。ここでは、一つの要件としてドラッカーが主張する“Integrity(真摯さ)”を挙げます。
「マネジメントの父」と呼ばれる経済学者ピーター・ドラッカー曰く、「学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。」(引用:マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則)と言及しています。”Integrity(真摯さ)”を、「仕事に対して誠実で、自らの仕事に高い基準を設定し、言動一致の向上心のある人」と解釈した場合、人材アセスメントツール(弊社アセスメントツール「万華鏡30」など)を活用することが可能です。
例えば、万華鏡30レポートのPMC項目で関連する尺度は以下が考えられます。
    Integrity(真摯さ)
  • 「まじめさ」:自分に対して厳しさを貫く。信頼でき、頼りになる。
  • 「品質志向」:仕事の質を高め、維持することに執着する。
  • 「向上意欲」:自分で自分の能力を伸ばそうとする。自分のキャリアをたえず高めようとする。

Step2:先天的な素質+αでマネジャー候補者を選定

Step1で測定した先天的な素質に、顕在化しているマネジャーとして必要な能力評価や実際の人事考課や実績、360度評価などを加味して総合的にマネジャー候補を選定します。その際に、先天的な素質は必須要件とします。

Step3:マネジャー昇格後、後天的に習得可能な能力について明確な開発プランを策定

マネジャー昇格後に実際に活躍し会社に寄与することが目的ですので、その後の能力開発も必要となってきます。アセスメントを活用することで、マネジャー個人ごとの強みや弱みに合わせた能力開発プランを策定することが可能です。弊社では万華鏡30の他、能力開発のための自己理解研修等も提供しています。
    上記ご提案は数ある方法の一つですが、下記3点については押さえておくべき重要なポイントになるでしょう。
  1. 見極める要件を可能な限り具体化し実績や顕在化している能力だけで評価しないこと
    →認識の齟齬と評価軸のズレを防ぐため
  2. 要件に優先度をつけること
    →初めから全て備えていることは難しいため
  3. マネジャー登用後の能力開発目標を明確にすること
    →自分に何ができて何ができていないのかを把握しさらなる活躍と成長をしてもらうため
  4. マネジャー要件の考え方と具体的な評価手法

    さいごに

    マネジャーは企業の中核を担います。つまり、どのようなマネジャーを選抜するのかは、その後の企業の成長を左右する大きな決断となり得ます。この機会にぜひ一度「次なるマネジャー」はどのような人材が必要なのか、改めて考えてみるのはいかがでしょうか。

松﨑 宏一

このコラムの担当者

松﨑 宏一

日本エス・エイチ・エル株式会社
コンサルティング1課 主任

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