コラム 人事コンサルタントの視点

選考プロセス分析で「何を・どう」分析すべきか?

1500件の事例から見えた!選考プロセス分析で「何を・どう」分析すべきか?
本コラムでは、分析手法や分析事例を多くご紹介してきました。コラム「意味のある統計分析を行うために必要な「目的の明確化」」では、分析で仮説を立てることの重要性をご理解・ご実感いただいたかと思います。

とはいえ、いざ取り組むとなると、「何をどう分析すればいいのか分からない」「そもそも分析したいことは何なのか?」と、最初の一歩から迷うこともあるでしょう。モヤモヤとした課題感を言葉にする作業は、分析の出発点として必要不可欠ですが、難しさもあります。特に、採用や選抜過程の有効性を検証する選考プロセス分析は、データ収集から始まる社員データ分析に比べてデータが揃いやすい分、目的を曖昧にしたまま「とりあえず……」と始めてしまいがちです。

このような作業を進める際は、考えを映す “ことばの材料”の多さが助けとなります。そこで、“ことばの材料”を増やすヒントとして、当社が承った直近1,500件の選考プロセス分析案件から、よく使われる分析手法とテーマをご紹介します。本コラムが、最初の一歩を踏み出すためのヒントとなれば幸いです。

よく使われる分析手法:トップは「t検定」

まずは分析手法の集計結果をご覧ください。最も多く使われたのはt検定でした。t検定は、2つのグループの平均値に意味のある差があるかを確認するための統計手法です。


1集団に関して検証するもの

次に分析内容の集計結果をご覧いただきますが、使用頻度の多い手法に絞り、更にその中でも“ことばの材料”として興味深いものをピックアップしてご紹介いたします。

分析テーマのヒント:どんな視点で見る?

1集団に関して検証する手法

1集団に関して検証する手法の集計結果です。後述の複数集団に関して検証する手法とは異なり、分析内容の名称がそのまま、検証対象の集団となります。
1集団に関して検証するもの

z検定・・・日本エス・エイチ・エルの基準母集団の平均値との差に意味があるかを確かめる方法
ヒストグラム・・・ある集団の人数や出現率の分布を集計したグラフ

    最も頻度の高い対象集団は次の通りです。
  • 【選考応募者】:母集団形成を確認する
  • 【内定者/最終選考合格者】:選考後の傾向を確認する
  • この2つはグラフ枚数が他対象を大きく引き離しており、選考プロセスを振り返る上で必須の情報であることが伺われます。
また、グラフ枚数は多くないものの、興味深いものとして、「特定ターゲット」があります。これは、対象こそ各社様々ですが、「特に採用したいと評価された人の特徴を明らかにする」ことを目的としています。対象群の名称には【選考高評価者】【選考スキップ対象者】【デジタル人材】【英語人材】などがありました。

複数集団に関して検証する手法

ここからは、「複数集団に関して検証する手法」の集計結果をご紹介します。使用頻度トップの「t検定」を含むこのカテゴリでは、「評価」に関する分析が大多数を占めました。

選考プロセス分析において、「自社が評価したかったポイントを、実際に評価できていたか?」という検証がいかに重視されているかが分かります。以下、主要な3つのテーマに分けて詳しく解説します。
1集団に関して検証するもの

t検定・・・2群の平均値の差に意味があるかを確かめる手法
分散分析・・・3群以上の平均値の差に意味があるかを確かめる方法
積み上げヒストグラム・平滑折れ線・・・複数集団の人数や出現率の分布を集計したグラフ

1.評価に関するもの

最も多くの企業が実施しているのが、合否や評価者によるブレを確認するための分析です。

選考全体の「実効基準」を確認する
「選考ステップごとの合否」だけでなく、「選考全体を通した評価基準」が機能しているかを検証します。ステップごとの分析と併用することで、評価の矛盾点を発見しやすくなります。
比較対象は【最終選考合格者とその他応募者】とするのが一般的ですが、目的に応じて以下のように柔軟に変えることが重要です。

    • Webテストなどによる明確な初期選考基準がある場合
    • 比較対象:【最終選考合格者】vs【その他初期選考(Webテスト等)合格者】
    • 理由:初期選考以降の面接等における評価基準に焦点を絞るため。
    • 途中辞退者が多い場合
    • 比較対象:【最終選考合格者】vs【選考不合格者】
    • 理由:「その他応募者」に多くの辞退者が含まれるとノイズになるため、純粋な不合格者と比較して基準を明確にする。
面接官ごとの「評価傾向」を確認する(評価者別比較) 面接官(評価者)ごとの合格者・不合格者を比較し、「評価視点や基準にブレがないか」を検証します。 ただし、各面接官がある程度の人数を評価していないと傾向が見えにくいため、応募者数が多い企業様に向いている手法です。
2.応募者側の反応に関するもの
    「内定の受諾/辞退」という大きな分類だけでなく、辞退のタイミングや理由を細分化して検証するケースもあります。1500社の事例からは、以下のような多様な切り口が見られました。
    • 人材の質を確認する
    • 【選考辞退者】vs【内定通知者】(欲しい人材が辞退していないか?)
    • 対策の効果を見る
    • 【今年の辞退者】vs【昨年の辞退者】(辞退防止施策の効果はあったか?)
    • タイミングごとの対策を検討する
    • 【承諾後/承諾前/初期選考/選考途中/内定】それぞれの辞退者比較
    • 競合や理由を分析する
    • 辞退先別:【競合他社・公務員・商社・銀行 など】
    • 理由別:【別業界志望・周囲の影響・大手志望・働き方重視 など】
分析の注意点 「辞退者の特徴を知りたい」というご相談は多いものの、辞退理由や志望度は個人のパーソナリティに依存するため、全員に共通する特徴を見出すのは容易ではありません。上記のようにターゲットやフェーズを細かく分けて検証することが、有効な分析への近道となります。
3.ターゲット集団に関するもの
    「優秀層」や「欲しい人材」をどう定義し、確保できているかを確認する分析です。
    • ベンチマーク比較
    • 自社が「欲しい人材像(ベンチマーク)」と設定した層と、実際の内定者・応募者を比較します。
    • ベンチマーク例:【高評価社員】【キャリア採用内定者】【前年の高評価内定者】など。
    • 優秀者フラグの検証
    • 選考中の評価を元に【優秀者】を定義し、【その他応募者】と比較することで、評価基準の言語化・可視化を行います。
    • タイプ別分析
    • 応募者をタイプ分類し、傾向を探ります。分類には、評価者が主観で評価する方法と、クラスター分析等の統計手法を用いる方法の2通りがあります。「優秀者」の中にも複数のタイプが存在する可能性がある場合に有効です。
その他
    応募者の属性(スペック)ごとの特徴を比較します。特に興味深い事例として、以下の3つが挙げられます。
  1. 学歴:【ターゲット校A群・B群・大学院卒…】
  2. 経験:【体育会系・ハード系ゼミ・留学経験…】
  3. ガクチカ(学生時代に力を入れたこと):【学業・競技・アルバイト・国際活動…】
分析のヒント学歴は「1人1つ」ですが、経験やガクチカは「1人が複数該当する」場合があります(例:体育会系かつ留学経験あり)。分析の際は、応募者を複数のタグ(群)に振り分けて比較する形式がよく用いられます。

分析テーマのヒント:どんな視点で見る?

おわりに

自社の選考プロセス分析に利用できるヒントはありましたか?
当社コンサルタントは、様々な企業の採用データ分析に携わる中で、豊富な“ことばの材料”を蓄えています。課題整理や分析設計のお手伝いに、ぜひ担当コンサルタントにご相談ください。

稲澤 未穂

このコラムの担当者

稲澤 未穂

日本エス・エイチ・エル株式会社
テスト開発・分析センター

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