人事優先課題とビジネス・バリュー
公開日:2013/05/13
このコーナーは、イギリスのSHLグループがお客様に向けて発信している様々な情報を日本語に翻訳してご紹介するものです。主にグループの広報誌やユーザー向けネット配信、HPプレスリリースなどから記事をピックアップしています。海外の人事の現場でどんなことが話題になっているのか、人材マネジメントに関して海外企業はどんな取り組みをしているのかをお伝えすることで、皆さまのお役に立てればと願っております。
今回は第121回で取り上げたSHLグローバル・アセスメント・トレンド調査結果について、アメリカ人事コンサルタントChina Gorman氏がそのブログで紹介している記事を取り上げます。
SHLがグローバル・アセスメント・トレンドに関する毎年の報告書を発表しました。SHLはアセスメント会社ですので、アセスメント・トレンドに関する調査報告は最も得意とするところです。調査データは興味深く、その結論は人事に関わる誰もが注目すべきものでしょう。
しかし、調査の問いと結論はアセスメントツールの利用というテーマをはるかに超え、採用や能力開発の戦略・実施に及びます。
報告書の第一部では組織の人材マネジメントの焦点と展望をレビューしています。例えば、筆者は新興経済圏と既成経済圏の人事優先課題上位5位を比較しています。
挙げられているものは似ていますが、全く同じではありません。4つは両方に載っていますが、優先順位が異なります。そして、承継計画が既成経済圏のリストにあることに対し、新興経済圏のリストにはトレーニングがはいっています。
他にはビッグデータの人事活用に関連する結果があり、客観データを使って人事の意思決定を下すことには世界中で改善の余地があるという見解が述べられています。実際、「自社は社員ポテンシャルを明確に理解している」としたのは調査回答者の25%以下でした。
報告書の第二部は、採用と能力開発両方での人材アセスメントに焦点を当てています。このセクションでの興味深い結果には、回答者のほぼ75%が人材測定を改善し、雇用前後のテスト実施を具体的な事業成果に関連付けたいと考えていることが含まれます。
報告書の第三部はテスト実施のテクノロジー、特にモバイルツールとソーシャルメディアに焦点を当てています。ここでの重要な結果は、新興経済圏で、採用側と受検者の両方が、受検者のアセスメントにモバイル技術を使いたいと考えていることです。そして、ソーシャルメディアのデータが雇用決定に関して持つ重要性が薄れつつあります。
報告書は2013年度の人事に対する4つの提言で締めくくられています。
- ビッグデータは、人事がビジネスバリューを示すユニークな機会を提示している。
- 正しいデータのみが人事施策の成功につながる
- 人事は人材採用の方法を改善するイノベーションを(慎重にではあるが)受け入れている。
- モバイル技術は、大勢に従うのではなく、競争上の利点になるかどうかで検討されるべきである。
報告書のデータはわかりやすく、かつ、役立つように提示されています。30ページで、ざっと眺めてインパクトのあるセクションを読み込むのにかかるであろう45分間分の価値はあるでしょう。私は特に巻末の関連文献と、2009年~2011年の同調査報告書の主要結果まとめを面白く読みました。この種のリストの進化に常に関心を持っています。
しかし、私にとって肝心なことは、人事がそのビジネスバリューをどのように示すかを明らかにすることに、このようなグローバル人事データが光を当てるということです。人事戦略・戦術をビジネス成果に沿わせることのみが、ビジネスバリューを示す唯一の方法です。そして、人事専門家がビジネスリーダーとして見なされる唯一の方法なのです。
前回(本コラム第121回)はプレスリリースの記事で、いわばSHLからの視点で調査結果を紹介したものでした。一方、今回は米国の現場第一線プラクティショナーの視点から調査結果を考察したものと言えるでしょう。
調査報告書の本文はここから入手できます。画面上で申請フォームへのご記入が必要ですが、記入によって何らかの義務が発生することは全くありませんので、どうぞお気軽にごご活用ください。

このコラムの担当者
堀 博美
日本エス・エイチ・エル株式会社
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SIOP 2013
2013/04/30
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2013年度ビジネス成果研究リポート――アセスメント・ソリューションによる収益改善――”,
SHLがビジネス成果研究年次リポートを発表しました。今年で7年目です。リポートは、人材アセスメント・ソリューションの活用によって企業が優れたROIを達成している様子を浮き彫りにしています。金融、技術、サービスなど様々な業界を代表する55社の事例データを基に、リポートは12項目のキー・ポイントを挙げています。新規採用候補者や現社員の能力と将来のポテンシャルをより深く理解することで、多くの企業で明らかに収益が向上しています。
2013/05/27